118 5−2−3 ジェンダーからみた生活時間(佐藤 香)
3. 関連する研究
『生活時間の国際比較――日・米・仏・韓のカップル調査』連合総合生活開発研究所(2009)
は、4カ国の首都近郊に住む各
400
カップルを対象とした生活時間調査データにもとづく 成果である。ここで佐藤(
2009
)は、性別役割分業の影響は、まず就業形態にあらわれていることを 指摘している。表2は正規雇用(フルタイム)・非正規雇用(パートタイム)・無職の3つ の就業形態をもちいて、4
カ国のカップルの組み合わせ構成比をみたものである。日本では 夫がフルタイムで妻がパートタイムの組み合わせが最も多く(32.5%)、次いで夫婦ともフ ルタイム(27.5%)、フルタイム・専業主婦(19.1%)となっている。アメリカ・フランス・韓国では夫婦ともフルタイムが最も多く(アメリカ
53.0%、
フランス63.1%、韓国 36.5%)、
とくにフランスでは過半数を超える。
同報告書で、大石(2009)は、このような就業形態の構成比の違いが、国ごとの生産活 動時間の総量の違いとしてあらわれてくることを明らかにしている。図1は、ここで示さ れた週あたりの生産活動時間(実労働時間)である。夫については日本が
49
時間と最も長 く、逆に、妻については日本が23
時間と最も短い。韓国は日本と同様に男性の長時間労働 が顕著であるが、週休二日制が普及途中であることもあって、1日あたりの生産活動時間 は日本よりも短い。そのため、カップルの生産活動時間に占める夫のシェアも、日本(72.2%)>韓国(69.9%)>アメリカ(62.4%)>フランス(57.3%)の順となっている。また、生
121
産活動のカップル合計時間では、夫婦ともフルタイムの比率が最も高いフランスが最大と なっている。
表2 カップルの就業形態組み合わせ
日本 アメリカ フランス 韓国 計
夫 妻
正規 正規 27.5 53.0 63.1 36.5 45.0 正規 非正規 32.5 12.0 13.1 12.5 17.7 正規 無職 19.1 15.8 7.5 26.0 17.1 非正規 正規 4.1 5.0 5.6 5.5 5.0 非正規 非正規 7.2 0.8 1.0 4.8 3.4 9.6 13.4 9.7 14.7 11.8 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 その他
合計
図4−2 夫婦の実労働時間(週当たり)
12歳以下の子どものいる夫婦
49.4 41.6 42.2 48.3
17.5 27.4 31.4 21.3
0 10 20 30 40 50 60 70 80
日本 アメリカ フランス 韓国
0 10 20 30 40 50 60 70 80
夫 妻 夫のシェア(右目盛)
(時間) (%)
図1 カップルの週当たり生産活動時間
以上のように、性別役割分業による生活時間のあり方の違いは、社会全体での労働力 のあり方と深くかかわっている。将来的な人口減少・労働力不足を考えるうえでも、ジェ ンダーの視点から生活時間の現状と問題点とを明らかにする必要がある。
文献
水野谷武志(
2005
)『雇用労働者の労働時間と生活時間 国際比較統計とジェンダーの視 角から』御茶の水書房御船美智子(
2008
)「家庭と職場のありかたとワーク・ライフ・バランス」山口一男・樋 口美雄編『論争 日本のワーク・ライフ・バランス』日本経済新聞出版社矢野眞和・連合総合生活開発研究所(1998)『ゆとりの構造――生活時間の6か国比較』
日本労働研究機構
連合総合生活開発研究所(2009)『生活時間の国際比較――日・米・仏・韓のカップル調 査』連合総合生活開発研究所
122
5−2−4 会社(職場)の外で仕事時間に関する分析(小倉 一哉)
1.分析のねらい
日本の労働者の長時間労働の原因として、会社(職場)の外でも仕事をすることが影響 していると考えられる。労働政策研究・研修機構(
2009
)によれば、正社員の43%
が「通 常の勤務先以外の勤務場所がある」と回答している。またこれらの「ある」と回答した人 は、「ない」と回答した人に比べて労働時間が長いことも示されている。さらに「自宅」で も仕事をする人は、「所属先企業の他事業所」「顧客先の事務所や工場」など「自宅」以外 の「通常の勤務先以外の勤務場所」を選択した人に比べて、労働時間が最も長い。他方で、情報通信機器や通信ネットワークの発達に伴い、自宅で会社の仕事をする「在 宅勤務」が注目を浴びている。労働政策研究・研修機構(2009)によれば、「自宅」で仕事 をする人は
37.8%に及ぶが、その人たちのうち「在宅勤務」を会社の人事制度として利用
しているのは、わずか2.8%にすぎず、また上司の裁量や習慣として利用する人も 3.3%にす
ぎなかった。つまり他の93.9%は、制度や運用上の「在宅勤務」ではないのに、
「自宅」で 仕事をしているのである。これにはいわゆる「持ち帰り残業」「ふろしき残業」といわれる ような働き方が背景にあると推測される。しかし自宅で仕事をする時間の実態はあまりよくわかっていない。このことを知るため には、回答者の
1
日の生活時間の配分から、「場所」を区別し、その場所で仕事をする人の 比率や時間の長さを知る必要がある。また、通勤時間においても仕事をする可能性がある。これは「通勤」の「同時行動」と なるが、例えば通勤電車内でその日の会議資料に目を通すというような場合は、仕事をす る時間と捉えることもできる。このようなことをどのくらい多くの人が、何分ほど行って いるかという実態はよくわかっていない。
さらに、所属先の企業における「主な仕事」以外に収入を得る「副業」をする人は、「副 業」をしない人に比べて、全体的な労働時間が長いのかもしれない。就業構造基本調査(2007 年)によれば、本業が「正規就業者」である
34,324,200
人のうち、「副業あり」の人は763,700
人(2.2%)であった。これらの人々の「副業」に関連する時間の長さと「本業」の労働時 間の長さを知り、合計した時間について知ることによって、会社(職場)以外の労働時間 の長さの実態を把握することが可能となる。2.分析計画
本研究では、平成
13
年と平成18
年の調査票B
を用いて、以下の作業を行う。なお2
年 分のデータを利用する理由は、5
年間の変化を見るためである。(1)場所別の主な仕事について
123
・従業上の地位で雇用されている人の性別・「雇用形態」別・平日及び休日の場所別主な仕 事の行動者率、主な仕事時間の長さの分布及び平均時間の集計表の作成。
・正規の職員・従業員の性別・職業別・平日及び休日の場所別主な仕事の行動者率、主な 仕事時間の長さの分布及び平均時間の集計表の作成。
・場所別に見た主な仕事の有無に影響する要因の探索。
方法:プロビット
被説明変数:場所別主な仕事の有無(平日・休日)
説明変数:性別、年齢、教育、情報通信機器の使用状況、介護の有無、ふだんの就業状 態、従業上の地位、雇用形態、職業、週間就業時間、ライフステージ、世帯の家族類型、
共働きか否か、住居の種類、世帯の年間収入。
・場所別に見た主な仕事時間の長さに影響する要因の探索。
方法:二段階通常最小二乗法及びヘックマンの二段階推定 被説明変数:場所別主な仕事時間の長さ(平日・休日)
説明変数:性別、年齢、教育、情報通信機器の使用状況、介護の有無、ふだんの就業状 態、従業上の地位、雇用形態、職業、週間就業時間、ライフステージ、世帯の家族類型、
共働きか否か、住居の種類、世帯の年間収入。
(2)通勤中の主な仕事について
・従業上の地位で雇用されている人の性別・雇用形態別・平日及び休日の通勤の同時行動
(主な仕事)の行動者率、主な仕事時間の長さの分布及び平均時間の集計表の作成。
・正規の職員・従業員の性別・職業別・平日及び休日の場所別通勤の同時行動(主な仕事)
の行動者率、主な仕事時間の長さの分布及び平均時間の集計表の作成。
・通勤の同時行動(主な仕事)の有無に影響する要因の探索。
方法:プロビット
被説明変数:通勤の同時行動(主な仕事)の有無(平日・休日)
説明変数:性別、年齢、教育、情報通信機器の使用状況、介護の有無、ふだんの就業状 態、従業上の地位、雇用形態、職業、週間就業時間、ライフステージ、世帯の家族類型、
共働きか否か、住居の種類、世帯の年間収入。
・通勤の同時行動(主な仕事)時間の長さに影響する要因の探索。
方法:二段階通常最小二乗法及びヘックマンの二段階推定
被説明変数:通勤の同時行動(主な仕事)時間の長さ(平日・休日)
説明変数:性別、年齢、教育、情報通信機器の使用状況、介護の有無、ふだんの就業状 態、従業上の地位、雇用形態、職業、週間就業時間、ライフステージ、世帯の家族類型、
共働きか否か、住居の種類、世帯の年間収入。
(3)副業について
124
・就業形態別・性別・平日及び休日の副業の行動者率、副業時間の平均時間の集計表の作 成。
・就業形態別・性別・自宅での・平日及び休日の副業の行動者率、副業時間の平均時間の 集計表の作成。
・正規の職員・従業員の性別・職業別・自宅での・平日及び休日の副業の行動者率、副業 時間の平均時間、仕事時間との合計の集計表の作成。
・副業の有無に影響する要因の探索。
方法:プロビット
被説明変数:副業の有無(平日・休日)
説明変数:性別、年齢、教育、情報通信機器の使用状況、介護の有無、ふだんの就業状 態、従業上の地位、雇用形態、職業、週間就業時間、ライフステージ、世帯の家族類型、
共働きか否か、住居の種類、世帯の年間収入。
・副業時間の長さに影響する要因の探索。
方法:二段階通常最小二乗法及びヘックマンの二段階推定 被説明変数:副業時間の長さ(平日・休日)
説明変数:性別、年齢、教育、情報通信機器の使用状況、介護の有無、ふだんの就業状 態、従業上の地位、雇用形態、職業、週間就業時間、ライフステージ、世帯の家族類型、
共働きか否か、住居の種類、世帯の年間収入。
参考文献
労働政策研究・研修機構