1.対象となる住宅
前章で「長寿命化」と判定された団地について、ライフサイクルコスト(LCC)の算出を行 う。対象となるのは、以下の9団地である。
団地名 建設年度 構造 戸数 陶器町住宅北棟 S57
低層耐火 5
陶器町住宅中棟 S58 5
陶器町住宅南棟 S58 5
野添住宅 A 棟 S52
中層耐火 24
野添住宅 B 棟 S60 16
野添住宅 C 棟 S59 16
野添住宅 D 棟 S61 9
馬場住宅 S49 中層耐火 14 今里住宅 S62 低層耐火 4
2.ライフサイクルコストの算出方法
LCCの算出については、「公営住宅等長寿命化計画策定指針 平成21年3月国土交通省住宅 局住宅総合整備課」に記載された方法を用いることとする。
以下にその内容を示す。
(1)基本的な考え方
①1棟のLCC改善効果=LCC(計画前)-LCC(計画後)
②LCC(計画前)=(修繕費+建替費)/建設~築後50年までの使用年数
・公営住宅等長寿命化計画に基づく改善事業を実施しない場合の、建設時点から次回の建替え までに要するコスト
③LCC(計画後)=(修繕費+改善費+建替費)/建設~築後70年までの使用年数
・公営住宅等長寿命化計画に基づく改善事業を実施する場合の、建設時点から次回の建替えま でに要するコスト
(2)算出の考え方
・公営住宅等長寿命化計画に基づく長寿命化型改善事業を実施する場合、実施しない場合、そ れぞれの場合について建設時点から次回の建替えまでに要するコストを算出し、住棟単位で 年当たりのコスト比較を行う。
・本算出例においては、戸当たりコストを基に当該住棟の住戸数分を積算して、住棟当たりの コストを算出する。
・なお、建設後一定年数が経過した実際の住棟に当てはめてコストを比較することが望ましい が、過去の累積修繕費を算出することは困難と考えられる。また、予防保全的な維持管理・
改善を行った場合の効果を見る上でも、本算出例では、現時点で当該住棟を建設した場合を 想定し、今後、長寿命化型改善を実施する場合と実施しない場合の比較を行う。
(3)算出の手順
<計画前モデル>
①使用年数
・事業主体の過去の建替事例における、建替前住棟の築年数を構造毎に平均した数値を基本 とする。
②累積修繕費
・修繕費=建替工事費×修繕費乗率
・上記の修繕費算出式、及び p50【設定条件】における修繕項目・修繕費乗率・修繕周期に 基づいて、建設時点から上記①「使用年数」経過時点までの修繕費を累積した費用とする。
③建替工事費
・事業主体の過去の建替事例における、構造毎に平均した戸当たり建設費とする。
④計画前LCC
・計画前LCC=(③建替工事費+②累積修繕費)÷①使用年数
(単位:円/戸・年)
<計画後モデル>
⑤使用年数
・当該改善事業を行うことによって想定される当該住棟の使用年数。
⑥累積修繕費
・修繕費=建替工事費×修繕費乗率
・上記の修繕費算出式、及び p50【設定条件】における修繕項目・修繕費乗率・修繕周期に 基づいて、建設時点から上記⑤「使用年数」経過時点までの修繕費を累積した費用とする。
⑦長寿命化型改善工事費
・当該改善を複数回行う場合はそれらの合計費用とする。
⑧建替工事費
・事業主体の過去の建替事例における、構造毎に平均した戸当たり建設費とする。
⑨計画後LCC
・計画後LCC=(⑧建替工事費+⑦長寿命化型改善工事費+⑥累積修繕費)
÷⑤使用年数 (単位:円/戸・年)
<LCC改善効果>
⑩年平均改善額
・上記④、⑨より、年平均改善額=④計画前LCC-⑨計画後LCC
⑪累積改善額
・上記⑩年平均改善額について、将来コストを社会的割引率4%/年により現在価値化し、上 記⑤使用年数期間の累積改善額を算出する。
・現在価値化のための算出式は次の通り。
築後経過年数a年における年平均改善額bの現在価値=b×c a:築後経過年数
b:上記⑩年平均改善額
c:現在価値化係数 c=1÷(1+d)a d:社会的割引率(0.04(4%))
⑫年平均改善額(現在価値化)
・上記⑤⑪より、年平均改善額(現在価値化)=⑪累積改善額÷⑤使用年数
(単位:円/戸・年)
・以上より求めた戸当たり年平均改善額(現在価値化)を、当該住棟の住戸数分を積算して、
住棟当たりの年平均改善額を算出する。年平均改善額がプラスであれば、LCC縮減効果 があると判断できる。
【設定条件】
■修繕費
修繕項目 小修繕 量水器 給水ポンプ 給湯器 外壁 屋上防水
修繕費乗率 0.278% 0.232% 0.046% 1.296% 4.882% 2.472%
修繕周期 1年 8年 10年 13年 15年 15年
修繕項目 排水ポンプ 共聴アンテナ 給水管 流し台 排水管洗浄
修繕費乗率 0.074% 0.037% 2.778% 1.296% 0.093%
修繕周期 15年 15年 20年 20年 20年
※上表の計画修繕項目は全て長寿命化型改善に該当しない(従前の仕様と比して性能が向上 しない)と設定している
3.ライフサイクルコストの概算工事費単価
LCCの算出にかかる概算工事費単価については、過去の改修工事等の事例を参考に、以下の 通り設定する。
種別 団地名 1棟あたり単価
(円)
1戸あたり単価
(円)
外壁改修工事費 陶器町北棟(2階、5戸) 10,000,000 2,000,000 陶器町中棟(2階、5戸) 10,000,000 2,000,000 陶器町南棟(2階、5戸) 10,000,000 2,000,000 野添住宅A棟(4階建て24戸) 22,000,000 916,667 野添住宅B棟(4階建て16戸) 16,500,000 1,031,250 野添住宅C棟(4階建て16戸) 16,500,000 1,031,250 野添住宅D棟(3階建て9戸) 9,500,000 1,055,556 馬場住宅(4階、14戸) 14,500,000 1,035,714 今里住宅(2階、4戸) 5,000,000 1,250,000 屋根改修工事費 陶器町北棟(2階、5戸) 8,000,000 1,600,000 陶器町中棟(2階、5戸) 8,000,000 1,600,000 陶器町南棟(2階、5戸) 8,000,000 1,600,000 野添住宅B棟(4階建て16戸) 9,000,000 562,500 野添住宅C棟(4階建て16戸) 9,000,000 562,500 野添住宅D棟(3階建て9戸) 9,000,000 1,000,000 馬場住宅(4階、14戸) 9,000,000 642,857 今里住宅(2階、4戸) 5,000,000 1,250,000 配管改修工事費 野添住宅B棟(4 階建て 16 戸) 5,600,000 350,000
野添住宅C棟(4 階建て 16 戸) 5,600,000 350,000 野添住宅D棟(3 階建て 9 戸) 5,000,000 555,556 馬場住宅(4 階、14 戸) 5,600,000 400,000
建替え費用 17,000,000円/戸
4.ライフサイクルコストの計算結果
以上の算出方法により、対象団地に対するLCCを算出したところ、いずれの団地も年平均改 善額がプラスとなり、LCC縮減効果があると判断できた。
団地
LCC 縮減効果
(千円/年・棟)
外壁・屋根・配管改修分 陶器町住宅北棟 75
陶器町住宅中棟 75
陶器町住宅南棟 75
野添住宅A棟 669
野添住宅B棟 367
野添住宅C棟 367 野添住宅D棟 178
馬場住宅 312
今里住宅 81