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鉄道橋設計競技を体験して

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高木 芳光

TAKAKI Yoshio

ととした。同時に委員会での検討内容は、議事 録にまとめ公開することで、各委員の意見を含 む審査側の意向を鮮明にしつつ、委員会の責任 で最優秀作品を選定することとした。この最初 の委員会で議論した市民参加のあり方の中で、

ある委員の方が「安全に対し、民主主義的な多 数決にゆだねることは出来ない。安全も含めて 委員会の責任で選定することが重要である」と 意見を述べられたが、まったく同感である。

委員会での作品審査は、2 段階で実施するこ ととした。これは応募者の負担を軽減するため である。一次審査は、デザイン提案と構造主部 材寸法の記載にとどめ、6 者選定する。二次審 査では、一次審査選定者を対象として、一次審 査のアイデアをベースに基本設計レベルの構造 計算を行い、ブラッシュアップしたもので行う ものとした。

設計競技の実施

設計競技の対象は、広瀬川橋梁のほか、広瀬 川に隣接する西公園内の高架橋、擁壁、坑口な ど一連の鉄道構造物で、総延長は約 340 mであ る。応募締切の平成 18 年 1 月 20 日までに全国 から 54 者の応募があり、平成 18 年 6 月 23 日 の第一次審査に、実際に応募したのは 29 者で ある。

一次審査は、デザインコンペとして応募者を 伏せて行われた。審査上のポイントは、構造物 自体の美しさ、橋梁から公園高架橋部さらに坑 口につながる連続性や一体性の実現、河川環境 への配慮、河畔緑地との調和、構造物の実現性 などである。一案ずつ各委員の評価を披露しな がら進め、全ての終わった段階で投票し 29 作 品から 15 作品に絞った。さらに詳細な検討が 進められ、6 作品に絞られた。この段階で、応 募者を明らかにし、二次審査に求められる鉄道 橋の技術的課題に懸念のある場合には、事前に 文書で質問し、回答を求めることとした。

二次審査は、仙台メディアパークの 7 階会議 室において、応募者のプレゼンテーションと質

疑応答で始まった。1 階のオープンスクエアー では全作品の展示、7 階での審査の模様を放映 した。プレゼンテーションの後に、各委員の見 解と評価を披露し、相互に質問しあった。議論 内容は、連続する各構造物の周辺環境との調和、

鉄道橋としての美しさなどである。これらは技 術的課題は別として、明確な正解というものが ないために議論が伯仲し、予定時間を大幅に超 過してしまった。残念ながら、全ての面で突出 した評価を得られた作品はなかったが、全員一 致で最優秀賞 1 作品、優秀賞 2 作品、特別賞 1 作品を選出した。図− 1、− 2 に最優秀賞を受 賞した㈱ドーコンのパースを示す。この作品は、

主橋梁は張出の大きな逆三角形をした最大支間 70 mの 3 径間連続 PRC 箱桁橋、アプローチ高 架橋は支間 5 mの RC スラブ式 CFT 柱ラーメン 橋で、デザインに優れ、実現性の高いものとな っている。

設計における私の考え

この設計競技との関わりの中で、絶えず意識 していたことを、次に少し詳しく述べる。

鉄道橋におけるデザインは、当然のことなが ら衣服のデザインと異なり安全であることが第 一で、「人は美しいけれど危険な橋に対してリス クを冒そうとしない」との考えである。私は国 鉄構造物設計事務所勤務の経験があり、委員当 時は、JR 東日本東北工事事務所の設計管理者と して、鉄道構造物の設計・計画の責任者の立場 にあった。JR 東日本の左沢線(山形〜寒河江)

最上川橋梁は経年 100 年になる現役のトラス橋 である。このように、鉄道橋は長年に渡り安全 が確保され、人々に親しまれるものでありたい と考える。設計管理者として鉄道橋を計画する 場合に考慮していることは、安全性、使用性、

経済性、景観である。これらは相互補助的な関 係にあり、地形との調和を図り、視覚的エレガ ンスを追求することや、ユーザーの満足度を考 慮することは、経済性とは何ら相反するもので ないと考える。

建設される鉄道橋はメンテナンスフリーが理 想であるが、現実的にはローメンテナンスであ ることが望まれる。ローメンテナンスを考える 上で重要となるのが疲労耐力である。鉄道橋で 発生している主な変状は腐食と疲労によるもの である。腐食は適正な塗り替えを実施すれば変 状は防げる。疲労による変状は構造ディテール の影響が大きく、疲労が原因で発生した変状の 補修は非常に困難で特殊な技術が要求される。

したがって、私の構造形式の選定には、疲労耐 力に課題が無いかが大きく影響している。メン テナンスを容易にするためには適切な排水設備、

流心に位置する橋脚のシュー点検足場などの付 属設備が必要となる。これらも景観に大きく影 響を与えるが、これらを入れたパースは残念な がらほとんどなかった。

石積みのアーチ橋のように力の流れがスムー ズな構造物は美しいと感じる。言い換えれば力 の流れに逆らった形を作ると、色々なところに 無理が生じ構造体としてのバランスが悪く、メ ンテナンスに手が掛かるものになりかねない。

形状について付け加えると、スパンと橋脚の形 状、高さと桁の形状のバランスに配慮すれば機 能美に優れたものになると考える。

構造物を造るとなると、当然経済性を意識し なければならないが、これも配慮すれば景観に 優れたものになると考える。具体的には、秩序

と規則性(均整の取れたスパンと一定に統一し た断面)は、型枠および支保工の転用が可能とな り、経済性と景観に優れたものになると考える。

振り返って

鉄道橋の設計競技ということもあり、特に新 しい構造形式の提案は見られなかった。前記し たように鉄道橋は開業した後の補修は極めて困 難であり、新しいものは耐疲労性などを考える と実験による検証しかないのが現実である。し たがって、安全な輸送空間の確保、最適な構造 ディテールの採用、景観へ配慮した形状と、極 めて制約条件の多い中での提案は、応募者へ大 きな負担を強いたと思われる。そのような条件 下において、今回多数の応募があったことは、

土木構造物においても景観への関心の高さを改 めて感じた。

私にデザインのセンスはあるのかと問われれ ば、あるとはとてもいえず、醜いものは分かる 程度の技量のものが、委員としての役目が果た せたかが気がかりである。現在、詳細設計が進 められており、間もなく工事が始まると思われ る。現場が近いこともあり、これからも見守っ ていきたい。

(ジェイアール東日本コンサルタンツ株式会社 東北支店副支店長)

図−1 広瀬川橋梁  ㈱ドーコン提供 図−2 アプローチ高架橋  ㈱ドーコン提供

20年 8月号 IT・信号・運行管理 20年 9月号 環境対策・エコロジー

20年 10月号 ユニバーサルデザイン・人間工学 20年 11月号 メンテナンス・省力化

20年 12月号 地上設備 21年 1月号 これからの鉄道 21年 2月号 海外・国際会議 21年 3月号 サイバネティクス

編集委員会では、平成20年度の特集テーマを上記の ように決定し、6月号までスタートしております。会員 皆様の中で、上記特集号へ投稿希望がありましたら、

まずそのテーマの概要書を編集部中島宛てにお送りく ださい。編集委員会での審議を経て折り返しご返事を 致します。

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