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ドキュメント内 陶芸における緋色の研究 (ページ 64-67)

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       図一36水に濡れた手洗い

       水があふれている部分が濡れることによってその赤色を際だ

たせる現象であり自然界によく見られるものである。乾いている部分は白っぽ くそれをますます顕著にしている。このような現象が焼き物の肌にも起こって いると考えられる。つまり灰が溶けて作品の表面にごく薄い硝子質の紬薬がつ いた場合作品の表面に水を引いたような現象をおこし、素地土の淡い赤色は緋 色としてあざやかに発色するのである。

 次に焼成方法では、緋色とアルカリ との関係について考察してみる。穴窯で 焼いた場合燃料の木灰に多く含まれるカ

リやソーダが、燃焼によってアルカリ蒸 気となって、土から火色を呼び出すと考

えられる。第三回目の焼成では、さやの 内側に灰紬と、酸化鉄を塗り付け、その 中に無月の作品をいれ、ほぼ密閉の状態 で焼いた。この結果、灰紬の場所の素地 土にはっきりと雪上に緋色が出た。これ は木灰紬に含まれるアルカリが蒸発して、

素地土と反応したからであろう。

(図37)       三一37 さやの中でついた緋色

 つまり、さやの内側に塗った木灰紬が高温で焼成され蒸発し、アルカリ炎が その部分だけ充満した。そのアルカリ蒸気が、作品の表面にあたって作品の表 面を浮遊している鉄分を引きつけ発色させたと考えられるのである。

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 また緋色は、素地の表面に硝子質のものがごく薄く生じた場合に、特に還元 焼成によって鮮明に現れるようである。その硝子質の被膜は、燃料の灰と素地 土とでできるし、その他の揮発分が素地に作用した場合、例えば常滑焼きの海 藻焼きのように食塩分解物が作用するとか、煎薬がにじんだり、揮発した場合 に出るものであると考えられる。これは備前の緋裡のように作品に藁などをま いて焼成した場合や、三回目の実験のように自然紬がかからないようにさやの 中に作品を入れて焼いたとき、さやの内部に灰紬を塗った部分に緋色が着く現 象と同じである。しかし、このことは緋色の鮮やかさや色味に関係するのであっ て、緋色の正体はやはり鉄分であるといえる。

 窯さましは、温度計の記録を見ることで窯の冷め方が分かるが、大まかには 最初9時問の下降曲線が大きくその後は緩やかな曲線となった。また、裾前の 温度が火後の温度より低くなるのが、やはり9時間後となり以後火山と火面の 温度が逆転する。二日半のさましで温度は約60度前後となり、窯開けできる温 度となる。今回の実験でも記録したグラフからこの穴馬の冷却は非常にスムー ズな曲線で冷えていくことが分かる。特に、高温の時はその冷却のグラフの傾 きが大きく、時間がたつにつれて傾きは小さくなりX軸に平行に近い傾きとな り、放物線に近い曲線となった。

 「さまし」は.急冷をさけ徐冷することが大切であるといわれるが、700度 前後からの徐冷は、素地土を再び酸化させ緋色の色を鮮やかに発魚させるとい われる。心慮の強い還元焼成になる場所で、緋色系の火色が出るごとがあり、

焼けた素地は高温で焼成され、しかも強い還元状態になっているのに緋色が出 るのは、徐冷よって酸化性になることがその原因であると考える。

 図一34の例では、急冷したものと除冷したものとの比較である。急冷した作 品の緋色は、かなり白っぽくなり鈍く発色するのみで、除令した作品に比べて あざやかな緋色が消えてしまっている。これは、急冷されることで、作品につ いた緋色が充分発色せずあざやかな緋色を消してしまっているものと考えられ る。1150度から1250虚位までの温度で灰が多量につき自然紬の作品になるつ た作品を、還元されたままの高温の状態から、瀬戸の引き出し黒と同じように 窯の外へ急激に引き出すと、特殊な条件で還元を起こし、美しいビードロと呼 ばれる青緑色の作品をとることができる。このようにして、急冷させた作品は、

本来緋色が出る部分がまったく緋色が出ず、青白くなってしまう。従って、青 緑色と緋色の関係は、焼成時の条件が相反するものといえる。つまり、穴窯に よる緋色の条件は、焼成の条件だけではなく冷却の時も徐々に冷却していくこ とで緋色の出方に大きく影響していることが判明した。

 次に焼成時間と温度については、三回目の焼成実験からも1200度を境界に、

緋色の発色が違うことに気がついた。それは、下記のようである。

 ・「1200度以下 緋色はどろんとした赤色」一…・一…温度不足のため表耐に       62

集まった鉄が比較的少ないため翠色となる

・「1200度前後 緋色は鮮やかな赤色」……一………表面に集まった鉄がバ ランスよく酸素と結びついて鮮やかな緋色をだす

 ・「1200度以上 緋色は赤褐色から茶色」……一……集まった鉄の量は多い   が、高温で焼成されるため素地土自体がガラス化してしまい、冷却の時に   酸素と結びつくことができず、鉄を高温焼成したときの茶色のままで発色   する。つまり鉄が試薬になってしまっている現象である。

 以上のことから、緋色は、焼成とともに土の性質に大きく影響されるが、焼 成は、むしろ低めの温度で、そこに土のアルカリと鉄分が作用し緋色が生まれ

るとの感触を得た。同じ土の条件で焼成しても焼成温度の違いによって緋色の 出方が大きく異なってくるのは、やはり、内部の鉄分の動きとその酸化の進み 具合によることが理解できた。

 その他、三回の焼成実験で得 られた結論として、作品の形 状や設置場所も無視は出来な い。特に窯詰めは炎の動き、火 の抜けなどを作り、作品を互い にくっつけいろいろな組み合わ せを考え、炎の流れを計算し緋 色を焼くことが重要であるとの 結論が得られた。(図38)

図一38形状、設置場所の違いで現れた緋色  以上三回にわたる焼成実験から得られた結論であるがこのことをより科学的 に実証するためX線解析及び電子顕微鏡による検証を深めることとした。

 X線解析の方法は、基本的には緋色のついた部分とついていない部分のサン プルを作り、その部分の比較解析をすることである。サンプルとした信楽土は、

前にも述べたように鉄分の少ない白っぽい粘土の代表として、備前土はその逆 の立場から鉄分の多い土である。

 サンプル作りは第三回目までの焼成実験のなかで比較的緋色のよく出た、信 楽土の作品と備前土の作品を選び、まず緋色のついた部位を1cm角程度の大

きさに割り、表面を2000番程度の細かさまで磨く。次に、そのチップの表面 をイオンメッキ装置の中で金メッキする。この金メッキは、X線を当てて元素 の分析をするときに、X線が表面のでこぼこで乱反射しないようにするための

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ものである。そのように加工:したものをX線解析三三にV}れ100秒間X線を当 そ、はねかえってきたX線の量を測定することで緋色の部分とそうでない部分 元素の量を調べた。

 この結果、信楽土のサンプルでは、緋色のついた部分の鉄の量が緋色のつい ていない白い部分と比べると格段に多く、その鉄の含:有量を量的に比較すると、

緋色の部分は白い部分の3,5倍を示した。また、備前の土では、やはり、緋色 のついている部分の鉄の量が多かったが、量的にはL5倍程度であった。 (図

39) (1叉レ重0)

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