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ドキュメント内 中野寛之中野寛之 (ページ 54-58)

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4−5 PMMA一(t−Bu)浦VOPc膜の有機ガス処理時間依存性

ねらい

 4章3節、4章4節では、PMMA一(t−Bu)nVOPc膜を有機ガスで処理すると、ホスト 中で分散していたゲスト分子が微結晶化し、それに伴い、3次の非線形光学特性が向上 することを示した。

 そこで本実験では、PMMA一(t−Bu)nVOPc膜の有機ガス処理時問依存性を測定するこ とにより、ホスト中のゲスト分子が微結晶を形成する過程を検討した。

実験方法および条件

 試料8としてPMMA一(t−Bu)145VOPc10%膜(膜厚:8μm)を作製した。有機ガス処理 条件は、処理時間:O,1,5,25時間(有機ガス処理時間依存性)、処理温度:室温

(24℃)、有機ガスとして用いた溶剤:1,2一ジクロロエタンとした。

実験結果及び検討

 図4−12に試料8のVIS/UVスペクトル、図4−13に試料8のTH強度の測定結果

を示す。まず、有機ガス処理前におけるVIS/UVスペクトルをみると、波長640〜710㎜

付近のヒo一クしか確認されず、TH強度測定においてもTHがほとんど発生していない。

このことから、有機ガス処理前におけるゲスト分子の状態については、分子間の相互作 用により(t−Bu)浦VOPc分子が凝集体を形成し、その凝集体がPMMA中で均一分散して いる状態であるといえる。

 次に、有機ガス処理を1時問したときのVIS/UVスペクトィレをみると、波長810nm付近 に新たなショルダが出現している。また、TH強度もそれに伴い増加しており、最大で 約0.015a.u.となっている。これらは丸処理時間:5時問や25時問と比べ値が小さいこと から、1時間処理をした時のゲスト分子の状態は、凝集体から微結晶へ成長する初期段 階であり、多くの凝集体と小さな微結晶が入り混じった状態であることを示唆する。

 5時間処理したときのVIS/UVスペクトルをみると、1時問処理した時点ではショルダ であったものが、更に吸収が増加して波長820nm付近で新たな吸収ピークとなって出現 している。またそれに伴い、波長640〜710nm付近にあるブロードなピークが減少して いる。TH強度も最大で約0.028[a.u.]となり、1時間処理に比べ約2倍の大きさとなって いる。処理時問:25時間後をみると、波長640〜710nm付近の吸収ピークは減少してい るが、820nm付近の新たな吸収ピークは飽和してきている。TH強度も5時問処理の場合 と同程度である。これらの結果は、PMMA一(t−Bu)145VOPc10%膜に有機ガス処理を長時 問続けても、ホスト中の(t−Bu)浦VOPc分子がある一定の大きさまでしか微結晶化しな いことを示唆する。 (ここで、参考として(t−Bu)nVOPc分子が微結晶へ成長する過程を モデル図化(図4−14)した。)(t−Bu)145VOPc分子がある一定の大きさまでしか微 結晶化しない原因は、有機ガスによるポリマーの膨潤によってPMMAの立体障害が減

少するといえども(t−Bu)145VOPc分子は気体のように飛び回れるわけではなく、PMMA 中で(t−Bu)1.45VOPc分子が動ける範囲には限界があるためと考えている。また、もう一一 つの原因としては、(t−Bu)1.、5VOPcがブチル基を1つ置換されたものから4つ置換され たものまでの混成物であることが挙げられる。結晶工学的にいえば、置換数が違う分子 同士は全く別のものであり、互いに結晶構造を形成することはほとんどない。また、同 じ分子式(同じ置換数)のものでも、置換される場所に違い(つまり異性体)があれば、

それによっても結晶は形成されにくい。したがって、本研究によって結晶化した

(t−Bu)nVOPcは、置換数と置換配置が同じもの同士が集まって構成されていると推測で き、このことがすべてのゲスト分子が結晶化することを妨げている原因と考えられる。

 ここで、さらに(t−Bu)nVOPcが微結晶化する機構について検討を重ねる。

 微結晶化の過程は、まず、有機ガスの処理によりホストであるPMMAが膨潤し、立 体障害が減少する。それにより、ゲスト分子である(t−Bu)nVOPcがPMMA中で動けるよ うになることから微結晶が成長する。しかし、これだけでは(t−Bu)nVOPcが微結晶化す る理由として不十分である。なぜなら、膨潤作用だけで(t−Bu)nVOPc分子が微結晶化す るというならば、熱処理を施した場合においても(t−Bu)nVOPc分子が微結晶へ転移して も不思議ではない。しかし、実際には熱処理だけでは微結晶化しない。そのことから、

微結晶化が起きるもう一つの要因として、有機ガスと(t−Bu)nVOPcとの問になにか直接 的な反応が起きていると考えられる。そこで、カバーガラス上に(t−Bu)145VOPc/CHC13 溶液を展開し、(t−Bu)145VOPc膜を作製した。 (但し、作製した(t−Bu)145VOPc膜の見た

目は、均一な分散膜ではなく、膜の所々に(t−Bu)145VOPcが凝集した不均一な膜であっ た。)その膜に対してPMMA一(t−Bu)nVOPc膜と同様の有機ガス処理を施したところ、

試料8ほどではないが、VIS/UVスペクトル(図4 15)より(t−Bu)恥VOPc分子の微 結晶化が確認された。この直接的な反応機構について、いまだ十分な知見は得られてい

ないが、銅フタロシアニン(CuPc)をキシレンに分散させて加熱したところ

10〜数10μm程度の大きさの微結晶が得られたという本実験に類似した報告3)があり、

その著者らによれば、微結晶への転移は溶解→再析出の機構ではなく、集合→結合的な 機構によるものではないかとされている。しかし残念ながら、この文献おいてもそれ以 上詳しい見解は述べられておらず、この件に関しては今後もさらに検討を重ねていく必 要があるといえる。

まとめ

 有機ガス処理に伴って、(t−Bu)nVOPc分子が微結晶化し、TH強度が増加することを 示した。また、有機ガス処理による結晶成長の過程および結晶化の機構について検討し

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