5.3.1 放物型部分群の記述
Gの放物型部分群のLevi成分のことをGのLevi部分群という.Levi部分群M ⊂ G に対して,
• M をLevi成分に持つGの放物型部分群の集合をP(M) =PG(M);
• M を含むGの放物型部分群の集合をF(M) =FG(M);
• M を含むGのLevi部分群の集合をL(M) =LG(M)
でそれぞれ表す.特にM = M0 の場合はF0 := F(M0), L0 := L(M0)などと略記 する.
代数閉体上の場合と同様に,ルート系Σ0の基底はM0を含む極小放物型部分群たちで 記述される.
補題5.7. (i)P0 = M0U0 ∈P(M0)に対して,ΣP0 :=PA0(u0)はルート系 Σ0の正系で ある.それに付随するΣ0 の基底を∆P0 と書く.
(ii) P(M0) ∋ P0 7→ ∆P0 ∈ {
Σ0 の基底}
は W0 の作用と可換な全単射である.特に P(M0)にはW0が単純推移的に作用している.
P0 ∈ P(M0)を止めたとき,P0 を含む放物型部分群をP0 標準放物型部分群といい,
それらの集合をF(P0) =FG(P0)で表す.命題4.11と系4.12から次が従う.
命題5.8. P0 ∈P(M0)を固定する.
(i)F(P0)は放物型部分群のG(F)共役類の完全代表系である.
(ii)P ∈F(P0)はM0を含むLevi成分M をただ一つ持つ.これをP のP0標準Levi成 分という.このときP0M :=P0∩M はM の極小放物型部分群であり,
F(P0)∋P 7−→∆PM
0 ∈{
∆P0 の部分集合} は全単射である.
例5.9. 例5.6 (ii)の状況を考える.上三角元からなる部分群P0 ⊂ GはM0 をLevi成分
に持つ極小放物型部分群で,
∆P0 ={αi =ei−ei+1 |1≤i < m}
である.F(P0)はmの順序付き分割m= (m1, . . . , mr)に対するPm =MmUm:
Mm :=
ág1
g2
0
. ..
0
grë
gi ∈Gmi 1≤i≤r
,
Um =
à1m1 x1,2 . . . x1,r
1m2 . .. ... . .. xr−1,r
0
1mrí
xi,j ∈Mmi,mj(D) 1≤i < j ≤r
たちからなる.ni :=∑i
j=1 mj, (1≤i≤r)と書けば,∆PM
0 = ∆P0∖{αni |1≤i < r} である.
注意5.10. (i)標準放物型部分群に対してF0 の元を準標準放物型部分群ということがあ
る.定義からF0は
Ad( ˙w)P, w∈W0, P ∈F(P0)
からなる集合である.p進簡約群の表現論では標準放物型部分群よりF0 を用いた方が簡 明な記述が得られるが,放物型部分群の分類には標準放物型部分群が必要である.
(ii)順序付き分割(2,1)と(1,2)に付随するGL3の標準放物対のように,異なる標準放 物型部分群は共役ではないが,その標準Levi 成分はG(F)共役であることがある.この ようにG(F)共役なLevi成分を持つ標準放物型部分群たちは互いに付随しているという.
次の結果は定理4.10から導き出される.
命題5.11(一般化されたBruhat分解). (i)直和分解G(F) = ⨿
w∈W0 P0(F) ˙wP0(F)が成 り立つ.
(ii)M,M′ ∈L0に対して,両側剰余類集合W0M\W0/W0M′ の完全代表系MWM′ ⊂W0
を固定する.このとき任意のP ∈P(M),P′ ∈P(M′)に対して G(F) = ⨿
w∈MWM′
P(F) ˙wP′(F)
が成り立つ.
5.3.2 制限ルート
連結簡約F 線型代数群Gの根基ZG0 はトーラスであった(定理3.21).その分裂成分を AG と書く.またGの極大アーベル商をDG :=G/Gderで表す.補題2.5から次が従う.
補題5.12. (i)合成射ZG0 ,→G↠DGはトーラスの同種射である.
(ii)制限射X(G)∋χ7→χ|AG ∈X(AG)は線型同型Q⊗X(G)→∼ Q⊗X(AG)を与える.
M ∈L0 に対して
aM := Hom(X(M),R), a∗M :=X(M)⊗R
は互いに双対な有限次元R線型空間である.指標の制限を取る準同型たちは可換図式 X(M) −−−−→ X(AM)
y y X(G) −−−−→ X(AG) をなすが,上の補題からこれは可換図式
a∗M a∗M
a?∗GOO
a∗G
を与える.すなわち a∗G は自然に a∗M の直和因子と見なされる.双対を考えれば aG も aM の直和因子である.そこで
aGM :={H ∈aM |λ(H) = 0, λ∈a∗G}, aG,∗M :={λ ∈a∗M |λ(H) = 0, H ∈aG} とおけば,互いに双対な直和分解
aM =aGM ⊕aG, a∗M =aG,M∗⊕a∗G (5.1) が成り立つ.
特に M = M0 のとき,ルート系の定義から∆P0 はaG,∗0 := aG,∗M
0 の基底である.同様 に対応するコルートの集合∆∨P
0 := {α∨ |α∈∆P0}はaG0 =aGM
0 の基底になる.そこで aG0 の∆P0 に対する双対基底を
∆ˆ∨P0 ={ϖα∨|α ∈∆P0}
と書く.同様にaG,0 ∗ の∆∨P
0 ⊂aG0 に対する双対基底を
∆ˆP0 ={ϖα |α∨∈∆P0}
で表す.後者は基本ウェイトと呼ばれるもののF 有理版である.
■制限ルートと制限コルート 極小Levi部分群M0 の場合と同様に,M ∈L0に対して もΣM = ΣGM :=PAM(g)∖{0}とおき,その元をAM のGでのルートという.ΣM の 元でnα, (n ≥ 2, α ∈ ΣM)の形に書けないものを非可除なルートと呼んで,その集合を ΣindM と書く.P = M U ∈ P(M)に対してΣP := PAM(u)とおき,その元を P 正ルー トと呼ぶ.容易にわかるとおり
ΣM ={(α|AM)̸= 0, ∈X(AM)|α ∈Σ0}
={(α|aM)̸= 0, ∈a∗M |α ∈Σ0}
= ΣP ⊔ −ΣP
である.さらにΣP の元で2つ以上のΣP の元の和に書けないものをP 単純ルートと呼 び,その集合を∆P で表す.P ∈F(P0)ならばP0M :=P0∩M として
∆P =¶
(α|aM)|α∈∆P0 ∖∆PM 0
©
である.ΣM はΣ0 ∖ΣM0 の分解a∗0 = aM,0 ∗ ⊕a∗M におけるa∗M 成分を取ったものだか ら,一般にルート系になるとは限らない.そこでα =α0|aM ∈ΣM, (α0 ∈ Σ0∖ΣM0 )の コルートα∨をα∨0 の分解a0 =aM0 ⊕aM におけるaM 成分と定める.
ルート系の場合と同様に各 α ∈ ΣM の零点集合Hα := {X ∈aM |α(X) = 0}を壁と いい,壁の合併の補集合
aM,reg :={
X ∈aM |α(X)̸= 0, α∈ΣindM } の各連結成分をaM 内の部屋という.
補題5.13. 任意の部屋C ⊂aM はあるP ∈P(M)を使って
C =a+P :={H ∈aM |α(H)>0, α ∈∆P} と書ける.
次にP ∈P(M)を止め,それに関する単純ルートのコルートの集合を
∆∨P :={α∨ |α∈∆P}
と書く.またα= (α0|aM)∈∆P, (α0 ∈∆P0∖∆PM
0 )に対して,ϖα :=ϖα0,ϖα∨:=ϖ∨α0 と定める.
補題5.14. (i)∆P はaG,∗M の,∆∨P はaGM の基底である.
(ii)∆ˆP := {ϖα |α∈∆P} ⊂ aG,M∗ は∆∨P の,∆ˆ∨P := {ϖα∨|α ∈∆P} ⊂ aGM は∆p の,
それぞれ双対基底である.
同じ基底でも単純ルート∆P と∆ˆP は互いになす角度に違いがある.
補題5.15. P =M U ∈F0を取る.
(i)⟨α, α∨⟩ > 0, ⟨α, β∨⟩ ≤ 0, (α ̸= β, ∈ ∆P)が成り立つ.一方で,¨
ϖα, ϖβ∨∂
≥ 0, (α, β ∈∆P)である.
(ii)+aP :={H ∈aM |ϖα(H)>0, α ∈∆P}とおけば,a+P ⊂+aP である.
(iii)a+P
0 の閉包は次の直和分解を持つ.
a+P
0 = ⨿
P∈F(P0)
a+P
この (iii)の分解はCartan分解と併せて,p進簡約群の表現論において大切な役割を果
たす.
例5.16. G= SL3とする.対角元からなる部分群
A0 :={
d(a1, a2) := diag(a1, a2, a1a−21)|ai ∈Gm
}
はGの極大分裂トーラスで,極小Levi部分群M0に一致している.X(A0) =Ze1⊕Ze2, ei(d(a1, a2)) =ai, (i= 1, 2)
と書く.P として上三角行列からなる極小放物型部分群 (Borel部分群でもある)P0 = M0U0 を取れば,
∆P0 ={α1, α2}, α1 :=e1−e2, α2 :=−e1+ 2e2
であり,F(P0)はP0,∆PMi 0
={αi}となるPi =MiUi, (i = 1,2),およびG自身からな る.このときa0内の部分空間aM および部屋a+P たちは次の図のようになる.
図1 SL3のa0
例えばaM1 はα1の核であるから,α∨1 と直交する直線になる.α∨1,α∨2 双方との内積が正 であるベクトルからなる灰色の領域がa+P
0 である.a+P
1 はaM1,reg =aM1∖{0}の連結成 分のうち,a+P
0 の境界に含まれるものであり,原点がaGである.
6 p 進簡約群
この節ではF をp進数体Qpの有限次拡大とする.この報告集内の原下氏の原稿[9]で 定義されたF に関する記号は断りなく用いるものとする.引き続きF の代数閉包F¯を固 定して,Galois群Gal( ¯F /F)をΓ = ΓF と書く.
6.1 L 群など
Gを連結簡約F 線型代数群とする.極大トーラスT ⊂Gに対して,X∗(T)へのΓ作 用は適当な有限次Galois拡大E/F のGalois群ΓE/F を経由する.
補題6.1. GF¯ の分裂splGE = (BF¯, TF¯,{Xα}α∈∆(BF¯,TF¯))でB はGE のBorel部分群,
ルートベクトルXα はg(E) の元であるものが存在する.特にΓF のsplG
E への作用は ΓE/F を経由する.
この事実と補題 4.16 により,σ ∈ ΓE/F に対してσ(splGE) = Ad(gσ)splGE となる
Ad(gσ) ∈ Int(G)(E) = Gad(E)がただ一つある.このとき{
θσ := Ad(g−σ1)}
σ∈ΓE/F が Int(G)(E) 値 1 コサイクル ([3, VII 章補遺] 参照) であることは容易に確かめられる.
E[GE] =E⊗F F[G]のE/F 構造をこの1コサイクルでひねったもの φ: ΓE/F ∋σ 7−→(σ⊗idF[G])◦θσ♯ ∈AutF-Hopf(E[GE])
に付随するGE のE/F 形式(1.2.2節)をG∗ と書く.定義から恒等射GE =G∗E は同型 ψ:GE →∼ G∗E であって,例1.6の記号で
ψ◦σG◦ψ−1 = Ad(gσ)◦σG∗, σ ∈ΓE/F
となるものを与える.このような同型をE/F 内部捻りという.あるいはE を明らかに せずに同型ψ :GF¯ →∼ G∗F¯ を内部捻りと呼ぶ.
さらにgσ の取り方から分裂splG
E はG∗E の分裂としてはΓE/F 不変である.つまり B⊂G∗ は(F 上定義された)Borel部分群でΓE/F は{Xα}α∈∆(B¯
F,TF¯)に置換として作用 している.このようにΓ安定な分裂を持つとき,簡約F 線型代数群G∗ は準分裂である という.またそのΓ安定な分裂をF 分裂という.
命題6.2. 連結簡約F 線型代数群Gに対して,内部捻りψ:GF¯ →∼ G∗F¯ であってG∗ が準 分裂であるものが同型を除いてただ一つある.これをGの準分裂内部形式という.
簡約 F 線型代数群 G の準分裂内部形式 (G∗, ψ) を取り,G∗ の F 分裂 splG∗ = (B0, T0,{Xα})を選ぶ.定義からΓのX∗(T)への作用はsplG∗を保ち,補題4.16 (iii)か ら準同型
ρG : Γ−→Aut(RD(splG∗))opp= Aut(RD(G∗F¯))opp
を与える.G∗F¯ のLanglands双対群をGˆ と書いて,その分裂splGˆ = (B,T,{Xα∨})を一 つ選ぶ.これは補題4.16 (ii)により
1−→Int( ˆG)−→Aut( ˆG)−→Out( ˆG)−→1 の分裂s: Out( ˆG)→Aut( ˆG)を定め,上と併せて準同型
ρG : Γ−→Aut(RD(G∗F¯))opp = Aut(RD∨(G∗F¯))opp
= Aut(RD( ˆG))opp = Out( ˆG)−→s Aut( ˆG) が得られる.これのWeil群WF ⊂Γへの制限による半直積
LG := ˆG⋉ρGWF
をGのL群という.