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静的動作 に関す る自己評価

V. 日米教 師の態度比較

6. 静的動作 に関す る自己評価

日本 とアメ リカの大学生 の比較 ‑

松下 清子

バーバラ A. グレゴリー シャロン L. ウェンツ

1.は じめに

「障害児教育 に関す る 日米の比較研究」 とい うことで, アメ リカのテネシー大学マーチ ン校 と日本 の弘前大学 とで3カ年 にわた る大学 間協 力研 究がすす め られて,本年度が最終年度 と なった。 この間,双方の大学の本研 究 メ ンバ ーが,互いに相手 国 を訪問 して障害児教育 に関す る情報 を得 た り,いろいろ と研究す ることがで きた。

著者 の分担課題 は,統合教育 に関連す る体育指導 に関す ることであ った。 この ことについて 今 回,障害児 に関 しては国内の調査 デー タをもとに研究 をまとめた。そ して, もう一つの研究 と して,UTMと弘前大学 の学生 を対象 として,身体各部位 の関節 の可動性 ・柔軟性 を中心 に 自己評価 して もらい,両国の大学生 の比較 を試みた。 この内容 の大部分 は,障害児 と同 じ静的 動作種 目である

日本で は,昭和38年(1963)以来文部省 の 「スポーツテス ト」が全 国的 に実施 されて来てお り 毎年 出 されているそれ らの調査結果 の報告書 は, 日本の児童生徒 の体力 ・運動能力 を知 る上で

きわめて貴重 な資料 となっている この資料が示す最近10年 間の年次推移 に見 る体力の低下 ば か りでな く,著者が担 当 している大学生の体育実技授業 において も学生 の体力低下や姿勢 ・体 の動 きが従来 に も増 して気 になっている。そ こで,著者 は動的な 「スポーツテス ト」以前 の問 題 として もっと生活 に即 した基本的な身体 の関節の可動性 や柔軟性,そ してバ ランスな どを考 慮 した静的動作 を20種 目選択編成 し,誰 もが 自分で 自分の身体 の動 きを自覚す るよう自己評価 形式 をとることに した。因みに,動的な運動 とは,筋 の緊張 (収縮) と緊張の間に弛緩が入 る 運動であ り,静的な運動 ・動作 とは,筋 緊張のみの持続 による運動 ・動作である そ して,関 節 の可動 は もちろん筋 の緊張 (収縮)が なければ実現 しない ものである

自己評価 に よるこれ らの静 的動作 であ るな らば, アメ リカの大学生 に も比較 的同 じ条件 で データを集 めることがで きる もの と考 えた。

2.調査方法

対 象 :弘前大学教育学部学生 男子 126名 と女子 129名, UTM学生 男子 57名 と 女子 112名の合計 424名である。

手 続 き :prof.S.Wenzと prof.B.Gregoryが,平成 7年 5月 に弘前 大学 に調査研 究 に来 られた際 にこの静的動作 に関す る調査 について説明 し,依頼 した。そ して, この時すでに著者 が弘前大学学生 に実施 していた 日本 人用 の静的動作20種 目個 人評価票 を,prof.Wenzの協力 を得手 て英語版 をこ しらえた。 そ こにはprof.Wenzの要望 もあって, イ ラス トレーシ ョンを つ けた。 (付表参照) その原稿 をアメ リカ‑持 ち帰 り,必要 な枚数 をコ ピー して, さらに各学 生へ の調査実施 の ための コメ ン トの プ リン トを添 えて,Prof.Wenzと prof.Gregoryの授 業 で は事前 に配布 し,後 日回収 とい う形で調査 して頂 いた。 さらに,いろいろな学生が含 まれる 方が よいで しょうとい うprof.Wenzの配慮 に よ り,社 会学 の Dr.A.Kellerの授 業 で も2ク ラス実施 して頂いた。以上の4クラスに対 しては,今 回の著者のUTM訪問の際各教室‑ 出掛 け一言お礼 を述べ た。

‑42‑

また, この時 に総合体育館 に体 育科主任 の Prof.G.Whiteを訪ね,今 回の訪 問の1つの 目 的で もある静的動作 に関す る調査 を依頼 し,方法 などを説明 して,実施終了後郵送 して頂 いた。

先の4クラスの調査票 は,訪問の際 に受 け取 り, 日本 に持 ち帰 り,後 日郵送 されて きた調査票 とを合 わせてアメ リカの大学生の資料 とした。

日本側の資料 は,著者が弘前大学学生対象 に実施 した ものである

調査 内容 :作成 した静的動作 の 自己評価票 には,最初の部分 に 日常の身体活動状況 を知 る手 がが りとして,若干のア ンケー ト項 目を加 えた。静的動作20種 目とは,紙面の都合上略記す る が (表2お よび付票参照 の こと),下肢 ・上肢 の関節 に関す る もの,体幹部の動 きに関す る も の,そ してバ ランスを見 るものな どである

これ らの動作がで きれば1点,で きなければ 0点 として,20点満点の得点 を求めた。

3

.結果 と考察

卜 1

は,それぞれの大学の学生の男女別 に身長 ・体重の平均値 な どと, 自己評価 による平 均得点である 身長 ・体重 においては,男子の方が女子 よ り有意 に大 きく, また,UTMと弘 前大 については男女 ともUTMの方が有意 に大 きいことが表1‑2に示 されている 平均得点で は,男女間では各大学 とも女子の方が有意 に高 く,全体で も男女間に有意差が認め られるが, UTMと弘前大の男子 間では有意差 は認め られない。体格 はUTMの方が大 きくとも, これ ら の静的動作性 は同 レベルにあるといえる 女子 に有意差が認め られるとはいえ体格 の差 ほど若

しくはない。

表1‑1.テネシー大マーチ ン校 (UTM)と弘前大学学生の身長 ・体重お よび 自己評価 による静的動作得点平均値 ・標準偏差 ,最小値 ・最大値 の比較

大学別 UTM 弘前大

項 目 性別 男 女

男 女

人数 34 7

9 117 128 身長平均 (cm) 180.14 166.30

172.12 159.41

標準偏差 5

.49 6.46 5.56 5.13 最小値 170.

08 152.40 160.00 147.00 最大値 190.50 185.32

186.00 172.40

人数 34 76 118

125 体重平均 (kg) 81.42 64.54

65.90 54.03 標準偏差 14.36

ll.59 10.23 6.32 最小値 65.77 46.27 45.00 38.

00 最大値 117.94 113.40 106.00

71.70 人数 57 112 126

129 得点平均 (点) 15.21 16.8

3 15.83 17.59 標準偏差 2.43 2.4

1‑2.表1‑1の各平均値の差の検定結果

[UTM]男 と女 の平均値 の差 [弘 大 ] 男 と女 の平均 値 の差 : t=10.774 p<0.001 : t=18.537 p<0.0 ; t= 6.478 p<0.001 : t=10.728(W) p<0 01

.001 : t= 4.022 p<0.001 : t= 6.525(W) p

<0.001 [男性 ]UTM と弘大 の平均 値 の差 [女性 ]UTM と

弘 大 の平均 値 の差 : t= 7.375 P<0.001 : t= 7.

099 p<0.001 : t= 5.807 p<0.001 : t‑

7.230 p<0.001 : t= 1.560 : t‑

2.689(W) p<0.01 [全体 ]UTM と弘大 の

平均 値 の差 男 と女 の平均 値 の差

: t=1.800 t=6.961(W) p<0.001

(W)‑Welchの検定結 果

図1は,得点分布 を示 している 男女の分布の

比率 についてのカイ2乗検定の結果で は,全 体で も,それぞれの大学毎で も 0.1%の有意水準

でその分布の違いが認め られるが,両大学の 男子 同士,女子 同士 とも有意性 は認め られな 。 ここで も,両大学生の静的動作

の得点傾 向に 類似性 をみ

ることがで きるii i ii , 穿 .

8 2】 21

全 体 [】]男,

[2], [T]

57

59F r テネシー大 学

ト チン校 得点

=̲;

表2 種 目別 に動作 ので きた人数 とそのパ ーセ ン ト

UTM

57 11

2 126 129

1) 55 96.5

112 100.0 12

5 99.2% 128 99.2%

2) り 座 31 54.4 85

75.9 85 67.5 124 96.1 3)割 り座 前屈 (頬杖 え) 17 29

.8 54 48.2 65 51.6 75 58.1

4) 55 9

6.5 112 100.0 124 98.4 122 94.6 5)長座前屈 (手 指つ ま先

) 48 84.2 100 89.3 113 89.7 121 93.8 6)開脚前 屈 (頬杖 え) 15 26.3 69 61.6 34 27.0

79 61.2 7)足 指離 開 42 73.7 98 87.5 72 57.1

88 68.2 8)足 指屈 曲 51 89.5 108 96.4 117

92.9 123 95.3 9)小 指離 開 54 94.7 107 95.5 119 94.4

128 99.2 10)手指 で1‑10まで数 える 57 100.0 111 99.1 125

99.2 128 99.2 ll)腕 前挙屈膝(10sec.) 55 96.5 101 90.2 1

20 95.2 126 97.7 12)仰 臥脚 上挙 (10sec.). 57 100.0 109 9

7.3 115 91.3 129 100.0 13)伸 び座 脚前挙(10sec

,). 53 93.0 86 76.8 112 88.9 123 95.3 14)胴左 右転 53 93.0 99 88.4 124 98.4 129 100

.0 15)両腕上挙 55 96.5 108 96.4 124 98.4

129 100.0 16)手右 肩左 背 23 40.4 84 75.0 104 82.

5 123 95.3 17)手左 肩右背 18 31.6 59 52.7 66 52.4

89 69.0 18)背面合掌 (指先上 向 き) 23 40.4 83 74,1 87 69.

0 112 86.8 19)右 手後左 足(10sec.) 53 93.0 100 89.3

83 65.9 99 76.7 20)左 手後 右足(10sec.) 52 91.2

100 89.3 83 65.9 94 72.9 表 2は,20種 目の静 的動作 につ いて

種 目ご とに出来 た人数 とその %である 特 に困難 な動作 と思 われ るのは,

UTM

の男子 に多

く見 られ,割 り座 や開脚 による前屈 と,肩 関節 や手首 の柔 軟性 に関す る動作 な どであ る 弘前大 の

男子 も開脚前屈 は

UTM

の男子 と同 じように

2 7

%の 著 しかで きていない。 また

UTM

女子 で は割 り座前屈が苦手の ようであるが,弘前大学生 も これは

5

0

%を辛 うじて越す程度であ る

UTM

と弘前大 とで違 いが見 られ るのは,開眼片足 立 ち

に よるバ ランス を見 る もので あ る この辺 に 日本 とアメ リカの学生 の生 活の なかでのス ポーツや

身体活動 に対す る態度 の違 いが認 め られ るか も知 れない。

また, 日頃スポーツ ・身体運動 を行 な

ってい る もの を通勤者群 と し,行 な っていない者 を非 運動者群 として得点平均値 の差 の検定 を した結果 で は,

UTM

の方 は有意差 は認 め られ で はないが13種 目中11種 目で通勤者群 の方が平均得点が高か ったが,弘前大で は 4種 目だけでるほ ど あ り,有意差 の認 め られた 2種 目では非通勤者群 の方が平均得点が

高か った。

因子得点

0.3 0.2

0.1 0.0

‑0.1

‑0.2

‑0.3 1 2 3 4

o d

U T

因子分析 は,主 因子法 によ り直交回転バ リマ ックス法回転後の因子負荷量か ら,因子4まで で単純構造 を見 ることがで きる す なわち,因子 1肩 ・手首の柔軟性,因子2バ ランス,因子 3腹筋力,因子4胴の柔軟性であ る それ らの因子 について,因子得点の平均値か らUTMと 弘前大の因子順位 を比べてみる と,UTMで は第1因子バ ランス,第2因子胴の柔軟性,第3 因子腹筋力,第4因子肩 ・手首の柔軟性 とな り,それに対 し弘前大で は,第1因子肩 ・手首の 柔軟性,第2因子腹筋力,第3因子胴の柔軟性,そ して第4因子 はバ ランス となった。UTM と弘前大では,第1因子 と第4因子 とが入れ替わっている点で各大学の学生の身体 の可動性 の 違 いが認 め られ,それは 日常 の身体活動のあ り方 に関係 している もの と思 われる

4

.おわりに

UTMと弘前大学の学生 を対象 に,著者が選択編成 した20種 目の静的動作 について 自己評価 法 によるデータか ら両大学 の学生 の身体部位 の可動性 ・柔軟性,腹筋力,バ ランスな どについ て比較 した。体格 こそUTMの学生 の方が大 きいが, これ らの動作 は生活のなかでの基本的動 作が多いためか,かな りの類似性が認め られた ものの,通勤者群 と非通勤者群 とを比べ た り, 因子分析 の結果 な どで は,それぞれの大学の学生の特性 を知 ることもで きた。

これ らの結果 の詳 しい ことは,平成8年度 の 日本体育学会で発表す る予定であ る

なお 今 回訪米で きたことによ り,UTMの学生達が これ らの動作 に対応す る場面 を実際 に 目にす ることがで き, この研究 をまとめる上 に も大変参考 になった。その中で特 に興味深か っ たのは手で1か ら10まで数 を数 える指使 いが 日本人 と全 く異 なっていた ことである 各教室で 学生の皆 さんにその場面 の写真 を撮 らせ て頂 いた ものが写真ペ ージに示 してある 文化 の違 い が動作 の違いに反映 されている一場面 と思 われるが, た また ま写真 に 日本人が一人入 っている ので比べ るのに都合が よい。写真 に見 られるように, 日本人の場合 は親指か ら折畳みなが ら数 を数 えてい くが, アメ リカの学生 の場合 は人差 し指 開始がいちばん多い ものの,小指開始が

た り親指 開始 もいた り,そ して右手 開始,左手 開始 と指使 いが多様であ った ことと, 1か ら10 まで数 えるには両手が必要であることな どが観察 された。

U TMの学 生 の デー タ収 集 に ご協 力 い た だ きま した社 会 学 の Dr.A.Kellerと体 育 学 の prof.G.Whiteの両氏 に深 く感謝の意 を表 します。

文 献

1)ボ ップ ・ア ンダー ソ ン著,堀居 昭訳 (1981)ボ ップ ・ア ンダーソ ンのス トレッチ ング, ブ ックハ ウス ・エ イチデ イ.ppl0‑12,39,50,72,84,

2)castaing,∫.,Santini,日 .共著,井原秀俊, 中山彰一,井原和彦共訳 (1986)図解 関節 ・運 動器 ・の機能解剖 (上巻 一上肢 ・脊柱編),協 同選書 出版社 pp3‑28,7ト82,113,124.

3)浜 田清一 (1966)図説徒手体操 ,新思潮社 pp44‑50,60‑64.

4)猪飼道夫編著 (1973)身体運動 の生理学,杏林書 院 pplO,20,21,212,317.

5)文部省体育局 (1994)平成5年度体力 ・運動能力調査報告書,文部省体育局.

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