4. 線分特徴による観測モデル
4.5. 画像中の線分の鳥瞰変換
車両設計においては,カメラの構成が車種によって大きく異なることが多い.この ためカメラ構成が変更されても後段の処理に影響が出ないことが望ましい.そこで本 研究では,複数のカメラから検出された線分を車両座標系に変換して扱う.このため に画像中の線分を鳥瞰変換によって車両座標系へ射影し,その誤差分布を検討する.
n
番目のカメラの取り付け位置の回転
vcn
R ,並進
vcn
t およびカメラの内部パラメータは 事前に与えられているものとする.また路面は車両近傍において平面であることを仮 定する.これにより線分検出によって得られる線分の開始点
n
s,終了点n
eは,鳥瞰変
52
換
b
によって車両座標系におけるq
s,q
eに変換される.n
s,n
eは正規化画像上での位置 である.開始点と終了点の変換は同じ扱いであるので,q b n ( )
と添字を省略すると,変換式は次式で与えられる.
33 13 33 13 33 23 33 23
31 21 33 13 31 11 33 23
31 11 31 11 31 21 31 21
33 23 31 11 3
( )
( ) ( ) ( ) ( )
( )( ) ( )( )
( ) ( ) ( ) ( )
( )( ) (
v z u y u u z v x v
v u u v
v z u y u u z v x v
v u u
n t n r r t n r r n t n r r t n r r
n r r n r r n r r n r r
n t n r r t n r r n t n r r t n r r n r r n r r n r
q b n
3 r13)(n rv 31 r21)
(4.1)
但し,次に設定される.
11 12 13
21 22 23
31 32 33
[ , ] [ , ]
[ , , ]
n
n
T
x z
T
u v
vc
T
vc x y z
q q n n
r r r
r r r
r r r
t t t
q n
R
t
(4.2)
4.5.1.鳥瞰変換の誤差モデル
画像中から線分を検出について,車両周辺では高解像度に撮影されるため多くの画 素が使われるのに対し,遠方では少数の画素しか使われない.このため車両周辺に比 べて遠方は,観測誤差が大きいことが直感的に理解できる.そこで線分の鳥瞰変換後 の誤差モデルを,線分の検出位置や長さに対応づけて検討した.まず画像上における 検出位置の誤差の大きな要因にはレンズがあり,一般に中心から離れるに従い誤差が 大きくなると考えられる.あらかじめ歪み補正[2]を行っていたとしても,誤差が残る ことがある.そこで画像上での検出誤差を画像中心からの位置の2乗によって表現す る.また線分を抽出する際には,複数の画素が使われており,長い線分ほど正確であ ると考えられる.このため正規分布におけるサンプル数と誤差の関係を参考に,線分 の画像上での長さ
l
の平方根に標準偏差が反比例するとした.これらをまとめ画像上 での端点の誤差の共分散行列R
l を次の対角行列として表現した.c c
1,
2 は定数である.2 2 2 2
1 2 1 2
[( ) ,( ) ] /
l diag c nu c c nv c l
R (4.3)
さらに鳥瞰変換後の車両座標系における共分散行列Rqを,ヤコビ行列
b / n
によ る1次の近似を行い次の式で示す.T
q l
b b
R R
n n (4.4)
ここで鳥瞰変換の式をそのままヤコビ行列を計算するのは,式が複雑であるため演算
53
量が多い.また車両にカメラはほぼ水平に取り付けられていることを利用し,次のよ り簡単な式で近似する.
T
q l
b b
R R
n n
( ) /
/
y u v
y v
t n n t n
b n
(4.5)
この場合のヤコビ行列は次で計算される.
2 2
/ /
0 /
y v y u v
y v
t n t n n t n
b
n
(4.6)4.5.2.鳥瞰変換の結果
画像線分の鳥瞰変換の例を示す(図4.5).黒線は地図を表し,青線は鳥瞰変換した画 像線分,赤楕円は線分端点の誤差楕円を表している.画像中で手前側かつ中心付近に 検出した線分は誤差が小さく,遠方の線分は誤差が大きくなっているのが見て取れる.
なお共分散が大きい線分は,自己位置の補正で利用しないように閾値処理した.これ により誤差の大きい画像周辺の線分や,短い線分が優先的に取り除かれる.
54
図4.5 線分の鳥瞰変換と観測誤差.
55