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付帯状況ナガラと逆接ナガラの構文的な違い

ドキュメント内 課程博士学位申請論文 (ページ 42-45)

第 3 章  ナガラ節のアスペクト的特徴

3.2 アスペクト的特徴に基づくナガラの分類

3.2.5    付帯状況ナガラと逆接ナガラの構文的な違い

付帯状況ナガラと逆接ナガラの違いは意味的なものではなく、文の構造的なものによるとする 主張に、佐藤(1997)(1998)がある。佐藤(1997)は付帯状況ナガラは動詞句内に生起するが、逆 接ナガラは動詞句内にはないと主張している。

佐藤(

1997

)ではまず、

Koizumi

1993

)で示された、とりたて詞「サエ」を使った焦点化テストを行 い、付帯状況ナガラが動詞句内に生起することを確認している。「サエ」を使った焦点化テストとは、

「動詞に付置されたサエは、

VP

VP

に支配される要素を焦点化できるという性質を利用し、問題 にスル要素が

VP

内に存在しているかどうかを確かめるため(佐藤

1997 p.64)」のテストである。

Koizumi(1993)は(20)のような文をあげて、焦点化について説明している。

(20) Kiyomi-ga[xp

[

vp

ringo-o tabe]-sae] si-ta](キヨミがりんごを食べサエした)

Koizumi

1993

)は(

20

)でサエが焦点化できるのは「りんご」「食べる」「りんごを食べる」であるとす る。この焦点化される語句にサエを直接接続させたものを(

21

a

b

c

に記す。

(21)a. キヨミは [りんご]サエ食べた。

b.

キヨミはりんごを [食べ] サエした。

c.

キヨミは

[

りんごを食べ

]

サエした。

ナガラの用法      主節との接続関係

・ 付帯状況ナガラ        順接

逆接(文脈的逆接)

・ 逆接ナガラ      逆接(構文的逆接)

に生起すると指摘している。

22

[TV-o mi -nagara]benkyoosi-sae sita.

TV

を見ながら勉強しさえした)

(Koizumi 1993 p.412)

  (22)でサエが焦点化できるのは「TVを見ながら」と「勉強する」である。焦点化された語句にサエ を接続させた文を(23)に示す。「TV を見ながら」を焦点化する場合は、サエではなくデサエを使 用した。

23

a. [TV

を見ながら

]

でサエ勉強した。

b. TV

を見ながら[勉強]サエした。

サエと同じく、否定するものを焦点化するとりたて詞「ハ」でも、同様の現象が見られる。(24)ハ が焦点化できるのは「TVを見ながら」と「勉強する」である。

24

Kiyomi-wa [TV-o mi -nagara]benkyoo-wa sinai.

Koizumi 1993 p.414

a. [TV

を見ながら]ハ勉強しない。

b. TV

を見ながら[勉強]ハしない。

佐藤(1997)は、このテストを逆接ナガラについても行っている。

25

)太朗が父が病気でありナガラ学校に来さえした。(佐藤

1997 p.65

(25)でサエが焦点化しているのは「学校に来る」だけで、「父が病気でありながら」は焦点化されな い。

(26)a. *[父が病気でありながら]でサエ学校に来た。

b.

父が病気でありながら

[

学校に来

]

サエした。

  これらのテストを「チョコレートを食べナガラやせたいとこぼす」の文にも行ってみよう。

(27) チョコレートを食べナガラやせたいとこぼす。(付帯状況)

:「食べナガラ」は動作進行を表す。ナガラ節と主節は同時に起こっている。

a. [

チョコレートを食べながら

]

でサエ、やせたいとこぼす。

b.

チョコレートを食べながら

[

やせたいとこぼし

]

サエする。

28

)チョコレートを食べながらやせたいとこぼす。(逆接)

      :「食べナガラ」はパーフェクトを表す。ナガラ節は主節に先行して終了している。

a.* [チョコレートを食べながら]でサエ、やせたいとこぼす。

b.

チョコレートを食べながら[やせたいとこぼし]サエする。

  (

27

)を付帯状況ナガラで、ナガラ節のアスペクト的意味は動作の継続であると設定すると、「チョ コレートを食べながら」「やせたいとこぼす」はサエで焦点化されるが、(

28

)のように逆接ナガラで、

ナガラ節はパーフェクトであると設定すると、「チョコレートを食べながら」はサエで焦点化されない。

このことからも、(27)は付帯状況ナガラの構文的特徴を持つが、文脈的に逆接の意味を帯びてい ると判断される

また、主節に否定表現がある(19)で、否定を焦点化するハを付加しても、やはり、逆接ナガラは 焦点化されない。

19

) 多くの小説を書きナガラ文壇で認められず、東京での創作生活は失敗に終った。

(新)

a. *[多くの小説を書きナガラ]ハ、文壇で認められず b.

多くの小説を書きナガラ[文壇で]ハ、認められず

c.

多くの小説を書きナガラ文壇で[認められ]ハ、せず

以上、付帯状況ナガラと逆接ナガラの違いは意味的なものではなく、文の構造的なものである ことを見た。

3.2.4

では、ナガラ文に見られる「逆接」には、付帯状況ナガラ文に現れる「文脈的逆接」と、ナガ

ラ節がパーフェクトというアスペクト的特徴をもち、ナガラ節の運動が主節に先行して終了する場 合に必ず現れる「構文的逆接」とがあることを指摘した。

ナガラ節が継続というアスペクト的特徴を持つ場合、主節との時間関係は「同時」であり、同時 におこる二つの出来事のうち、従属節であるナガラ節の運動は主節の運動に付随して成立する。

この場合、ナガラ節と主節の接続関係は、「順接」の場合もあれば、「逆接」の場合もある。どちらの 接続関係となるかは、構文的に決まっておらず、文脈に依存している。付帯状況ナガラ文に現れ る逆接を「文脈的逆接」とするのはこのためである。一方、ナガラ節がパーフェクトである場合、ナ ガラ節は主節に先行し、主節との接続関係は常に「逆接」となる。このような逆接は「構文的逆接」

となる。

また、

3.2.5

では付帯状況ナガラは取立て詞「サエ」や「ハ」によって焦点化されるが、逆接ナガ

ラは焦点化されないという現象から、両者は異なる構造を持つことを確認した。取立て詞「サエ」や

る構造を持つ。

これらの事柄は、ナガラの用法が明確に

2

分されることを表しており、それは、ナガラ節のアスペ クト的特徴によって区別される。このように、ナガラ文においてはナガラ節のアスペクト的特徴がナ ガラの表す意味、用法と相関していることがわかる。これをふまえ、次節以降、3.3 節では付帯状 況ナガラについて、3.4節では逆接ナガラについて、さらに詳細な分析を試みる。

ドキュメント内 課程博士学位申請論文 (ページ 42-45)