2.5.4 有効性の概括評価
2.5.4.3 部分集団での検討
肝機能障害又は腎機能障害を有する患者は、本剤の投与により乳酸アシドーシスが発現 しやすいと考えられるため、これらの患者に対して本剤を投与すべきではない文献6),28)。そ のため、肝機能障害患者又は腎機能障害患者を対象に有効性を検討した臨床試験は実施し ていない。また、すべての臨床試験の除外基準に、登録前直近のAST(GOT)又はALT(GPT)
が各測定機関の基準値上限の 2.5倍以上の患者、肝硬変患者及び登録前直近のクレアチニ ンが男性:1.3 mg/dL以上、女性:1.2 mg/dL以上の患者を設定し、肝機能障害又は腎機能 障害を有する患者は除外して臨床試験を実施した。
小児については、欧米では小児に対する本剤の適応が認められているが、国内における 臨床試験はすべて20歳以上を対象として実施した。なお、日本人の小児を対象とした臨床 試験は実施していない。
本剤は妊娠ラット及び妊娠ウサギにおいて胎児にメトホルミンが移行することが示され ており(2.6.4.4参照)、妊婦での安全性は確立されていないこと、授乳ラットで乳汁中への 移行が報告されている(2.6.4.6参照)ことから、妊婦及び授乳中の婦人に投与すべきでは ない。そのためすべての臨床試験で、妊婦又は妊娠している可能性のある女性、妊娠を希 望している女性及び授乳中の女性は除外とした。なお、糖尿病診療ガイドラインでは、妊 婦へは原則としてインスリン療法が推奨されている文献1)。
したがって、肝機能障害又は腎機能障害を有する患者、小児、妊婦及び授乳中の婦人に おける検討は実施しなかった。
2.5.4.3.1 高齢者における検討
メトホルミン塩酸塩は、海外では高齢者にも投与可能であるが、高齢者は一般に腎機能 又は肝機能が低下しているため乳酸アシドーシスを起こしやすいと考えられており、国内 においては、高齢者への投与は禁忌である。しかし、糖尿病患者の年齢分布から、今後高 齢の糖尿病患者の割合は増加することが予想される文献3)。用量反応検討試験2試験及び増 量効果検討試験では、乳酸の測定を行い、乳酸による中止基準を設定することにより安全 性に十分配慮しながら、対象患者の年齢上限を74歳として臨床試験を実施した。また、増 量効果検討試験における高齢者への投与実績、及び海外及び国内高齢者 PK比較試験にお ける高齢者の薬物動態学的特徴から、長期投与試験では年齢上限を設定せずに臨床試験を 実施した。その結果、単独療法における65歳以上の高齢者は、用量反応検討試験において 750 mg/日で21例(19.8%)、1500 mg/日で31例(29.2%)、増量効果検討試験(1500 mg/日)
において5例(22.7%)、長期投与試験(500~2250 mg/日)においては22例(27.5%)であ った。SU剤併用療法における65歳以上の高齢者は、用量反応検討試験において750 mg/
日で32例(31.4%)、1500 mg/日で37例(35.9%)、増量効果検討試験(1500 mg/日)で6
メトホルミン塩酸塩 2.5 臨床に関する概括評価 Page 43
例(20.0%)、長期投与試験(500~2250 mg/日)においては38例(44.7%)であった。
高齢者(65歳以上)の2型糖尿病に対する本剤の有効性を検討するために、用量反応検 討試験(2試験)、増量効果検討試験、長期投与試験の部分集団解析を行った。
HbA1Cの最終評価時における投与開始前からの変化量について、高齢者と非高齢者(65 歳未満)での部分集団解析の結果を表 2.5.4.3-1に示した。
単独療法、SU 剤併用療法いずれにおいても、高齢者、非高齢者共に HbA1Cが低下し、
本剤は高齢者でも非高齢者と同様に血糖低下作用を示すことが明らかとなった。
表 2.5.4.3-1 高齢者/非高齢者別HbA1C変化量
解析対象集団:FAS
試験名 投与群 区分 N HbA1C (%)変化量 高齢者 21 -0.91±0.67 750 mg/日
非高齢者 85 -0.61±0.61 高齢者 31 -1.08±0.63 用量反応検討試験
(単独療法)
1500 mg/日
非高齢者 75 -1.06±0.69 高齢者 32 -0.83±0.57 750 mg/日
非高齢者 70 -0.69±0.71 高齢者 37 -1.44±0.71 用量反応検討試験
(SU剤併用療法)
1500 mg/日
非高齢者 66 -1.09±0.74 高齢者 5 -1.12±0.44 単独
非高齢者 17 -0.50±0.47 高齢者 6 -0.53±0.55 増量効果検討試験
SU併用
非高齢者 24 -0.50±0.34 高齢者 22 -1.30±0.61 単独
非高齢者 58 -1.32±0.81 高齢者 38 -1.29±0.75 長期投与試験
SU併用
非高齢者 47 -1.29±0.86 Mean±SD
2.5.4.3.2 肥満者/非肥満者における検討
メトホルミン塩酸塩は、海外では肥満2型糖尿病患者で得られたエビデンスにより、肥 満を伴う2型糖尿病治療における第一選択薬として位置付けられてきた文献1)。現在では肥 満に限らず、第一選択薬として推奨されている文献33),34)が、日本人2型糖尿病患者における 肥満による影響を検討するため、用量反応検討試験2試験、増量効果検討試験、長期投与 試験の部分集団解析を行った。その結果、単独療法、SU 剤併用療法いずれにおいても、
肥満、非肥満共にHbA1Cが低下し、本剤は肥満/非肥満にかかわらず血糖降下作用を示すこ とが明らかとなった。
メトホルミン塩酸塩 2.5 臨床に関する概括評価 Page 44
表 2.5.4.3-2 肥満者/非肥満者別HbA1C変化量
解析対象集団:FAS
試験名 投与群 区分 N HbA1C (%)変化量 肥満 52 -0.65±0.59 750 mg/日
非肥満 54 -0.69±0.67 肥満 45 -1.13±0.71 用量反応検討試験
(単独療法)
1500 mg/日
非肥満 61 -1.01±0.64 肥満 35 -0.52±0.59 750 mg/日
非肥満 67 -0.84±0.69 肥満 49 -1.28±0.87 用量反応検討試験
(SU剤併用療法)
1500 mg/日
非肥満 54 -1.16±0.60 肥満 18 -0.68±0.57 単独
非肥満 4 -0.45±0.26 肥満 13 -0.44±0.51 増量効果検討試験
SU併用
非肥満 17 -0.56±0.24 肥満 40 -1.37±0.80 単独
非肥満 40 -1.25±0.72 肥満 39 -1.37±0.90 長期投与試験
SU併用
非肥満 46 -1.22±0.73 Mean±SD
2.5.4.3.3 被験者背景による部分集団解析
被験者背景による本剤の有効性への影響については、有効性を評価した各試験で検討し た(2.7.3.3.3.1項参照)。
主要評価項目であるHbA1Cの投与開始前からの変化量について、以下に示す主な被験者 背景により部分集団解析を行った。
性別、年齢、BMI、罹病期間、食事療法指示カロリー、運動療法の有無、糖尿病合併 症並びにその他合併症の有無、投与開始前HbA1C、投与開始前空腹時血糖、投与開始 前空腹時血清インスリン、SU剤併用療法の場合は併用するSU剤
単独療法では、用量反応検討試験の750 mg/日群及び1500 mg/日群、並びに長期投与試 験のいずれにおいても、投与開始前HbA1Cが高いほどHbA1C変化量が大きかった。用量反 応検討試験の1500 mg/日群及び長期投与試験で投与開始前空腹時血糖が高いほど、HbA1C
変化量が大きかった。その他の背景因子ではHbA1C変化量に大きな違いは認められなかっ た(表2.7.3.3-21参照)。
SU剤併用療法においては、用量反応検討試験の750 mg/日群及び1500 mg/日群、並びに 長期投与試験で、投与開始前HbA1Cが高いほどHbA1C変化量が大きかったが、その他の背 景因子ではHbA1C変化量に大きな違いは認められなかった(表2.7.3.3-22参照)。
以上の部分集団解析の結果から、単独療法、SU 剤併用療法共に、投与開始前 HbA1Cが 高いほどHbA1Cの低下が大きいことが明らかとなった。また、単独療法では投与開始前空 腹時血糖が高いほどHbA1Cの低下が大きかった。一方、背景因子のうち、BMIや性別、年 齢、罹病期間、食事療法指示カロリー、糖尿病合併症及びその他の合併症の有無、併用す るSU 剤の種類、投与開始前空腹時血清インスリンは、本剤の有効性に大きな影響を与え る背景因子ではないことが示唆された。
メトホルミン塩酸塩 2.5 臨床に関する概括評価 Page 45
2.5.4.3.4 投与方法による部分集団解析
長期投与試験では、試験途中より食直前投与へ投与方法の変更を可能として、一部の被 験者で食後投与から食直前投与に投与方法を変更した。その結果、投与開始時はすべての 被験者が食後投与であったが、単独療法では80例中16例、SU剤併用療法では85例中22 例、合計38例の被験者が試験途中で食直前投与に変更された。食直前投与への変更時期は すべての被験者で投与開始34週後以降であり、食直前投与から再度食後投与に変更した被 験者はなかった。食直前投与での投与期間は81.2±28.3日(平均値±標準偏差)であった。
試験途中(投与開始34週後以降)で食直前投与に変更していること、被験者背景を考慮 せず変更が可能な被験者のみで投与方法を変更していること等から、投与方法別に有効性 を厳密に比較することはできないが、食後投与から食直前投与に変更した被験者を「食直 前投与」、食直前投与に変更せず食後投与のみを実施した被験者(投与期間を通して食後投 与であった)を「食後投与」とし、部分集団解析を行い両投与方法の有効性を検討した。
単独療法では、食直前投与16例の食直前投与変更時及び最終評価時における投与開始前 からの HbA1C変化量は、−1.53±0.85%及び−1.59±0.82%であり、食直前投与への変更後に HbA1Cの大きな変動はなく、最終評価時まで血糖コントロールは良好に維持された。食直 前投与への変更時期が、食直前投与のすべての被験者で投与開始34週後以降であるため、
食後投与64例における投与開始34週後以降のHbA1C変化量の推移をみたところ、投与開 始34週後及び54週後で−1.30±0.70%及び−1.31±0.73%であり、34週後以降のHbA1C変化量 は54週後までほぼ一定で維持された。なお、最終評価時における投与開始前からのHbA1C
変化量は、食直前投与で−1.59±0.82%、食後投与で−1.24±0.73%で、いずれの投与方法の被 験者でもHbA1Cは有意に低下した。
SU剤併用療法では、食直前投与22例の食直前投与変更時及び最終評価時における投与 開始前からのHbA1C変化量は、−1.80±0.88%及び−1.79±0.84%であり、食直前投与への変更 後に HbA1Cの大きな変動はなく、最終評価時まで血糖コントロールは良好に維持された。
食後投与63例における投与開始34週後以降のHbA1C変化量の推移は、投与開始34週後 及び54週後で−1.32±0.76%及び−1.25±0.72%であり、34週後以降HbA1C変化量は54週後ま でほぼ一定で維持された。なお、最終評価時における投与開始前からの HbA1C変化量は、
食直前投与で−1.79±0.84%、食後投与で−1.12±0.73%で、いずれの投与方法の被験者でも HbA1Cは有意に低下した。
以上より、食直前投与に変更した場合及び食後投与のみの場合の有効性が確認され、本 剤は食後投与及び食直前投与のいずれの投与方法においても有効性が期待できると考えら れた。