最後に連結簡約なF 線型代数群の分類とその応用を説明する.
4.4.1 同型定理と存在定理
定理 4.13 (同型定理,[4] 9.6.2). 連結簡約なF 線型代数群とその極大トーラス Gi, Ti, (i= 1,2)が与えられているとする.
(i) ルートデータの同型 ϕ : ΨT2(G2) →∼ ΨT1(G1) に対して,同型 f : G1 →∼ G2 で f(T1) =T2 かつ,f♯ : X(T2) →∼ X(T1)がルートデータの間の同型ϕを引き起こすもの がある.
(ii) (i)の条件を満たす二つの同型f,f′ : (G1, T1)→∼ (G2, T2)に対して,あるt ∈ T1(F) があってf′ =f ◦Ad(t)である.
この定理の構成は次のように若干拡張することができる.F 線型代数群の準同型 f :G→H が全射でKerf が有限(0次元)のとき,f は同種射と呼ばれる.Kerf ⊂ZG
である.連結簡約代数群の同種射 f : G1 ↠ G2 による G1 の Borel 対 (B1, T1) の像 (B2, T2)はG2 のBorel対である(補題3.13).さらに系3.22 (ii)からKerf ⊂ ZG ⊂ T1
だから,全射f :T1 ↠T2 は単射f♯:X(T2),→X(T1)を引き起こす.
定理 4.14 (同種定理,[4] 9.6.5). 連結簡約なF 線型代数群とその極大トーラス Gi, Ti, (i= 1,2)を考える.ルートデータの同種ϕ: ΨT2(G2)→ΨT1(G1),すなわち
(i) ϕ:X(T2),→X(T1)は単射準同型でX(T1)/ϕ(X(T2))は有限群.
(ii) ϕは全単射R(G2, T2) →∼ R(G1, T1)を,その双対準同型tϕ: X∨(T1) ,→ X∨(T2) は全単射R∨(G1, T1)→∼ R∨(G2, T2)を引き起こす.
に対して,同種射f :G1 ↠G2 でf(T1) =T2かつ,f♯:X(T2),→X(T1)がϕに一致す
るものが,T1 共役を除いてただ一つある.
一方で被約なルートデータに付随する連結簡約群が存在する.
定理4.15(存在定理,[4] 10.1.1). 被約ルートデータΨに対して,連結簡約F 線型代数群 Gであって,極大トーラスT ⊂GについてのルートデータΨT(G)がΨに同型であるも のがある.
4.4.2 分裂と基底付きルートデータ
連結簡約F 線型代数群GのBorel対(B, T)を取る.これに単純ルートα ∈ ∆(B, T) のルートベクトルXα ̸= 0,∈gα(F)の族を付け加えた三つ組
spl = (B, T,{Xα}α∈∆(B,T))
を G の分裂という.G の自己同型群 Aut(G) は GL(g) の部分群として F 線型代数 群の構造を持ち,内部自己同型群 Int(G) ≃ G/ZG はその正規部分群である.商群 Aut(G)/Int(G)をGの外部自己同型群と呼んでOut(G)と書く.
補題4.16. (i)Int(G)はGの分裂の集合Spl(G)に単純推移的に作用する.
(ii) 特に分裂 spl = (B, T,{Xα}α∈∆(B,T)) を取れば,θ¯ ∈ Out(G) にその逆像 s(¯θ) ∈ Aut(G)でsplを保つものを対応させる写像s : Out(G)→Aut(G)は完全列
1−→Int(G)−→Aut(G)−→Out(G)−→1 の分裂(切断)を与える.
(iii) 基底付きルートデータ RD(spl) = (X(T),∆(B, T), X∨(T),∆∨(B, T)) を取れば,
Aut(RD(spl))opp ≃Out(G)である.ここで群Hに対してHoppはその逆群を表す.
補題から G の分裂 spl, spl′ ∈ Spl(G) に対して内部自己同型 Ad(g) ∈ Int(G) で Ad(g) : spl →∼ spl′ となるものがただ1つある.この同型に関して {RD(spl)}spl∈Spl(G) は射影系をなす(補題の(iii)から同型の向きは逆になる).その射影極限
RD(G) := lim←−
spl
RD(spl)
をG の基底付きルートデータという.前節の分類定理は標数 0 の代数閉体F によら ないので,C 上の連結簡約代数群Gˆ でRD(G) = (X,∆, X∨,∆∨)の双対ルートデータ
RD∨(G) = (X∨,∆∨, X,∆)をルートデータに持つものが,同型を除いてただひとつ存在 する.これをGのLanglands双対群という.
例4.17. 例4.8から,GLnのLanglands双対群はGLn(C)である.
最後に同種定理の応用を挙げておこう.
系4.18. Gを連結簡約な F 線型代数群として,RD(G) = (X,∆, X∨,∆∨)と書く.∆,
∆∨の生成するアーベル群をそれぞれQ⊂X,Q∨⊂X∨で表す.
(i)Gが半単純であるためには,Q⊗X =Q⊗Qであることが必要十分である.
(ii)そのとき連結半単純群Gsc と同種射p: Gsc ↠Gであって,Gscが単連結,すなわち X∨ =Q∨であるものが,同型を除いてただ1つある.
5 簡約代数群の構造
ここからは再びF を一般の標数が0の体とする.F の代数閉包F¯ を取り,Galois群 Gal( ¯F /F)をΓで表す.
5.1 極大トーラスと有理点
F が代数閉体でない場合でも,F 線型代数群 G 内のトーラスのうちで包含関係に 関して極大なものをG の極大トーラスという.また極大トーラス T ⊂ G の中心化群 ZG(T)⊂GをCartan部分群と呼ぶ.
補題5.1. Gを連結なF 線型代数群とする.
(i)T ⊂Gが極大トーラスならば,係数拡大TF¯ ⊂GF¯ も極大トーラスである.
(ii)任意の半単純元γ ∈G(F)に対して,極大トーラスT ⊂Gでγ ∈T(F)となるものが ある.
補題5.2. Gが連結簡約F 線型代数群のとき,G(F)⊂Gは稠密部分集合である.
極大トーラスT ⊂Gに対して,そのWeyl群Ω(T)および相対Wely群W(T)を,
Ω(T) = ΩG(T) := (NG(T)/ZG(T)) ( ¯F) =π0(NG(T))( ¯F), W(T) =WG(T) := (NG(T)/ZG(T)) (F) =π0(NG(T))(F)
と定める.