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電流−電圧特性

ドキュメント内 LEPS (ページ 31-42)

4 性能評価実験

4.1 電流−電圧特性

SSDに電圧をかけた時、理想的には流れる電流は0 である。しかし、半導体中の電子は熱エネルギーなど で容易に伝導帯へ励起するために、微弱な電流が流れる。これを漏れ電流と呼ぶ。漏れ電流の大きさは、空乏 層の大きさに比例している。電圧をかけていくと式2.1に従って、空乏層が大きくなる。やがてある電圧値以 上をかけると、シリコン全体が空乏層となり、空乏層はそれ以上広がらない。漏れ電流も同様に、始めは電圧 の1/2乗に比例して大きくなるが、やがて一定値になる。この電流-電圧特性を測ることで、検出器のシリコ ンが全空乏層化したかどうかがわかる。

 電流-電圧特性を測定し、検出器にかける電圧を決めた。電流-電圧特性の測り方は、電圧を10 Vずつ上げ、

1時間以上放置した後に電流値を測定した。これを 100 V まで繰り返した。測定の結果を図4.1に示す。電 圧を0から徐々に上げていくと電圧の1/2乗に比例して漏れ電流が増えていることがわかる。60 V 以降では 漏れ電流がほぼ一定値となっている。この測定結果により60 Vで全空乏層化していることが分かった。

4.2 LEPS2実験におけるSSDのストリップの平均ヒット数の見積もり 4 性能評価実験

図4.1 電流-電圧特性

4.2 LEPS2 実験における SSD のストリップの平均ヒット数の見積もり

4.2.1 ビームプロファイルとバックグランド測定

実際に LEPS2 スペクトロメータに SSD をインストールした状況下でのストリップのアクシデンタルな

ヒット数を見積もるため、LEPS2 実験棟においてビーム軸付近の荷電粒子の計数率のとビームプロファイル の測定を行った。

 まず、荷電粒子の計数率を測定した。この荷電粒子はビームライン上流からの電子・陽電子である。測定方 法は、2本のシンチレーション検出器を十字型に組み、2本のコインシデンスとタガーとのコインシデンスを 数え上げる。シンチレータの大きさは2本とも長さ80 mm、幅8 mm、厚さ4 mm である。よって、2本の シンチレータを組み合わせて検出できる範囲は、64 mm2となる。シンチレーション検出器をジャッキの上に 固定し、ビーム軸周りを水平方向、上下方向に動かして、計数率を測定した。コリメータの直ぐ下流で測定し た(図4.2)。この時のタガーレートは約 400 kHzだった。結果を図4.5にまとめる。実験結果より、ビーム 中心から2 cm離れた地点では、ビームライン上流からの荷電粒子はほとんど飛んでこないことがわかった。

4.2 LEPS2実験におけるSSDのストリップの平均ヒット数の見積もり 4 性能評価実験

図4.2 バックグランド測定位置

図4.3 実験に用いた2本のシンチレーション検出器 ビームは紙面手前から奥へ

4.2 LEPS2実験におけるSSDのストリップの平均ヒット数の見積もり 4 性能評価実験

図4.4 ビーム中心合わせの様子

4.2 LEPS2実験におけるSSDのストリップの平均ヒット数の見積もり 4 性能評価実験

水平方向 上下方向

図4.5 バックグランドの荷電粒子の計数率

図4.4の矢印の向きが+方向

続いて、ビームプロファイルの測定を行った。ビームプロファイル測定には、荷電粒子の測定のセットアッ プにベトカウンターとコンバータを追加した。ベトカウンターにはシンチレーション検出器を、コンバータに は厚さ1 mmの鉛を用いた。それぞれの検出器を図4.7 の様に組んだ。同じセットアップで、コンバータの 有無による計数率を比較し、その差を求める事によってビームプロファイル測定を行った。タガーレートは荷 電粒子の測定時と同じ約400 kHz だった。その結果を図4.8に示す。今回の実験によりビーム中心がずれて いることが判明した。 このずれは加速器側の電子軌道の調整で補正する。

図4.6 追加したベトカウンターとコンバータ

4.2 LEPS2実験におけるSSDのストリップの平均ヒット数の見積もり 4 性能評価実験

図4.7 ビームプロファイルの回路図

上下方向 水平方向

図4.8 ビームプロファイル

4.2 LEPS2実験におけるSSDのストリップの平均ヒット数の見積もり 4 性能評価実験

4.2.2 APV25-s1の回路時定数の影響

APV25-s1はセンサーからの信号を増幅、整形している。APV25-s1のパラメータを変えることで、セン

サーからの信号の波形を変えることができる。peaking time の違いによる波形の違いを以下に示す。以下の

図は、APV25-s1のテストパルスの波形を複数重ね書きしたものである。フィッティング結果を赤の線で示し

ている。なお、フィッティングの関数は

f(x) =ax−c

b ex−cb (4.1)

を用いた。ただしa、b、cを係数とする。

peaking time : 50 ns

4.2 LEPS2実験におけるSSDのストリップの平均ヒット数の見積もり 4 性能評価実験

peaking time : 100 ns

peaking time : 200 ns

図4.9 peaking timeによるテストパルスの波形の違い

4.2 LEPS2実験におけるSSDのストリップの平均ヒット数の見積もり 4 性能評価実験

ADCのデータを1点しかサンプルしない場合、クロックとトリガーとのタイミングのずれがADC データ へ大きく影響する。ピーク位置から1クロックずれるとADC 値がどれほど変わるかを表4.1にまとめる。1 クロック前にずれた時よりも、1クロック後にずれた時のほうがADC の最大値からのずれは少ない。また前 後1クロックのずれでは、ストリップのヒット判定が変わるほどのずれは生じないことがわかった。

表4.1 最大値に対する1クロック前後のADC値の割合 peaking time 50 ns 100 ns 200 ns

1クロック前 85.0% 97.6% 99.6%

1クロック後 91.8% 98.2% 99.6%

4.2.3 重水素標的実験におけるSSDのストリップの平均ヒット数の見積もり

LEPS2実験でのストリップのアクシデンタルなヒット数の平均を見積もる。peaking timeの違いがどの程

度ヒット数に影響をあたえるかを調べる。

 まず、SSD にヒットするであろう粒子の数を見積もる。ビームライン上流からの荷電粒子のヒット数と、

γ 線とターゲットとの反応によって生じた荷電粒子によるヒット数をそれぞれ求める。バックグランド計測、

ビームプロファイル時の検出器の面積は64 mm2 であり、タガーレートは約400 kHzであった。実験結果を もとにタガーレートが10 MHz の場合を考察する。

 ビームライン上流からの荷電粒子数はタガーレートに比例するとして考える。上記のバックグランド測定 により得られた結果をガウス関数でフィッティングし、ビーム中心との距離と計数率を計算する(図4.11)。 SSDの大きさ・形は図1.14の通りである。インストール予定のSSDにはビーム用の穴が中心に空いている。

半径7.5 mmでその穴と同心の円の範囲を、ビーム中心から5 mm離れた点でのビームライン上流からの荷

電粒子の計数率を用いて計算する。半径7.5 mmから12.5 mmまでの範囲はビーム中心から10 mm離れた 点での計数率を用いる。同様にして、これ以外の範囲もヒットする粒子数を見積もる(図4.10)。フィッティ ングより得られた値を元に概算した、タガーレートが10 MHzの時の荷電粒子の計数率を表4.2まとめる。

図4.10 計数率の適用範囲

4.2 LEPS2実験におけるSSDのストリップの平均ヒット数の見積もり 4 性能評価実験

図4.11 バックグランドの計数率のフィッティング

距離[mm] 計数率[cps/mm2]

5 780

10 390

15 120

20 20

25 2

表4.2 γ 線強度10 Mcpsに対するビーム中心から の距離とビームライン上流からの荷電粒子の計数率

表4.2の値を用いて、(ビーム中心からの各距離における計数率)×(適用する範囲の面積)によりSSD1面 あたりのヒットする粒子数を見積もる。ただし、25 mm以降はヒット数が無視できるとして計算した。

 以上の数字を使ってSSD 1面あたりのビームライン上流からの荷電粒子の計数率を概算すると 89 kcpsと なった。

次にγ 線ビームとターゲットとの反応で生成したバックグランドの電子・陽電子の計数率を同様に推定す る。今回の測定では鉛1 mmをコンバータとして用いていた。LEPS2実験ではターゲットとして液体重水素

15 cmを用いるので、反応断面積の違いを元に生成した荷電粒子のヒット数を見積もる。ビームプロファイル

のガウス関数でのフィット結果(図4.12)と、それを元に計算したビームと液体重水素との反応によって生成 したバックグランドの電子・陽電子の計数率をまとめる(表4.3)。

 以上の数字を使って、ビームライン上流からの荷電粒子のヒット数の見積もりと同様にビームとターゲット との反応によって生成される荷電粒子のSSD 1面あたりの計数率を概算すると 1.1 kcpsとなる。ビームライ ン上流からの荷電粒子によるヒットが支配的であることが分かった(表4.4)。

図4.12 ビームプロファイルのフィッティング

距離[mm] 計数率[cps/mm2]

5 7.0

10 4.3

15 2.0

20 0.6

25 0.1

表4.3 γ 線強度10 Mcpsに対するビーム中心から の距離とターゲットからの荷電粒子の計数率

4.2 LEPS2実験におけるSSDのストリップの平均ヒット数の見積もり 4 性能評価実験

表4.4 タガーレートが10 Mcpsの時のSSD 1面あたりの荷電粒子の計数率 上流からの荷電粒子 89 kcps

標的からの荷電粒子 1.1 kcps

合計 90.1 kcps

次に、粒子がヒットした時にセンサーからの波形が何秒間スレッショルドを超えているかを考える。各

peaking timeの波形は図4.9 のフィッティング結果を用いる。全ストリップのペデスタルのrmsの平均はお

よそ3 chである。スレッショルドを3σでかけると仮定する。そうするとスレッショルドは、ペデスタルの 平均よりおよそ10 ch程度上になる。今回は、フィッティングで得られた関数の値が10 ch以上である時間 をヒットしている時間とし、ヒット時間と呼ぶことにする。それぞれのpeaking timeでの計算結果を表4.5 にまとめる。

表4.5 peaking timeとヒット時間 peaking time 50 ns 100 ns 200 ns

パルス幅 200 ns 520 ns 1100 ns

peaking timeが 50 nsの場合、ヒット時間は 200 nsである。つまり、トリガー信号の前の 200 nsの間 に荷電粒子がSSD を通過するとアクシデンタルなヒットとなってしまう。このアクシデンタルなヒットは (SSD 1面あたりの計数率)×(ヒット時間)で求められる。この計算式で求められた各peaking timeでのア クシデンタルなヒットストリップ数の平均は表4.6 のようになる。全てのpeaking timeでSSD 1面あたり の計数率は0.1本以下であることが分かった。今回はタガーレートが最大の10 Mcpsで見積もりを行ったが、

実験中の平均タガーレートはこれよりも低いと予想されるので、ビームに起因するヒット数は今回の見積もり 以下になると考えられる。

表4.6 peaking timeとアクシデンタルなヒットストリップ数の平均 peaking time 50 ns 100 ns 200 ns

ストリップ数 0.018本 0.046本 0.098本

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