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関数の符号が変化する場合の広義積分

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第 1 章 多変数関数の積分 ( 重積分 ) 12

1.7 広義積分

1.7.6 関数の符号が変化する場合の広義積分

関数の符号が一定でない、つまり正の値も負の値も取る場合を考えよう。このとき命題1.7.13 が使えない。実際、コンパクト近似列 {Kn}nN によって、lim

n→∞

Kn

f(x)dx が異なる場合が ある。次の例は (有名なので)もしかすると「実質的に復習」かもしれないが、重要な例であ るし、解釈はあくまで新しい広義積分としてなので、あわてずゆっくりと分析してみよう。

1.7.15

0

sinx x dx

を考えよう。An := [(n1)π, nπ] とおくと、n が奇数のとき Anf 0 (内部では f > 0), n が偶数のときAnf 0 (内部ではf < 0)となる。

-30 -20 -10 10 20 30

-0.2 0.2 0.4 0.6 0.8 1

an:=

An

sinx

x dx とおくと、

a2k1 >0, a2k <0, 1

≤ |an| ≤ 1

(n1)π, |a1| ≥ |a2| ≥ · · · ≥ |an| ≥ |an+1| ≥ · · · →0,

k=1

a2k1 =∞,

k=1

a2k =−∞,

n=1

an= π

2 (条件収束する交代級数) が成り立つ (最後の値が π/2となること37以外の事実の証明は容易である)。

Kn :=∪n

k=1Ak = [0, nπ] とおくと、{Kn} は Ω = [0,) のコンパクト近似列で、

Kn

sinx x dx=

n k=1

Ak

sinx x dx=

n k=1

ak π 2.

37この証明には色々な方法があるが、複素線積分を用いるのが最もポピュラーであろう。

(もう少しだけ頑張ると lim

R→∞

R

0

sinx

x dx= π

2 が証明できるので、1 変数の微積分で学んだ広 義積分と考えれば、広義積分可能で値は π/2 である。)

nan が条件収束であるから、任意の λ R∪ {∞,−∞} に対して、全単射 φ: NNが 存在して、

k=1

aφ(k)=λ となる (Riemann の定理)。

Kn :=∪n

k=1Aφ(k) とおくと、{Kn}nN は Ω のコンパクト近似列で、

Kn

sinx x dx=

n k=1

Aφ(k)

sinx x dx=

n k=1

aφ(k)→λ (n→ ∞).

コンパクト近似列の取り方によって、異なる極限を持つので、広義積分可能ではない。

(おまけ) Ω1 =∪

k=1A2k1, Ω2 =∪

k=1A2k とおくと、f は Ω1f 0,f は Ω2f 0と なり、 ∫

1

sinx x dx=

n=1

a2n1 =∞,

2

sinx x dx=

n=1

a2n=−∞.

この例のようにΩ が1次元の区間の場合には、上の Kn := [0, nπ] という選択は自然だが、

多次元の領域の場合には、これほど自然なものはなく、任意のコンパクト近似列に対して共通 の極限値が存在することを要請するのはそれなりにもっともだろう。

級数の場合との連想で、被積分関数の絶対値|f|が広義積分可能であるとき、広義積分が絶 対収束するという。|f| は符号が一定であるので、絶対収束であるかどうかの判定は簡単であ る(任意に選んだ一つのコンパクト近似列 {Kn} に対して、

Kn

|f(x)|dx が有界かどうかだけ で判定できる)。

級数について基本的な「絶対収束ならば収束」の広義積分バージョンが成立する。

定理 1.7.16 (絶対収束するならば収束 (広義積分可能)) Ω, f, N は上の定義の条件 (a), (b), (c)を満たすとする。Ω\Nで定義された関数 φで、

(i) Ω\N|f| ≤φ. (特にφ≥0となることに注意) (ii) φは Ω で広義積分可能である。

を満たすならば、f は Ω で広義積分可能である。

証明x∈\N に対して

f+(x) := max{f(x),0}, f(x) := max{−f(x),0}

f+, f を定義すると、f+f はともに Ω\N に含まれる任意のコンパクトJordan可測 集合上で積分可能で、

f(x) = f+(x)−f(x), 0≤f+(x)≤ |f(x)| ≤φ(x), 0≤f(x)≤ |f(x)| ≤φ(x).

これから、 ∫

Kn

f+(x)dx≤

Kn

φ(x)dx≤

φ(x)dx <∞,

Kn

f(x)dx≤

Kn

φ(x)dx≤

φ(x)dx <∞. ゆえに n → ∞のとき

Kn

f+(x)dx,

Kn

f(x)dx は収束するので、f+f は広義積分可 能である。ゆえに f =f+−f は Ωで広義積分可能である。

1.7.17 広義積分が絶対収束するならば広義積分可能である。

証明 φ:=|f| とおけばよい。

1.7.18 Ω ={(x, y);x≥0, 0≤y≤1}, f(x, y) =excos(xy) とするとき I =

∫∫

f(x, y)dx dy を求めよ。

(解) f の符号は一定でないことに注意する。|cos(xy)| ≤1 に注意すると

|f(x, y)|=excos(xy)≤ex.

そこで φ(x, y) := ex とおくと、|f(x, y)| ≤φ(x, y). Kn:= [0, n]×[0,1] とおくと、{Kn}nN

は Ω のコンパクト近似列になる。

∫∫

Kn

φ(x, y)dx dy=

1

0

(∫ n 0

exdx )

dy =[

−ex]n

0 = 1−en1 (n→ ∞).

φ の符号は一定なので

∫∫

φ(x, y)dx dy = lim

n→∞

∫∫

Kn

φ(x, y)dx dy= 1<∞. ゆえに φは Ω で広義積分可能である。ゆえに

∫∫

f(x, y)dx dy は絶対収束する。

In:=

∫∫

Kn

f(x, y)dx dy=

1

0

(∫ n 0

excosxy dx )

dy の右辺のカッコの中の積分を計算する。

n 0

excosxy dx=[

−excosxy]x=n x=0

n 0

(−ex)·(−ysinxy)dx

=−encosny+ 1−y

n 0

exsinxy dx,

n 0

exsinxy dx=[

−exsinxy]n 0

n 0

(−ex)

·(ycosxy)dx

=−ensinny+ 0 +y

n 0

excosxy dx

であるから

n

0

excosxy dx= 1−encosny−y (

−ensinny+y

n

0

excosxy dx )

= 1 +en(ysinny−cosny)−y2

n

0

excosxy dx.

移項して整理すると

n

0

excosxy dx= 1

1 +y2 +enysinny−cosny 1 +y2 . ゆえに

In=

1

0

( 1

1 +y2 +enysinny−cosny 1 +y2

)

dy= π 4 +en

1

0

ysinny−cosny 1 +y2 dy.

ここで

en

1

0

ysinny−cosny 1 +y2 dy

≤en

1

0

|ysinny−cosny| 1 +y2 dy

≤en

1

0

1 +y

1 +y2dy 2en 0 (n→ ∞)

であるから、 ∫∫

f(x, y)dx dy = lim

n→∞In = π 4. (上のようにまじめにやるのは大変だ。先に n → ∞ として

0

excosxy dx = 1

1 +y2y について [0,1]で積分することに帰着できると簡単だが、それを正当化するのはあまり簡単で なさそうだ。)

1.7.19 (収束を示すだけなら、上から収束する関数で押えるだけで OK) 広義積分 I =

∫∫

x2+y21

1

x4+ 2x2y2+y4+x2+ 1 dx dy

の収束・発散を調べてみよう。{Kn} を一つ選んで、Kn 上の積分を計算しようと考えても出 来るかも知れないが、少し計算が面倒である。

1

x4+ 2x2y2+y4+x2+ 1 1

x4+ 2x2y2+y4 = 1 (x2+y2)2

に気がつくと、 ∫∫

x2+y21

1

(x2+y2)2 dx dy

が収束するのを示すのは簡単なので、I が収束することが分かる。

余談 1.7.1 (絶対収束=広義積分可能?) こうして「絶対収束ならば広義積分可能」であるこ とが分かったが、絶対収束と広義積分可能の違いはどの程度あるのだろう?(つまり絶対収束 はしないが、広義積分可能である場合はどのくらいあるのか?) 実は両者には差がないという 見解がある38。残念ながら筆者は証明を見たことがないが、状況証拠は色々あるし(級数が可 換収束することは絶対収束することと同値、ルベーグ積分ではf が可積分であることと |f|が 可積分であることは同値)、証明のあらすじも思い描ける。ただ厳密な証明を書き下すのは骨 が折れそうなので、ここでは断定を避けておく。

(2009年9月2日加筆) 稲葉[3]で紹介されている

E. V. Hobson, The Theory of Functions of a Real Variable, third edition, Cam-bridge (1927), pp. 518–533

は、今ではパブリック・ドメインにおかれているようで、ネットから無料で入手可能である(http:

//ia310142.us.archive.org/2/items/theoryfunctreal01hobsrich/theoryfunctreal01hobsrich.

pdf)。読んでみるとよいかもしれない…と思ったのだが、やり始めて「はてな?」。ずばり書 いてあるわけではなさそうだ。[3]でもう一つあげられている

福原満州雄, 微積分学 (数学解析第一巻),至文堂 (1952), pp.398–400.

を見てみるかな…

ドキュメント内 2 2 ( Riemann ( 2 ( ( 2 ( (.8.4 (PDF 2 (ページ 84-88)