1. 本最終契約書の基本的性格等
①預金保険機構(以下、「機構」という)、株式会社日本債券信用銀行
(以下、「日債銀」という)並びにソフトバンク株式会社、オリック ス株式会社、東京海上火災保険株式会社及び他の金融機関等(以 下、ソフトバンク株式会社以下を「ソフトバンク・グループ」とい い、他の金融機関等を除いた3社を「主要買主」という)は平成12年 6月30日、日債銀譲渡に係る最終契約書(株式売買契約書)を締結 した。〔前文〕
②主要買主は、更に他の金融機関等を買主として加えることを検討 しており、機構はこれを了承している。〔前文〕かかる他の金融機 関等を新たに買主として本件取引に参加させるその取扱いにつ いて規定した。〔第25条〕
③本最終契約書に基づき、ソフトバンク・グループは実行日(8月1日 を予定)に日債銀の既存普通株式約25億株を機構から約10億円で 買取り、新規普通株式約3億3,333万株の引受のための約1,000億 円の払込みを行う(以下「クロージング」という)。〔第2条、第3条〕
④ソフトバンク・グループは、機構により金融再生法に基づく損失 補填・金銭贈与が実行されていること、日債銀に重大な悪影響が 生じていないこと、機構及び日債銀に本最終契約書上の義務及び 表明について重大な悪影響を及ぼす違反がないこと等を前提に クロージング等の一連の取引を行う。〔第8条第1項〕
⑤機構は、ソフトバンク・グループに本最終契約書上の義務及び表 明について重大な悪影響を及ぼす違反がないこと、ソフトバン ク・グループの買収後の取締役の構成に係わる表明違反がないこ と等を前提にクロージング等の一連の取引を行う。〔第8条第2項〕
⑥買主の構成が変化した場合や、売買代金の全額の支払が行われな いなどの場合には、機構は本件契約の解約等を行う権利を有す る。〔第8条第3項〕
⑦当事者全員が延長する旨同意した場合を除き、本最終契約書はク ロージングが平成12年9月1日までに完了しない場合に終了す る。但し、機構及び主要買主が書面により合意した場合には本最 終契約書を解除することができる。上記③、④の前提条件が成就 しないことでクロージングが行われない場合、全当事者は前提条 件成就のために最大限努力する。〔第24条〕
2. 買収方式・買収金額等
①ソフトバンク・グループは既存日債銀普通株式約25億株を約10 億円で機構より取得する。〔第2条〕
②既存日債銀優先株式のうち第4回優先株式約4,814万株につい て、優先配当額を年15円から年5円に引き下げ、それ以外の条件に ついては現行の条件を実質的に維持したまま、実行日以降も機構 が引き続き保有し、残りの約7,185万株及び第2回・3回優先株式 の全株は無償消却する。〔第9条〕
(注)既存第4回優先株式は、廃止された金融安定化緊急措置法に 基づき整理回収銀行(当時)が日債銀より引き受けたもので、
購入価格は600億円。日債銀の特別公的管理開始に伴い対価 0円で機構が取得。その現行条件は以下の通り。
・ 優先配当額は年15円。
・ 普通株式への転換権付きで、転換比率は優先株式1株につ き普通株式5株。
・ 強制転換は平成30年4月1日で、転換請求期間は平成10年 10月1日より平成30年3月31日。
3. 新規増資・自己資本比率
①ソフトバンク・グループは新生日債銀の新規発行普通株式約3 億3,333万株を約1,000億円(1株当たり300円)で引き受ける。
〔第3条〕
②新生日債銀は政府に対し、早期健全化法に基づき、健全な自己資 本の状況にある旨の区分に該当する金融機関として(承認日現在 で自己資本比率4%以上達成見込みであることが条件)、新生日債 銀の新規発行無議決権優先無額面株式約8億6 , 6 6 6万株を約 2,600億円(1株当たり300円)で引き受けるよう要請する。その他 の主要条件は以下の通りである。〔第9条第2項、3項〕
・ 平成17年9月1日以降から転換可能。
株式売買契約書の概要
(平成12年6月30日)(旧日本債券信用銀行の一括譲渡に関する最終契約書の概要です。)
・ 転換価格は平成17年から平成24年までの毎年9月1日に、1株当 たり270円又は市場価格(上場前は1株当たりの純資産額)のい ずれか低い方に調整。(但し、225円が下限)
・ 平成24年9月1日に強制転換。
・ 配当率は金融再生委員会が決定。
正式申請日より10営業日以内に、第9条第3項記載の条件とほ ぼ同一の条件による承認が金融再生委員会より得られない場 合には、主要買主は本最終契約書を解除することが可能。〔第24 条第4項〕
(注)2②の既存優先株式と併せて、普通株式へ転換した後の機 構の最大持ち分は33.0%。
③自己資本比率は13%程度(後述の保有株式含み益実現後ベース)
4. 機構による損失補填等
①機構は、日債銀の単体ベースの貸借対照表の特別公的管理勘定に 計上されている金額をもとに損失補填・金銭贈与等を行う。当該 貸借対照表は平成13年3月期に適用される会計基準に基づき作 成される。〔第4条第1項〕
②機構は、基準日(実行日の前日。7月31日を予定。)の予備的基準日 貸借対照表に基づき、金融再生法第62条、第72条に基づく損失補 填・金銭贈与の仮払いを実行日又はそれ以前に行い、実行日後に 作成される確定基準日貸借対照表に基づき、最終的な金額を確 定・精算する。〔第4条第1項〕
③日債銀は、基準日貸借対照表(以下の手続により確定したものを
「確定基準日貸借対照表」という)を作成し、機構が依頼する会計 事務所(「旧会計事務所」)の調査を受けた上で、機構の指示に基づ いて修正の上、主要買主が依頼する会計事務所(「新会計事務所」) に提出する。新会計事務所は、貸出関連資産等の項目以外の項目 についてコメントでき、機構は、旧会計事務所をして当該コメン トの適否について新会計事務所と協議させることができる。協議 が整わない場合は、機構と主要買主は第三の会計事務所に検討を 依頼するものとする。機構と主要買主は第三の会計事務所の判断 を尊重するが、紛争解決のために最終的に訴訟を提起することが できる。〔第4条第4項ないし第10項〕
④機構による損失補填等に伴い日債銀に法人税等の納付義務が発 生する場合には、これを加味した損失補填等が行われる。〔第4条 第11項〕
5. 日債銀保有株式(政策保有株式)の取扱い
①日債銀は、その保有する公開株式を下記③〜⑤に従って売却し、
合計850億円の含み益を実現して新生日債銀の自己資本の増強 に充当する。
②日債銀は、株式評価基準日(平成12年6月30日)現在の保有株式の 銘柄名、数量、株式評価基準日簿価及び株式評価基準日時価の一 覧表を機構及び主要買主に交付する。〔第10条第1項〕
③主要買主は、一覧表記載の公開株式の中から、日債銀の営業上必 要な株式を指定し、また、含み益の合計が850億円となるような株 式を選択する。〔第12条第1項〕
④日債銀の営業上必要と判断された公開株式については、850億円 の含み益実現に係る株式は実行日において機構に売却し、850億 円の含み益実現に係る株式以外の株式は基準日までに機構に売 却する。〔第12条第2項〕
⑤日債銀の営業上必要でないと判断された公開株式については、
850億円の含み益実現に係る株式は実行日から90日以内に、850 億円の含み益実現に係る株式以外の株式は基準日までに、第三者 又は機構(機構が売却先指定権を行使したとき)に売却する。
日債銀がこれらの売却を行うときには、機構は当該株式を市場価 格で機構に売却するよう請求する権利を有する(売却先指定権)。 但し、( i )株式売却価格が公正であり、且つ当該売却が株式市場 を混乱させるものではないことが明らかであると認めた場合、又 は( ii )当該株式の発行会社が売却に同意している場合には、機構 はかかる権利を行使しないものとする。〔第12条第3項〕
⑥一覧表記載の非公開株式については、基準日までに又は実行日後 5年以内に、機構又は第三者に売却するよう努力し、売却されたと きは市場価格又は公正価格と株式評価基準日簿価との差額の受 け払いを行う。〔第13条第3項、4項〕
⑦一覧表記載の非公開株式のうち、実行日後5年以内に売却が可能 にならなかったものは、平成17年8月1日時点における市場価格 又は公正価格と株式評価基準日簿価との差額の受け払いを行う。
〔第13条第5項〕
⑧新生日債銀の営業上必要な株式は機構が購入し、これを日債銀信 託に信託する。日債銀又は日債銀信託は当該株式に係る名目上の 所有権及び実質的な議決権を有し、日債銀は実行日から5年間、第 一優先購入権を有する。〔第14条第1項〕
新生日債銀は、実行日から5年間原則として随時、市場価格又は公 正価格で当該株式を機構から買い戻すことができる。但し、機構 は売戻しにより損失が発生する場合には売戻しを拒否すること ができる(信託期間が5年目に入って以降に拒否した場合には当 該株式に係る信託期間は拒否時から1年後まで延長される。延長 期間中に機構が売戻しを拒否した場合も同様。)〔第14条第2項な いし4項〕
⑨指定子会社株式、制約株又は破綻先株は日債銀が継続保有する。
〔第11条〕
6. 機構保有の新生日債銀株式の売却
①機構保有の新生日債銀株式について、機構が売却を希望する場合 に、主要買主は当該株式を購入するか否かを決定する権利を有す る。主要買主が購入しない場合は、機構は主要買主に対して申し 込んだ株式の全部又は一部を、売却申込価格以上の価額で第三者 に売却できるものとし、主要買主はこれに異議を唱えない。〔第9 条第5項〕
②日債銀株式が公開され、機構保有の新生日債銀株式の時価総額が 3,550億円を超えている場合には、主要買主は機構に対し、その保 有する新生日債銀株式の一定の数量を公正な価格により主要買 主に売却するか、又は市場において売却することを要請できるも のとし、機構はこの要請を不合理に拒否しない。また、主要買主は その時点でかかる売却のために機構保有の優先株式を普通株式 に転換することを要求することができる。〔第9条第6項〕
③新生日債銀の定款に株式の譲渡制限が設けられた場合、機構が保 有する日債銀株式の譲渡時には、主要買主は日債銀に取締役会で の承認を行わせる。〔第28条第2項〕
(注1)新生日債銀の普通株式の価格が1株当たり295円になると、機構保有 株式の普通株式換算ベースの時価総額は3,550億円に達する。
(注2)新生日債銀の普通株式の価格が1株当たり354円となっている時に、
その価格で2②の既存優先株式を普通株式に転換して全て売却した 場合、この既存優先株式から得られる機構のキャピタルゲインの額 は850億円となる。
7. 貸出関連資産の継続保有等
①新生日債銀は、金融再生委員会の資産判定により「日債銀が引き 続き保有することが適当」(以下、単に「適」と言う)とされた全て の貸出関連資産を引き続き保有する。〔第17条〕
②主要買主は、新生日債銀が引き続き保有する貸出関連資産に係る 債務者との良好な関係を保つため、少なくとも実行日より3年目 の応当日又は平成15年9月末のいずれか遅い方の日までは、新生 日債銀に以下のような基本方針で融資の管理を行わせることを 表明する。
すなわち、特段の事情のない限り、貸出関連資産について、(i)第三 者への売却を行わず、(ii)急激な回収を行わず、かつ、(iii)借換え、
季節資金等当該債務者の適切な資金需要に応ずることとする。
〔第18条〕
(注1)上記(ii)の「急激な回収を行わず」とは、契約上認められた債務者の 期限の利益を守り、当該期限について債務者に不利な条件変更を行 わないことをいう。
(注2)上記②に関して、「特段の事情」のある場合とは、上記(i)については、
債務者の保護の趣旨に反しない日債銀の資金調達を目的とするロー ン・パーティシペーションや貸付債権の証券化を行う場合、(ii)及び
(iii)については、回収を行わない場合や借換え等に応ずる場合に新 生日債銀に損害が発生することが合理的に予見できる場合をいう。
8. 当初引当金
金融検査マニュアルに則った自己査定要領及び日本公認会計士協会 実務指針に定められた基準に従って、基準日において適切に計上さ れることとする。
9. 貸出関連資産の瑕疵担保
①実行日において機構は新生日債銀に貸出関連資産を売却・譲渡し たものとみなす。〔第20条第1項〕
②実行日から3年目の応当日又は平成15年9月末日のいずれか遅い 方の日(以下「行使期間満了日」という)までに、当該資産に瑕疵が あり、2割以上の減価が認められた時は、新生日債銀は当該資産の 譲渡を解除する権利を有する。〔第20条第2項〕
③解除の場合、機構は当該資産の返還と引き換えに当該資産の当初 価値(当初引当金控除後ベース。以下、同じ。)に相当する金額(それ までの間に返済額があれば、その額を控除した額)を新生日債銀 に払い戻す。〔第21条第5項〕
④②の「2割以上の減価」とは、同一債務者に対する全貸出関連資産 のその時点での現在価値(その時点での引当金控除後ベース。以 下同じ。)の総額が、それら貸出関連資産の当初価値の総額に比し 2割以上減額していることを言う。〔第20条第5項〕
⑤②の「瑕疵」とは、当該資産に関し金融再生委員会が「適」と判定し た根拠について、日債銀買収時から行使期間満了日までに変更が 生じたか、又は真実でなくなったことが判明したことを言い、変 更又は真実でなくなったことが実行日後の専らソフトバンク・グ ループ又は新生日債銀の責めに帰すべき事由によって生じた場 合は「瑕疵」に含まれない。〔第20条第3項〕
⑥金融再生委員会が「適」と判定した根拠が明示されていない場合
(例えば正常先の債権は原則として「適」と判定されている)等にお いて、当該債務者に一定の客観的な事実が発生した場合には、新生 日債銀はそれを「瑕疵」と推定することができる。〔第20条第4項〕
(注)例:正常先の債権について実行日から行使期間満了日までに 元本又は利息の3ヶ月以上の延滞が発生している場合に は、新生日債銀は「瑕疵」の存在を推定できる。
⑦債務者から債権放棄の要請があり、これを新生日債銀が受諾した 場合は、新生日債銀は当該債務者に係る貸出関連資産の全てに関 して、本解除権を放棄したものとみなす。〔第23条第3項〕
⑧解除権の対象となる貸出関連資産は各債務者ベースで1億円以上 のものとし、実行日後に更新、借換又はロールオーバーされたも の等実質的に同一性のある貸出関連資産を含み、新規実行分を含 まない。〔第19条第2項、第6項〕
⑨実行日から行使期間満了日までに、戦争、自然災害、経済大恐慌等 の不可抗力が生じ、その結果として債務者の状況が悪化したとき には、機構の支払義務は制限を受ける。その際、機構と新生日債銀 は債務者の状況悪化がその不可抗力に起因するか否か等を含め 公平な負担のあり方について誠実に協議する。〔第23条第5項〕
⑩解除権を行使する場合、新生日債銀は四半期毎に機構に通知す る。機構に異議があり双方の協議が整わない場合、双方が合意す る会計事務所が検討を行う。新生日債銀及び機構は当該検討結果 を尊重するが、不服がある場合には裁判所に提訴することができ る。〔第22条第2〜3項、第5項〕
⑪上記のほか、貸出関連資産の瑕疵担保に係る詳細としてコミット メントライン等による貸出が行われた場合の取扱い等を規定。
〔第19条、第21条〕
10.デリバティブのクレジット・リスクの軽減措置
機構は、基準日現在日債銀が保有するデリバティブについて、デリバ ティブの他方当事者の破産、支払債務不履行により実行日より5年間 に35億円を超える損失が発生した場合には、その超価額を負担する。
注1 条文末尾の〔 〕は「株式売買契約書」の記載条項を示しています。
注2 金融再生委員会作成「日債銀譲渡に係る最終契約書の概要」から抜粋。