第 5 章 1次元波動の進行
5.3 媒質の違う領域への進入と反射
たとえば光が空気中から水中に進入するとき、あるいは音が暖かい空気から冷たい空気中へと進入するときなど、波 はその境界でさまざまな現象を起こす。特に面白いのは屈折現象なのだが、それは2次元以上で起こることなので後に 回して、1次元の波の場合でどのようなことが起こるかを考えよう。
非常に簡単な例として、x座標が負の領域では波数kの波が、正の領域では波数k0の波が存在できる(両方とも角振 動数はωとする)場合を考えよう。このような状況でx=−∞から波が正の方向に進行してきたとする。波の一部は x= 0にある境界で跳ね返り、一部はxが正の領域に進入していく。
0
(R)
(P) これを式で表すと、
u(x, t) =
½eikx−iωt+Re−ikx−iωt x <0 Peik0x−iωt x >0
(5.13) である。計算を単純にするため、入ってくる右行きの波(入射 波)を振幅1として、eikx−iωtと表現した。反射波は逆向きに 進み、振幅は変化している筈なので、Re−ikx−iωtと表現する。
xが正の領域に進入していく波はPeik0x−iωtと書いた。
5.3. 媒質の違う領域への進入と反射 79 この時、u(x= 0, t)は二つの表現(x <0の領域で考えればe−iωt+Re−iωt、x >0の領域で考えればPeik0x−iωt)を 持つが、この二つはx= 0において一致しなくてはいけない(でないと、x= 0でuの値が不連続にジャンプしてしま う)。この接続条件から、
1 +R=P (5.14)
という式が出る。また微分∂u
∂x
¯¯x=0の接続から、
ik(1−R) =ik0P (5.15)
が成立する。この二つを解く。ik0×(??)−(??)により、
ik0(1 +R)−ik(1−R) = 0 → R= k−k0
k+k0 (5.16)
が出るし、ik×(??) + (??)によって、
2ik=i(k+k0)P → P = 2k
k+k0 (5.17)
が出る。
(
)
+
(
)
+ k k’
k k’
ここで、Pは常に正であるが、Rはk > k0 なら正、k < k0なら負である。
たとえば、光が空気中から水中に入るよう な場合、水中の方が速度は遅くなる。ωは等 しいのに速度ω
k が遅くなるということは、水 中の方が波数が大きい(つまり、k0> k)。こ の場合、反射波は入射波と逆符号となる(位 相がπずれる)。
k0 > kで符号反転し、k > k0ではしない 理由をおおざっぱに言うと以下のような説明 ができる。
透過波の微係数の絶対値k0P = 2kk0
k+k0 は、入射波の傾きの絶対値kに比べ、k < k0では大きくなり、k > k0では小さ くなる。これは、k < k0では波長が短かくなり、波が圧縮された形になる(当然、傾きは増える)ということの反映であ る。入射波より透過波の方が傾きが急になっているが、合成波(入射波+反射波)の傾きは透過波と同じでなくてはなら ない。そのため、反射波は入射波の傾きを強める波でなくてはならない。k > k0では逆に傾きを弱めなくてはならない。
k > k0の場合は自由端反射に似た形の反射が起こるので、境界部分では入射波と反射波が強め合う。境界では透過波
は入射波と反射波の合成と同じ動きをするので、結果として透過波は大きな振幅を持つ。
80 第5章 1次元波動の進行
k > k0の場合の反射と透過
¶ ³
k’
k
2π
2π
µ ´
k < k0の場合の反射と透過
¶ ³
k’
k
2π
2π
µ ´
k < k0の場合を固定端反射に似た形で反射が起こるが、この場合はk < k0でも、境界部分の波は固定されているわけ ではない(が、この場合も「固定端反射する」と表現している本もある)。k > k0の場合と逆に入射波と反射波は弱め合 うので、透過波の振幅は小さくなる。
まとめると、ここで起こった現象は以下の表のようになる。
波数の関係 波数 波長 速度 反射波の位相 境界で波は
k > k0 小さくなる 長くなる 速くなる ずれない 強め合う
k < k0 大きくなる 短くなる 遅くなる πずれる 弱め合う