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集落営農における営農活動評価分析システムの開発

ドキュメント内 藤井吉隆 (ページ 123-158)

第1節 はじめに

第 1 章第 4 節で指摘したとおり,米価の低迷により水稲の収益性が低下する経営環境を反映し て,滋賀県内の大規模水田作経営を対象とした経営改善意向調査結果からは,今後の経営改善 方策として,これまでの大規模水田作経営において積極的に取り組まれてこなかった「営農活動の 実態把握・分析」や「経営収支の実態把握・分析」への取り組み意向が高くなっていることが確認さ れた.このことは,大規模水田作経営が米価低迷などの経営環境の変化に対応して,これまでの 複式簿記記帳を中心とした農業経営の実態把握・分析から一歩踏み込んで,農業経営の実 態を詳細に分析した上で PDCA の経営管理サイクルに基づいて経営改善を図ろうとする動き として捉えられる。具体的には,「営農活動の実態把握・分析」は,作業時間や収量・品質 の実態を具体的なデータに基づき詳細に分析することで営農活動の改善を進める上での具 体的対応策を検討しようとする取り組みである.「経営収支の実態把握・分析」は,部門別 損益計算や原価計算などを用いてより詳細に経営収支の実態を具体的データに基づき把握 した上で経営改善を図ろうとする取り組みである。

これまでの関連する既往研究では,線形計画法等の経営計画策定手法やその計算ソフトに関す る研究が進められ,指導機関や経営者の意思決定を支援するツールとして多くの計算ソフトが開 発・実用化されている1)。また,簿記記帳データを用いた収益性や財務安全性等の経営診断で は,市販の簿記ソフトが多数存在し,多くの農業経営に導入されている.しかし,これらのシステム は,経営シミュレーションや経営診断を目的としたものであり,農業生産現場における営農活動の 改善方策を検討する上で必要となる原価や利益,作業時間,資材投入量などの実態を具体的デ ータに基づき体系的に分析できるものにはなっていない.

そこで,本章では,集落営農を対象にコスト管理や作業管理の強化による生産性の向上を 図るために、営農活動の実態を具体的なデータに基づいて体系的に分析するための新たな ツールとして営農活動評価分析システムを開発するとともに,滋賀県内の集落ぐるみ型の 営農組織におけるシステムの利用効果について報告する.

第2節 営農活動評価分析システムの基本構造

営農活動評価分析システムの特徴は,作業実績,資材投入実績,収量・品質の実績など の営農活動の記録および会計資料を用いて,それぞれの経営における経営収支,作業時間,

資材投入量等の実態を利用者の要求に応じて品目・栽培様式・品種・エリア(小字など)・ 圃場の各段階で具体的データに基づき体系的に集計分析できることである(図8−1).

当システムの基軸となる経営収支構造の分析では,直接原価計算の技法に基づくフレー ムワークを採用している.具体的には,経営収支構造を収入,変動費,固定費,共通経費

区分 データ 収集単位

収 量 収量品質記録カード 乾燥調製施設搬入ロット

単 価 計画値・実績値 栽培様式品種別平均単価

品 質 1等 収量品質記録カード 乾燥調製施設搬入ロット,検査ロット

2等

3等

販売収入(a)

種苗費 資材投入記録カード 圃場単位〜日単位

肥料費 資材投入記録カード 圃場単位〜日単位

農薬費 資材投入記録カード 圃場単位〜日単位

諸材料費 資材投入記録カード 圃場単位〜日単位

水道光熱動力費 会計資料、給油日報 水道光熱費(年間)、動力費(日/機械)

賃借施設利用料 乾燥調製施設搬入記録 乾燥調製施設搬入ロット

保険共済費 会計資料等 年間

販売出荷経費 会計資料等 年間

その他 会計資料等 年間

労働費 作業日報

変動費小計(b) 限界利益(c:a-b)

減価償却費 機械日報、固定資産台帳 年間

修繕費 修理依頼・調達伝票 年間

固定費小計(d)

会計資料等

経営共通労働費 作業日報

地 代 会計資料等 年間

土地改良水利費 会計資料等 年間

事務費 会計資料等 年間

役員報酬 会計資料等 年間

租税公課 会計資料等 年間

会議研修費 会計資料等 年間

雑 費 会計資料等 年間

共通経費小計(g)

利 益(f-g)

助成金収入(e) 貢献利益(f:c-d+e)

管理可能原価(/10a)

原 価(/10a) 原 価(/60kg) 管理可能原価(/60kg)

の4つの段階に分類して,利益を限界利益(収入―変動費),貢献利益(限界利益−固定費

+助成金収入),利益(貢献利益−共通経費)の3区分,原価を管理可能原価(変動費+固 定費),原価(管理可能原価+共通経費)の2区分で集計分析する(表8−1).

図8−1 営農活動評価分析システムの基本構造

表8−1 分析のフレームワークとデータの収集単位

第3節 営農活動評価分析システムの利用手順 1.営農活動の記録

営農活動評価分析システムの利用に際しては,簿記データ等の会計資料に加えて,作業実績,

資材投入実績,収量および等級検査実績など営農活動に関わるデータの記録が必要となる.

作業実績は,作業日報を用いて,作業を種類毎に整理した作業区分に基づいて当日の作業内 容,作業別作業時間,作業実施圃場を記録する(図8−2).また,資材投入実績は,資材投入記 録カードを用いて,農薬・肥料等の圃場別資材別投入量を記録する2)(図8−3).なお,収量およ び等級検査実績は,収量・品質記録カードを用いて,乾燥調製施設への投入ロット毎に圃場番号 および籾摺り袋数,当該農産物の等級検査結果を記録する.

図8−2 作業日報の記載例 注)作業日報の様式は,D経営で使用しているものである.

図8−3 資材投入記録カードの記載例 注)資材投入記録カードの様式は,D経営で使用しているものである。

2 営農活動評価分析システムの利用

次に,上記により記録したデータを営農活動評価分析システムに入力するとともに,入力したデ ータに基づいて営農活動の実態を分析する.当システムは,「基本情報の設定」,「データ入力」,

「集計分析」で構成されており,各メニューの内容は以下(1)〜(3)のとおりである(図8−4).

図8−4 営農活動評価分析システムの基本メニュー

1)基本情報の設定

「基本情報の設定」では,営農活動評価分析システムの利用に必要な情報項目の初期設定デ ータを登録する(図8−5).

設定登録を行う項目は,①作物関連情報(品目・栽培様式・品種など),②圃場関連情報(圃場 No,エリア),③作業関連情報(作業名・作業区分,作業者名,賃金単価など),④資材関連情報

(資材の種類,名称,価格など),⑤経営基本設計情報(経営収支・作業時間などの標準値,資材 投入の基本設計など)に大別できる.なお,作業区分では,作業を作業の性質に応じて直接作業

(作業時間を圃場単位に配賦する作業),部門共通作業(品目,栽培様式,品種などの部門単位に 配賦する作業)に分類して登録することで,作業時間を区分して集計分析できる.例えば,当システ ムの導入を行ったD経営では,作業を50種類に区分した上で,圃場管理・保全,農機整備・洗浄,

整理整頓などを部門共通作業として登録することで,作業時間の内容を直接作業と部門共通作業 に区分して分析している.

変動費

●基本情報の設定

●データの集計と分析

●データの入力

・日々の入力

作業予定・雨天予定・作業実績

・定期入力

作付計画・収入・助成金・変動費 機械施設固定費・共通経費

・経営収支構造

収入・費用・利益・原価

・作業別作業時間・資材投入量

・圃場別営農活動報告書

・初期設定データの登録・変更

経営収支構造 作業 時間 資材投入量 圃場別営 農活動

データ入力

集計分析

基本情報

図8−5 作業内容登録画面

2)データの入力

データの入力では,作業実績,作付計画,収入,助成金などの具体的なデータを入力する

(表8−2).データの入力は,①作業日報等で記録する作業実施に関わる入力と,②会計資料 等を用いた定期的な入力に大別できる.

まず,作業実績では作業日報の記録に基づいて,日々の農作業の実績(作業別作業時間,

作業の賃金区分,作業実施圃場,資材投入量等)を入力する(図8−6).なお,当システムでは 付随機能として作業予定,雨天予定の入力機能を装備している.作業予定では,翌日の作業内 容や作業圃場,使用資材を入力することで作業指示書の作成および作業指示書を用いた作業 実績の入力に活用できる.また,雨天予定を利用することで,雨天時の作業予定内容を蓄積でき, 天候急変等による作業内容の変更への対応を円滑に実施できる.

なお,収量・品質記録カード等に基づく収入(収量,等級検査結果,価格),会計資料等に基 づく変動費(共済費,水道光熱動力費),助成金,共通経費(租税公課,地代,土地改良水利費,

事務費等),機械施設固定費(減価償却費,修繕費)のデータは,定期的に入力を行う.また,

作付計画では,圃場毎の作付配置(品目・栽培様式・品種)や作付開始日等のデータを入力す る.

注: 作業項目毎にコード No を設定して登録する.なお,部門共通作業として登録する場合は,

「経費区分」欄に1を入力する.

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