ものである。そのように加工:したものをX線解析三三にV}れ100秒間X線を当 そ、はねかえってきたX線の量を測定することで緋色の部分とそうでない部分 元素の量を調べた。
この結果、信楽土のサンプルでは、緋色のついた部分の鉄の量が緋色のつい ていない白い部分と比べると格段に多く、その鉄の含:有量を量的に比較すると、
緋色の部分は白い部分の3,5倍を示した。また、備前の土では、やはり、緋色 のついている部分の鉄の量が多かったが、量的にはL5倍程度であった。 (図
39) (1叉レ重0)
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このことによってまず第一に言えることは、やはり焼成実験の結論で得られ た通り緋色は鉄分の多いところで発色しており、酸化第二鉄の色が主であると いうことがいえる。
策二に、信楽の土について、特に素地の中には鉄分が比較的少ないにも関わ らず、表面の緋色の着いた部分に鉄分が非常に多いということがいえる。これ は、焼成中に素地の中の鉄分が表面に付近に何らかの形で動いたこと、おそら くそれは薪のアルカリ炎がマイナスのイオンとなり素地中の鉄イオンを作晶の 表面に引きつけ、そして、それが冷却される段階で酸化され発色したと考えら れるのである。
第三に、備前土でも信楽土においても量の差はあるが緋色は鉄分の発色であ ることがわかり、そのことは備前の緋裡と、信楽の緋色とはほぼ同様のメカニ ズムで発色する。つまり、一般に、「備前の緋裡は藁のかかった部分で、藁の アルカリと原土に含まれている鉄分が化合してガス帯をを発生させることによ
り器物を赤色に変色させる」といわれていることを実証することができた。
第四に、備前の緋色の発色は信楽の緋色と比べるとあまり鮮やかなものでは なく、また色自体も赤褐色に近いものであるが、元々素地の中に含まれる鉄分 の量の違いからくるものであることが分かる。つまり、備前土は比較的鉄分の 多い土で、素焼きの段階ですでに鉄が発色をしているため、緋色が着いても赤 褐色になってしまい鮮やかな緋色にはならない。それに反して、信楽の土は元 来鉄分の少ない土であり、素地土は白い。そこに鉄分が析出し発色するとその コントラストの故に鮮やかな緋色として表出するのである。緋色の作品を焼く ためには、酸化鉄などの酸化金属の含有量のきわめて少ない、純白に焼き上が る粘土が適しているといわれるゆえんである。
第五に備前土の緋色の濃い部分(ダーク)と薄い部分(ペイル)の部分について、
鉄分の量にほぼ変化はなかった。これは、高温で析出した鉄分の量が同じなの に、発色の違いが現れているということである。つまり、緋色の濃い薄いは鉄 分の量ではなく、表面の酸化の具合と硝子質の量によるといえる。
上記のサンプルでX線解析した場所を、電子顕微鏡で拡大し、その表面の比 較検討をした。図41の②を見るとごく薄く何層にも自然紬がかかり素地の白い 部分①と比べると非常に滑らかである。またその被膜は上部に向かって一定の 方向に結晶しており方向性がある。また、③をみると左半分の上蔀は滑らかな 硝子質の被膜、下部はちょうど魚の鱗のような被膜が確認できる。このように 被膜のついている部分にも変化があり緋色の発色にかなり影響があることが分 かる。この滑らかな表面は、 高温で焼成されているときに溶解し、ちょうど水 の中で分子が活発に動くと同じように鉄の分子もかなり活発に動くことができ ると考えられ、右半分は素地土がそのままでており、1ミクロン程度の気泡が 無数に開いている。これは、素地中の水分が逃げたあとであると考えられ、そ のまわりは、焼結が進み素地がしっかり焼き締まっていることが分かる。
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備前緋裡徳利
①備前A一白い素地の部分 (30ミクロン)
ざらざらしており肌は荒く ピンホールが多い
③備前。一緋色の濃淡 (490ミクロン)
結晶が丸く点在して、色は黒っぽい
繍馨.
②備前B一緋裡の部分 (30ミクロン)
ねっとりした感じで、色は黒
④備前D③備前Cの拡大
(150ミクロン)
肌はねっとりして滑らか
図引41
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鯵
信楽緋色茶碗
⑤信楽緋色拡大の部分
(10ミクロン)
表面に結晶状のもの
⑦信楽B素地明白の部分
(150ミクロン)
全体に白っぽく長石結晶
欝 難
⑥ M楽緋色と素地土白の境罪f (150ミクロン)
緋色の部分は非常になめらか
⑧ 信楽緋色と素地土白の境界 (520ミクロン)
ねっとりとした硝子状の被膜
図一42
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一方、信楽緋色茶碗の拡大をみると、図42の⑥⑧の境界では、左側に硝子状 の被膜がしっかりついており備前焼より滑らかな感じがする。左の硝子質の拡 大写真は一一見すると地球の森林地帯、右の素地土の部分は砂漠地帯のような印 象をうけ、被膜の部分は素地の部分よりも下の土にまで硝子質の被膜が焼き付
き表面が沈んでいるようである。
その赤く緋色の着いた場所は、表面が非常に滑らかになっており、硝子質の 結晶化が進んでいる。この結晶の中に鉄が多く含まれ、徐々に冷却しでいく時
に表面だけが酸化され緋色を表禺していると考えられる。ごく薄く自然和が溶 け、表面を滑らかな被膜で覆われることが、緋色があざやかさを増す第〜の条 件である。それはまず、表面に集まった鉄が、酸素とふれあうことができる程 度の薄い被膜であることが大切なことである。次に、その表面は、光の乱反射 を押さえるだけの自丁寧でなければならない。この被膜が厚すぎると、緋色は 茶褐色に発色し、薄すぎると淡くうすいぼやけた赤色にしか発色しないことは 前述したとおりである。
また逆に素地の白い部分については、⑦でみられるように密度が荒く長石な どの結晶も含まれていることが分かる。
1200度以上で焼成が進む、手前の作品の角皿についた緋色は茶色系統の色の 上にほんの少し赤系の緋色が定着しているのが見える。まさにこれは、表面だ けに酸化が起こり緋色が発色したものであると考えられ、高温焼成をしている 時の素地土の状態は、いろいろな元素がイオン化して素地の申を浮遊している 状態であろう。
鉄分が作品の表面に引きつけられる現象は、鉄の分子が高温の素地土の中で かなり自由に動くことができると考えらる。またその鉄分は、素地土の中に砂 石が多く混入していることで、焼成申に酸素の出入りがスムーズに行われ、ア
ルカリ炎との反応がおこりやすいと考えられる。
実験の中の篠原土のように蛙目粘土41のなかには、原土のまま使うと美しい 緋色の出る粘土があるが、水簸をすると全く緋色の出なくなってしまう場合も ある。その原因は、粘土に含まれる可溶性の塩類、可溶性の鉄化合物「水酸化 鉄、硫化鉄、塩化鉄」などのうち、特に水酸化鉄が水簸によって水に流されて しまうからであろう。また、緋色に直接関わりがある可溶:性の鉄化合物「水酸 化鉄」は、作品を成形したあと乾燥させると、乾燥と同時に素地の表面にあつ
まって来るのではないかと考えられる。焼き上げた緋色の作品の断面を見ると、
割れロの素地の色は純白であり、作品の表面だけに緋色がついていることがそ れを証明している。
以上焼成実験での考察とX線解析、電子顕微鏡分析の結果、結論として緋色 の焼色を決定するものは、素地原料に含まれる鉄分と焼成条件とであった。し かし、鉄分含有量と焼成条件を等しくしても、必ずしも焼成色が等しくはなら ない。それは、原料の組成とそれに含まれる鉄分の状態によるからである。ち なみに信楽系の土は長石の風化したものが水底に堆積したものであり、素地中 68
の鉄分は比較的少なく、備前系の土はそれとは組成が違い石灰分が多く、また 鉄分の多い土である。
次に鉄分が素地中にいかなる形で含まれているか、つまり微細な鉄分が含ま れているか、あるいは粗い鉄分が含まれているかによっても緋色が異なる。鉄 分は元来原料中のある鉱物成分として含まれているが、1200度以上で焼成する
と焼結している素地の申から薪のアルカリイオンに引き寄せられ表面に集まり、
これが冷却時に酸素と結びついて赤く発色をする。
また、この緋色の鮮やかさは焼成中に三三の表面に薄く硝子質の被膜がつく 被膜のつき方で違ってくる。つまり被膜がない場合は素地土の白、ごく薄くつ いた場合は鮮やかな緋色、厚くつきすぎた場合は、灰色から緑つぼく発色をす る。緋色の正体は素地中の鉄分であるが、鉄分の含まれ方が緋色の色味に大き く作用する。その発色のあざやかさは、焼成温度によって大きく異なり、焼き 上げ温度にも大変影響されやすく、温度の上げすぎや焼きすぎによって、緋色 が消えてしまうことも多い。そのほかに素地土の、粗密、長石やその他の含有 物がかなり影響することが結論としていえる。
緋色の現lllと焼成温度との関係では、1200度〜1250度以上の温度では、非 常に鮮やかな緋色がでる。しかし、1250度以上の高温では、集まった鉄の量は 同じであるが、高温で焼成されるため素地土自体がガラス化してしまい、冷却 の時に酸素と結びつくことができず、鉄を高温焼成したときの茶色のままで発 色する。このことから、緋色は、土の性質に大きく影響されるが、焼成はむし ろ低めの温度で、そこに炎のアルカリと土の鉄分が作用し緋色が生まれると考 えられる。つまり同じ土の条件で焼成しても焼成温度の違いによって緋色の出 方が大きく異なってくるのは、やはり、内部の鉄分の動きとその酸化の進み具 合によるのである。
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