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障害児教育の対象 に関す る日米の相違

安 藤 房 治

(1) 障害児教育対象の相違

1975年, ア メ リカで は全 障害児教 育法 (p.L.94‑142,EducationforAllHandicappedChil‑ drenAct)が連邦議会 を通過 した。 同法 の第一の 目標 は,障害 の程度,種類 を問わず,すべて

の障害児 に無償で適切 な公教育 を保障す ることであ った。

一方 日本で は,第二次世界大戟後の憲法,教育基本法 に もとづいてすべ ての子 どもは 「教育 を受 ける機会」が保 障 され,9年 間の普通教育が保 障 されるこ とになった (教育基本法)。 し か し,戟後の新教育制度発足後 もす ぐには障害児 は教育対象 とはされなか った。1948年か ら盲 学校 お よび聾学校 の就学義務 お よび設置義務が施行 され,学年進行 に伴 う義務制の実施であ っ たため,完成 まで に9年 間経過 した。 さ らに遅 れて,養護学校 の就学義務 お よび設置義務 は 1979年度 よ り実施 された。 したが って,わが国においてすべ ての障害児が教育対象 とされるよ

うになったのは1979年か らである

日米両国 とも,すべての障害児 に教育 を保障す ることになっている とい う点では相違 はない。

しか し, これ らの障害児が,障害児教育の対象 となっているか どうか とい うことでは大 きな相 違が あ る アメ リカで は,障害児教育人 口は,4,587,370人であ り, これは同年齢 の総人 口の 6.7%にあたる (茂木,1994) 日本では,特殊学級在籍児童71,895名,盲 ・聾 ・養護学校在籍 幼 児, 児 童, 生 徒 数 は93,497名, 総 計170,659名 で あ る この 内, 義 務 教 育段 階 の総 数 は 123,656名であ り (文部省,1993),義務教育段階の児童 ・生徒総数 (13,984,066)の0.88%で ある 日本の障害児教育対象 は,絶対数 において も, また同年齢の児童 ・生徒数 に占め る割合 において も, アメ リカに比較 して極 めて少 ない。

アメ リカが 日本 に比較 して障害児教育対象が多 い背景 には, アメ リカには 日本では未整備の 通常学級 や リソース ・ルーム方式 による障害児教育が実施 されているか らである わが国にお いては,通常学級 に在籍 してい る場合,た とえ在籍児が障害 を持 っていて も障害児 とは見 なさ れない (ただ し,1993年度か らの通級制実施 によ り,障害児が通常学級 に在籍す る場合 も障害 児 と認 め られ るケース も見 られ るようになった)。 リソース ・ルーム方式 とは,障害児が主 と

して通常学級で学習 し,障害 によるニーズに併せて,言語訓練 や生活指導 な ど,一 日の中で一 定時間障害児教育専 門の教 師による指導 を受 ける方式である 表1に示 され るように, アメ リ カでは仝障害の平均で68.9%が通常学級 もしくは リソース ・ルームでの指導 を受 けている (茂 木,1994)

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表1 6つの特殊教育 プ ログラム と年齢群別 利用率 :1987‑88年度 3‑ 5 6‑11 12‑17 18‑21(歳) 通 常 学 級 40.1% 39.7% 18.0%

リソース ・ル ーム 14.1 35.7 45.8 特 殊 学 級

特 殊 学 校 寄 宿 制 学 級 家 庭/病 院

28.5 20.6 28.6 14.8 3.4 5.5 0.5 0.4 1.1 2.0 0.3 1.1

12.9%

35.2 32.7 14.7 2.9 1.6 出典) 連邦議会‑ の第12回年次報告 (1990)(茂 木,1994)

表 2 6つの特殊教育プ

グラムと障 別利用率 (6

‑2

1歳) :1987‑88年度 通常学級 ‑.)ij.,=三 特殊学 特殊学校 寄宿制学校 家庭/病

習 障 害 17.6% 59.2%

語 障 害 74.8 19.7 精 神 遅 滞 5.7 24.0 情 緒 障 害 12.6 32.9 難 聴 ・聾 24.4 20.9 重 複 障 害 6.4 13.3 肢体不 自由 27.8 18.0 病 弱 30.6 20.8 視 覚 障 害 37.7 25.6

21.7% 1.4%

3.8 1.5 57.6 11.4 34.6 14.3 35.2 10.8 45.9 27.2 31.8 13.2 18.7 9.5

20.8 5.4 盲 聾 重 複 8.9 7.2 35.1 21.0 仝 障 害 28.9 40.0 24.7 4.9

0.1% 0.1%

0.1 0.1 1.0 0.3 3.5 2.2 8.6 0.2 4.0 3.1 1.0 8.3 0.8 1

9 .

6

10.0

0 . 6

24.2

3 . 7

0.8

0 . 7

出典) 邦議会‑の第12回年次報告 (1990) (茂木,19

9 4 )

(2)ア メ リカにお け る障害児教 育対 象 の拡 大

わが 国 と比較 して, アメ リカにおいて障害児教 育対 象 とな ってい る障害 の種類 は ど うで あ ろ う わが 国 の障害 児 教 育対 象 は, 盲学 校 , 聾 学 校 お よび養 護学校 の対 象 と して, 「盲者

「聾 者」 そ して 「精神 薄弱 者 ,肢体不 自由者若 しくは病弱 者 (身体 虚弱者 を含 む)

(学校教 育法 第 71条) が あげ られ,特 殊学級対 象 と して 「精神 薄弱 者

「肢 体不 自由者

「身体 虚弱者

「弱視 者

「難聴 者

「そ の他 」 が あ げ られて い る これ に加 えて,文 部省 は,1993年 度 か ら, 「小学 校等 の通常 の学級 に在 籍 す る心 身 に軽 度 な障害 が あ る児童生徒 」 に対 して 「特 別 な教 育課程」

を与 え る こ とが で きる と した (文 部省 初 等 中等教 育 局 長通 達 ,1993年1月28日) が, この 「軽 度 の 障害」 と して 「言 語 障害 者

「情 緒 障害 者

「弱 視 者

「難 聴 者

「そ の他 」 をあ げ て い る

(同通達)。

アメ リカの全 障害児教 育法 は,視覚 障害,聾 ,難聴 ,言語 障害 ,肢体不 自由お よび整形外科 的障害 ,情緒 障害 ,精神 遅 滞,学習 障害 ,重複 障害 を障害児教 育 の対 象 と した。 アメ リカ とわ が 国の大 きな相違 は,障害児教 育対 象 と して 「学 習 障害」 が含 まれてい る こ とで あ る 学 習 障 害 とは,知 的 な障害 はないが,話 し言 葉 や文字 を理解 ,使 用す る基 本 的心理過程 に障害 を持 つ 子 ど もで あ り,全 障害児教 育法 において初 めて公式 に認 め られた。 その後学 習 障害児 に分類 さ れ る子 ど もは増 え続 け,軽 度障害児 の 中で最 も多数 を占めてい る

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学習障害児 に関 して,わが国では研究領域では十数年前か ら取 り上げ られているが,教育行政 においてはまだ障害児教育対象 とはされていない。

アメ リカにおいては,最近新 たに障害児教育対象 を拡大 して きている

1 9 9 0

年 に障害者教育 法が修正 され,障害児教育の対象 として,「自閉症」 と 「外傷性脳損傷」が認め られた (中野,

1 9 9 4 ) 。

同法 の修正 の際 に, 「注意欠陥障害

( a t t e n t i o nd e f i c i td i s o r d e r: ADD) 」

を障害 として 認めるか どうかについて議論があ ったが,概念の明確化, アセスメ ン トや指導の試行 を具体化 す ることとなった。 また,「重度情緒障害」 に関 して も,議論 はされているが確定的な定義 は

なされていない (中野,

1 9 9 4 ) 0

以上の ことか ら,アメ リカにおいてはわが国 と比較 して障害児教育の対象 は数的に も多 く, また,その対象 も拡大 されつつあると言 える

(参考文献)

中野善達 :米 国教 育省 による 「自閉症

「外傷性脳損傷」 の定義及 び,「注意欠陥障害」

「重度情緒障害」への対応,特殊教育学研究,第

3 1

巻,第

4

号,

1 9 9 4 .

茂木俊彦 :アメリカにおける軽度障害児教育,東京都立大学人文学報,

2 5 0

号,

1 9 9 4 .

文部省初等 中等教育局特殊教育課 :特殊教育資料 (平成

4

年度),

1 9 9 3 .

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