1. 慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
(1) 著明な徐脈等の不整脈又はその既往歴のある患者、QT延長を起こすことが知られている
薬剤を投与中の患者、うっ血性心不全、低カリウム血症の患者[本剤の投与によりQTが
延長する可能性がある。] (「重要な基本的注意」の項参照)
(1) 海外で実施された綿密なQT試験(Thorough QT試験a)において、本剤10mg/日投与時のQTcNi 間隔の変化量(平均値)は-2.9~3.7msec、プラセボ群との変化量の差の両側90%信頼区間の上限値
(6.8msec)が事前に設定した基準値である10msecを超えなかったため、本剤10mg/日はQTcNib延長 作用陰性cと考えられました。一方、承認用量を超えた本剤30mg/日投与時のQTcNi間隔の変化量
(平均値)は3.7~9.7msecで、プラセボ群との変化量の差の両側90%信頼区間の上限値(13.9msec)
が10msecを超えたことから、本剤30mg/日はQTcNib延長作用陽性cと考えられました。
国内用量反応2試験併合成績において、QTcFd間隔の変化量の平均値(最終観察時)は、本剤10mg 投与群では2.3msec、本剤20mg投与群では6.1msecで、いずれも10msecを超えませんでした。ま た、本剤10mg投与群、本剤20mg投与群のいずれにおいても臨床的に問題となるQT延長(測定値が 500msec超または変化量が60msecを超えた症例)は認められませんでした。
国内長期投与試験において、QTcFd間隔の変化量の平均値は、2週時2.4msec、8週時6.1msec、24 週時8.0msec、52週時5.8msec、最終観察時7.1msecでした。
一方、ICHガイドライン(E14:非抗不整脈薬におけるQT/QTc間隔の延長と催不整脈作用の潜 在的可能性に関する臨床的評価e)には、QT/QTc間隔を延長する医薬品の添付文書の記載では、催 不整脈リスクを増大させることが知られている病態のリスト(例えば、うっ血性心不全、QT延長 症候群、低カリウム血症)の記載を配慮することが望ましいとされていることから、不整脈又はそ の既往歴のある患者、QT延長を起こすことが知られている薬剤を投与中の患者、うっ血性心不全、
低カリウム血症の患者に本剤を投与する場合には慎重に投与するよう注意喚起を設定しました。
また、2012年6月5日付の厚生労働省医薬食品局安全対策課長通知(指示)に基づき、著明な徐脈 等を引き起こしている患者では、torsades de pointes等の重篤な不整脈を起こすことが知られてい ることから、「著明な徐脈等」を追記しました。
以下に、海外Thorough QT試験の成績を示します。
a: 通常は、健康成人を対象に実施され、医薬品開発の後期に、目標とする患者集団において、QT/QTc間隔の延長作用を入念 に調べる必要があるか否かを決定するために用いられる試験です。薬剤に催不整脈性があることを示すことを目的とした試 験ではありません。Thorough QT試験では、QT/QTc間隔の延長の検出力の信頼性を高めるために、陽性対照として、規制 当局が関心をもつ基準値であるQT/QTc間隔の平均値を5msec変化させる効果を有する薬剤を用い、本剤のThorough QT試 験では陽性対照として、モキシフロキサシンを用いました。
b: 本試験では、個別の被験者データを用いた心拍数補正法(QTcNi)を使用しました。ICHガイドラインでは広範囲の心拍数に ついてのQT間隔測定値が被験者別に多く得られる場合、この補正法が適しているとされています。
c:ICHガイドライン(E14)の綿密なQT試験(Thorough QT試験:QT/QTc評価試験)の解釈を以下に抜粋します。
d:Fridericia補正法によるQT間隔データ
e:厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知 薬食審査発1023第1号(平成21年10月23日付)
QT/QTc評価試験が陰性とは、その薬剤のQTc間隔への時間を一致させた平均効果の最大値に対する95%片側信頼区間 の上限が10msecを下回る場合を指す。この定義は、被験薬のQT/QTc間隔への作用の平均がおよそ5msecを超えない(平 均QT/QTc間隔の延長が5msec前後、あるいはそれ未満の薬剤は、torsades de pointesを引き起こさないようである)こと を合理的に保証するために選択されている。時間を一致させた差の最大値がこの基準値を超える場合、試験結果は陽性 とされる。試験結果が陽性であれば、その後の医薬品の開発段階における評価方法には影響を与えるが、この試験結果 はその薬剤が催不整脈性であることを意味するものではない。
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<海外Thorough QT試験>
海外の健康成人において、モキシフロキサシンを対照薬としたランダム化プラセボ対照二重盲検 3期クロスオーバー法によるThorough QT試験を実施しました。本剤の評価時の投与量は10mg/日、
30mg/日(承認用量を超えた用量)とし、10mg/日を9日間投与した後、20mg/日を4日間、30mg/日を9 日間投与しました。プラセボ群は22日間投与しました。主要エンドポイントは、QTcNi間隔の投与前 からの変化量(ΔQTcNi間隔)についてのプラセボ投与時との差(ΔΔQTcNi間隔)としました。
本剤10mg投与時(9日目、107例)のΔQTcNi間隔(平均値)は-2.9~3.7msec、ΔΔQTcNi間隔(平均値)
の最大値は、投与後3時間の4.7msec(両側90%信頼区間の下限値, 上限値:2.6, 6.8)で、両側90%信 頼区間の上限値6.8msecが治験実施計画書で規定した値である10msecを超えなかったことから、本剤 10mgはQTcNi延長作用陰性と考えられました。
一方、本剤30mg投与時(22日目、105例)のΔQTcNi間隔(平均値)は3.7~9.7msec、ΔΔQTcNi間隔
(平均値)の最大値は投与後3時間の11.8msec(両側90%信頼区間の下限値, 上限値:9.7, 13.9)で、両側 90%信頼区間の上限値13.9msecが10msecを超えたことから、本剤30mgはQTcNi延長作用陽性と考え られました。また、QTc間隔の変化量と本剤の血漿中濃度に統計学的に有意な相関関係が認められま した。
海外Thorough QT試験における本剤投与時のΔQTcNi間隔およびΔΔQTcNi間隔
投与薬剤 投与後の経過時間 ΔQTcNi間隔の平均値
(msec)
ΔΔQTcNi間隔の平均値
(両側90%信頼区間)
(msec)
本剤10mg
0時間(投与前) -1.9 3.7(1.6, 5.8)
2時間 -2.9 3.1(1.0, 5.2)
3時間 1.4 4.7(2.6, 6.8)
4時間 3.7 4.7(2.6, 6.7)
5時間 3.7 3.9(1.8, 6.0)
7時間 2.6 4.6(2.6, 6.7)
12時間 2.1 2.7(0.6, 4.8)
23時間 2.3 3.8(1.7, 5.9)
本剤30mg
0時間(投与前) -0.5 5.7(3.6, 7.8)
2時間 3.7 9.1(7.0, 11.2)
3時間 8.7 11.8(9.7, 13.9)
4時間 9.7 10.6(8.5, 12.7)
5時間 8.6 8.4(6.3, 10.5)
7時間 8.3 9.9(7.8, 12.0)
12時間 5.0 7.6(5.5, 9.7)
23時間 6.7 7.2(5.0, 9.3)