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8. 自己位置推定の評価

8.1. 市街地での自己位置推定の評価

8.1.7. 各経路の詳細

自己位置の推定について,いくつかの事例を示す(図 8.6).グリーンの線は画像から 検出した線分であり,マゼンダは推定した自己位置を使って地図を画像に投影した結 果である.キャリブレーションの問題はあるものの,推定した自己位置が正しければ,

画像と地図は正確に重なる.(a)は複雑な白線や道路標示があるシーンである.(b)は陸 橋の 3度の勾配を登っているシーンである.(c)は路駐車両を避けるシーンであり,(d) は細街路を走行しているシーンである.(e)の手がかりの少ないシーンについては後述 するが,いずれのシーンでも正確に自己位置が推定できていることが示されている.

またケース 1 における推定誤差の分布を示す(図 8.7).これは画像取得のタイミング ごとの誤差をプロットしたものである.誤差はほぼ 0 近辺にある.進行方向に誤差が 増えている箇所は,長い直線を走行した時に手がかりがなかったためである.ただ,

このような地図上での手がかりが無い,つまり付近の地形に変化が無いということは,

誤差が大きくなったとしてもアプリケーション上問題になりにくい場所である.一方 で単眼のケースでは横方向にも誤差が増えている箇所がある.これは図8.6e のケース であり,陸橋を登ったところで,手がかりの少ない交差点を曲がったときに発生した ものである.交差点を曲がる際にはオドメトリによる誤差が大きくなりやすい.この とき,横断歩道が大きく掠れているなどの理由で,手がかりが少ないと,誤差が大き くなることがある.しかしマルチカメラ条件では,後方カメラが横断歩道を捉えるこ とで,誤差が大きくなるのを防ぐことができ,有効性を確認した.

また,レーザによる手法との比較(表8.1,図8.7)を考察する.ケース3では本研究と ほぼ同等の精度である一方で,ケース 1 では,陸橋付近の直線道路で進行方向の誤差 が大きくなった結果,以降の推定が難しい状態に陥った.またケース 2 でも同様に,

ゆるいカーブを走行するシーンにおいて,進行方向の誤差が大きくなった.本研究は 雨水桝や側溝などレーザの反射強度と無関係な手がかりや,点線状の白線の端点を利 用することでき,進行方向の誤差の補正している.一方で文献[20]と線分地図の組み合 わせでは進行方向の手がかりに乏しく,誤差が大きくなったと考えられる.

さらに線分検出によって明瞭な白線以外の手がかりを検出している効果を確かめる ため,地図から縁石,側溝,雨水桝といった道路構造に基づく線分を削除し,白線や 黄線,道路標示といった路面のペイントのみの地図に対して,本手法を適用する実験 を追加で行った.実験条件は前方+後方カメラとした.その結果,ケース2では横方向 の平均誤差が 0.065[m], 進行方向の平均誤差が 0.45[m]と,ほぼ同等の精度であったの に対し,ケース 1 では交差点を曲がるシーン,ケース 3 では細街路において自己位置 が大きく外れ,以降の推定が難しい状態になった.この結果より縁石などの手がかり は,主にロバスト性の向上に寄与していることがわかった.

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(a) 複雑な白線や道路標示 (b) 陸橋の 3 度の勾配

(c) 路駐車両の回避 (d) 白線が左のみの細街路

(e) 手がかりの少ない交差点

図8.6 地図を画像上に投影した結果

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図8.7 推定誤差の分布

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