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量子力学

ドキュメント内 Maxwell (ページ 86-91)

第 9 章 粒子浴に接した系と大正準集団 61

12.2 量子力学

また、正規完全直交関数系{ui(x)}に対して成り立つ関係式

i

ui(x)ui(y) = δ(x−y) (12.17) は、ブラケット表示では

i

|ui⟩ ⟨ui|= 1 (12.18) となる。

12.2.2 純粋状態と混合状態

波動関数であらわされる量子力学的な状態を純粋状態(pure state)と呼 ぶ。これに対して、系がどの量子状態にあるのか確率的にしかわかって いないような場合、その系は混合状態(mixed state)にあるという。

例えば、

c11+c22⟩ ≡ |ψ⟩

であらわされる状態は、12の重ね合わせ状態であるが、それは

|ψ⟩という一つの波動関数で記述される純粋状態である。それに対して、

統計集団が表しているのは混合状態である。混合状態を数学的に表現す るために、次の節で説明する密度演算子が用いられる。

12.2.3 密度演算子

今、系が状態ϕiにある確率がwiで与えられる混合状態を考える。この 混合状態を記述する密度演算子(density operator)

ˆ ρ≡

i

i⟩wi⟨ϕi| (12.19)

で定義する2。ただし、wi

wi [0,1], ∑

i

wi = 1 (12.20)

を満たす実数である。量子統計力学において密度演算子は、古典統計力 学における分布関数の役割を果たす。このことを以下に見てゆく。

このような混合状態に対して物理量Aの観測結果したときの結果には、

量子力学確率と統計力学的確率の2つの確率が共存しているので、その 期待値の計算には2種類の平均が必要である:

⟨A⟩=∑

i

wi⟨A⟩ϕi.

2 密度演算子を行列表示したものを密度行列という。

これに式(12.16)を用いると以下のように変形できる:

⟨A⟩=∑

i

wi⟨A⟩ϕi =∑

i

wi⟨ϕi|Aˆi

=∑

i

wi⟨ϕi|Aˆ (∑

j

|uj⟩ ⟨uj| )

i

=∑

i

j

wi⟨ϕi|Aˆ|ujujϕi

=∑

j

i

ujϕi

wi⟨ϕi|Aˆ|uj

=∑

j

⟨uj| (∑

i

i⟩wi⟨ϕi| )

Aˆ|uj⟩. これは密度演算子を用いると

⟨A⟩=∑

j

⟨ujˆAˆ|uj= Tr [

ˆ ρAˆ

]

(12.21) と表される。Trはトレース(跡)と呼び、対角和をとることを表す。

密度演算子の時間発展は式(12.14)および(12.15)を用いると id

dtρ(t) =ˆ ∑

i

( id

dt|ϕi )

wi⟨ϕi|+∑

i

i⟩wi (

id dt ⟨ϕi|

)

= ∑

i

H |ˆ ϕi⟩wi⟨ϕi| −

i

i⟩wi⟨ϕi|Hˆ

= Hˆρˆ−ρˆHˆ

となるので、密度演算子の時間発展方程式として、

id

dtρ(t) =ˆ [ ˆ

ρ(t), Hˆ]

(12.22) を得る。これは、Heisenberg 描像における物理量O の時間発展方程式 (Heisenberg方程式)

id dt

Oˆ =[O,ˆ Hˆ]

(12.23) の符号を変えたものになっている。

純粋状態に対する密度演算子

例えば、w1 = 1で他のwi = 0 (i̸= 1)とすると、系は1にあるとい うことなので、純粋状態にある。その場合の密度演算子(12.19)を書くと

ˆ

ρ=1⟩ ⟨ϕ1| となる。これは

ˆ

ρρˆ=1⟩ ⟨ϕ11⟩ ⟨ϕ1|=1⟩ ⟨ϕ1|= ˆρ

を満たす。このように、自分自身との積が自分自身に戻る演算子、即ち

PˆPˆ = ˆP (12.24)

を満たす演算子を射影演算子という。

純粋状態に対応する密度演算子は射影演算子となる。逆に、密度演算 子が射影演算子の条件(12.24)を満たす場合には純粋状態を表す3。 問題 12.3 射影演算子の条件(12.24)を満たす密度演算子が純粋状態を表 すことを示せ。ヒント:wiが一つだけ1で、他はゼロであることを示せ ばよい。

12.2.4 正準集団に対する密度演算子

正準集団では、エネルギーEの量子状態|E⟩(ハミルトニアンの固有状 態)の出現確率はeβE/Zで与えられるので、正準集団に対する密度演算 子ρˆcan

ˆ

ρcan=∑

i

eβEi

Z |Ei⟩ ⟨Ei|; Z =∑

i

eβEi (12.25) となる。これはハミルトニアンHˆを用いると

ˆ

ρcan = eβHˆ

Z ; Z = Tr [

eβHˆ ]

(12.26) と表される。ρˆcanの満す時間発展方程式(12.22)は

id

dtρˆcan =[ ˆ

ρcan, Hˆ]

= 0 (12.27)

となり、時間変化しない。

問題 12.4 演算子(12.25)が演算子の関数(12.26)で表されることを示せ。

ヒント:演算子Aˆの関数f( ˆA)は、関数f(x)のテーラー展開 f(x) =

n=0

1

n!f(n)(0)xn を用いて

f( ˆA) =

n=0

1

n!f(n)(0) ˆAn と定義される。

問題 12.5 式(12.27)を示せ。

3注意:射影演算子がすべて密度演算子になるわけではない。例えば、Pˆ =|e1⟩ ⟨e1|+

|e2⟩ ⟨e2|は式(12.24)を満たし、射影演算であるが、Tr ˆP = 2となり、式(12.20)を満た さないので密度演算子ではない。

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