6. 走行レーン地図の自動生成
6.4. 路面点群の抽出
MMSから得られる3次元点群には,他車両や歩行者,道路周辺構造物などの路面以 外の対象物が含まれており,そのまま利用すると誤った地図が生成される.このため 路面の点群のみを抽出する処理が必要となる.特に他車両は直方体状であるため,長 い線として抽出されやすく,その除去は重要である.そこで路面が局所的に平面であ る性質を利用し,路面を表す点群のみを分離する処理を行う.なお記載した数値は主 には国土交通省による道路技術基準の体系に基づく寸法[51]を参考に,レーザスキャナ の性質,演算量とあわせて決めている.
点群の各点には3次元の位置と反射強度が含まれている.位置は測量で良く用いら れる平面直角座標系[53]で表現される.緯度経度を用いると高緯度地域と低緯度地域の 補正が問題になるが,平面直角座標系ではエリアごとに平面に近似して処理できるた め,通常の単位がメートルで表現された直交座標系で扱うことができる.反射強度は レーザスキャナのメーカによって決められる数字であり0~65,535の値をとる.ここで
は0.0~1.0に規格化して用いる.ここで計測領域は25[mm]間隔のグリッドを区切って
処理するものとした.一度に30 x 30[m]の領域を処理するのであれば,1,200 x 1,200[個]
のセルに分割される.
上述の 25x25[mm]に区切られた各セルについて,周囲が平面であることを仮定して
路面を分離する.まず中心からグリッドの解像度より広い 500[mm]の矩形範囲の点群 を集め,各点の高さYと,XZ平面での座標(x, z)の関係を,平面で近似する(図6.7).
平面の推定にはロバスト推定の一種である最小メジアン法を用いる.次に平面近似の 結果を使って中心セルに所属する点群が地図生成に利用できる路面や縁石・壁面を判 定する.この判定には次の五つの基準を適用する.
① 平面から50mm以上離れた点群を路面外とした(図6.8a).
② ①で路面外とされた点群の割合が10%を超える場合,全ての点群を路面外とした.
③ 平面の傾きが20度を超える場合,全ての点群を路面外とした.
④ 平面が30m x 30mの領域の各平面の高さのメジアン値から大きく異なる場合,全
ての点群を路面外とした.
⑤ XZ 平面上で孤立した平面領域を画像処理のラベリング処理で求め路面外とした.
なお往路・復路など複数回の計測について,それぞれ遮蔽の原因となる他車両が路 面上にいる場合といない場合があるため,路面点群の抽出処理は計測ごとに処理する ことに注意する.
次に縁石や壁面の点群を残すため,抽出した平面領域を 50mm 膨張させた領域の点 群を再判定する.このために複数回の計測で個別に抽出した平面を利用する.図 6.8b のケース 1 では,他の計測回で計測した平面の領域上に点群が載っている.このよう な場合は縁石とはみなさず棄却する.ケース 2 は縁石でよく見られ,二つの平面に挟 まれている点群を残す.ケース 3では平面に含まれない領域の点について,250mmま
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での高さの点群を壁面として残す.図6.9にこれらの処理によって路面抽出した結果を 示す.図中では処理例を示すため A-D 地点を設定した.A,Bは複雑な道路ペイントや 他車両の映り込みがある計測を選択した.C,Dは交差点で曲がった計測を選択した.
図6.7 グリッドの縮尺イメージ
図6.8 各ケースにおける路面点群抽出 判定領域
平⾯近似領域
縁⽯の点群 棄却した点
群 棄却した点群
路⾯点群
(a) 路⾯抽出 (b) 縁⽯・壁⾯の抽出
ケース1 ケース2 ケース3
壁⾯の点群
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図6.9 レーザ点群から路面表面の抽出
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