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韓国における行政行為の附款論と第三者保護法理

【課題】

 本編本部では、韓国における「リスク社会」の行政法学の内在的な克服のため、

行政行為の附款を用いて検討する。その射程範囲は、韓国における行政行為の附款 の機能をめぐる学説・附款の概念の分析である。

とりわけ本部では、行政行為の附款の第三者保護法理・機能的側面に関する分析 であり、これらの事案を勘案することによって、従来から支持されてきた「行政行 為論の限界」に対する行政運営上のささやかな批判をすると同時に、新たな行政法 学の体系化への準備作業として、とくに韓国における附款の法理・機能的・第三者 の利益にかかる附款の側面についての考察をすることとする。

また、第二編第一部の日本における附款の議論を日韓比較の観点から発展させて いくという意義もあると考えている。

早稲田大学審査学位論文(博士)

行政法学における『リスク介入』に関する法理の研究

はじめに    

行政法学における行政行為の附款に関する議論は、今日その重要性が強調されな ければならないが、依然として伝統的な行政行為の附款の見解に立脚しているため、

行政活動に対して効果的な機能を発揮し得る附款論の検討が十分行なわれてこなか った結果行政実務に対応しきれていない側面を有している。 

また、附款に関するもう一つの問題点は、とくにこの問題に取組む研究の実績や 関心がはなはだ貧弱であるということであると思われる。なかんずく附款の機能的 側面に鑑みると、「附従性」という特徴に注目しすぎる伝統的な附款機能理論のまま では、「説明しきれない内在的制約」がある。 

今日多様な行政課題に対し、このような附款論の状況は、行政の柔軟性を阻害す るものであり、現代的課題に対応できない。本部の射程範囲は、韓国における行政 行為の附款の機能をめぐる学説・附款の概念の分析であり、判例の展開については 別稿で論じることとする。 

とりわけ本部では、行政行為の附款の第三者保護法理・機能的側面に関する分析 を行い、これらの事案を勘案することによって、従来から支持されてきた「行政行 為論の限界」に対する行政運営上の問題点を検討すると同時に、新たな行政法学の 体系化への準備作業として、とくに韓国における附款の法理・機能的・第三者の利 益にかかる附款の側面についての考察をすることとする。また別稿1(本論文の第二 編第一部)の日本における附款の議論を日韓比較の観点から発展させていくという 意義もある。 

いかなる場面において附款の存在意義が重要になってくるのか、今日の社会の実 情を鑑みながら再考察しなければならないと思われる。実際、韓国で問題となった 事例として、韓国のロッテショッピング(株)が建設許可(第二ロッテワールド建

1 拙稿「行政法学における附款論の限界と機能論の一考察(1)」『法研論集』(早稲田大 学大学院法研論集一〇四号、二〇〇二年)一〜二九頁、並びに「行政法学における附款 論の限界と機能論の一考察(2・完)」『法研論集』(早稲田大学大学院法研論集一〇五号  二〇〇二年)一〜三〇頁を参照されたい。

早稲田大学審査学位論文(博士)

行政法学における『リスク介入』に関する法理の研究

設)を申請した際、釜山緑色市民連合(市民団体)による市民運動が発端となった1。 上記建設許可申請の内容に釜山広域市に何らかの措置を求めた事件である。環境評 価庁である釜山海洋水産庁による環境影響を踏まえた第二ロッテワールド建設は、

その周辺の交通停滞の解消目的も踏まえ、以前からあった影島(ヨンド)橋を壊し、

新しい橋梁を建設するという内容が許可申請の一部に含まれていた。一方、市民団 体は、地域経済発展のために、第二ロッテワールド建設には反対しなかったが、影 島(ヨンド)橋が文化的価値のあるもので保存・管理することを主張し、釜山広域 市に圧力をかけたのである。 

その後、釜山広域市は申請者であるロッテショッピング(株)側と条件つきの交 渉を始めた。このような状況の下、市側は、第三者たる市民の文化的利益保護の観 点から許可に附款を附しうるかどうかの検討が必要であったが、結果的に、この市 民運動により、許可につき附款が附され、行政当局での検討がなされるべきであっ たにもかかわらず、行政指導にとどまった形となった。私は、この事例を附款論に 着目して考えることとなった。 

結局、釜山広域市と事業主体であるロッテショッピング(株)の間で合意が成立 し、影島橋の保存決定と代替橋梁建設問題が解決できる方向へと転換した。すなわ ち旧釜山市庁の跡地である右建設計画は市民団体の圧力と環境専門家の意見を受け 入れることとなったのである。ロッテ側は、総面積一万四千八百㎡のなか、映画館 や娯楽施設を計画していた六四〇㎡を代替橋梁に振り向ける工事計画修正を余儀な くされたのである。(国際新聞二〇〇三年七月二日記事参照[韓国]) 

本部の構成は、韓国における行政行為の附款の議論に対する分析が中心となる。

その理論的発展の経緯をたどると、ドイツ、日本から導入2されたことが分かる。ま

1 釜山日報二〇〇三年一月二五日、五面参照。また、同新聞二〇〇三年一月二四日、三 五面[ロッテショッピング(株)が上記の橋を崩壊させる意思表明] 、釜山広域市側との 交渉によってロッテショッピング(株)は工事が遅滞されていると主張。二〇〇二年十 一月五日、三四面参照。

2 金南辰『行政法の基本問題(第四版)』(経文社 一九九四年[韓国])二五五頁参照。

金教授の右文献のなかでは、韓国における附款の概念は田中二郎博士の『行政法総論』

(有斐閣 昭和四三年)に由来していると説明されている。すなわち「行政行為の効果

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行政法学における『リスク介入』に関する法理の研究

た、韓国の判例の立場もドイツ・日本の状況と比較的に類似している1。まず、韓国 における附款の法理(附款の概観)について考察する(第一章)。それを踏まえた上 で、附款の可能性(許容性)について分析し(第二章)、行政運営の際に附款を用い ることのメリットやデメリットについて考察を加え、とくに行政行為の附款を利用 することで得られる第三者保護、行政運営の柔軟性、行政行為にもたらされる伸縮 性、さらには、従来の警察規制を超える行政庁の積極的な介入が図られることを述 べる。とくに「市民の安全性」にとって重要な食品リスク・環境リスク分野の規制 手法としての附款の意義に関して触れる(第三章)こととする。実際に行政行為が 第三者との関係においての硬直的な機能しかもたない場合が少なくないことから、

附款を用いることで行政課題に対応する(多角的構造)システムのなかの有力な手 法としてこの附款を検討する(第四章)。 

 本部は、現在の行政法学が変動期のなかにあるという現状に基づいて考察を進め ていくものであり、伝統的行政法学の揺らぎを分析する準備作業として位置づけら れる。このような行政法学の基礎的な理念の変動という内在的な動きの分析を踏ま えた上で、とくに近年、社会科学分野のみならず法学分野においても、その認識の 重要性が指摘されている「リスク概念」に基づく対応(行政介入)の必要性が、従 来の規制手法の限界を明確にするとともに、行政法学の体系の大きな変動の要因と もなっているとの認識に立って検討をする。 

行政法学における既存の規制手法であった「警察介入」に対しては、規制緩和の 観点から、その規制の程度や態様の変容が迫られ、すでに変容の一部は現れている

を制限するために意思表示の主たる内容に附加された従たる意思表示をいう。」という 概念である。

1 大法院 1992.1.21.91 누 1264.この判決では、「行政行為の附款は、行政行為の一般 的効力及び効果を制限するために意思表示の主たる内容に附加する意思表示に止まり、

それ自体が直接法的効果を発生する独立された処分ではないが故に、現行行政訴訟の下 で、附款それ自体が独立して争訟の対象にはならないということが原則であるが、行政 行為の附款のなか、行政行為に附随し、その行政行為の相手方に一定の義務を附加する 行政庁の意思表示である負担の場合には、他の附款とは異なり、行政行為の不可分の要 素でないことからその存続が本体たる行政行為の存在を前提するのみであるため、それ 自体行政争訟の対象になる」とした。