第3章 世界史と日本史の内容関連に基づく単元開発
第2節 開発単元の指導案
1 学習指導案に基づく指導例
この節では、新たに開発した学習指導案を基に内容を検討する。前章で提 示したr大航海時代(ヨーロッパ人の来航)」の単元構成を組み替えて、より流れが理 解しやすいように工夫を試みた。具体的には、別々であった第8章の「東アジアの状況」
「清朝と東アジア」をまとめて授業を展開する。
(1)目付:O月X日(△)・科目:世界史B・学級:□年◇組・指導者:中田将樹
(2)単元名:第8章 アジア諸地域の繁栄 1節 東アジア・東南アジア世界の動向 2節一清代の中国と隣接諸地域 東アジアの状況 清朝と東アジア
(3)単元観:交易の活発は東アジア世界に大きな変革をもたらした。中国東北部では、
女真族が勢力を拡大し、ヌルハチが自立して、やがて清王朝を建国した。
その勢いは当時中国を支配していた明王朝に及び1644年、明は農民反乱 により碑亡した。一方、日本も交易の汗発化やヨーロッパ人によっても.
たらされた新式の火器により大きな変化を遂げる。14世紀に鎌倉幕府が 滅亡し、新たに室町幕府が成立した。足利義満の時代には、途絶えてい た中国との交渉が本格的に始まった。勘合貿易である。しかし応仁の乱 後、国内は乱れ群雄割拠の戦国時代に入った。その中から、織田信長・
が台頭し旧来の室町幕府を倒し、部下の豊臣秀吉が天下統一を実現した。
彼は、朝鮮半島に侵出したが朝鮮民衆の抵抗にあい、政権の基盤を弱め た。やがて、江戸幕府が成立し新たな支配者となった徳川家康は、朱印 船貿易を促進し、東南アジア方面と活発な交易を展開した。しかし、江 戸幕府は国内の統率を固めるため、17世紀前半に日本人の海外渡航や帰 舷を禁止し、鎖国体制を確立した。
(4)単元の指導目標1①明朝滅亡の原因を内外両面から考察させる。
②信長・秀吉の台頭を,交易の活発化と火器の伝来による新興 勢力の台頭という東アジア地域の時代的特徴から把握させる。
③日本人の東南アジア進出を押さえ,鎖国政策の世界史的意義 を考察させる。
(5)生徒競:略
(6)単元の指導計画:東アジアの状況・清朝と東アジア[50分]…本時」
(7)本時の主題:東アジアの状況・清朝と東アジア
(8)本時の目標:①明朝滅亡の原因を内外両面から考察させる。
②信長・秀吉の台頭を,交易の活発化と火器の伝来による新興勢力 の台頭という東アジア地域の時代的特徴から把握させる。
③日本人の東南アジア進出を押さえ,鎖国政策の世界史的意義を考 察させる。
(9)資料・準備:山川出版社『詳説世界史』
(10)評価の視点:①授業で出てきた諸問題に対して関心が持てたか。
②様々な問題に対する思考力がついたか。
[指導過程]
段階 指導項目 学習内容・活動」 指導上の留意点 評価の観点
①東アジア・東南アジアのつ ①図版を用いて生 ①興味を持てた
ながりに興味をもたせる。 件に説明をする。 か。
導入
(5分) ②本時の学習内容に触れる。
・女真族の台頭
・明の衰退
・日本の動向(室町〜江戸)
・諸地域の動向
中国東北地方 ③明の衰退によって支配を ③女真・女直・満 の動向 受けていた女真族が台頭し 州という呼称は導 てきたことを理解する。 入の時点で混乱の ないように留意す
る。
展開
(40分) ④ヌルハチが独自の国家建 ④八旗の旗色を紹 ④内容が理解でき
設をすすめ、明に対抗してい 介し、満州族の制 たか。
き、2代目のホンタイジが皇 度への関心を引
帝と称し、さらに支配を強化 く。
していったことを理解する。
明の衰退 ⑤北虜南倭に続いて、朝鮮半 ⑤明朝滅亡の原因 島や中国東北地方にも戦争 を内外両面永弓考 がひろがり、軍事費が増加し 察させる。
財政難に陥り、重税と飢誰の ために各地で反乱が起こり、
李自成によって明が滅亡し た事を理解する。
日本の動向と ⑥交易の活発化やヨーロッ ⑥はじめにこ鎌倉 ⑥内容が理解でき 諸地域の動向 パ人の来航により、日本も大 幕府滅亡から室町 たか。
きな変化を迎えることを理 幕府までの日本の
解する。 動向を簡単…こ説明
し理解させる。
⑦織目ヨ信長・豊臣秀吉の登場 ⑦秀吉の朝鮮侵略 ⑦興味を持てた
により、混乱していた国内が と亀甲船、耳塚な か。
統一され、秀吉による朝鮮出 どの説明から生徒 兵により多くの人々が犠牲 の関心を引く。
になった事を理解する。
⑧江戸時代初期、東南アジア ⑧鎖国政策の是非 ⑧問題点が確認で との交易により日本人が海 を生徒に質問し、 きたか。
外に進出していったが、やが 江戸幕府の対応へ て、鎖国により交流が限定的 の興味を高める。
なものになっていった事を また、日本人の東
理解する。 南アジア進出を押
さえ、鎖国政策の 世界史的意義を考
察させる。
⑨明朝の衰退に始まった東 ⑨本時の内容を振 ⑨日本と他の地域 まとめ アジアの変革に続き、日本の り返えらせ、まと の動向が確認でき
(5分) 動向を同時進行でその推移 めさせる。 たか。
を確認する。また、この単元 で扱った以外の地域と比較
し理解する。
【資料① 学習指導案】
【資料① 学習指導案】は、第2章第1節で取り上げた内容を基に作成したものである。
3つの中から、この単元を取り上げた理由は現状の教科書の構成・本文内容から判断し て日本史との内容関連が少ないからである。世界史の視点からこの時代は、ヨーロッパ 人が海外進出を積極的に行い、急速に世界の一体化が進んだ時期に当たる。一方、日本 史の視点からこの時代は、中世から近世へと大きく社会構造が変化する時期に当たる。
その要因は、ヨーロッパ人の来航が大きく影響している。つまり、今までアジア世界(と りわけ中国)しか知らなかった日本が、初めて西洋という世界を認識し、それによって もたらされる様々な要素が日本をも変えていくエネルギーになっていった。世界史・日 本史両方の視点から検証をした結果、「ヨーロッパ人の来航」という同じ理由があがって くる。従って、世界史・日本史の内容関連がなされていなければならず、現状それがな されていない事が問題なのである。具体的な事例をあげると、決定的に世界史の教科書 の記述において日本に関する内容が少ないという事である。前章の本文内容・巻末の年 表を取り上げて検証をおこなったが、本文記述は章を跨いで時代の推移を把握しづらく、
巻末の年表は、生徒がおおよそ時代の推移を把握する手助けになるには程遠い内容にな っている。それらの課題を解消する目的で、私達が生まれ育った日本について学習する 機会を設けた。本文構成が章を跨ぐ形で構成されていたものを、中世から近世へと移行 していく社会構造の変化が把握しやすいように再構成を試みた。第8章第2節の単元に した理由は、ここで取り扱われている時代は中国の清朝で、日本は江戸時代で鎖国体制 を確立した時代に当たる。ここで、一旦日本は外交の窓口を特定の国々に制限してしま う。次に世界の表舞台に日本が登場するのは、ペリーの来航による鎖国体制の崩壊、す なわち、近代になってしまう。従って、中世から近世にかけての日本の動向一を確認する には、この単元が最もふさわしいと判断したのである。
2 板書計画に基づく指導例
[板書計画コ…ゴシック太字は、重要語句を表している
◇東アジアの状況・清朝と東アジア
(1)中国東北地方の動向
a、女真族(女直、のち満州人)の台頭…農牧・狩猟生活
b.ヌルハチ(太祖 位1616〜1626)の自立…建州女真(女直)の首長 ①女真族を統一…国号:後金(アイソン)
②ハ旗の編制・満州文字の制作…明に対抗 c.ホンタイジ(太宗 位1623〜1643)
→内モンゴルのチャハル征服、国号を清と改称(1636)、李氏朝鮮を属国 一(2)明の衰退
a.永楽帝死後…政局の混乱(宙官の勢力増大・官僚の政権争い)、北虜南倭→財政 難
b.万暦帝(神宗)時代(16世紀後半) ・張居正の改革 条鞭法の実施(財政再
建)
C.万暦帝後半以降の内憂外患
①東林派(顧憲成ら)・非東林派(魏忠賢らの宙官に与する)の党争 ②豊臣秀吉の朝鮮侵略・女真族の台頭に苦慮 財政難
d.李自成の乱(農民反乱):北京占領・滅亡(崇禎帝自殺)(1644)
(3)日本の動向と諸地域の動向
a.政治混乱…鎌倉幕府の滅亡・南北朝時代(1392.合一)、倭遠の活動活発化 b.室町幕府(足利義満)の勘合貿易…日本国王に封ぜられる:倭逮防止の為 c.織田信長(1573.室町幕府滅亡)→豊臣秀吉の日本統一(1590)…火縄銃・大 砲による
d.豊臣秀吉の朝鮮侵略(壬辰・丁酉の倭乱、1592・1597)
→明の援軍・李舜臣率いる水軍(亀甲船)の抵抗…日本軍の撤退 ①朝鮮・明の被害と反感(御■1氏の国交回復交渉に支障)
②豊臣政権の弱体化
③活字印刷伝来、陶工渡来(薩摩・萩・平戸・高取焼など)