第 5 章 圧電振動子の発生力の測定および考察
5.2 静的押付力の測定 .1 測定方法
振動子を静的に押し付けたときに対象物へ与える静的押付力の測定方法を提案する.
振動子が制振対象物である片持ちはりへ与える静的押付力は,3.2節で述べたように,静 的押付量xstを変更することで調整していた.しかし,対象物の剛性や設置状態も静的押 付力に影響を与える.そのため,静的押付量から静的押付力を正確に求めることは困難 である.そこで,図 5.1 に示すように,振動子を対象物に押し付けたときに生じる板ば ねの変形に着目した.この板ばねを起歪体とし,ひずみゲージを貼付して振動子を押し 付けたときに生じるひずみを取得することで静的押付力を測定する.
板ばねへのひずみゲージの貼付状態を図 5.2 に示す.図 5.2 に示すように,ひずみゲ ージは振動子をはさむように各板ばねに2枚ずつの計4枚を貼付した.ひずみゲージに は箔型(東京計器,型番:FLA-1-23)を使用した.その仕様を表5.1に示す.表5.1に示す ようにひずみゲージのベース幅が 2.5 mm なのに対して板ばねの幅は約 2 mm であった ため,ベースの一部を切り取ってひずみゲージを貼付した.
振動子を対象物に押し付けたとき,その加圧方向に対して接触面が傾いていると,図 5.3に示すように,振動子の長手方向に対して非対称な変形が板ばねに生じる.これらで 生じるひずみを消去し,加圧方向に生じる静的押付力によるひずみのみを測定するため,
各板ばねに貼付した 2 組のひずみゲージは,それぞれ 2 アクティブ(2 枚直列)(39)で結線 した.
図5.1 振動子の押し付けによる板ばねの変形
静的押付量xst
板ばねの変形
ひずみゲージを貼付 10mm
片持ちはり(上面)
36
図5.2 板ばねへのひずみゲージの貼付状態
表5.1 ひずみゲージ
(東京計器,型番:FLA-1-23)の仕様 ゲージ長 [mm] 1
ゲージ幅 [mm] 1.3 ベース長[mm] 5 ベース幅[mm] 2.5
抵抗値[Ω] 120 ゲージ率 2.18
図5.3 板ばねに生じる非対称な変形
ひずみゲージ ひずみゲージ
加圧方向
ひずみゲージ
対象物 板ばね
ケース
振動子
加圧接触
37
板ばねに生じるひずみと静的押付力の関係を求めるため,振動子を力覚センサに押し 付け,ひずみゲージを校正する.校正試験で使用した3軸力覚センサ(テック技販,型番:
USL06-H5-100N)を図5.4,装置の写真を図5.5にそれぞれ示す.図5.4に示すように,力
覚センサは寸法が 20×20 mm と小型なものとした.この力覚センサを図5.5に示すよう に,3.2節で述べたハンマリング試験装置の片持ちはり側面に設置した.なお,3.2節に おいて制振効果の測定でははり先端から下に 5mm の位置に振動子を接触させた.本校 正試験でも,振動子を押し付けたときに,図 5.6 に示すように力覚センサの受動部が上 記と同じ箇所に位置するように力覚センサを設置した.
以上の試験装置を用いて,静的押付量を随時変更してひずみゲージからひずみ,力覚 センサから静的押付力を測定した.なお,試験回数は3回とした.
図5.4 校正試験で用いた3軸力覚センサ(テック技販,型番:USL06-H5-100N)
(a) 全体図
(b) 正面図
(c) 上面図
図5.5 ひずみゲージの校正で用いる試験装置の写真
x y
z 20mm
20mm
受圧部
X Z Y 小型3軸力覚センサ
(USL06-H5-100N)
小型3軸力覚センサ (USL06-H5-100N)
Y X Z
✕
Z X
Y
38
図5.6 振動子と力覚センサとの接触
5.2.2 測定結果
校正試験の結果として静的押付力 Fstと板ばねに生じたひずみとの関係を図 5.7 に示 す.同図の縦軸の値は各板ばねに貼付したひずみゲージの出力の平均値である.図 5.7 に示すように,静的押付力の増加にともなうひずみゲージの出力の増加を確認した.ま た,その出力はFst = 11.4 N以上の範囲で非線形に変化した.この変化は,静的押付力の 増加にともなって板ばねに対する力の作用方向が変化していくために生じたと考えら れる.
一方,図5.7の赤色で示すFst = 11.4 N以下の範囲では,静的押付力に対してひずみが 線形に変化した.そこで,この範囲に対して最小二乗法を適用し,校正値を算出したと ころ,29.63 με/Nとなった.よって,静的押付力が11.4 N以内であれば,この校正値を 用いて静的押付力の測定が可能である.
得られた校正値を用いて振動子を片持ちはりに静的に押し付けたときの静的押付量 xstと静的押付力Fstの関係を調査した.その結果を図5.8に示す.同図に示すように,第 3章では静的押付量xst = 0.01,0.05,0.1 mmの条件下で制振効果の発生を確認した.同 図より,これらの静的押付量は,静的押付力0.2,2.6,6.1 Nにそれぞれ対応することが わかる.
振動子
力覚センサ はり
静的押付 受圧部
39
図5.7 静的押付力Fstと板ばねに生じるひずみとの関係
図5.8 静的押付量xstと静的押付力Fstとの関係
5.3 衝撃力の測定