第 5 章 結論 35
3.5 配信プラットフォームの構成
3.5 配信プラットフォーム
図3.6 SIP URIと配送者のアドレスとの関係
のハンドオーバー時まで使用していた BS 切替前の IP アドレスに対して,次のハンドオー バー時に新しく設定される IPアドレスを上書きする.配送者が新しく BSとの接続を完了 した時点で,配送者の SIP URIに対して IP アドレスとの対応を登録する.SIPサーバは,
IP アドレスの登録時に配信サーバに対して配信元経路の設定を指示する役割を持ち,この 指示に対する配信サーバからの応答をウェアラブルカメラに対して通知する.配信元経路設 定には,登録された IP アドレスを含めて指示を行う.また,視聴者からの問い合わせに対 し,配送者に対応した配信サーバの URL と配送者のIP アドレスを返す機能を持っている.
3.5.2 配信サーバ
配信サーバは,配送者から映像データを受け取り,映像を要求する視聴者に対して映像配 信を行う.SIP サーバからの配信元経路設定の指示と配送者の IP アドレスを受け取ると,
そのアドレスを配信元経路として設定する.設定完了後,SIPサーバに対して設定完了通知 を送る.この完了通知の送信後,配信元経路として設定した IP アドレスから送られてきた 映像データの受信を開始する.配信サーバは映像データを受信すると,そのデータに対し配 信に適した動画形式への変換処理を行う.視聴者からの映像要求を受けると,変換後の映像
3.6 視聴端末
データの配信を開始する.
3.5.3 映像判定モジュール
映像判定モジュールは,ウェアラブル・カメラが送信した映像データの配送経路が変更し たことを判断する.配送者からの映像は,常に映像判定モジュールを介して配信サーバへと 送られる.この映像判定モジュールでは,接続切替を行う前の BSを通る配信経路と,接続 切替後の BSを通る配信経路の両経路情報を保持している.ウェアラブル・カメラのハンド オーバー時,映像データが両方の配信経路から送られてきた時,接続切替後の配信経路から 届いた映像データのみを配信サーバに対して通す処理を行う.
3.6 視聴端末
視聴者は,配信サーバに対して映像の要求を行い,視聴端末を使用して視聴を開始する.
視聴者は,あらかじめ配送者の SIP URI を保持しておく.この SIP URI を用いて配送プ ラットフォーム内の SIPサーバに対して問い合わせを行う.SIPサーバからの返答に含まれ る配信サーバの URL に対して,同じく返答に含まれている IP アドレスをキーとして映像 の取得要求を行う.ここで配信サーバから映像データの送信が始まると視聴を開始出来る.
3.7 映像配信の流れ
提案方式では,ウェアラブル・カメラから配信プラットフォーム,配信プラットフォーム から視聴者へと映像データの受け渡しが行われる.配送プラットフォーム内の配信サーバは,
配送者から映像データを受け取ると,配信に適した動画形式へとリアルタイムに変換処理を 行い,視聴者の要求に応じて配信を行う.
配信開始までの流れ,移動に伴うハンドオーバー時の処理の流れそれぞれについて説明を 行う.
3.7 映像配信の流れ
図3.7 配信開始までの流れ
3.7.1 配信開始までの流れ
これまで説明したウェアラブル・カメラ,配信プラットフォーム,視聴者間における映像 データ配信開始までの流れを説明する.映像配信開始までの流れを図 3.7に示す.以下に,
図3.7における処理の流れを記す.
1. 配送者は BS への接続処理が完了した時点で,配信プラットフォーム内の SIP サーバ に対して自身の IPアドレスを SIP URI とともに登録する.
3.7 映像配信の流れ
2. SIP サーバでは,配送者の SIP URI に対して,送られてきたIP アドレスとの対応を
記憶する.この時,配信サーバに対して,この IPアドレスを送信する.
3. 配信サーバは,SIPサーバから送られてきた IP アドレスを,映像データの配信元アド レスとして設定する.設定が完了すると,SIP サーバに対して経路設定完了の通知を 送る.
4. SIP サーバは,配信サーバから経路設定完了通知を受け取ると,ウェアラブル・カメラ
に対し,配信サーバの URL とともに完了通知を転送する.
5. ウェアラブル・カメラは完了通知を受け取ると,配信サーバに対して映像データの配送 を開始する.
6. 配信サーバは,経路設定を行ったウェアラブル・カメラからの映像データを受け取ると,
配信に適した映像形式へと変換を行う.
7. 視聴者には,配信を行う前に配送者の SIP URI を通知しておく.この URI を用いて SIP サーバに対して配送者情報の問い合わせを行う.
8. SIP サーバは,視聴者からの問い合わせに対して配送者の映像データを受け取る配信
サーバの URL と,配送者の IP アドレスを返す.
9. 視聴者は,SIPサーバから返された配信サーバの URLに対し,配送者の IP アドレス をキーとして,映像の取得要求を行う.
10. 配信サーバは,視聴者の映像取得要求に対して,対応する IPアドレスからの映像デー タを配信する.
11. 視聴者は,配信サーバからの映像データを受け取り,視聴を開始する.
ここまでの処理が終了した時点で,配送者から視聴者に対しての映像配信が始まる.配送 者は,移動に伴ってハンドオーバーが必要となるまで同じ BS からの映像配信を継続する.
ウェアラブル・カメラのから配送される映像データの配信経路が変更した際のハンドオー バー処理について説明する.配信経路切替の流れを図3.8に示す.図3.8の処理の要点を以 下に記す.
1. 配送者は現在,接続切替を行う前の配送経路で配信サーバへと映像データを配送してい る.配信サーバ内の映像判定モジュールでは,現在の配送経路からの映像データを通過 させ,配信サーバへと送っている.
3.7 映像配信の流れ
2. ウェアラブル・カメラの BS 接続切替機能である VRaNCo が,配信者の移動に伴い,
新しい BSとの接続を端末に対して要求し,端末は2 つ目の無線LAN インタフェース によって接続処理を行う.
3. 新しい BS との接続処理が完了すると,配送者は SIP サーバに対して配送者の SIP URI を用い,新しく接続した BS から割り当てられた IPアドレスを登録する.
4. SIP サーバは,配信サーバに対し,新しく登録された IP アドレスを配送元経路として
通知する.
5. 配信サーバは,登録された IP アドレスを2 つ目の配信元経路として設定した後,SIP サーバからの通知に対して設定完了の返答を返す.映像判定モジュールでは,この設定 以降,2 つの経路から映像データが送られてきた際に,新しく登録された経路からデー タを受け取る.
6. ウェアラブル・カメラは,配信経路での映像配信の準備が出来次第,映像データの配信 を行う.この時,2 つの無線LAN インタフェースの両方から映像データが流される時 間帯が存在する.
7. 配信サーバ内の映像判定モジュールでは,受け取る映像データを確認し,新しい配信経 路からの映像データのみを視聴者に対して配信する.
8. 配信者が移動すると,接続する BSは 1 台となり,BSの切替が完了する.
以上が,配送プラットフォームにおけるハンドオーバー時の処理である.
第 4 章
提案方式の評価
本章では,本提案方式に対する評価を行った結果を示す.
1.2節で述べたように,現状では,ウェアラブル・カメラと無線 LAN を用いて移動しな がらの映像配信を行なうことは出来ない.これは,まず 1 つ目にどちらの BS にも接続し ていない「瞬断」が発生すること,2 つ目に切替を行った後で IP アドレスが変化してしま うと言う問題があったためであった.このそれぞれを解決できたかの評価を行なう.
4.1 「瞬断」への対応
本研究で提案するハンドオーバー方式では,移動時のどの時間においても,必ず 1 つ以 上の BS と接続を行っている.これは,ウェアラブル・カメラに対して無線 LAN インタ フェースの増設を行ったことで可能となった機能である.この機能追加によって,ハンド オーバー時も片方の無線 LAN インタフェースを使用して通信を継続できるため,瞬断を無 くすことが出来る.よって,「瞬断」による問題を解決可能である.
4.2 IP アドレス変化への対応
異なるネットワークに属する BS に接続する際に起こる IP アドレス変化への問題は,配 送プラットフォーム内の SIP サーバの役割によって解決する.SIP サーバでは,配送者に 対して固有の識別子である SIP URI を設け,この URI に対して 2 つの IP アドレスを対 応させた.これによって,ハンドオーバー時に接続を行なう 2 台の BS 両方を,映像デー タの配信経路として設定することが出来る.このことから,配信サーバ内において,1 つ目
の経路と 2 つ目の経路を同じ配送者のものとして映像データを引き継ぐことが可能なため,
IP アドレスが変化することによる通信の切断の影響を受けない.よって,IP アドレスの変 化に対しても,解決が可能である.
4.3 考察
本研究にて提案を行ったハンドオーバー方法では,BS 切替時の「瞬断」と IP アドレス の変化の 2 つに対応することが可能であるとの結果を得た.方式全体の機能としては,これ らの問題を解決する事ができるとしたが,実際には,両方の BS との接続を行なう際に配送 者の移動状態について詳しくパラメータを決定し,その値を接続切替の判断に反映させなけ ればならない.今後は,無線 LAN BS と実際に機能追加を施したウェアラブル・カメラを 用いて,判断に必要となるデータの採取と,各パラメータに対する重み付けを行った上で評 価式を決定する必要がある.その後,この評価式が正しい決定をすることを証明出来れば,
配送者の移動に適した BS の選択と切替が行える様になる.