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来のPEプレーヤーにとっても う一つの障害は、日本におけ るディールソーシング(案件発 掘)の難しさだ。企業風土が保 守的で、かつ縁故中心主義の日本では、ま してや競争が激化している状況では、案件 発掘は難しい。ほんの数年前までは、PEビ ジネスは今ほど難しいものではなかった。

PE市場で活動する企業が今より少なかった からというだけでなく、挑戦する勇気さえ あれば誰でも何がしかの案件は発掘できる というくらい、投資機会がたくさんあった からだ。銀行の不良債権問題のせいで、い わゆる「手の届くところにある果実」状態 の簡単な案件はたくさんあった。つまり、

コアビジネスはしっかりしているがバラン スシートが弱いため、PE投資会社が得意と するような企業財務の再構築を必要として いるような企業が、たくさんあったのだ。

こうした「手の届くところにある果実」

は、まだたくさん残っていると主張する人 もいる(下記参照)。しかし「果実」が木 の高いところにあるか低いところにあるか はともかくも、案件発掘こそがPEビジネス の生命線だ。独自の独占的な案件のフロー を開拓することでPE投資会社は成功するも のだと、ラザードの畠山氏は話す。米国で はこれが可能だ。企業経営者は売り手とし て戦略的に行動するし、取引相手として自 分からPE投資会社を探し求めることが少な くないからだ。

しかし、最近IBMが自分たちのパソコン 製造事業を売却したように、収益性が足り ないからといって企業がそのコアビジネス を売却してしまうことには、日本ではまだ まだ抵抗がある。さらに日本企業が売り手 として売却先を探していたとしても、ある

PE投資会社のブランド力や評判がいいから といってそのファンドを取引相手と選ぶこ とはまずあり得ない。「日本では、権威あ るグローバルなPE投資会社だからと言っ て、むこうからビジネスがやってくるなど ということはない。独自の付加価値を提供 できると示せなければだめだ。日本人経営 者にとってPE投資会社のネームバリューな ど、たいした意味がないのだ」と畠山氏は 言う。

畠山氏の説にも一理ある。外資系PE会社 のブランド力は、日本ではほとんど通用し ない。しかしその外資系PE投資会社がブラ ンド力のある日本人を顧問として雇い入れ れば、日本の経済界は注目する。日本長期 信用銀行(現在の新生銀行)を再生したこ とで有名な米国PEFリップルウッドはまさに この方法によって、日本におけるビジネス を確立した(囲み参照)。リップルウッド のような会社はさらに、多額の資金を素早 く提供することができるのだ。

案件発掘のためにリップルウッドのよう なネットワークを構築できるのは、規模も 最大級で、資金力も最大級の有力PE投資会 社だけだろう。小規模の会社はずっと苦労 する。なので、有望な売り手の玄関口から 中に入り込むため、小規模のPE投資会社は 斬新な手法を編み出した。事業会社がもつ 取引先の多さと、PE投資会社がもつ金融手 腕を結びつけるというものだ。たとえば、

日本プライベートエクイティは、エレクト ロニクス分野の子会社を買収すべく、三洋 電機キャピタルと組んだ。日本ベンチャー・

キャピタルはインターネット・マーケティ ングのオプトと提携し、30億円規模のファ ンドを設立した。オプトの主な役割は、

シナジー効果を生みそうなIT業界や携帯電

話業界を対象に、ターゲット・ベンチャー を探し出すことだ。オプトは見つけたベン チャー企業に、ビジネスプランや金融面で のアドバイスも提供する。米国投資会社ゼ ンシン・キャピタル・パートナーズも、オン ラインゲームコンテンツ会社アエリアと提 携し、IT業界に10億円のファンドを設立し た。

一方で、独立性を保ちたい中規模のPE 投資会社にとって、案件獲得の競争はおそ ろしく手強い課題だ。独立系ファンドがア イディアやコネクションをもらうために投 資銀行に接触を試みるのはよくあることだ が、成功するには、独自の案件フローを作 り出す必要がある。そのためには、よその どの会社でもなく自分たちを取引相手とし て選ぶべきだという、その理由を売り手に 提示しなくてはならない。M&A取引につい てアドバイスする独立系金融コンサルタン ト、JTPの代表取締役ニコラス・ベネシュ氏 は、売り手に選ばれるためには、これまで の実績を示したり、金融工学の域を超えた 付加価値を生み出した経験を示したりする ことが有用だと話す。あるいは有能な経営 者と関係があることや、買収後の優れた戦 略をもっていること、経営者サイドに立つ アドバイザーだと評価されていること̶̶

などを示すのも役立つという。競争に勝つ ために高すぎる買値をひたすら払い続ける わけにはいかないと、ベネシュ氏は言う。

たとえ高値を払い続けるつもりがあったと しても、資金だけではダメだ。資金だけな ら業界内にいくらでもあり、それだけでは 競争力にならないというのだ。

「経営者サイドに立つアドバイザー」

という評判を確立してきたPE投資会社が、

日本にもいくつかある。シナジーの片岡氏 はアドバンテージ・パートナーズ、ユニゾ ン・キャピタル、MKSパートナーズなどと いった先行組の名前を挙げる。こうした会

社はその実績によって市場に認知され、そ の結果、さらに資金を調達し、有能なス タッフを雇い入れることができた。日興シ ティグループ投資銀行本部ディレクターの イアン・ドレイトン氏も同意見だ。日本の ような発展途上の市場の黎明期には、先行 組としての優位性が重要だという。成功が 成功を生み、やがてそのうち、圧倒的に強 い企業が登場してくるというわけだ。

後発組でも競争に参入することはでき るが、それには他社よりも多く払うか、他 社よりも多くの付加価値を提供するかに よって、自社を差別化できないと無理だ。

才能よりも資金の方が豊富な市場では、

後者の付加価値提供よりも、多額の金を払 う前者の手法の方がずっと簡単だ。新たな 価値を付け加えるには、他社がもっていな い何か、つまりネットワークや、特定業界 での専門性、新しい(あるいは海外)市場 へのアクセス、ストラクチャリングや取引 実行のスキル、買収企業の経営をそっくり 引き取るだけの有能な経営者を呼び込める 力̶̶などを、相手企業に提示できなくて はならないからだ。

しかしペルミラのガムチ氏は、もはや これですら、PE投資会社の差別化には不十 分だと指摘する。「最近では、ただ単なる コスト削減策を提案するだけではだめだ。

戦略的な運営上の改善点を見つけ出し、新 しい価値を生み出すための戦略をその企業 経営トップが実行したくなるように、トッ プをやる気にさせなくてはならない」とガ ムチ氏は話す。日本に拠点を置き、ポート フォリオに11社抱えているビルディング 2という小さなPF投資会社のパートナー、

マーク・フェリス氏は、自分の会社もそう やって事業を築いてきたのだと言う。ビル ディング2の経営陣はかつて日本で、優良 企業を設立し、運営し、そして売却した。

これが信用獲得につながったのだという。

しかし、最も優れたPE投資会社でさえ、

戦略的な買い手がやるような付加価値の付 け方を同じように真似るのは難しい。JTPの ベネシュ氏によると、ほとんどのPEFは不足 している流動性を生み出すことで価値を提 供する。しかも、戦略的な買い手よりも素 早くだ。PEFは資金管理を再構築したり、

債権をより素早く回収したり、いろいろな ところで経費を削減したりするかもしれな い。しかしPEFは、新規商品開発や大幅な方 向転換など本当の意味での戦略変更はほと んどできない。ほとんどのPEFができるのは せいぜい、買収企業の経営を頭の固い取締 役会から切り離し、採算の取れない事業分 野を売却したり減価償却したりできるよう にすることだ。

それ以上のことをするのはどんな市場で も、簡単なことではない。しかし日本市場 では特に、それが難しい。理由は簡単。経 営再建能力に優れた経験豊かな専門家がPE 市場に不足しているからだ。一橋大学大学 院国際企業戦略研究科のマイケル・コーバー 教授も、日本のPEにとって最大の制約要因 は経験不足だと指摘する。経験から学ぶほ どの機会が、まだ日本にはないのだと。

最も優れた外資系企業でさえ、専門家 集団の構築には苦労している。例えばカー ライルは東京でも最強のひとつといえる専 門家集団を持っているとされるが、何度も トップを交代し、7年間もかけてやっと、そ れだけの専門家集団を作り上げたのだ。

案件獲得は今後ますます大変になると 予測する市場ウォッチャーもいる。PEに対 するイメージは行き詰った会社の買収と結 びついているため、日本経済の回復によっ てPE躍進の機会は少なくなってしまうと主 張するのが、今の流行だ。東京株式市場が 六年来の最高値に近づきつつあり、資本注 入を必要とするなど経営に行き詰まった会 社自体が減少している状況では、買収ター

ゲットがどんどん減っているように見える かもしれない。

しかし実態は必ずしもそうではない。日 経金融新聞が2006年上旬に行った分析によ ると、自分たちの株式を過半数取得するに 必要な資金額よりも、バランスシート上の キャッシュが多いという会社が68社もあっ た。とはいうものの、不良資産を見つける のがだんだん難しくなってきているのは事 実だ。その状況下にあってPE投資会社は必 然的に、もっと激しく競争し、もっと賢く 仕事をするはずだ。

スパークス・アセット・マネジメント代 表取締役社長の阿部修平氏は、どこを探せ ばいいか分かっていれば、投資機会はまだ いくらでもあると信じている一人だ。阿部 氏の会社はPE的な投資には関わらない代わ りに、経営への影響力確保を念頭におきな がら会社の少数資本を取得する。経済や株 式市場の回復がM&A機会の減少につながる という考え方に、阿部氏は同意しない。こ れは要するに、案件を見つけるには、業界 を理解し、企業を研究し、そして何よりも 企業の経営陣を熟知していなくてはならな いというところに行き着く。経済が回復す れば、現状に満足してしまう経営者も中に いるだろう。それは阿部氏も認めている。

しかし景気が悪かった時代には変革がで きなかった経営者が、景気回復によって財 務的にそれなりの余裕がうまれているおか げで、何か新しいことをできるかもしれな い。投資する価値のある企業とは、こうい う会社のことだと、阿部氏は言う。

こうした知識は、別の何かで簡単に交換 できるようなたぐいのものではない。しか し優れた情報網を開拓することは、出発に すぎない。フィナンシャルバイヤーに売れ るものは行き詰まった事業だけだという、

経営者の感覚が、依然としてPE発展の大き な障害となっているのだ。

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