2)
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)(頻度不明)
低ナトリウム血症、頭痛、集中力の欠如、記憶障害、錯乱、幻覚、痙攣、失神等を伴
う抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)があらわれることがあるので、異常が認
められた場合には投与を中止し、水分摂取の制限等適切な処置を行うこと。
2) 国内承認時までの国内外の臨床試験における重篤な有害事象を検討した結果、抗利尿ホルモン不適 合分泌および低ナトリウム血症は認められませんでしたが、海外市販後では重篤な抗利尿ホルモン 不適合分泌、低ナトリウム血症が報告されております。また、他のSSRIでも重大な副作用として 注意喚起されています。したがって、異常が認められた場合には投与を中止し、水分摂取の制限等 適切な処置を行うようにしてください。以下に海外市販後症例の概要を示します。
<参考:症例の概要(海外文献12))>
性別
年齢 使用理由 1日投与量
投与期間 経過 転帰
女性
75歳 うつ病 不明
5日間
抗利尿ホルモン不適合分泌 合併症:高血圧
併用薬: アムロジピン、ヒドロクロロチアジド、アルプラゾラム、アセチルサリチル 酸、エソメプラゾール(esomeprazole)、ドネペジル
回復 投与開始7日前
投与開始6日前 投与開始日
1日目 6日目
11日目
錯乱を引き起こし、救急治療室(ER)を受診した。
ERにて頭部CTスキャンが実施され、軽度の萎縮が 認められたが、それ以外は正常であった。
臨床検査の結果は、血清ナトリウム129mmol/L(正 常値:135-145mmol/L)であった。脳のMRIより、中 等度の小血管障害及び頭蓋内の末梢血管疾患が 認められたが、高度の狭窄、腫瘤、急性の梗塞及び 硬膜下血腫の所見は認められなかった。
血清ナトリウムは133mmol/Lであり、この数値は6日間 でわずかに変化した。
本剤の服用が開始された。
ドネペジルの服用が開始された。
血清ナトリウムは116mmol/L、血清浸透圧は250 mOsm/kg H2O、尿浸透圧は318mOsm/kg H2O、尿 中ナトリウムは106mmol/Lであった。
本剤の服用が中止された。
血清ナトリウムは139mmol/Lまで上昇した。
抗利尿ホルモン不適合分泌の症状は、血清ナトリウム低下(135mmol/L未満)、尿浸透圧(200mOsm/kg H2O超)、尿中ナトリウム(20mmol/L超)、血清浸 透圧(280mOsm/kg H2O未満)を特徴とします。
60
4. 副作用(続き)
(1)重大な副作用
3)
セロトニン症候群(頻度不明)
不安、焦燥、興奮、振戦、ミオクローヌス、高熱等のセロトニン症候群があらわれる
ことがある。セロトニン作用薬との併用時に発現する可能性が高くなるため、特に注
意すること(「相互作用」の項参照)。異常が認められた場合には投与を中止し、水分補
給等の全身管理とともに適切な処置を行うこと。
3) 国内承認時までの国内外の臨床試験における重篤な有害事象を検討した結果、セロトニン症候群は 認められませんでしたが、海外市販後において重篤なセロトニン症候群が報告されております。セ ロトニン症候群は脳内のセロトニン濃度が過剰に上昇した際に発現すると考えられており、セロト ニン作用薬と本剤との併用により発現する可能性が高まると考えられるため、本剤とセロトニン作 用薬を併用する際は特に注意が必要です。したがって、異常が認められた場合には投与を中止し、
水分補給等の全身管理とともに適切な処置を行うようにしてください。以下に海外市販後症例の概 要を示します。
<参考:症例の概要(海外文献13))>
性別
年齢 使用理由 1日投与量
投与期間 経過 転帰
女性
24歳 うつ病 不明*
セロトニン症候群
併用薬: メタキサロン(metaxalone)、カリソプロドール(carisoprodol)、ジサ イクロミン、ドロスピレノン/エチニルエストラジオールの合剤、イブプロ フェン
回復 本剤投与開始日
副作用発現6週間前 発現日
本剤(用量不明)の投与が開始された。
本剤の用量が30mg/日(国内で承認された用法・用 量外である)に増量された。
発熱、抑制不能のからだのゆれ及び数時間にわたる 重度の下肢痛を訴え救急治療室(ER)を受診した。
ERでの体温は約37.1℃、血圧は151/82mmHg、脈 拍は129回/分、呼吸数は24回/分及び酸素飽和度 は94%であった。グラスゴー昏睡尺度は15であった。
ER在室中に、口腔体温が約38.9℃まで急速に上昇 した。
評価時に、汗をかき、震えていた。
検査の間、終始戦慄がみられ、流涎症、下痢及び筋 固縮を引き起こしていた。
協調運動の障害及びミオクローヌスが認められたが、
深部腱反射は正常であった。また、錯乱、激越、不 安、易刺激性及び落ち着きのなさを呈していた。セロ トニン症候群の疑いと診断され集中治療室(ICU)
へ入院した。
ICUでダントロレン1mg/kgを1回、フェンタニル25μg/
時(必要時)、アセトアミノフェン650mg/4時間(必要 時)、及びシプロヘプタジン4mg/4時間を24時間投与 された。
一晩で状態は改善した。
経過観察では顕著な異常所見は認められず、症状 は回復した。
*本剤の全投与期間は不明であるが、副作用発現時は30mg/日を6週間投与していた。