第 7 章 幼児の推論言語の事例研究
3.2 質問紙の結果から
第4章で得られた因子分析結果の4歳児,5歳児における因子に事例1,事例2の結果 を合わせ,示したものが表7‐2,表7‐3,表7‐4である。
事例1は,第1因子「適切な発話交替・語の定義・表象」において冗談の理解に関して のみ,4歳11か月の研究開始からできる時とできない時があり,5歳になっても変化は見 られなかった。第Ⅱ因子「保存・実行機能」では数の保存,実行機能や即時的処理が関係 するゲームがまだ難しいことがわかる。
第Ⅲ因子「自他認識・話題の維持」では,「人が話しかけているのに対し,無反応な時が ある」の項目で実施前の4 歳11か月ではまれにみられていたが,その後みられなくなっ ていた。第Ⅳ因子「同意なしの話題変更・興味」では,自分の知識は相手も知っているこ と前提に話すといったことが4歳 11か月の時点では,まれにみられており,特定なもの への興味的関心,知識を話すことが常にあるという結果であった。
また,事例1は研究途中に生活年齢が5歳となったため,年長児の因子における変化に ついてもみた。
第Ⅰ因子「適切な発話交替・語の定義・表象」では,「すでに話し終えていることを繰り 返し話す(Q59)」,「大抵の人が心の中で思っていても声に出して言わないことをそのまま 言葉にしてしまう(Q44)」,「自分が知る情報は相手も知っていることを前提に話す(Q43)」
の4項目がまれにあり,また「聞き手のことに関係なく独り言のように一方的に話してい る(Q32)」ということがある。事例1は「過剰にそのままの言葉通りに受け取る(Q35)」字 義通りの理解についてもある時とない時がみられている。第Ⅱ因子「系列・結束性」では,
数の逆唱 (Q53) ができないこと,微細運動や視覚的系列化 (Q52) はできる時とできない 時がある。しかし,単語の意味の理解や説明,絵本などの物語を流れに沿って話す,1 つ の話題が終わるまでやりとりが続くなどの系列的に話すことや単語と意味の関連づけとい った点はできていた。第Ⅲ因子「プランニング・実行機能」では,表象と数の保存に関す るクイズはまだ難しいこと,また,服の着替えで表裏や左右逆になることがたまにある。
しかし,1 日のスケジュールを把握し行動することや自分でプランを立て順序立てて何か を作ったり行動する,指示されたとおりに最後までやり遂げる,などができていた。第Ⅳ 因子「他者の注意喚起・感情理解と伝達」については,7項目すべてができていた。
事例2は,生活年齢の5歳に合わせ,年長児の因子による変化をみた。第Ⅰ因子「一方 的な発話・話題の維持」では,5歳3か月時から「大抵の人が心の中で思っていても声に 出して言わないことをそのまま言葉にしてしまう (Q44)」がまれにみられていたが,5 歳 4か月になると「まれにある」から「ある」,そしてまた「まれにある」へと変わり,移行 している状態であった。また,5歳3か月ではみられていなかった「会話をしている時に 突然,話題が変わる (Q2)」が,5歳4か月からまれにみられていた。5歳4か月時の3週 目には「こちらが話したことを過剰にそのままの言葉通りに受け取る(Q35)」がまれにみ られ,5歳4か月時の4週目には,「すでに話し終えて知っていることを繰り返し聞く(Q59)」
がまれにあり,第Ⅰ因子の12項目中4項目で未熟さが残っている。
第Ⅱ因子「系列・結束性」では,語の理解や意味の説明 (Q41) ができたりできなかっ たりしている。会話中の身振りの使用(Q16)については,みられていない。「絵本などの物 語を話しの流れに沿って,話す(Q26)」「1つの話題が終わるまでやりとりが続く(Q66)」「会 話中,話が途切れ言葉に詰まると子どもが思いついた言葉をつなげて言う(Q68)」の項目 はまれにできている。
第Ⅲ因子「プランニング・実行機能」では,「自分で計画を立て,順序立てて作る,行動 する(Q47)」「1日のスケジュールを把握して行動する(Q50)」「指示通りに自分で最後まで やり遂げる(Q39)」といったプランニングや見通しをもって行動するといったところがま れにできる,あるいはできたりできなかったりと変動しており,「プランニング・実行機能」
因子の高度な認知的側面において未熟さがみられている。
第Ⅳ因子「他者の注意喚起・感情理解と伝達」では,5歳3か月時に「子ども同士がケ ンカをした時,相手の気持ちを聞くと答えることができる(Q46)」がまれにできるから 5 歳4か月以降はできるように変わったが,5歳4か月の4週目に「まれにある」へまた戻 っている。「微笑みかけると同じように笑顔で返す(Q49)」においては5歳4か月に「まれ にある」から「できる」に変わった。その他の会話開始時の注意喚起や自分の感情を言葉 で伝える,ごっこ遊びもできており,また,「人が話しかけているのに無反応な時がある
(Q3)」「話し方が一本調子のように感じる(Q10)」などはみられていなかった。第Ⅳ因子で
は,「子ども同士がケンカをした時,相手の気持ちを聞くと答えることができる(Q46)」が 事例2において未熟さがある。