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営破綻した企業を安値で買い あさる外資系企業が「ハゲタ カ」ファンドと呼ばれていた 頃に比べると、日本市場はか なり発展した。PEもすっかり日本のビジネ ス用語として定着はしたが、だからと言っ てPE投資会社への戦略的売却が今すぐ大潮 流になる、というわけではない。官僚的な 経営体質をもつ大企業のほとんどは、どこ かの部門がコアでないと認めて売却するこ とに、経営陣が強い抵抗感を抱いている。そもそも取締役の誰かが今問題となってい る部門への初期投資を認めたか、あるいは 途中でその部門の運営に携わったかなど、
何らかの形で関わっていたケースがほとん どだ。問題となっている部門が大きけれ ば大きいほど、関与したことのある幹部の 地位は高く、よってその部門が売却される 可能性は低くなる。日本で大規模な取引が これほど少ないの主な理由は、おそらくそ こにある。確かに、カネボウ、三洋電機、
フジタ、西武ホールディングスなど最近の 大きなPE案件は依然として、不良資産が らみだった。スリーアイの代表取締役及び スリーアイアジアの共同経営者、マーク・
ソーントン氏は、仮に不良資産でなくて も、日本市場で売りに出る企業のほとんど が赤字体質だったり、経営体質に致命的な 問題を抱えたものばかりだと指摘する。
前述したように、LLPが認められ、その 活動範囲が拡大されたのは規制緩和のおか げで、これはPE投資会社が活動できる環境 づくりの決め手となった。しかしPE投資会 社が初期に急成長したのはほかに、銀行が 同時に自分たちの不良債権処理を急いだか らでもある。とりわけ政府が金融システム 再生計画を実行し始めた2002年以降、不
良債権問題の処理は加速化した。おかげで 市場に多くの資産が出回るようになったこ とに加え、企業財務はメインバンクが面倒 を見るという仕組みがそれまで以上に弱体 化した。こうした流れを受けて、PE活動は 2003年から2004年にかけて本格的に勢いづ いたのだ。
日本市場のアナリストの多くは、日本に おけるPE活動の最大の障害は間違いなく、
効率化を企業に求める金融市場からの圧力 が不十分なことだと指摘する。さらには、
日本式ビジネスと金融取引が未だに相容れ ないのも、大きな障害だという。しかし場 合によっては、PE投資会社の方が戦略的買 い手よりも日本の売り手にマッチしている ということもある。交渉を始める段階のPE 投資会社は、個人的な人間関係やお互いの 居心地の良さを重視するし、経営陣の「独 立性」や重役ポジションは守ると提案する し、秘密保持を重視する。またお互いにほ かとは交渉していないことも重視する。JTP のベネシュ氏が「日本式M&A」と呼ぶもの の特性に、PE投資会社のこうした様々なス タイルが、ある程度は合致するのだ。
さらに、PE投資会社は自分たちで事業 を経営するわけではないので、売り手側と すれば、PE投資会社に自分たちを売却して も、憎いライバル会社に身売りするのとは 訳が違う。MBOの場合は、経営陣は独立 性を保ったまま、社内での地位を失わずに 済む。またアナリストのほとんどは、PE投 資会社が将来にわたって案件を獲得するに は、企業と協力的なアプローチをとり、あ そこは経営陣と一緒に仕事をする会社だと 評価を確立しなくてはならないはずだと見 ている。これは情勢を楽観する者も、悲観 する者もほとんどみんな同じだ。売り手側
がこういう考えに慣れてくれば、PE投資会 社のもつ様々な特徴によって、PE投資会社 は売り手企業が売却先に選ぶ第一候補とな るはずだ。
また、各々のPE投資会社が成功している かどうかは別として、そうした存在が日本 にあるということ自体が、日本でのM&A活 動全体にプラス効果をもたらしている。今 回の取材に協力してくれたアナリストの多 くは、PE投資会社からのアプローチが格段 に増えている現状で、アプローチを受ける 側の日本企業はそれに呼応する形で自分た ちの事業の中で何がコアビジネスで何がそ うでないか、改めて考えるようになってい ると指摘する。企業は、より良いIR(投資家 向け情報提供)が必要だとすでに認識して おり、それには自分たちのビジネスが何な のか決めなくてはならないのだ。
投資銀行側から状況を見ている日興シ ティグループのイアン・ドレイトン氏も、
確かにそういう傾向はあると話す。PE投資 会社からの提案をきっかけに企業が投資銀 行に相談を持ち込み、ビジネス戦略につい て検討を始めるケースが増えているという のだ。
それと同時に、PEFからの競争が増える と、売り手企業側は単独の買い手と独占交 渉するのではなく、買い手同士に入札させ るようになるかもしれない。資産の売却益 をできるだけ増やしたい、賢い売り手に とっては、これは願ってもないことだ。ラ ザード・フレールの畠山氏によると、PE投資 会社はエグジットの成功を確実にもたらす ことができるし、競争が激しくなれば買値 もつりあがるだけに、PE投資会社との取引 を求める企業側の需要が自然と、戦略的売 却の供給を生み出すかもしれない。
優秀な戦略的買い手はすでに、PE投資 会社に対抗して手を打ち始めている。例え ば、精密モーター製造の日本電産では、買
収案件獲得をめぐり投資ファンドとの競争 が激化する中、情報収集や交渉技術を強化 するためM&A部門を新設する予定だ。日 本電産はこれまで主に、他の会社を買収・
再生することによって、成長してきたから だ。これまでの買収実績は23社だが、景気 回復に伴い、経営難に陥る会社の数が減っ てきた。そのため、新設する部門が前より 柔軟なM&Aの仕組みを作り、PE投資会社と の競争力アップに貢献することを期待して いる。
今後の見通し
次の5年間は、PE全般に何をもたらすのだろ うか。中でも、従来型のPEプレーヤーはど うなるのだろうか。いくつかのシナリオが 想定できる。不良資産の減少と共に市場規 模も縮小するだろうという悲観的な見方も あるが、PEFの新たな波は日本の景気回復に 新しいビジネスチャンスを見出している。
すなわち後者のPEFは、日本の経済成長や金 融市場の回復によって、金融以外の多くの 企業が買収案件を探し求める体力を持つよ うになったと見ている。自分たちのビジネ ス拡大のためにM&Aを活用する企業が増え れば、ノンコア部門や収益性の低い部門を 売却する会社も増えるだろうと期待されて いる。新世代のPE投資会社がねらっている のは、こういう資産なのだ。
大きな取引が新しく成立する余地は当然 まだ十分残っている。ノンコア部門をいく つも抱えてリストラを進めている企業、経 営陣の継承問題や、経験したことのない市 場の変化に直面している企業などは、いく らでもある。新しいシナジーや統合を必要 としている成熟産業(食料品、一般製造、
消費材など)の企業もある。金融サービ ス、製薬、ヘルスケアなどの業界では、規 制緩和などがもたらす変化に頭の固い経営 者が対応しきれていない企業も、いくつも
ある。そしてテクノロジー、アウトソーシ ング、ライフスタイルサービスといった業 界には、成長が大きく期待されている企業 があるのだ。
これらの企業は全て、PE投資家にとって チャンスとなりうる。少なくとも、理論上 は。しかし、PEの将来について悲観論に同 調するのは簡単なことだ。もしもPEが、と りわけ従来の独立型のPEが、日本のM&A市 場において、今のような儲かりはするが余 興的な存在ではなく、メインストリームの 存在となるためには、これまでに述べてき た障害をまずは克服しなければならない。
しかし、そういう展開はただちにはなさそ うだ。
実際のところ、PEFの運営環境は今より も悪化しかねない。ライブドアの粉飾事件 を受けて、金融業界のお目付役たる金融庁 は、LLP規制を強化する構えだ。LLP向けに 経済産業省が整えた柔軟な経営構造を台無 しにしてしまう、最低資本金や認可制の導 入など様々な規制事項を、金融庁は検討し ている。そうした規制の導入は、上場して いる親会社の後ろ盾があり、親会社と同じ ように運営されているPE投資会社にとって 有利に働く。
税制はすでに、そうした親会社系PE投資 会社に有利だ。LLPの構成員に配分される 利益は、キャピタルゲインのように優遇さ れず、通常の所得として課税されるからだ
(この所得としての課税を回避する方策は すでに編み出されつつあるが)。
機関プレーヤーが優遇され、人材は不足 し、案件獲得のため必死な競争が続く現状 では、専門性が低く、粗野で未熟な案件の やり方が今後もPE業界を支配するだろう。
戦略的売り手がPE業界を有望な取引相手と して選ぶようになるには、PE業界がある種 の付加価値スキルを身につけることが必要 だが、そうしたスキルを開発しようとする
動きもこのままでは失速してしまう。優れ たPEFはもちろん、今後も市場で活動し続け る。しかし、業界全体が信頼性を向上させ られなければ、資産を売りたいと思ってい る売り手は、今後も引き続き、戦略的買い 手を選び続けるだろう。
PE業界は、業界に相応しいイメージアッ プをしてくれるプレーヤーを必要として いる。それにはプレーヤーの総数を減らし て、優良プレーヤーを増やすことだ。PEは まさにこの方向に向かいつつあると見る者 もいる。フィナンシャルアドバイザー会社 GCAの代表取締役で、日本におけるPEの立 役者でもある佐山展生氏は最近の日本経済 新聞インタビューで、国内にある約100の ファンドのうち「約70%が数年のうちに消 えるだろう」と予測している。
仮に業界が信頼を獲得したとしても、
日本人経営者が進んでPEに売るかどうかに ついては、大きな疑問が残る。長引く不景 気の間に自分たちの過ちに気づいた日本人 経営者が、利潤最大化をもっと重視するよ うになるのではないかという期待はもちろ ん大きい。構造の変化によって、昔のやり 方にはもう戻ることができはいはずだとい う期待もある。あるいは、日本の若者は上 の世代よりも、金儲けに熱心だという意見 もある。日本の経営慣習は決定的に変わっ た、もう後戻りしないだろうと、多くの情 報通は確信している。業界の現状をよく表 す好例は、米国有数の議決権行使助言会社 グラス・ルイスの動きだ。同社は、日本国 内の需要増を背景に、東京事務所の開設を 6ヵ月も早めたのだ。グラス・ルイスはかね てから、日本企業の株主総会の分析におい て、日本市場で取引する外国投資家から頼 りにされてきた。同社は既に複数の日本の 機関投資家と契約している。そして、彼ら の分析はすでに影響力をもつようになって いる。たとえば、東京エレクトロンは2005