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い周波数でD*が下がっている。これは周波数が上がりすぎると温度自体の絶対値も小さく なるため、出力が小さくなるからだと考えられる。焦電センサでは赤外線のチョッピング 周波数でも出力に影響があるため、目標とする周波数に対応するセンサ構造の設計が重要 であるということが分かった。作製したセンサでは梁長さを200 μmから1000 μmへ変更す るとD*は約1.3倍になった。図4-7のシミュレーション結果では温度は2倍以上になって いるが、実際のD*の変化は小さかった。図3-5のグラフの温度の時間微分を縦軸としてプ ロットし、実効値を求めるとそれぞれの温度の時間微分の実効値は1.78 倍となり、実測の

梁長さを200 μmから1000 μmのセンサの比に近い値となった。残る誤差はシミュレーショ

ンの厳密性や用いた材料定数などにより生じたものだと考えられる。以上より、提案、作 製をした SiO2/SiN 積層成外線吸収膜及び過渡伝熱解析に基づいたセンサ構造設計を用いて 作製したPZT薄膜赤外線センサのD*の測定に成功し、D* 1.15 x 107 cmHz0.5/Wが得られた。

また作製した焦電センサのD*を他の薄膜焦電型赤外線センサの報告と性能を比較した結 果を表4-3に示す。様々な材料、膜厚、周波数での比較になるが、本研究で作製したセンサ の性能は他の報告されているPZT薄膜赤外線センサと比較して数十分の一程度のD*である ことが分かった。この原因として、赤外線吸収膜の吸収率が十分でないことが原因である と考えられる。本センサではCMOS回路に適合する材料としてSiO2/SiN赤外線吸収膜を提 案し作製したが、その赤外線吸収率86%程度とAu-blackなどの赤外線吸収膜の吸収率(90%

以上)と比較するとやや低い結果となった。よってさらに赤外線吸収膜の構造を工夫して赤 外線吸収率を向上させることが必要であると考えられる。現在の赤外線吸収膜では波長 8

μmから9 μmにおいて吸収率が低い。この帯域の赤外線を吸収できる材料を積層させて吸

収膜を形成することで更なる吸収率の向上ができると考えられる。赤外線吸収膜の積層構 造を更に工夫してAu-black同等の90%以上の吸収率を実現することがセンサ性能向上に有 効であると考えられる。そして更に性能を向上させる方法として回路素子との集積化が考 えられる。現在はディスクリート部品の回路素子を用いて外部で信号処理をしているが、

これをチップ上に増幅回路などを形成して、信号処理をセンサの近傍で行うことができれ ば、雑音の混入を小さくし、性能を向上させることが可能であると考えられる。回路との 集積化は赤外線センサの性能を向上させる上で重要な要素なのである。

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図4-12 D*測定系のブロック図、及びパッケージしたセンサの回路図

図4-13 センサパッケージの外観

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図4-14 D*の測定結果

表4-3 作製した薄膜焦電型赤外線センサと他の報告との性能比較[22-26]

Authors Material Thickness [nm] Specific detectivity [cmHz1/2/W]

C. Giebeler et al. PZT 800 5.0 x 108 (10 Hz)

W. Liu et al. PZT 550 1.7 x 108 (10 Hz)

C. C. Chang et al. PZT 500 2 x 106 (1 Hz)

L. Pham et al. PbTiO3 360 2 x 108 (30 Hz)

N. Fujitsuka et al. PVDF 700 2.4 x 107 (40 Hz)

This work PZT 450 1.15 x 107 (30 Hz)

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