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逆接ナガラ節のアスペクト的特徴

ドキュメント内 課程博士学位申請論文 (ページ 65-69)

第 3 章  ナガラ節のアスペクト的特徴

3.4     逆接のナガラ

3.4.1 逆接ナガラ節のアスペクト的特徴

3

6

  付帯状況ナガラの用法

①短時間の動作 ②長期的活動

  用法 方法・手段 様態(付加) 様態

特徴

ナガラ節は主節の事態 が 成 立 す る た め の 方 法・手段を表す。ナガ ラ節は主節の動作の一 部 を 、 よ り 詳 し く 述 べ る。

ナガラ節は、主節の事態 が成立しているときに同 時並行的に 成立してい る、同じ主体の状態・状 況を表す。

同じ主体の長期間にわたる 状況、活動を表し、ナガラ節 は、主節の事態が成立して いるときに同時並行的に成 立している、同じ主体の 状 態・状況を表す。

従属度 高い 低い〜高い 低い〜高い

包含関係 ○ − −

時・場所

の一致 ○ ○ −

「気づく」など、動作を伴わず、瞬間的に動詞の意味が実現する知覚動詞である。

(55)a. 悪いこととは知りながら、ついうそをついてしまった。

b.

山田さんは私がうそをついていることに気づきながら黙っていてくれた。

ナガラ節で状態パーフェクトを表すこれらの動詞は「動作の継続」を表すことのできない動詞で ある。このためこれらの動詞にナガラが接続すると、必ず逆接の意味になる。(

55

a

のナガラ節の 事態は次のように表すことができる。

(55)a. 悪いこととは知りながら、ついうそをついてしまった。 

限界動詞でも、変化結果の維持を語彙的に持つ動詞の場合、ナガラ節では状態パーフェクト ではなく、変化結果維持を表すため、逆接にならないことは

3.3.1

で述べた。

「落ちる」のようにテイル形式で結果継続を表し、時間的には短い時間で運動が完了する動詞 は、文脈的条件によって、ナガラ節で「動作の進行」を表したり、「動作パーフェクト」を表したりす る。

(56)a. 太郎は崖から落ちナガラ「死ぬかもしれない」と思った。

b.

ビルの

3

階から落ちナガラ平気な顔をしている。

56

a

は「落ちる」運動が継続している時に「思った」という意味で、付帯状況を表している。「落 ちる」という時間は非常に短い時間であるが、それをスローモーションのように引き伸ばし、時間に 幅を持たせるという操作の結果、ナガラ節は「動作の継続」を表し、ナガラ節は付帯状況の意味を 持つ。(55)a、b が常に逆接になる理由は、「知る」や「気づく」という運動は、どのような文脈を与え ても引き伸ばすことができないからである。 

(56)b は「落ちた後の状態」だけではなく「落ちた」という運動も視野に入れているため、動作パ ーフェクトとなる。(

56

a

b

の事態は次のように図示することができる。

知っている 知った

状態パーフェクト 

うそをついた

→  時間の流れ

●  変化

変化結果の継続       パーフェクト

56

a.

太郎は崖から落ちながら「死ぬかもしれない」と思った。

56

b.

  ビルの

3

階から落ちながら平気な顔をしている。

  (56)bは「落ちた」という運動が完了し、その効力が続いている中、「平気な顔をしている」という、

予想とは異なる事態がおこっていることを表している。

限界動詞・非限界動詞の区別なく、動作パーフェクトは現れる。動作パーフェクトを表すのは次 のような文である。

(57)  「一緒に行こうよ」と言いながら当日彼は現れなかった。

(58) 

20

分以上も電話で話しながら、間違い電話だと気づかなかった。

  (57)(58)のナガラ節は主節に先行しておこったひとまとまりの動作で、その作用は主節がおこる 時点まで続いているという、逆接ナガラの特徴を持っている。 (

57

)(

58

)が次のように言い換えるこ とができることからも、ナガラ節は主節に先行して完了していることがわかる。

(57)   「一緒に行こうよ」と言ッタノニ当日彼は現れなかった。

(58)  

20

分以上も電話で話しタノニ、間違い電話だと気づかなかった。

  また、ナガラ節がパーフェクトを表すか否かは、文脈によって決定されることが多い。

落ちている:運動継続

思った

落ちた 動作パーフェクト

平気な顔をしている

→  時間の流れ

●  変化

変化結果の継続       動作の継続       パーフェクト

効力

59

a.

ヘッセ自身自殺未遂にまで追い込まれながら母の愛によってからくも立ちなおっ た。(新)

b.

彼は徐々に追い込まれながら精神をおかされていった。

  (59)a は「自殺未遂にまで」という終結点が示されることでひとまとまり性をもち、「その後」立ちな おったことを表す。これは動作パーフェクトで、逆接の文である。しかし、(59)b は「徐々に」という 文脈から「追い込まれる過程」を表しており、「追い込まれること」と「精神をおかされる」ことが同時 におこったという意味になる。この場合、ナガラ節は継続を表すため、(

59

b

は付帯状況を表す文 となる。 

このようにナガラ節のパーフェクトが文脈に左右される理由として「パーフェクトは固有の形式を 持っていない」ことがあげられる。ナガラ節だけでなくテイル形式においてもパーフェクトは文脈に 左右される。このことは

2.1.2.2

で指摘したように、パーフェクトがアスペクトの基本的な意味ではな く派生的な意味にとどまる理由でもあった。 

ところで、逆接ナガラには「知りナガラ」のような、「スル形式+ナガラ」のほかに、「知っていナガ ラ」のような「テイル形+ナガラ」がある。「テイル形+ナガラ」の場合、動詞の種類に関係なく、ナガ ラ節のアスペクトはパーフェクトで、常に逆接となる。

(60)a. チョコレートを食べていナガラ、やせたいとこぼす。(堀川

1994 p.38)

b. 20

分以上も電話で話していナガラ、間違い電話に気づかなかった。

c. *

ネクタイをしめていナガラ、会社に行った。

d. * TV

を見ていナガラ勉強する。

e. *

太郎は崖から落ちていナガラ「死ぬかもしれない」と思った。

(60)aについて、「チョコレートを食べナガラ」には、付帯状況の読みと逆接の読みが想定される が、「チョコレートを食べていナガラ」には逆接の読みしかない。「食べる」同様、テイル形式で「動 作継続」を表す非限界動詞の「話す、見る」も「テイル形+ナガラ」は常に逆接を表す。一方、(60)

c

d

e

は非文法的な文となる。非文法的な文となる理由を、ナガラ節のアスペクト的特徴と、主節 の接続関係の両面から見てみよう。

60

c

d

e

を「スル形式+ナガラ」に置き換えてみると、「ネクタイをしめナガラ会社へ行く」「

TV

を見ナガラ勉強する」「崖から落ちナガラ「死ぬかもしれない」と思った」は付帯状況を表す。しかし、

このような付帯状況の文脈にもかかわらず、(60)c、d、e が容認されないということは、「テイル形式

+ナガラ」は「動作進行」を表さず、したがって、付帯状況の用法もないということになる。

60

c

d

e

に付帯状況の用法がないということであれば、ナガラ節はパーフェクトとなり、主節と の接続関係は逆接となるはずである。しかし、(

60

c

d

e

のナガラ節と主節は矛盾するものでは

「テイル形式+ナガラ」のアスペクトについて見ると、いずれも、「ナガラ節が主節に先行して起こ り、終了する」「完了したナガラ節の動作の効力が主節の動作がおこる時点まで続いている」という パーフェクトの条件を満たしており、逆接ナガラの用法に矛盾しない。

ナガラ節動詞の形態的特徴からナガラの用法を分類すると、次のようになる。

3−7  ナガラ節動詞の形態的特徴とナガラの用法

ナガラ節動詞の形態  ナガラの用法  ナガラ節のアスペクト的特徴  スル形式+ナガラ  付帯状況 動作継続、変化結果の維持、反復

逆接 パーフェクト

テイル形式+ナガラ 

3−7

から、「スル形式+ナガラ」はナガラ節のアスペクト的特徴によって付帯状況か逆接の 用法が現れるが、「テイル形式+ナガラ」には逆接の用法しかないことがわかる。形態と用法が

1

1

で対応している「テイル形式+ナガラ」は、どのような文脈でもナガラ節はパーフェクトで、逆接 の用法となるが、形式と用法が

1

1

で対応していない「スル形式+ナガラ」は、文脈によってア スペクト的特徴をとらえ、用法を特定する必要がある。

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