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今後のマンションの管理組合及び居住者への支援策等の検討に資する施策等を把握した。

平成20 年以降、平成25 年までの間にマンション管理を直接対象とする法律の制定・改正 等は少ない。しかし、自治体によるマンション管理関係の条例制定が進められ、災害対策に 関係する法制度の整備、東日本大震災の影響や教訓による災害対策等のなかにもマンショ ンに関係するものも多い。

1.災害対策基本法改正

(平成25年5月22日可決成立、平成26年4月1日施行)

災害対策基本法は、昭和34年(1959年)9月の伊勢湾台風を契機として,総合的か つ計画的な防災行政の確立と推進を図ることを目的として制定された法律で、日本の災 害対策に関する基本法である。平成 25 年の改正によるマンション生活及び管理等に関 係する事項は以下の通り。

(1)市町村長は、学校等の一定期間滞在するための避難所と区別して、安全性等の一定の 基準を満たす施設又は場所を、緊急時の避難場所としてあらかじめ指定すること。

(2)市町村長は、高齢者、障害者等の災害時の避難に特に配慮を要する者について名簿を 作成し、本人からの同意を得て消防、民生委員等の関係者にあらかじめ情報提供するも のとするほか、名簿の作成に際し必要な個人情報を利用できることとすること。

(3)住民の責務に生活必需物資の備蓄等を明記するとともに、市町村の居住者等から地区 防災計画を提案できることとすること。

◎地区防災計画の概要

①市町村地域防災計画は、市町村内の一定の地区内の居住者及び当該地区に事業所を 有する事業者(以下「地区居住者等*」という。)が共同して行う防災訓練、地区居住 者等による防災活動に必要な物資及び資材の備蓄、災害が発生した場合における地 区居住者等の相互の支援その他の当該地区における防災活動に関する計画(以下「地 区防災計画」という。)について定めることができる。

②地区居住者等は、共同して、市町村防災会議に対し、市町村地域防災計画に地区防災 計画を定めることを提案することができる。

③市町村防災会議は、遅滞なく、②の提案を踏まえて市町村地域防災計画に地区防災計 画を定める必要があるかどうかを判断し、その必要があると認めるときは、市町村地 域防災計画に地区防災計画を定めなければならない。

*マンションの管理組合等を含む

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2.耐震改修促進法改正

耐震改修促進法は、旧耐震基準で設計された建物の耐震改修を促進し、地震に対する 建物の安全性を向上させるための法律である。平成7年1月の阪神・淡路大震災で、大 破・倒壊などの地震被害が旧耐震基準で設計された建物に集中し、また死亡者の大多数 が家屋倒壊等による圧迫死であったことを受けて制定され、同年 12 月に施行された。

多数の者が利用する一定規模以上の建物に対し、耐震診断・耐震改修の努力義務が課さ れ、また、耐震改修の促進のため耐震改修計画の認定制度が設けられた。

その後、平成16年10月の新潟県中越地震などの大地震の発生や、首都直下型地震・

東海地震、東南海・南海地震が切迫しているといわれる状況などを受けて法改正がなさ れ(平成 18年1月施行)、国による耐震化の基本方針、地方公共団体による耐震改修 促進計画の策定が定められた。

平成25年の改正では、耐震化の一層の促進が図られ、マンションの耐震化も容易に なった。

(1)耐震診断・耐震改修の努力義務の対象建物の範囲拡大

これまで耐震診断・耐震改修の努力義務の対象は、特定建築物(多数の者が利用する 建築物、危険物を取り扱う建築物、避難路の沿道建築物)であり、住宅や小規模建物は 含まれていなかった。平成25年改正により対象の範囲が拡大され、住宅や小規模建物 を含め、現行の建築基準法の耐震関係規定に適合しないすべての建物が対象となり、所 管行政庁によって、耐震診断・改修の指導及び助言がなされることもある。

(2)耐震改修計画の認定基準の緩和

既存不適格建築物(建築基準法3条2項)の改築工事を行う場合には、改築後の建物 につき、すべてを現行の建築基準に適合させなければならないのが原則である。しかし、

建物すべてを建築基準に適合させるには、多大な手間と費用がかかるため、耐震改修に この原則を貫くと所有者が耐震改修をためらい、その結果、耐震改修が進まないことに なる。

このため耐震改修促進法は耐震改修計画にもとづき耐震改修工事を行う際には、耐 震基準以外は既存不適格でも差し支えないものとした。しかし、耐震改修計画の適用範 囲が、建物形状の変更を伴わない改築や、柱・壁の増設による増築などの工事に限られ ていたため、耐震改修工事が進まない要因の一つとなっていた。

平成25年改正により、この制限が撤廃され、既存不適格建築物の耐震改修がより行い やすくなった。また、耐震改修計画に関連し、増築に係る容積率及び建ぺい率の特例が 講じられ、耐震改修工事を行ううえでやむを得ないと判断される場合には、面積制限を 超過して耐震改修工事を行うことができることとになった。

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(3)安全性認定制度の創設

平成25年の改正により、耐震診断や耐震改修により現在の耐震基準と同等の耐震性 を持つと確認された場合、所管行政庁が、建築物の地震に対する安全性を認定するとい う制度が創設され。認定を受けた建物(基準適合認定建築物)の所有者は、広告などに、

この認定を受けている旨を表示できるようになった。

(4)区分所有建築物の耐震改修の必要性に係る認定制度の創設

区分所有法では、共用部分の変更については、形状または効用の著しい変更は集会の 特別決議により決められ、それ以外の変更は集会の普通決議により決めることができ る。耐震工事についても、形状または効用の著しい変更に該当すれば区分所有者数と議 決権数の各4分の3以上の賛成による特別決議となる。

柱や梁にシートや鉄板を巻き付けて耐震性を高めるなどの工事であれば、従来の基 本的構造部分を変えることなく施工可能であり普通決議で実施できるが、耐震性を高 めるために、柱の下部を切断し免震のための部材を挿入するなどは特別決議が必要に なり議決できないこともある。

このため平成25年改正で「区分所有建築物の耐震改修の必要性に係る認定」の制度 が新設された。所管行政庁が、耐震診断が行われた区分所有建築物に対し、当該建築物 の耐震性が不足しており耐震改修が必要である旨の認定を行った「要耐震改修認定建 築物」は、耐震改修工事により共用部分を変更する場合でも、普通決議で議決できるこ とになった。

3.被災マンション法(被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法)の改正

(1)改正の経緯

被災マンション法は、政令で定める災害により区分所有建物が滅失した場合、多数決 でその敷地に建物を再建できることを定めた法律で、平成7年の阪神・淡路大震災発生 の直後に制定された。

被災マンション法はマンション(建物)が全部滅失した場合を想定していたが、東日 本大震災では全部滅失に至ったマンションがなく、法律を適用する必要がなかったた め、東日本大震災は、政令で定められる災害とされなかった。

しかし東日本大震災で、多くのマンションが重大な被害を受けたにもかかわらず、全 部滅失に至らないマンションで、マンションを取り壊す場合や、敷地とともに売却する 場合は、民法の原則どおり、区分所有者の全員同意が必要とされた。

東日本大震災で大きな被害を受けたマンションにつき、全員同意で取り壊した例は あったが、全員同意を得るというのは容易ではなく、多くのマンションで被害回復への 対処に苦慮していた。

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こうした事態に対処するため、平成25年6月に被災マンション法が改正された。こ の改正により、建物の全部滅失の場合における敷地売却決議と、大規模一部滅失の場合 における建物取壊し決議、建物・敷地売却決議などが定められた。

この改正により、被災マンション法は、全部滅失だけではなく、大規模一部滅失も適 用対象になり、平成25年7月 31日、東日本大震災を法の定める災害とする政令が、

公布・施行されている。

(2)全部滅失した場合

被災マンション法では、マンションの全部が滅失した場合には、再建の集会を開き、

敷地共有者等の議決権の5分の4以上の多数決によって、再建の決議をすることがで きるものとされている。

しかし、マンションが全部滅失した場合、多くの権利者が、建物を再築するのではな く、敷地を売却し売却代金で新たな生活の場を築いていこうと考えることもある。

そこで今回の改正で「敷地共有者等集会においては、敷地共有者等の議決権の5分の 4以上の多数で、敷地共有持分等に係る土地を売却する旨の決議(敷地売却決議)をす ることができる」ことになった。敷地の売却に区分所有者全員の同意が不要とすること で、全部滅失の場合の選択肢が多くなった。

全部滅失の場合の措置は、政令の施行日(平成25年7月 31日)から起算して3年 以内に限って適用される。

(3)大規模一部滅失の場合

マンションの大規模一部滅失の場合、従来は被災マンション法に定めがなく、区分所 有法に定めのある復旧決議と建替え決議の手続が必要であった。

今回の改正により、大規模一部滅失の場合について、新たに①建物取壊し決議、②建 物取壊し・敷地売却決議、③建物・敷地売却決議の3つの仕組みが設けられた。

①建物取壊し決議は、集会の多数決で建物を取り壊す旨の決議

②建物取壊し・敷地売却決議は、建物を取り壊すとともに、敷地を売却する決議

③建物・敷地売却決議は、建物を取り壊さずに、現状のまま敷地とともに売却する決議

これらの新しい仕組みによって、全部滅失にまで至らず、大規模な一部滅失の被害を 受けたマンションの権利者の選択肢が、大きく広がった。

大規模一部滅失の場合の措置は、政令の施行日(平成25年7月31日)から起算して 1年以内に限って適用される。