東アジア諸国における大学入試多様化に関する研究
著者
石井 光夫
平成17∼19年度
日本学術振興会科学研究補助金 基盤研究(C)
課題番号=17530548研究代表者:石井光夫(東北大学)繊細劇細叶誉戚
東アジア諸国における大学入試多様化
に関する研究
研 究成 果報告 書
平成20年3月
平成17∼19年度
日本学術振興会科学研究補助金 基盤研究(C)
課題番弓一:17530548 研究代表者:石井光夫(東北人学)
東アジア諸国における大学入試多様化
に関する研究
研 究 成 果 報
平成20年3月
告 吾
平成17∼19年度日本学術振興会科学研究補助金 基盤研究(C)課題番号:17550548 研究成果報告書 まえがき 本研究は,中国,韓国,台湾,香港,シンガポールの束アジア5カ国・地域を対象に, 大学人試改単二の動向を調査分析したものである。なかでも我が国の大学入試多様化と同様 の方向をもって入試改革に精ノ」的に放り組んでいる中岡,韓国,台湾に焦点を当てた。 これらの国・地域ではおおむね全国統一試験等の筆記試験を中心に大学入学者を選抜し てきたが,近牛,筆記試験に加え,面接試験や高校における学習・活動記録の審査,推薦 制など多様な選抜方法・判定基準を模索する改革が進みつつある。また,この入試改革は, これらの国・地域が11ミA(国際教育到達度評価学会)及び01ミCnによる国際学力調査 で好成績を示したにもかかわらず,創造性や個性の仰長を目指して多様化・弾ノ」化を図っ ている学校教育改革とも密接に関係しており,そうした方向は我が国の動向ときわめてよ く似ている。 本研究では,これらの改革を 層詳細かつ的確に把握するため,以卜の項目について調 査研究を進めた。 l)一般選抜における選抜方法・判定基準 2)特別選抜(推薦入学や我が国のAO入試に類似する大学独Hの選抜等)における選 抜方法・判定基準 3)高等学校との連携協力(広報活動,鳥人連携活動) そして,これら項目についての政策方針,制度改革等のあらましを把握したのち,とく に「入試の多様化」という観点から,改革の背足や経緯,改串二の具体的措置,個別大学の 入試実態等を明らかにするとともに,我が国との比較を念頭に各国・地域の共通性や特徴, 問題点などを整理分析した。 なお,本研究の過程で平成18年度文部科学省先導的入学改革推進委託事業により筑波 入学を幹事校として「受験生の思考九 表現力等の判定やアドミッションポリシーを踏ま えた入試の個性化に関する調香研究」が実施され,東北人学(代表 石井光夫)はその 一 環として「東アジアにおける『入試の個性化』を目指した大学入試改革の比較研究」を担 当した。その報告書はすでに平成19年3月にまとめられ,公表された。この委託研究の 内容は本研究と重なる部分が多くあり,委託研究に本研究の成果を取り込むとともに,本 研究をまとめるにあたっても実地調査を含めて委託研究の結果を利用することができ,双 方に研究の厚みを加えることができた。 本報告書は,第1章において各国・地域の調奄研究をもとに総論として東アジアの入試 多様化の動向を概説するとともに,その共通性や特徴を我が国への示唆となるいくつかの 項目に整理して考察した。第2章以下は各国・地域の調査研究報告である。 本研究の研究分担者,研究協力者の方々及び実地調査に際して快く対応くださった各国 ・地域の政府・大学等関係者の皆様に対し,改♂)て感謝申しJ二ifたい。 平成20年3月 研究代表者 石井光夫
研究組織 研究代表者 石井 光夫 東北大学・高等教育開発推進センター・教授 研究分担者 鈴木 敏明 倉元 直樹 荒井 克弘 夏目 達也 東北大学・高等教育開発推進センター・教授 東北大学・高等教育開発推進センター・准教授 東北大学・教育学研究科・教授(平成17年度) 名古屋入学・高等教育研究センター・教授(平成17年度) 研究協力者 平成19年度 日暮トモ子 文部科学省生涯学習政策局調査企画課専門職 補助金額 平成17年度 平成18年度 平成19年度
直猪修攻
1,200千円 1,100千円 1,200千円画讐君鵠巧
の角 /−/♂クケ円 J如寺円 /.∫占ク 合計3,500刊1 Jわ叩 J・㌢占ク利巧
報告書執筆担当 第1帝 第2帝 研究報告 実地調査記録1・2 実地調査記録3 第3章 第4章 第5章 石井光夫 石井光夫 日暮トモ子 石井光夫 石井光夫 倉元直樹  ̄11【目 次 第1草 総 論 東アジアの入学入試多様化 第2亭lい【4」 研究朝出 大学入試多様化の試み一成果と課題 実地調査記録l 実地調査記録2 実地調査記録:う 第3草 韓 巨l 研究報告 高等教育ユニバーサル段附の入試多様化 実地調査記録1 実地調香記録2 第4草 台 湾 研究報告 適合試験選抜から大学主体の「多元入学」へ 実地調査記録 第5章 シンガポール・香港・中lり(深酬大学) 研究報㌣ 美地調査報㍗ ・19 日 75 日 79 日 92 ‥103 ‥134 ‥139 ・・143 日184 =199 日‥207 資料 杏港「大学連合学′上募集方法」及びその示唆するものについて(全訳) 日・220
第1章 総 論
はじめに 1.東アジア入試改革の動向 (l)高等教育の構造と進学率 (2)大学入試改革の背見 (3)大学入試改革の経緯・方向 2.各同・地域の入試多様化 (日 人草入試の概要 (2)共通試験 (3)個別人草における入試の多様化 3.考察 (1)入試多様化の狙いと手法 (2)多様化の進展度合い (3)思考力,表現力の判定と学力の担保 (4)公平性の問題 (5)試験の透明性・情報の公開 (6)高大連携 (7)教育格差・社会経済的に恵まれない層への配慮 はじめに 我が国ではとくに1990年代以降「選抜方法の多様化」と「評価尺度の多元化」をキー ワードに大学入試の改革が進められてきた。それは「過度の受験競争」の緩和への社会的 要請や,高校と入学の多様化という時代の変化に対応するための,筆記試験を中心に行わ れてきた従来の入学者選抜方式への改革であった。面接試験や小論文等の筆記試験以外の 選抜方法を触り入れ,たんに知識の多寡ではなく,それらを応用する閃題解決能力や思考 力,表現力といった幅広い能力の判定,さらには学ぶ意欲や当該大学,学問分野への適性 ・興味関心などをも評価する入試が広まっていった。.そのような入試を担う切り札として AO入試が2000年の国立3大学での導入をきっかけに,急速に広まっていった。 しかし,その期待されたAO入試についても,少−f▲化の中でたんに青田買いを目的とす るような大学も現れ,「学力の確保」について注意を促す議論も出てきた(2008年1月23 日,中央教育審議会大学分科会・教育部会,学上課程教育に関する小委員会「高等学校と 入学との接続に関するワーキンググループ議論のまとめ」)。入試多様化政策の成果と課題 をあらためて検討すべき時が来ているのかもしれない。 一方,我が国の入試改革と歩調を合わせるように,東アジアの中国,韓国,台湾の国や 地域でも1990牛代以降従来の画・的な筆記試験中心の試験制度を改め,面接試験や書類 審査などの大学独自の選抜方法を取り入れる入試多様化の改革を進めている。これらの国 や地域でも我がL司と同じく過度の受験競争に悩み,また急速に進む入学進学率の向上など
の変化への対応を迫られての改革であるようにみえるし,葺しくも同じ方向に向かっている これらの入試改革において,各国・地域では受験競争の緩和という長年の課題にどのよう な対策をとろうとしているのか,あるいは,新たな時代の要請によってまた新たな理念や 目的のもとでどのような展開をみせているのか。今回の東アジア諸岡・地域を対象にした 大学入試改革の比較研究では,こうした問題意識を持ちながら,その改革の具体的諸相を 明らかにし,我が国の入試改革との比較を意識してその共通点や個別の特徴,課題などを 分析するとともに,我が国の入試改革にとっての新たな視点を探ることを目指した。 第2章以下では,東アジア各国・地域の入試改単二を背景・経緯,現行制度を踏まえた上 で,とくに多様化への動きに焦点を当て,入試多様化の具体的内容を明らかにするととも に,その成果と課題を分析した。また,多様化に伴って,高校の進路指導や高大連携の在 り方も課題になっていることから,これらについても調査を行った。その詳細については, 各章の記述に譲るとして,本章では「総論」として東アジアの入試多様化について,その 背景や経緯,入試改革のポイントなどを大まかに確認した後,「考察」において我が国との 比較したときのそれぞれの共通点や特徴をいくつかの項目に整理して分析し,我が国の入 試改革にとって考慮すべきと思われる視点を提示した。 なお,この総論ではとくに中国,韓国,台湾を主として検討分析の対象とした。ほかに 調査したシンガポールや香港については,その歴的経緯から英国に倣った共通試験(Aレ ベル試験)中心の選抜方式がなお実施されており,東アジアといいながら,やや異なった 傾向をもつ地域として,本章での総括には入れなかった。 1.東アジア入試改革の動向、 (1)高等教育進学率 高等教育進学率の程度は大学入試のあり方にも影響すると思われるので,それぞれの高 状況を確認しておきたい。 高等教育への進学率については,統計卜の制約があり,18歳人「†を分母にした進学者 の比率を正確に割り川すことができないが,韓国・台湾では1980年代から急速に高等教 育が拡大して,や湾では60%に達している。韓国では高校卒業者の8割以トが進学して おり,高校進学率が100%近いことを考慮すれば,高等教育進学率は80%,前後とみられ る。すでにいわゆるユニバーサル段階にあるといってよい。 表1 高等教育機関の構造と進学率 1r 国 緑 園 台 湾 (2 0 0 4 ) (2 0 0 4 〕 (2 0 0 3 ) 大 や :短 期 高 等 教 育 機 関 (学 生 比 ) 6 : 4 7 : 3 8 :2 高 等 教 育 進 乍 率 15 % 前 後 ■島校 卒 業 者≠ 用 1.3 % 約 6 1 %. ほ 0 07 ) (i・上)短期高等教育機関には大下の短期課程ツ牛も含む.韓国〝)高校進学率ははば日的%になっている、 (=典)F■目礼教育統計年鑑2004三(進学率烏∵申l甘統計年鑑2006』から計算),BrierStatistics。llKorea】1Edueation2004, 『lい勘矧国教育統計2005』(進学率は教育酢インタビュー一による)【> 一方,中国は18歳人口の15%前後と推定され,ようやく人衆化の入り日にさしかかっ − 2 −
たという段階である。高校(高級中学)についても5割に達するかどうかの進学率である が,しかし,都市部と農村部の教育普及度の格差が大きく,北京市や上す毎市などの大都市 では高等教育進学率も50%を超えている。したがって,入学入試を巡る受験競争も全国 一一律に語ることはできず,大都市については我が国や韓匡巨台湾に近い事情にあるといっ てよいであろう。 (2)大学入試改革の背景 大学入試の背景として,次の3点が共通しているrJ ①受験競争の緩和と受験偏重教育の是正 進学率の向Lとともに,入学入試は一層多くの高校生を巻き込んだ受験競争へと広がり, 初等中等教育への影響もまた広範囲にわたるものとなった。大学が増え,定員が拡大され て間日が広まったものの,そのことが入学進学競争を和らげる力にはならなかった。l目玉l 韓国,台湾のいずれの匡・地域も伝統ある名門大学の地位が確固としており,これらの大 学をトノブにした大学の序列化のもとで,少しでも上の威信や評価のある人学を目指す進 写二熱はいっこうに下がらないからである。 したがって,各国・地域の大学入試改革はいぜん過熱する受験競争を鎮め,子どもたち の心理的圧迫を和らげるとともに,受験にシフトした偏塵教育を是正改善し,初等中等教 育をしてバランスある成長を促す本来目指していた姿に変えていくことが大きな目標であ った。こうした入試改革の動機は,1971年の中央教育審議会答申「今後における学校教 育の総合的な拡充整備のための農本的施策について」いわゆる46答申で,共通テストな どの提案をして以束,1990年代までさまざまな改革が講じられてきた我が国の入学入試 改革と共通するものであるrノ ②創造性や思考力を育てる教育改革 知識量の多寡をもっぱら測る筆記試験中心の選抜方式がこれらの国・地域でも長らく実 施されてきた。中国と台湾では1950年代から統一入試の成績によって入学者が選抜され, また韓国でも共通試験と入学個別の試験とを交互に変えたり,併用したりといく度か方式 が変わったが,筆記試験中心の入試であることに変わりがなかった【, このような入試のあり方に対し,受験対応型の暗記を中心とした画一的な教育を生み, トビもたちの個性や創造性,考える力などの成長が妨げられているという批判は常にあっ た。たとえば,台湾で1972年当時の清華大学長であった除賢修氏は入学入試の弊害につ いて「受験教育に偏重し,知を求める学風がほとんどない」「丸暗記型の教育に追いやった」 と警告を発している。全く同じ批判が20年後に出され,1990年代以降の台湾の入試改革 と′’ア二校教育改早:へとつながったのである‘1㌧ 中国でも,「科学技術と教育による国家振興」(科教興国)のもとで,国家の重要課題と しての教育改革が1980年代から進められ,その中で1990年代半ば「資質教育」の方針が 提起された。この教育が目指すものは,徳性や体育面を含め,チビもがもつ様々な資質を 卜分に伸ばしていこうというもので,受験対策に偏向した暗記型知識教育(中岡で り古試 教育」という)へのアンチテーゼという意味合いをもつ。資質教育は,その後,1999年6 月に共産党中央委員会と国務院が開催した「全国教育上作会議」で教育改革の最重要課題 として確認され,各段階の教育を通じた「全面的推進」が決定された。さらに同会議では
伸ばしていこうする資質の中でとくに「創造性」(創新精神)と「実践能力」の育成を重点 に掲げた(ヒ:。 韓国でも同様に,1995年5月金泳二大統領の諮問機関であった「教育改革委員会」が 新たな教育改革:の指針として「新教育体制樹立のための教育改革案」を発表,今ロまで続 く教育改革の方向を定めた。この中で,初等中等教育については,「人間性及び創造性を育 てる教育課程の改訂」や「個性を育てる初等中等教育の改善」が示された。さらに,1998 年に政権に就いた金大中大統領もこの教育改革の方針を引き継ぎ,伝統的な画一的学校教 育を柔軟でリベラルなそれへと改変し,児童生徒の多様な能力の開発と創造力の育成を目 指した「児童生徒を中心に置く」「新しい学校文化の創造」を訴えた。この方針はその後, 慮武銭政権に受け継がれ,改革が続けられている:3■■。 こうして,いずれの同・地域においても,教育改革の中で育てるべき資質・権力につい て「創造性」「思考力」「表現力」「コミュニケーション能力」が指摘され,子どものもつ「佃 性」を伸ばそうという教育目標が明確に示されることになった。このことは,「臼ら学び, 自ら考える力」などの「牛きる力」を育み,大学で「課題探求能力」を養っていこうとす る1990年代半ばからの我が国教育改革の方向とほとんど一致している。 こうした教育改革の基本方向が,大学入試のあり方にも影響したといえよう。 ③大学の多様化・個性化と裁量権の拡大 入学自体の事情の変化牽)入試改単二には人きく関係している。グローバル化や大学間の競 争的環境の形成が一一一層進み,大学の多様化や佃仕化,特色化などが促されていき,またこ のことを促進する条件整備として政府の規制緩和と入学の裁最権拡大が広がっていくとい う現象が,我が国とともに,これら東アジアの匝い地域でも1990年代を通じて共通して 起こった。 中匝Iでは,市場経済の進展とともに大学がその能力と特色を生かして柔軟に経済発展に 貢献できるようにする体制改革が進み,大学の裁量権が拡大されていった。そして1997 年12月に制定された「高等教育法」では,国公立大学の法人化も規定され,狐日の経営 体としての地位が明確にホされた。 韓国や台湾でも,国公立大学の法人化こそ議論の末実現はみなかったものの,入学の多 様化・個性化,裁量権拡大の改革が進められた。韓国は1995年の「新教育体制樹立のた めの教育改革案」で「大学の多様化と個性化」が重要項目として提起されたのを受け,大 半が教育,研究を独自に実施できる権限を拡人していった〔1)。 台湾では,1994年の大学法改止二を皮切りに大学改革が本格化し,2001年の「人草教育 【′偶」では,「グローバル化の競争と衝撃に直面し正念場を迎えた」入学の発展構想を示し, その中で「大学の自主運営機能の強化」などを提示した=㍉■。 こうした大学への多様化・個性化の要請あるいは大学臼身の経営意欲,そのための裁量 権拡大が大学自らの入試改革への取り組みとなって広がっていったのであった。 (3)大学入試改革の経緯・方向 人草入試の改革は東アジア各国・地域の長年にわたる教育課題であり,社会的関心の高 い政策課題であった。このために,これまた長年にわたりさまざまな議論がなされ,ある いは改革の試みがなされてきたが,今日につながる入試改革二の動きが顕著になったのは, 一4−
いずれの国・地域においても1990年代の半ばから2000年代初めにかけてであった。 この入試改革では,学生に求める資質や能力に対し従来型の筆記試験によって証明され る学力を超えて「創造性」や「論頻的思考力」「問題分析能力」「表現力」などが一層強調 され,このための選抜手法として血接や小論_文,高校の活動記録,学校外の各種活動・コ ンクールの成績,学校の推薦状などを放り入れ,さまざまな面から学生の資質・能力を判 定しようとする方向に各大学がけりかっていった。また,共通試験でもこうした能力を測定 する出題を工夫するようになっている‖ 後にみるように国り出城によって程度の差やそれ ぞれの特色がみられるものの,農本的な方向には人きな違いはない。 これを整理すると表2(7)ようになる。 表2 大学入試改革の経緯と基本方向 中 【t l 帥 体】 台 湾 繹 昨年 19 5 2 や調 練 一入 試 開 始 19 9 4 大 学 修 ツ 能 ノノ試 験 19 5 4 統 一入 討こ開 始 19 8 4 推 薦 人 ツ 開 始 特 別 選 考 ・随 時 募 集 開 始 19 9 4 推 薦 人 乍 開 始 19 りり 巧 門 数 育 今 而 推 進 が)決 定 19 9 5 「新 教 育 休珊 」樺トンこび)た め 〝) 19 9 f) 「数 台 改 単二線 審 読 経 作 手 」 (創 造 性 ∴実 践 能 力 の 点 視 ) 教 育 改 革 案 」 】9 9 9 多 元 人 草 ノノ ̄案 2 0 (ほ 生 し 統 ■入 試 :1 + X 」 】9 9 7 総 計 ■㌢ L 生 渚 記 録 簿 〝)採 Jt」 2 川)2 連 合 人 .武 の 廉 1ト ー多 元 入 学 万 人 を 全 国 実 施 推 傭 人 2 0 0 2 選 抜 狩 糾 び)採 川 ・配 分 比 は (試 験 配 分 入 学 ・入 学 独 【」】迷 ′11:こび)l 狩 格 要 件 厳 格 化 人 ノ■ハ 叫 権 限 に 抜 )J )実 施 2 0 0 3 独 口 車 前 選 抜 机 試 て」 ̄聞 始 k T 二1 リ  ̄)′T 二科 試 験 辛 而 禁 (2 2 人 サ ) lL 怯 ・全 1項 龍 ・人 証 を 武 本 F■11」に 維 4■−f ▲般 速 考 と 特 別 選 考 , 定 時 ち‡集 ・多 元 人 ′■7=に よ っ て 統 ▲入 試 を 塵 本 し な が ら推 薦 人 草 ・独 = 事 前 速 と 随 畔 幕 張 を 組 み 合 わ せ , 人 手 11二, 入 学 ご と J )選 抜 万 法 ・評 価 ノノ 抜 に よ り 人 て:ご と の 多 様 化 を 導 ご と の 選 抜 〟 法 ・評 価 基 準 を 多 基 準 を 多 様 化 向 人 ・推 進 様 化 ・ 試 験 乍 力 以 外 に 児 考 力 ・闘 越 ・試 験 ノ、〕ニ:力 以 外 に 思 考 力 , 問 題 ・試 験 ノ、)J:力 以 外 に 思 考 力 ・問 題 分 分 析 惟 力 等 を 重 視 す る 傾 l項 分 析 能 ノ月 沌 牒 胡 守 る 傾 向 析 催 力 ′芹 を 重 視 す る 傾 向 ∩ ・加 育 「ト トの ∫受験 偏 重 教 育 〃)是 ・知 育 「†1心 相 良 験 偏 重 教 育 折 是 正 ・加 育 中 心 の 受 験 偏 重 教 育 是 lL ヒ 的 l巨 ヒ持 田 教 育 の 推 進 と 高 校 教 育 の 正 常 化 (個 性 の 伸 長 ) 試 験 文 化 か ら ゾ ̄)脱 却 ・人 ノブ:〝〕束 め る 学 生 げ)選 抜 ・大 半 の 求 め る サ 生 〝)選 抜 ・人 ′了:の 求 め る 下 士 げ〕選 抜 ・多 様 化 す る 進 学 需 ■熟 に 灯 応 ‥受 験 者 ♂ ̄)多 様 な 背 景 ・能 力 適 性 へ の 配 慮 ・受 験 者 の 能 力 適 性 に 応 じた 進 学 2.各国・地域の入試多様化 (1)大学入試の概要 大学入試の概要は,表3に示したとおりである。一・般選抜,特別選抜の区分は,中国と 台湾の場合,それぞれの国・地域が自らいっているわけではないが,便宜上,一般の受験 ′トを対象にする試験選抜を一般選抜,特定の資格要件や推薦を必要としたり,対象を限定 したりする試験選抜を特別選抜として筆者が区分した。 中国は1952年から実施している全国統一入試の成績を主たる判定資料として選抜する 方式が,現在もなお大多数の入学者の選抜方式となっている。特別選抜である推薦入学及 び独白事前選抜については,一定の要件をもつ受験者に対し,各大学が独自に定める選抜 方法・評価基準で一般選抜より前に入学者を選抜する。推薦入学は全国で5,000人程度を 想定した資格要件を国・地域が定めている。独自事前選抜は試行段階とされ,2003年に22
入学で開始し,2006年は53大学で実施,さらに入学定員は原則総定員の5%,以内とされ ており,推薦人学,独自事前選抜とも実施大学及び入学者の数はまだ非常に少ない。しか し,実施大学は北京大学,清華大学,復旦大学大学など伝統ある威信の高い大学であり, 什会的注目度や高校教育に与える影響は小さくない。 韓国は,「一般選考」と「特別選考」に分けて実施しているが,ともに選抜資料として何 をどの程度利用するかはすべて大学に任されている。ただし,入学独臼の学科試験は受験 競争を助長するとして禁じられている。一般選考では,共通試験である「入学修学能力試 験」と学業成績や活動,特技などについての総合的な調査書である「総合学生生活記録簿」 が利用される。また,一部の大学では小論文試験または面接試験が実施される。特別選考 は特定分野に才能をもつ生徒や社会的に不利な立場にある生徒など特定の対象について, 書類選考や面接などを通じて入学者を決定する。また,募集時期が多様になっており,11 月から2月の「定時募集」は3グループに分かれ,また定時募集の前に7∼8月,9∼12 月に2度募集する「随時募集」が行われる。随時募集では特別選考の方式をとることが多 い。特別選考は全人学者の3分のl程度を占め,広がっている。 台湾が2002年から実施している「多元入学」では,従来の連合試験による選抜の流れ をくむ「試験配分入学」と大学が独自の選抜方法と評価基準を設ける「独山選抜入学」の2 種類の選抜が行われている。前者が共通試験である「指定科「†試験」により大学が決定さ れる一般選抜であり,後者が学校推薦と日己推薦をもとに共通試験の「学科能力検定試験」 で一次選抜した受験生を大学の個別試験によって選考する。全人学者の2割が入学ごとの 独自選抜入学によって入学している。 表3 大学入試の概要 l 国 韓 阿 湾 般 選 抜 i二と し て 仝 [封統 一入 試 の 成 績 ( 一般 選 考) (現 行 ) 2 0 0 2 ∼ (試 験 配 分 人 サ ) 2 0 0 2 ∼ に よ り 各 人 ′T が 選 抜 19 5 2 ∼ ・総 合 、巧 ミ/ト活 記 録 簿 , 大 字 ・統 一一一一試 験 (指 定 科 目 試 験 ) 〝) ・や ri]5 0 0 ノり ̄入 り)入 学 宵 ほ と ん 修 サ 能 力 試 験 及 び 人 ′羊 別 考 成 糸鋸 こよ り ノム望 人 草 に 配 分 ど が 一般 選 抜 で 人 ′、予 査 (面 接 ・論 述 等 ) に よ り ・人 草 は 受 験 料 11 3 ∼ 6 を 指 定 入 学 が 選 抜 ノ1】こ数 も _重 み 付 け す る ・全 人 学 者 の 約 3 分 の 2 ・ 全 人 学 肴 の 約 4 分 折り 特 別 選 抜 日 推 旅 人 芋 l兆 4 ∼ (特 別 選 考 ) 19 9 4 一㌧ (独 自 選 抜 大 子 ) 2 0 0 2 ∼ ・人 ‘了:が 筆 記 試 験 , 血 接 写 に 上 ・特 異 な 能 力 を も つ 学 生 , 杵 ・学 校 推 薦 と H J 推 薦 畑 選 抜 会 ・経 済 的 に 不 利 な 、■/二揚 げ) ・統 ■試 験 (ノ17 :科 能 ノ」検 定 試 験 ) ・全 円 で 5  ̄「入 札 軋 ′、iJ=牛 を 対 象 で 】次 選 抜 2 ) 独 自 一斉前 選 抜 2 0 0 3 ∼ ・ 書 類 審 査 , l痛 宴 な ど 人 乍 独 ・二次 選 抜トは 人 ′■7二ご と 〝〕ノバム ・ ・人 手 が 書額 審 査 筆 記 試 験 , 日 の 方 法 ・基 準 で 選 抜 基 準 (器 類 箇 骨 . 面 接 1 筆 面 接 等 狙 Ft川 )ノナ法 農 準 で 選 抜 ・全 人 学 片 〝〕約 3 分 〝日 記 試 験 等 ) で ′実 施 ・原 則 入 学 定 口 の 5 % 以 内 ・全 人 ′、r:首 が)約 2 割 】 川‡)韓国は,試験時期によ畑土定時募集(jグループに分ける)と智随時募集(近時募集の前にぷ施)の2捕類 がある。随時選抜は ̄i三として牛鍋り選考, (2)共通試験 中国,韓国,台湾のいずれにおいても共通試験を実施し,選抜の資料としている。その 共通試験についても衣4に示すように,従来の画一▲的な教科知慮を試す試験から脱却し, 一 6
多様化・個性化あるいは思考力や知識応用力,問題分析能力といった能力を測る要素を取 り入れる試みがなされてきている。 表4 共通試験 中 岡 韓 国 台 湾 持適 試 験 全 州 統 一一人 試 大て:修 学 能 力 武儀 学科 能 力 検 定 試 験 指 定 科 目試 験 日952 ∼ ) (】994 一し) (1994 ∼ ) (2002 ∼ ) 川 越 般 選 抜 上 と して ■般 選 考 独 lf1選 抜 ・ ▲部 大 字 の 試 験 配 分 入 学 の ▲次 選 抜 試 験 配 分 入 学 多様 化 試 験 科 目 「3 + Ⅹ」 で X 試 験 5 領 域 の うち 3 領 域 人 ′■〕∫:ご と に選 抜 資 9 科 目 の う ち入 学 は地 ノノ ̄・大 学 が 選 択 (2002 で 大 学 の 指 1王に よ り,科 料 とす る 試験 科 目, リ)指 に に よ り 3 ∼ 、) 地 JJ‘単 独 Jll越 (2004 ∼ ) 半数 び)肯 ・市で 実 施 H を選 択 受験 配 点 を決 定 6 科 トい受験 太 字 が 成績 に 重み 付 け 忠 考 ノ」等 総 合能 ノノ試 験 の 美 施 教 科横 断 的 な 川 越 (韓 「云l語 各教 科 の 基 本 的 内 荘 川 力 , ぷ 呪 力 等 の 判定 (2002 ∼ ) 教 科 横 断 (丈 ・失言才子) 容 〝)習 得 度 を 試 験 リ)試 験 を 目的 に , 科 で 2 割 ),記述 式 Lt腰 = 4 酎 内〝卜 ▲つ 「高 い 思 考能 論 述 式 問題 も山 越 割 ) 等 力 の試 験 」 は 多 岐 選 択 式 で は l;艮界 も)。 (3)個別大学における入試の多様化 共通試験においても多様化・個性化の改革がみられるが,個別人草においてこそ入学者 選抜の多様化,個性化の改革が進んでいる。 中岡では「推薦入学」と「独自事前選抜」について個別入学が独自の選抜方法や評価農 準を設定し,入学者を決定するようになっている。推薦入学は1980年代から,独自事前 選抜は2000年代になってから実施されているが,ともに実施大学や募集対象はきわめて 限られた範囲に止まっており,全国統一入試による入学者選抜という基本的な構造を変え るまでの普通はしていないn とはいえ,実施大学は北京大学や清華大学を始め,威信のあ る大学であり,社会的な注目度は大きく,受験生や高校教育への影響も小さくない。 韓国では,個別入学で学科試験を実施しないなど一定の条件はあるが,一般選考,特別 選考ともにどのような選抜資料を採用するか,合否決定のたガ)の評価基準をどう比率配分 するかなど一切が大学に委ねられるようになった。制度の上からは,最も多様化・個件化 が実現される形になっている。 台湾では,「試験配分入学」でも大学が受験科目や成績の重み付けをするなど,大学の方 針や特色が反映されるようになっているが,もう一一一つの選抜方式である「独自選抜入学」 においてより大学の個性が発揮されるようになった。独自選抜を通じた入学者は2006年 で約2割程度であるが,教育部はさらに4割程度まで増えることを期待している。大学が 独自に選抜方法や評価基準を設定して自ら選抜する「独自選抜入学」は,大学がほとんど 入学者決定に関与してこなかった台湾の入試において,画期的な改革であるといえる。 このような大学ごとの選抜方法,選抜資料の採用のあり方については我が国もほぼ同様
であり,その組み合わせや配点基準の設定などは,それぞれの国内でも多様である点も基 本的には変わりがない。 表5 個別大学の入試多様化 † 「lヨ 韓 同 湾 入 試 区 分 推 魔 人 乍 (19 8 4 、 ) ・般 選 考 (規 子り 特 別 選 考 独 rJ 選 抜 人 」、ir:(2 0 0 2 ∼ ) 独 自 事 前 選 抜 (2 0 0 3 −−) (2 0 0 2 一一) (19 9 4 、一) 尖 施 大 サ (推 薦 人 サ ) 全 人 甘 辛 国 人 てこ者 の 射」3 全 人 乍 仝 人 て二者‘の 約 3 結 集 車載 二(′■ト科 丹 )8 5 ワ′ム 定 員 全 人 学 (実 際 は ご く 一 部 ) (2 0 0 4 ) 対 象 者 は 全 国 5 1 ・人 程 度 全 人 Jlir:省‘リ)約 2 割 (独 t′」事 前 選 抜 ) 5 9 大 学 (2 0 0 7 ) (1 割 弱 ) 実 施 人 草 の 定 員 5 % 以 内 分 り)2 分 り)】 対 象 (推 薦 入 学 ) 大 学 入 学 費 格 の あ 1)特 定 の 分 野 で ツ 校 推 薦 サ カ コ ン ク ー ル 成 績 な ど る も の す べ て 特 異 な 能 力 「1 J 推 薦 厳 格 な 要 件 (独 自 事 前 選 抜 ) 大 学 ご と に 要 件 を 規 定 2 )社 会 経 済 的 に 不 利 な 立 場 人 乍 が 対 象 設 定 大 学 ご と に 要 件 を 規 定 t な 選 抜 独 日 の 学 科 試 験 総 合 苧 牛 ′卜才舌記 録 総 合 学 /ト 生 活 記 甘 利 能 ノ 検 定 試 験 ( 一次 ノノ‘法 血 接 試 験 簿 録 簿 選 抜 及 び  ̄_次 選 抜 ) 〆て=短 (烏 己 絹 介  ̄書 , 指 1上 大 や 修 ノア:憶 力 試 験 小 論 文 苦難 (什 伝 , 予 習 計 i軋 テ ー マ へ の 陳 述 , キ 校 推 小 論 文 面 接 将 来 び)希 望 ,推 薦 状 な ど ) 環 状 , 受 賞 歴 な ど ) 挿 ̄汗左 吉 相 (「1 己 紺 介 年, 肺 !貯 伏 , 受 賞 雁 な ど ) 血 接 小 論 文 独 [ の 乍 科 試 験 思 考 ノ」等 難 度 げ〕高 し、云■J 述 」−しの ∫■㌣ 科 小 論 文 ・面 接 (深 小 論 文 ・l砧 陵 〔深 ‥’t蘭 や 小 論 文, 難 度 の ■たj の 評 価 試 験 , 面 接 試 験 な ど で 弔 屑 面 接 ) で 重 視 屑 面 接 ) で 重 視 い .‡亡述 べ の 予 科 試 験 な ど 視 で 重 視 合 否 の 判 ■次 選 抜 は 書 類 選 考 が 多 小 論 文 ・血 は ゾル ヒ 総 合 草 牛 ′寸二活 .三 ̄J ′芋 科 偉 力 傾 定 試 験 , 血 は , 走 基 準 い 重 は 小 さ い 録 蒲 を トに , 小 面 接 書 類 が 「ト し、′♪ 小 論 ′■≠:糾 試 験 と 面 接 に 上 り判 日 ∼ 2 割 ) 論 文 ま た は 面 接 , 丈 , ノ;ご二科 試 験 を 美 施 す ろ 定 す る 大 ‘■ハ け 楊 合 (面 接 4 、 6 割 ) 書 類 評 価 を 加 味 と こ ろ ‡)あ る 、. 3.考察 以上の各国・地域の入試多様化の進展に焦点を当て,その具体的あり方を比較しながら 概観した〔〕これを踏まえ,我が国との対比において,改めてその共通性や相違点,特徴な どを考察してみたい。この考察を通して我が国の入試多様化や思考力,表現力を重視する 選抜のあり方について,課題を探ってみたい。 (1)入試多様化の狙いと手法 入学入試の改革が共辿試験の実施方法を含めて「多様化」「個性化」に向かっており,さ らにその多様化・個性化においては入試選抜の過程で重視する受験生の能力資質に従来型 の教科学ノ」ととも思考力や表現力を重視し,このために各人学の個別選抜にさまざまな創 意二1二大を重ねるようになっていることはみてきたとおりである。この方舟「生はいずれのl司 − 8 −
・地域も共通しており,我が国もまた同様である。 では,なぜそうした方「占】を目指すのか,といった改革の狙いについてはどうであろうか。 これもいくつかの共通性がみられる。第一にあげられるのは,受験競争の緩和と受験偏重 教育の是正,初等小等教育改革への促進効果である。東アジアという儒教文化圏の中にあ る申札 韓同,台湾そして我が国は,学問による立身H世という共通の伝統的価値観に加 え,早急な近代化への需要に応える効率的な人材育成の課題に直面して試験選抜による優 秀な人材の確保とこのための教育を行ってきた。このことが蛾烈な受験競争を生み,その 競争が高校を始め初等中等教育をして受験シフトの教育を余儀なくさせ,子どもへの心理 的圧力と受験科目への偏向した教育を牛んで健全な発達を妨げてきた,といずれの同・地 域でも長年指摘されてきた。この積年の課題に対する一一一つの回答が多様化と個性化であり, 知識暗記型対応の筆記試験を越える入試方法の開発推進であった。 また,初等中等教育においても受験教育を克服し,変化や競争の激しい時代を生き抜く 新たな学力や人間像を模索する教育改革の中で,創造性や思考力,表現力あるいは個性と いったものをより一層重視する議論が支配的になった。我が国の「牛きる力」,中国の「資 質教育」,韓国の「児童中心の」「新しい学校文化創造」,台湾の「試験文化を脱した教育の 現代化lなど,いずれもそうした議論の結見牛まれた改革理念である。我が国が「生きる ノ日 を育てるには,受験競争の緩和によって「ゆとり」を初等中等学校に生まなければな らないとし,そのための多様化であった。入学入試改革はこうした初等中等教育改早:の推 進効果を期待された。 第二の共通点は,そのような創造性や思考力,表現ノ」などの資質能力を大学自体も受験 生に求めるようになっていることである。とくにリーダーを育てる研究中心型の伝統大学 ではこの傾向が強い。入学の競争が激しくなる時代にあって大学が個性を発揮し,教育研 究を一・f副舟卜牛化・高度化していくために,さらには厳しい国際競争にさらされる産業界か らの人材育成の要請に応えるために,こうした資質能力が今まで以上に必要になっている という認識はどの同・地域にもある。 個性化の狙いにおける第三の共通点は,高校の普及と入学進学率向上に伴って学力や興 味関心など多様な背景をもつ高校生が,自らの能力と適性,興味関心に従って大学を選択 できるようになる,つまり一方的な大学側からの選抜ではなく,高校生自身も大学や学部 学科を主体的に選択することが期待されていることである。我が国では平成19年度に志 願者の数と仝周の入学定員がほぼ同数になる「希望者全入」が予想され,「高校生と大学の よりよい相互選択」が入試において強調されるようになった。進学率の上昇によって「全 入時代」はやや先に延びたが,状況として受験競争はそれほど厳しいものではもはやなく なり,代わって「高校牛と入学とのよりよい選択」という性格が入試多様化の中で 一層強 調されるようになった= 我が国を上阿るような急速な大学進学率を達成した韓国や台湾でも,同じように「受験 生がl」らの能力適性に従って大学・学科を選択できるになること」が強調されているrノ し かし,高い進学率のため「希望者全入」はまだ先のこととされ,一九高い進学率の影で, 大学の階層性が確固としており,少しでも評価の高い入学を目指しての競争はなお沈静の 様了一をみせない。この点は,我が国とやや事情を異にしている。また,中国ではまだ相互 選択という意識は薄い。進学率がなお10%台という背旗がこの相違をもたらしていると −9−
みられ,「受験生は選ばれる立場」(高校副校長)として多くの高校生が受験競争に挑んで いる。 (2)多様化の進展度合い 多様化・個性化に向かう各国・地域の大学入試改革おいて,それではその具体的措置の 推進状況,いわば「多様化の進展度合い」については各国・地域で違いが見られるだろう か。 これについて結論から先に言えば,多様化の進展度の高い順に, 我が匡い韓国 > 台湾 > 中岡 という並びになろう。 共通試験では,我が国の大学入試センター試験は科R数が多く,その受験科目も入学や 学部学科がそれぞれ非常に多様な求め方をしている。韓国でも選択の幅を持たせている。 また,その結果をどのように利用するかも制度上大学に委ねられている。これに対し,台 湾の2種類の共通試験のうち,学科能力検定試験は5科目すべて受験が義務づけられ,指 定科目試験も3∼6科目の範囲で指定しなければならない。中国の全国統 一入試も受験生 の選択幅は小さい。 選抜方法の区分についてみても,我が国と韓国は,推薦入学やAO入試などについて「2 月前の選抜には学力検査をもちいない」(我がLt」)(文部科学省高等教育局長通知),一・般選 考と特別選考いずれも「個別大学の学力試験を禁止する」(韓ri三1)という岡の指導や規制が あるものの,基本的には大学ごとに非常に多様な方法の組み合わせと某準によって選抜が 行われている。最も多くの入学者を選抜する一般選抜では,我が国(とくに前期日程)と 韓国いずれもなお筆記試験を主たる選抜資料にしているが,それでも我が国では入学ごと の個別試験が多様に実施され,韓国でも総合学生生活記録簿や血接試験の採用,さらには 一部大学での小論文試験の採用もある。 これに対し,台湾では依然として共通試験の使用が義務づけられ,各大学が裁量できる 独白選抜も共通試験の一一一・つである学科能力検定試験が一次選抜,∴次選抜でも用いられて いる。試験配分入学では,指定科目試験が大学ごとに指定科目,点数配分が異なるとはい え,唯一の選抜資料となっている。中国では,全国統一入試による一般選抜が,推薦人学 を除く,すべての受験者に適用される。推薦入学は厳しい資格要作が試せられ,全国5,000 人程度の受験生しか対象にならず,独白事前選抜も実施大学が50大学あまり,と4年制 大学の1割にも満たない。定員も原則5%以内とされる。 こうしたことから入学入試の多様化・個惟化は,我が国についていえば,東アジア諸国 ・地域のなかでも,比較的進展しているといえるのではないか。 (3)思考力,表現力の判定と学力の担保 それでは,その多様化・個性化の進む大学人講において,遭、考力や問題分析能力,表現 力といった資質能力の判定を重視する試験方法の実施はどの程度広まっているのであろう か。また,思考力や表現力を重視する試験選抜,とくに面接試験や書類選考などを含む選 抜方法について常に問われる,いわゆる基礎学力の担保はどのように配慮されているので あろうか。 10
上述のように,多様化・個性化の狙いの一一一つは思考力や表現力といったこれまでの筆記 試験で測定が卜分できない資質能力を試験することであり,我が国を含め,このために血 接試験や小論文,高校時代の学業以外の活動歴・表彰歴,教師や専門家の推薦状などの苦 熱こよる審査といった方法を多様に導入している。この組み合わせや基準の置き方が大学 の入試多様化を進める力にもなっている。実施大学の割合や定員の配分など,さきにみた いわゆる多様化・個性化の進展度合いに違いがあっても,この思考力や表現力重視の傾向 とこのための選抜方法の採用において,各国・地域にそう人きな相違はない。 (ただし,共通試験においては,中国の「総合能力試験」のように教科横断的な出題を 含む複合教科の試験問題を__l二夫しているところもあり,また韓国の韓国語・英語でも教科 横断的内容を山題しており,さらに台湾の指定科目試験でも非選択式の問題も一定割合配 分している。この非選択式,記述式出題は我が国の大学の個別試験で_1二人されている。) しかし,一方で,そうした選抜方法の導入には,従火筆記試験で確認してきた学ノ」はど のように扱われるかという関越が必ず伴って出てくる。この問題については,各国に差が 出ている。 韓匡=こついては,筆記試験による学力測定という方法が非常に後退している。個別大学 における筆記学力試験は2002年以降国公私立すべての人草において禁じられているから である。したがって,各大学は共通試験である大学修学能力試験を唯一一の学力確認のため の資料として一般選考などを中心に活用している。しかし,大学修学能力試験以前に選考 する随時募集(総定員の約半数)では,仮合格後試験結果を合格要件とする入学が一部あ るにしても,多くは書類選考や面接,小論文によって選考している。ここでは,筆記試験 の結果は利用されない。 一方,約2割の入学者を選抜している台湾の独自選抜入学(甑選入学)では,一一一一次選抜 及び大学ごとの__二次選抜いずれでも共通試験の学科能力検定試験を採用し,さらに二次試 験で独自の筆記試験を実施する入学・学科もある。中国でも,推薦入学や独自事前選抜で 入学ごとの選抜には独自に水準の高い筆記試験を実施しているところが多く,独自事前選 抜ではさらに全国統一一一入試の受験と 一定の成績を最終合格の条件にしており,筆記試験へ の依存度はきわめて大きい。また,推薦入学や独臼事前選抜の入学者は,現在のところ, 捕縄に少なく,大部分の入学者は全国統 一入試の結果を主たる資料として選抜されている。 表6 学力担保への配慮 日 本 一 日 緯 L±」 む 湾 般 入学 入 試 セ ン ター 試 験 李「司統 一′入 試 に 上 り ⊥ 人 草 修 学 能 力 試験 を 人 指 定 科 口証 験 に よ り選 及 び 人 乍 独 H の 筆 .1 ̄己試 に 選 考 、十リノ人手 が 選 考 賢 料 に 考 、 人手 配 分 選 抜 験 に 上 り 巨に 選 考 桜 川 。 大 てこ個 別 筆 記 試験 は 禁 止 特 別 2 Jj以 前 は 大 ノ芋j虫白 の 多 くゾ)入学 が独 l車ハ筆 人草 個 別 の 筆 記 試 験 は 学 科 能 力 検定 試験 を ・ ′、r=力検 査 は 実 施 しな い 記試 験 を ′実施.、 禁 止∧ 次 ・ 二次 選抜 に採 肌 . 選 抜 ▲郎 で 大 学 入 試 セ ン タ 全国 統 ・入 試 の 一定 成 部 で 人草 修 学 能 ノJ試 一 郎 人手 で は 入 学 独 山 ー 試 験 を 利 川 続 を 合格 要 件 に (独 白 事前 選 抜 ) 験 を 選 考資料 に 採 川 の 筆 記 試験 を 実 施 11
このようにみると,先に見た多様化の進展度と筆記試験による学力担保の度合いは,反 比例していることが分かる。韓国では,個別学力試験を大学に禁じているため,入学は「深 層面接」など口述試験ともいえる面接試験や論述試験を実施し,学力の程度を測ろうとし ている。しかし,また一一一一方で修学能力試験の点数を段階表示にし,選抜への利用度を低め る改革を2008年から予定している。こうした改革はとくにソウル人草など高い威信をも つ研究型大学に評判が悪いr÷ 韓国では学力の確保が大きな課題となっている。 我が国の場合,多様な選抜方法の開発・実施という観点から,2月以前に71二う推薦入学 ・AO入試では学力検査を課さないよう国の指導がなされているが,その場合,大学入試 センター試験の成績を参考にする大学も少なくない。しかし,面接や書類審査のみで合否 を決定する大学があり,学力の担保という点から問題視する声もHJている。 2008年1月,中央教育審議会大学分科会制度・教育部会に提山された「学士課程教育 の在り方に関する小委員会高等学校と大学との接続に関するワーキンググループ」の「議 論のまとめ」では,入試多様化における推薦入学やAO入試の普及とともに「学力イ二間」 の選抜が広がっていることを問題とし,学力検査の実施を強く訴えている。 こうした学力不足の問題をめぐって,AO入試を見l自二す大学も出始めている。学ノノ担保 のためにどのような試験を採用するか,採用する場合にどの程度の割合を判定に反映させ るべきか,我が国の推薦入学やAO入試にとっても大きな課題である。 (4)公平性の問題 筆記試験の成績による選抜が長年支持され,今も支持する人々が掲げる大きな理由の一一・ つは点数による結果の明確さ,客観性にある= 反血,血接試験や小論文,書類審査に「わ】か って絶えず投げかけられる関越はその客観性,公平性への不安と疑問である。入試の個性 化,思考力や表現力の判定の重視によって導入されたこれらの筆記試験以外の選抜方法に 対し,各国・地域ではこの問題はどの程度認識され,どのように対処しているであろうれ 入試の公平性についての議論は,実は,さまざまな観点・アプローチの方法があり,何 をどう公平と判断するかはそう簡単ではない:〔’一。しかし,ここでは一一般に入試についてい われている選抜方法・評価基準の妥当性,いわば選抜過程における公平性に/〕いての受験 生の捉え方に基づいた議論に焦点を当てる。 長らく筆記試験中心の選抜方法を中心的な入試方式として尖施してきた煎アジアの中 国,韓国,台湾にとって,この公平性の問題は受験生や保護者,教師の,さらには社会全 休のといってもよいほど大きな関心であった。そのため,近年,人草入試の多様化・個性 化とともに導入され,普及してきた面接を始めとする筆記試験以外の選抜方法に対し,非 常に人きな関心とイこ安を示している。今回の調査を通じて,いずれの国・地域もこの公平 性の問題が非常に大きく意識されていた。. それゆえに,例えば,中国では推薦入学や独白事前選抜の意義を認めながらも,その導 入や普及に際し,非常に憤重な態度で臨んでいる。推薦人学は,学科コンクールでの入賞 歴など非常に明確な応募要件を定めているし、独白事前選抜について汀.導入に当たり,教 育部は,「全国統 一入試における一一一一定の成績」を堅い条件としてつけた。そして,2006年 度入試でこの要件を外し,主として面接試験をもとに合弁決定をしようとした上海rFrの復 一12
旦入学やと海交通入学に対しては,なかなかこの選抜方法を認めようとしなかった。最後 は両人学の強い意向に押し切られたが,両大学が新たな入試方法を公表すると,今度は社 会から公平性への強い不安の声がⅠ∴がった。政府教育部には全国統一入試を主たる選抜基 準とする入試の骨格を変える意向はなく,独日事前選抜の「試行」は今後拡大しても,全4 年制大学の15%程度,100大学余りまでしか考えていないと明言している。実施するだ けのノノのない大学が実施すれば,公平性が危うくなるという考えである。また,推薦入学 ・独日事前選抜いずれにおいても独日の筆記試験を実施し,人きな割合を総合点に反映し ている入学は多い。 韓国でも,多様な選抜應準を入学が独自に迷択できるとしながら,・般選抜では大学修 学能ノノ試験に重きを置いた選抜方法をとる大学が多い。並行して採用されている高校の総 合′学生生活記録簿は絶対評価のために多くの生徒に優秀な成績をつけられて選抜機能を果 たさない,また,小論文を実施する大学は大学修学能力試験で受験者に人きな差のつかな い伝統大学40校ほどに限られているという。 台湾においても,利汗l選抜入学(甑選入学)に対する公平性への疑念や不安は大きい。 面接試験に対して入学日身もこうした疑念や不安に対処し,異議申し立てがある場合に備 えて,面接試験を鈷画や録音にとったり,質疑のやりとりを詳細に記録するという大学も 少なくなく,非常に神経質になっている。また,台湾大学も独自選抜入学による入学者の 成績がよいなど,その効果を認めながら,拡大には躊躇しているし)推薦枠があるために優 秀な学校からの応募者が限られるという不公平のほかに,やはり筆記試験による選抜のほ うが受け入れやすいという評価の公平性に縛られているという担当者の話であった。. 我が[王1では,筆記試験にこだわる公平性の考え方こそが「様々な(選抜方法の)改善策の 実現を国難にし」ていると反省され,「受験生の能ノノ・適性の多面的な判定」などを進める 上でも「絶対的な公平性ではなく」「合理的に許容される範囲の中での公平性という考え方 に転換していくことが必要」と入学審議会で指摘された(2000年11月22日「大学入試 の改困こついて」)。この認識に立って,AO入試や推薦入学の推進,さらに一般選抜にお いても各大学の論理削勺思考能力や表現力等の多面的な評価尺度の採用を進める呼びかけが なされたのであった。 こうした我が国にような試験点数による「絶対的公や性」から幅のある「緩やかな公平 性」へ転換する試験観についての議論は,他の同・地域ではあまり聞かれなかった。 (5)試験の透明性・情報の公開 しかし,我が国では「公平件の観念の転換」を政府が呼びかけはしたが,面接や小論文, 書類審査などにおける公平性への疑念やイこ安に対し,さほど具体的な行動は政府も大学も 熱心にしているとは言い難い。この点では,他の国・地域に遅れをとっているのではない か。もちろん,公平性への感受性の違いやその強弱に関わるそもそもの受験競争の厳しさ の違いを考慮する必要はあるだろう。 中国,韓L軋 台湾の各国・地域では,公平性への疑念や不安が強いだけに,それを和ら げるため,試験の透明度を高めるよう選抜基準等の情報公開への取り組みに努力している。 たとえば,面接を主にした新方式を導入し,公平性へのイこ安や批判を受けた復旦大学は入 試のホームページに独「‡事前選抜に関するq&Aを掲載し,より具体的な資格要件や出願 −13 −
資格試験の内容,面接の方法と評価の観点などを説明している。他の多くの大学も実施要 領のほか,ガイドラインやq&Aをホームページに掲載し,さらに詳しい情報を提供して いる。さらに,今回訪問調査した各人学では合否決定の農準となる筆記試験や面接の点数 及び総合点におけるその配分比率について,例外なくはっきりと答えている。この選抜基 準は秘密にされるものではなく,公表しているとのことであった。 韓国でも,一般選考であれ,特別選考であれ,各選抜基準ごとに大学が配点を公表して いる。また面接試験では,「深層面接」という特定テーマについて解説させたり,質疑応答 する血接方法がこの数年採用されている。意欲や興味関心というより曖昧な評価基準を避 け,口頭試問に近い内容の面接が客観性を保てるという狙いもあろう。小論文試験につい ても,どのような内容になるか,ソウル大学や延世人学などの個別大学だけでなく,大学 の連合組織である大学協議会も例示問題を事前に公表することにしているが,これも公叫乙 性への配慮とみてとれる。 台湾の大学独自選抜については,入試に関する入学の連合組織である大学学生募集委員 会連合会が,各大学・学部学科ごとに一次選抜に要求する学科能力試験の成績,個別入学 の試験における面接,書類審査などの選抜農準の配点,さらには書類審査や面接などで評 価する観点,例えば思考力やよ現力・コミュニケーション能力などを例示した資料を毎年 編集,公表している(『入学独臼選抜募集要項集』)。これは,2002年に開始した時,分か りにくい,公平性が保たれるのかといった批判に対して大学側が2003年からとった措置 である。また,独自選抜について狙いや仕組みを教育部や大学関係者が解説する説明会も 全土28の会場で生徒や保護者,教員を対象に「司隼から実施するようになった。 我が国はどうか。AO入試に採用している多様な選抜基準についてはホームページや説 明会を通じて説明,周知する努力はいずれの大学も怠っていない。入学入試センターも, 中国や台湾のように,公的機関として専用の入試情報サイトを設けている(ハートシステ ://www,heart.dnc.ac. /)。また,台湾の『入学独自選抜募集要項集』のように冊子に して広く利用に供してもいる。 しかし,入学によるこれらの入試情報については,評価の観点がどのようなものである かは,アドミッションポリシーを通じても抽象的にしか語らず,選抜基準ごとの配点につ いても「総合的に判定する」として明示していない大学・学部が少なくないし_,入試センタ ーの情報もこうした大学提供の情報の集成である‖ これでは,どの選抜農準が重視される か,どのような素質能力がどの程度評価されるのかが受験生には十分伝わらない。 この人′芋側の説明不足が,AO入試が入試改革の切りfい7)ように期待されながら,AO 入試に出願することにいまだためらう生徒や保護者,高校が布石ミする理巾の 一つになって いるのではないか。 思考力や表現力の判定を重視するAO入試をはじめとする入学者選抜の多様化・個性化 が進んでいるからこそ,これをきめ細かに説明する情報,なかんずく選抜基準の情報の公 開をさらに進め,透明性を高めていく努力が大学恨」に求められているといえよう。 (6)高大連携 我が国の入試多様化は,■たi校から入学への「Itj洞な移行】をいかに図っていくかという 課題の中で,「高校生と大学との相互選択」のための 一つの万策として推進された側両をも −14−
っている〔ノ 高大連携は,その入試をはさんで,さらに高校と大学双方の様々な取り組みを 促している。このl曽i大連携についての各国・地域の動きについても言及しておきたい。 我が国の高大連携という考え方は,そもそも中等教育の普及と多様化,高等教育の拡大 と多様化がともに進み,また進学率が向上してもはやかつてのような一方的に大学が受験 生を選抜する時代ではなくなったという事情からもたらされたものである。1999年12月 の中央教育審議会答申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」は,そうした 背景のもとに,高人連携の考え方を前面に押し出した。 答申は,大学入試だけにとどまらず,カリキュラムや教育方法を含めた幅広い高人連携 進めるべきだとして,次のような具体的な連携方策を提言した。 1)高校生が大学レベルの教育を履修する機会の拡大(科目等履修生,研修生又は聴講生 による学習の単位認定制度を利用。公開講他 SCS等の通信衛星教育。入学からの 出前授業) 2)学生像や教育についての大学からの情報発信(印刷媒体,インターネット,オープン キャンパス,模擬講義など多様な情報提供) 3)高校における生徒の多様性に応じた進路指導・学習指導の充実 4)多様な履修暦に対応した大学の円滑な導入教育(入学後必要な科目の入試必修,補習 授業,チューター導入) 5)相互理解の推進(「連携協議会」開催) このような方策は,高校と大学との双方が以後様々なかたちで展開してきている。 東アジアの他の国・地域はどうであろうか。 中国においては,残念ながら,このような高大連携という考え方で高級中学と入学が幅 広く情報交流や意見交換,教育やカリキュラムの接続のための放り組みを行っているとは 言い難い。高級車学の進路指導についても,専門的な教員組織としての進路指導部は一一般 には設けられておらず,教員が生徒の入学選択や受験手続き,入試対策に積極的に関わっ ている姿はみられない。大学側は優秀な学生を求めて高級中学や生徒に直接接触する機会 を持ち始めており,高校訪問や各地方の大学説明会も実施している。また,大学はl′1らの ホームページで入試情報を提供し,その情報の充実を図ってきている。しかし,進学率20 %に満たない段階では,「大学が受験生を選抜する」面が大きく,高校と大学双方向のやり とりの中で生徒が円滑に移行できるよう配慮する観点は川てきていないように思われる。 しかし,韓国や千㌢湾では,高等教育進学率の急上昇によって学生が多様化する中,我が 国と同じように,高大連携のために高校や大学が様々な取り組みを行っている。高校での 進路指導は,進路指導部のような教員の専門組織が置かれ,入学選択や入試対策のための 情報収集,相談体制を作っている。入学側からもウェブサイトや大学説明会等を通じた情 報発信,大学の高校訪問,入学開放(オープンキャンパス),キャンパスツアー(韓国)な ど,我が国でも行われている各種取り組みが盛んである。 そのなかで,韓国教育開発院(KEDI)が行っている高校と大学のカリキュラムの接続 を密接にする高人連携の研究プロジェクトは興味深い。これは個別の高校と大学とが協力 してそれぞれの要望に基づく教育を実施し,その高校の卒業生の一八・部を大学が特別選考で 受け入れる可能性を研究するというもので,2004年から構想を開始した。調査した2005 年にはまだ具体的に大学や高校が提携して教育を行う段階まではいっていなかったが,興 15
味を示す高校や入学は複数あった。プロジェクトは8年を予定している。その過程では新 たな高人連携のかたちが試みられてこよう。 (7)教育格差・社会経済的に恵まれない層への配慮 最後に,我が国ではあまり意識されていない「教育格差」や「社会経済的に恵まれない 層」に配慮した入試改単二の試みを紹介しておきたい。都市と農村の格差,貧困,障害者と いった問題への視点に立った入試改革である。 韓国で1994年から実施されている特別選考の目的は2つあるとされ,一つは特定分野 に異能の才を持つ学生の発槻・育成であり,もう一一一つは社会・経掛軸こ恵まれない学生に 配慮した進学機会の均等化である。この後者の目的のために,各大学では農村僻地出身者 や身体障害者などへの入学枠を設け,独自の選抜方法をもって入学を保証している。そう した試みの 一つにソウル大学の「地域均衡選抜」がある。ソウル大学では従来首都ソウル 地域からの入学者が圧倒的に多く,学牛の多様化という点からも好ましくないとして,2005 年からこの地域均衡選抜を開始した。.国内すべての高校が成績上位1∼2位の生徒を推薦 し,この中から総合学生牛活記録簿,日己紹介書,推薦書,面接などを通じて入学総定員 の3割弱を選抜,入学させる。与えられた環境においての学習達成度をみるという主旨で, 学校間格差がないということを大前提にしている。私立の延世人学でも,定時募集におけ る特別選考において定員の2∼5%を「職業高校出身者」「農村出身者」「障害のある学生」 にあてる選抜を行っている。 台湾の大学犯汗_1選抜においても,その目的に「特別の才能をもつ学生の入学の保証」と ともに「都市と農村の格差是正」をあげ,選抜の多様性を確保するとしている。都市に比 べて進学機会の少ない農村の生徒にも学校推薦などを通じて進学機会を増やそうという意 図がある。また,一一一般的な独自選抜とは別に,大学・学科により,学校推薦には「離島枠」 が,個人申請には「先住民枠」が設けられ,社会経済的にハンディキャップがある人々へ の配慮が示されている。 この理念をさらに進めたのが2007年度入試から実験的に開始された「繁星計画」であ る。「繁屋」とは,「多くの星がきらめく」様を意味しており,全国すべての高級中学が募 集大学または募集単位ごとに1ネ推薦でき,入学はこの中から募集定員に従って選考し, 合格者を決めていく。2007年は国立清華人草が単独で,台湾大学始め11人学が連合で募 集した。清華入学はそれまで全土300校余りある高級中学のうち50校程度からしか人′ゝ7: しておらず,この繁星計画によってより広い高級中学からの入学が期待されている。清華 入学は推薦された受験生を学科能力検定試験と在学時の学業成績とをもとに選考し,全入 学定員の約1割に当たる150人が合格した。 このような措置はアメリカの「アファーマテイブ・アクション」を想起させるが,韓国, 台湾ともに我が国を上回る勢いの進学率を達成している現在でもなお,進学機会の不均等 があるとの認識からとられた措置である。 中国でも少数民族や革命犠牲者などへの優遇,配慮がみられる。 これらが我が国に引き当てて検討すべき問題であるとはいちがいに言えないが,我が国 でも特定の有力入学に一都地域や高校の卒業者が集中している現象はある。こういう試み があることも記憶しておいて無駄ではないであろう。 16
注: (1)徐明珠「砧在人′、f二人ノ、r考試変革的転換点上」,国家政策研究基金会『国政研究報告』2001 隼(http://www.npf.org,tW/PUBLICATtON/EC/090佗C−R−090−007.htm) (2)『中国教育報』1999イド6月17日掲載「中共中央同務院関於深化教育改革全血推進素質 教育的決定」,同1999年2月25[]掲載「同務院批転教育部≪血向二十一世紀教育振興行 動計劃≫」 (3)松尾智則「韓国」,_文部科学省『諸外国の学校教育 アジア・アフリカ・オセアニア編』 (文部省,1996年)所収。.金泰勲「3.韓国」,『東アジア地」戒における資質・能力関連 資料』(lElキ教育政策研究所,2006年)所収。韓国教育部,g血C〟J/州ノ〃互ore〟,200ノ∼2〃〃2.49 餌。 (4)馬越 徹「ソウル便り」『IDE 現代の高等教育』2000年9月∼2001年5月,李 人淳 「韓国 入学改革へ競争原坪」『日本経済新聞』2002年2月23口 (5)「称村志嘉子「台湾の高等教育制度改革」,国立国会同君鯖『レファレンス』平成13年8 月号,「台湾の『大学教育政策白書』(全訳)」,『レファレンス』平成15年1月号 (6)林・倉元l両氏によれば,入試溝l」度の評価軸として,①合格の格差や機会均等など社会的 意味から公止を取り上げる社会学的アプローチ(例えば,人種,性別,親のノア:.脛など人 目統計学的な属性による格差を問題にする),②テスト理論の立場から統計′、7:的妥サト生を 問題とする心理測定的なアプローチ(例えば,教科,科目,聞題の選択によって生じる 有利小利),③個人の主観的な公 ̄lF観に注目する社会心理ツ的アプローチがあり,さらに ③のアプローチには1)結果から判断する「分配的公止理論」と2)合否決定の手続き や過程に対して感じられる公止観に注目する「手続き的公tl三群論」がある(林洋 一郎・ 倉元直樹「公汀二研究から見た大学入試」『教育情報学研究』第1号,2003)。 *なお,本章における各国・地域入試改革の具体的措掛こついては,いちいち根拠を示さ なかったが,以下第2∼4章において詳述するように,実地調査でのインタビュー,提 供資料等によっている。 17−
研究報告 「大学入試多様化の試み一成果と課題−」 はじめに 1.高等教育機関の構造と規模 (1)高等教育機関の挿類と性格 (2)設置形態 (3)高等教育の規模・進学率 2.大学入試制度の概要 (1)入試改革の変遷 (2)現行制度の概要 3.入試多様化の進展状況 (1)入試多様化への背景 (2)全l玉l統一一入試における多様化 (3)個別入学における入試多様化 (4)入学入試多様化の成果と課題 4.■料級中学における進路指導及び高大連携 5.考察 実地調香記録l(2005年) 実地調香記録2(2006年) 実地調査記録3(2007年) はじめに 中国の大学入試について,現代版科挙として多くの子どもたちを巻き込みながら熱く激 しい競争が繰り広げられていることは,我が国でも知られている。少しでも評価の高い大 学に合格することがよりよい人生を約束するかのような考え方が親や子どもに大きな心理 的抑圧を与・え,小学校の段階から受験のための知識学習に没頭する。試験の成績が子ども の毎口の学校生活を支配し,成績をいかに上げるかが親や教師の関心となっている。受験 に翻弄されるそうした学校や家庭の様子をカメラで捉えたルポルタージュも放映されてい る(NHK総合「激流中国:5年1机小皇帝の涙」2008年1月6日放送)。 過熱する受験競争に対し,中国政府も様々な対策を講じてきている。受験競争は受験の ための偏重教育を生み,子どもへの心理的抑圧,過重な学習負担によって心身の発達が阻 害されている,あるいは受験対応型の暗記中心の知識学習のためにfどもの創造性や思考 ノ」,さらには本来もつさまざまな資質・能ノ」,個性の伸長がおろそかになっているといっ た問題が長い間指摘されてきた。この問題に対し,初等中等学校では学習負担の軽減や受 験偏重教育の克服を目指して,教育課程の改単二などが進められた〔1そして,大学入試にお いても,受験競争の緩和や創造性育成のための入試改革が⊥人されてきた。これら大学入 試をめぐる改革は,教育問題のみならず,社会問題としても注目され,重要な政策課題と −19−