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第3章では、いままで紹介した先行研究に登場したバンブーイングリッシュを使って 量的分析を行う。ここではバンブーイングリッシュの異なり語数を比べることで実際使 用した語彙の数を分析する。

ところが、多くのバンブーイングリッシュを扱っている資料であるため、複数のペー ジを要する長めの表になっている。そこで、やむを得ず、ここには載せず、<付録1>

で分析資料を紹介する。<付録1>はこれから説明する量的分析・質的分析を行うのに 欠かせ事の出来ないものであるため、<付録1>を参考にしながら本分析を見ることを 強く勧める。ただ、A4 用紙に合わせるために、やや見づらい構成になっているがご了 承願いたい。

ちなみに<付録1>での「B.E.」は「バンブーイングリッシュ(Bamboo English)」

の頭文字をとったものである。

異なり語数

分析の結果、筆者のデータで登場したバンブーイングリッシュからの異なり語数は合 計「348語」だった。つまり、バンブーイングリッシュの使用者が約348個の語彙をつ かってコミュニケーションを取っていたことになる。

ここには、ほぼ同じ意味を持っているバンブーイングリッシュでもつづりが異なると 発音が違ってくるので変異形の一つとみなして数えた。ただし、ハイフン表記(-)の 有無などは、実質的にバンブーイングリッシュの発音に影響を与えてないため、同一の ものとしている。たとえば、<付録1>の「21.sukoshi 」「22. sko-she」「23. skosh」

「24. skoshi」は日本語の「少し」を起点言語としているもので、意味の差はないが、

表記が微妙に違っている。これらはそれぞれ異なる資料からのものであり、バンブーイ ングリッシュでの「少し」を指す語彙は4通りの発音の差は許容されたことになる。筆 者はこれらの変位形の形が多く出現する語彙はそれだけ多用されたバンブーイングリ ッシュであることを示す一つの物差しとしても重要な資料と考えている。

132 正誤判断及び意味拡張

バンブーイングリッシュにおける誤用の割合を出す前に、正誤判断の基準を述べてお く。まず、筆者は正誤判断を次の 3 つのパターンに沿って分類した。それは「正用」、

「誤用」、「意味拡張」である。

まず、「正用」はバンブーイングリッシュの語彙の発音が起点言語と類似しており(同 じではなくてもいい)、かつ意味が起点言語の意味とも類似している場合である。本ピ ジンが主に対面コミュニケーションの際に使われたものを考えて発音は起点言語と全 く同じではなくても似ており、意味が合えば「正用」とみなした。

次に「誤用」は、バンブーイングリッシュに起点言語の意味が含まれていない場合で ある。起点言語の意味が通じないと、もはや同じ語彙とみなすことはできないと判断し た。なお、起点言語が2つ以上混ざっている語彙なども起点言語で使用していない限り

「誤用」と判断した。起点言語には使われない品詞で変化したものも誤用とみなした。

「意味拡張」の判定基準は、「起点言語での意味を含まれているか」であった。つま り、たとえ起点言語では使用しない意味がバンブーイングリッシュの語彙に含まれてい ても、その意味に起点言語の意味まで含まれていれば、意味の範囲が広くなったと判定 し「意味拡張」と判断した。

この判定基準を分かりやすく、図で表す。円はそれぞれ「起点言語の意味」と「バン ブーイングリッシュの意味」を表している。

133

図3-1 バンブーイングリッシュの正誤判断及び意味拡張の図

さて、上記の基準で348個のバンブーイングリッシュの語彙を分類したら、以下のよ うな分布をなしていた。

表3-1.バンブーイングリッシュの正誤判断及び意味拡張の分布

分類 正用 誤用 意味拡張 未詳 合計 語数 122

(35%)

188

(54%)

36

(10%)

2

(1%)

348

表3-2の分布を見ると未詳が2語有るが、それは元となる資料に正確な意味の説明が なされてないものである(「hubba hubba」, 「to get the shaft」)。でも未詳は2つにすぎな いので全体的な割合に大きな影響は与えない。分類の結果、正用が348語中、122語を 占めており、全体の35%であるが、誤用が 188 語も検出されており、全体の54%にも 上ることが分かった。つまり、起点言語とはことなる意味をもった語彙が半分以上を占 めていたことになる。

【正用】 【誤用】

【意味拡張】

134

バンブーイングリッシュにおける品詞別分類

次はバンブーイングリッシの品詞の分類を行う。あらかじめ断っておくが、文献資料 によっては品詞の説明がされていないものが多かった。そこで、例文が載っている場合 は例文での活用をみて品詞を推測している。また、例文すら載っていない資料では、起 点言語の品詞を参考にして最も近い品詞を入れた。また、バンブーイングリッシュの特 性上、一つの語彙が多様な品詞を担当している場合も少なくない。従って、本分類はあ くまでもバンブーイングリッシュの大まかな傾向を探る目的で参考していただきたい。

表3-2.バンブーイングリッシュの品詞別分類

上記の表の品詞はそれぞれ名詞、句、形容詞、感動詞、名詞と動詞(2つの品詞で使 われたもの)、動詞、副詞、名詞と形容詞(2つの品詞で使われたもの)、名詞と動詞と 句(3 つの品詞で使われたもの)、名詞と動詞と感動詞(3つの品詞で使われたもの)、

名詞と動詞と形容詞(3つの品詞で使われたもの)、名詞と句(2 つの品詞で使われた もの)、動詞と副詞(2つの品詞で使われたもの)、形容詞と副詞と動詞(3つの品詞で 使われたもの)、所有格、接尾辞の順である。

ここでの「句」は、語で区切った場合、品詞の判断が難しいものを句として扱った。

例えば、「whac-a-do」は日本語の「分かった」を語源としているが、バンブーイング リッシュ使用者のほとんどはこれを個別単語として認識せず、一つの句として認識した と考えられる。そこでここでは句として扱った。

バンブーイングリッシュのの品詞の分類を行った結果、全体の51%であり、名詞が

名、

名、

名、

動、

名、

動、

名、

動、

名、

動、

形、

副、

177 54 21 19 19 18 16 9 3 3 2 2 2 1 1 1

51 16 6 5 5 5 5 3 1 1 1 1 1 0 0 0

135

圧倒的な割合を占めていた。その次を句が続いていることが分かる。名詞と句は他の品 詞と比べてあまり語形の変化を起こさずに使えるからかも知れない。その次に形容詞や 感動詞、副詞が多く使われていることも分かった。

起点言語による品詞別分類

次に、起点言語における品詞別分類も行う。起点言語の場合はバンブーイングリッシ ュで使用された用例及び説明がある場合、その記述に沿って品詞を記入した。では起点 言語の品詞を以下の表で表す。

表3-3.起点言語の品詞別分類

起点言語別の分類でもバンブーイングリッシュの品詞別分類と同じく、名詞の占める 割合が最も大きいことが分かる。ところが、バンブーイングリッシュの品詞比較と大き く異なる点は、起点言語には存在しない語彙(「無し」)が2番目に大きな割合を占めて いることである。これはバンブーイングリッシュの品詞の多くが、起点言語には存在し ない品詞であることを示唆している。

副、

名、

名、

形、

138 74 38 26 20 18 10 8 5 3 3 1 1 1 1 1

40 21 11 7 6 5 3 2 1 1 1 0 0 0 0 0

136

ドキュメント内 バンブーイングリッシュの社会言語学的研究 (ページ 134-139)

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