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作製したPZT薄膜焦電型赤外線センサのSEM観察画像を図4-9に示す。図は梁長さ200 μmのセンサである。センサを支える梁がねじれていることが確認できた。これは Al 膜と SiO2/SiN膜の成膜時に応力が生じ、センサ下部のSi基板をエッチングした時に応力が解放 されたためだと考えられる。よってこの梁のねじれを解消するにはそれらの膜の成膜条件 を見直す必要がある。しかし、梁はねじれているにもかかわらず、センサの表面は基板に 対して水平を保っている。したがって梁のねじれは本赤外線センサにおいて問題は無い。

作製したセンサの強誘電体ヒステリシスループを図4-10示す。強誘電体ヒステリシスル ープは縦軸に分極、横軸に膜にかかる電界をとったグラフであり、強誘電体の特性を評価 する重要な電気的特性である。作製したPZT 薄膜はヒステリシスループを描いており強誘 電性の分極を持っていることが確認できる。また電界が0 kV/cmの時の分極値(自発分極値 または残留分極値)は梁長さ200 μmおよび1000 μmのセンサにおいてそれぞれ28 μC/cm2

と33 μC/cm2が得られた。これはPZT薄膜の他の報告に比べて2 ~ 3倍程度高い値である

[19,20]。自発分極値が大きければ焦電効果における電荷の変化量が大きくなるため、出力は 大きくなるはずであるため、作製したPZT 薄膜センサは焦電センサとして良質な膜である と考えられる。

次に作製したセンサにおける赤外線吸収特性を図 4-11 に示す。比較として Pt/Si 上の SiO2/SiN積層成外線吸収膜の赤外線吸収率をプロットしている。作製したセンサは本研究で 提案した SiO2/SiN 積層成外線吸収膜をセンサ上に成膜しており、赤外線は実際には下部電

極のPt上にあるSiO2/SiN/SrRuO3/PZT/SrRuO3というセンサ構造全体で吸収されるため、赤

外線吸収率が底上げされる。結果より実際に作製したセンサの赤外線吸収率は波長 8 - 14 μmにおいて平均86%の赤外線吸収率を得られた。このように作製した焦電センサでは高い 赤外線吸収率を実現でき、SiO2/SiN積層赤外線吸収膜が非常に有用であることが確かめられ た。

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図4-9 作製したPZT薄膜焦電型赤外線センサのSEM観察画像

図4-10 作製したPZT薄膜の分極ヒステリシスループ

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図4-11 FTIRにより測定した作製したセンサの赤外線吸収率

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