第 3 章 連結した物体の振動
3.6 連続的な物体への極限
56 第3章 連結した物体の振動
とかける。このうち、最後の−2の部分がちょうど1となる。q=−Nからq=N+ 1まで、ちょうど2N+ 2個の−4(N+ 1)×(−2) を足していくことになるからである。なお、最初の2項はどちらも単位円上をぐるりと回るベクトルを一周分足すことに対応してい て、答は0である。以上で係数が正しいことも証明された。
【補足終わり】
3.6. 連続的な物体への極限 57 ということになる。これによって、まず一つめのsinの中身が
npπ
N+ 1 →N+ 1
L x× pπ
N+ 1 = pπ
Lx (3.97)
となる。2個目のsinの中身は少々複雑なので注意深く極限をとる必要がある。
à 2
rk
msin pπ 2(N+ 1)
!
t+αp→ Ã
2
sK(N+ 1)
M N
sin pπ 2(N+ 1)
!
t+αp (3.98)
だが、ここでN+ 1とN は同じようなもの、と考えることにして、
à 2
sK(N+ 1)
M N
sin pπ 2(N+ 1)
!
t+αp→ Ã
2 rK
M(N+ 1) sin pπ 2(N+ 1)
!
t+αp (3.99)
とおく。ここで pπ
2(N+ 1) =θとおくと、
2 rK
M (N+ 1)
| {z }
→pπ2θ
sin pπ 2(N+ 1)
t+αp= ÃrK
M pπ
θ sinθ
!
t+αp (3.100)
と置き直せる。N → ∞極限はθ→0極限であり、lim
θ→0
sinθ
θ = 1を思い出せば、この極限はpπ rK
Mt+αpということ になる。結局解は
y(x, t) = X∞ p=1
Cpsinpπ Lxsin
à pπ
rK Mt+αp
!
(3.101)
ということになる。ただし、Ap
r 2
N+ 1 をあらためてCpと置いた15。 この解の一個一個のモードを見ると、各々の点が振幅Cpsinpπ
Lx、角振動数pπ rK
M で振動していると考えられる。
p= 1からp= 4までの各振動モードの波長、角振動数と振動の様子を以下の表に示す。
腹の数 波長 角振動数 振動の様子
p= 1 2L π
rK M
p= 2 L 2π
rK M
p= 3 2L
3 3π
rK M
p= 4 L
2 4π
rK M
15Cp=Ap
r 2
N+ 1という式を見て、「N→ ∞でCp→0では?」と心配してはいけない。この時、分母のN+ 1が発散するが、同時に分子の Apも発散して有限値になると考える。
58 第3章 連結した物体の振動
sinpπ
Lxという関数はxが2L
p だけ増加すると位相が2π増加する(だから波長が2L
p )ということに気をつけよう。振 動の各モードは両端を固定した弦の振動の形になる。実際の振動はもちろん、これらの各モードが重なり合ったものと なるだろう。
ここで作られた各振動モードは、波ではあるがいわゆる「定常波(standing wave)」であり、どちらにも進行しない。
これは「両端を固定する」という境界条件を置いた結果であって、一般にはそうではない。これについては、連続極限 の方程式を出した後、別の境界条件で解いていきながら考えることにしよう。
3.6.2 連続極限の方程式を作る
以上で、解を先に出したわけだが、今後も「N個の場合を考えて、後からN → ∞の極限をとる」という計算をした のではたいへん面倒なので、最初から最後までN→ ∞の極限をとった形(つまり、物質が連続的に分布している形)で 計算したい。そのためには、方程式自体を連続極限で考えた方がよい。
xn xn-1 xn+1 xn
... ...
n
n n+1
一個のおもりの質量を M
N と一本のばねのばね定数をK(N+ 1)と設定すると、連成振動のn番目の質点の運動方程 式は
M N
d2xn
dt2 =K(N+ 1) (xn−1−2xn+xn+1) (3.102) である(n+ 1番目のばねからはK(N+ 1)(xn+1−xn)の力が左向きに、n番目のばねからはK(N+ 1)(xn−xn−1)の 力が右向きにかかると考える)。ただし、x0とxN+1は0だとしよう16。
そう書くと、方程式は M N
d2y(n∆x)
dt2 =K(N+ 1) (y((n−1)∆x)−2y(n∆x) +y((n+ 1)∆x)) (3.103) に変わる。整理して、
d2y(n∆x)
dt2 =KN(N+ 1)
M (y((n+ 1)∆x) +y((n−1)∆x)−2y(n∆x)) (3.104) としよう。
この式の右辺の極限はy(x, t)という関数の二階微分 ∂2y
∂x2 に対応す ることがわかる。そのことを以下で説明しよう。
まず、
dy
dx = lim
∆x→0
y(x+ ∆x)−y(x)
∆x (3.105)
という微分の定義式どおりの関係を思い出す。これはつまり、x → x+ ∆xの間の関数y(x)の増加率であり、グラフで表現すればグラ フの傾きに対応する。右の図で∆xをどんどん小さくしていくと、
y(x+ ∆x)−y(x)
∆x という量はxの場所での関数の傾きになる。
160番目とN+ 1番目のおもりは存在しない。ちょうど壁にくくりつけられて振動できない端に対応する。
3.6. 連続的な物体への極限 59 さらにこれを微分する。微分の微分、すなわち二階微分は、さらに「ある場所の微分」と「その少し横の場所の微分」
の差として定義される。つまり、右の図のように3つの場所(x−∆x, x, x+ ∆x)でのyによって、二階微分は表現さ れる。具体的には、y(x+ ∆x)−y(x)
∆x と y(x)−y(x−∆x)
∆x の差をとるという計算こそが二階微分である17。まとめる と以下のようになる。
d2y
dx2 = lim
∆x→0 dy
dx(x)−dydx(x−∆x)
∆x
= lim
∆x→0
1
∆x
µy(x+ ∆x)−y(x)
∆x −y(x)−y(x−∆x)
∆x
¶
= lim
∆x→0
1
∆x2(y(x+ ∆x) +y(x−∆x)−2y(x))
(3.106)
ここで、∆x= L
N+ 1 であることを使うと、
d2y dx2 = lim
∆x→0
(N+ 1)2
L2 (y(x+ ∆x) +y(x−∆x)−2y(x)) (3.107) となる。
グラフ上ではこれは傾きの変化であり、線の曲 がり具合に対応するわけである。
ここで、どうせNは∞になるので、NとN+ 1には差がないに等しい、と考えると、(3.107)×KL2 は(3.104)でx=n∆xとしたものと同じだと考M えられる18。つまり、極限をとった結果として、
∂2
∂t2y(x, t) = KL2 M
∂2
∂x2y(x, t) (3.108) という式が出る。これが、N → ∞極限でのy(x, t) の満たすべき方程式である。
この導出の仕方からわかるように、この方程式にtの二階微分があるのは ニュートン力学の運動方程式にtの二階微分があること、つまり「力=(質 量)×(加速度)」のように加速度(二階微分)があることを反映している。
そして、xの二階微分があるのは、ここで働く力が「関数yの勾配を一定にしようとする力」であることを示している。
このような力が働いていると「山」になっているところを下げ、「谷」になっているところをあげるように力が働く。
物理のいろんな局面において、このような形の復元力が現れる。それゆえ、物理のいろんな場面で波動が出現するの である。
17ここでは、微分はx+ ∆xとxの差、二階微分はxとx−∆xの差で定義していることになる。定義の仕方がちぐはぐに見えるかもしれない。
しかし、最後には∆x→0にするのだから、この定義の違いは結果的には何の影響も残さない。
18ここでNとN+ 1を同じと置いたことについて「これでいいのか?」と悩む人がよくいる。だが、Nは今アボガドロ数(6×1023)程度の数に なることを忘れてはいけない。
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