(1) 報告書等の活用,研究発表会の開催 28.公開研究発表会の開催
研究所の研究・事業の成果を,主として研究者,教育関係者,学生・大学院生等など,そ れぞれの分野の専門家をはじめとした各層を対象として公開し,発表・質疑・討論・研究室 公開などを通じて,評価や批判を受ける機会を設ける。そこで行われた議論や得られた評価
・批判を,その後の研究・事業の実施や企画に生かすことを目的にしている。例年,研究所
12 20 16
の創立記念日( 月 日)当日ないしその前後に開催するのを原則としているが,平成 年度は移転との兼ね合いもあり,10月30日に開催した。
なお,研究・事業の内容を公表するための催事として,研究所は「ことばフォーラム」も 開催している 「ことばフォーラム」が,専門家ではなく広く一般市民を対象として,言葉。 にまつわる幅広い話題を選んで啓発的な姿勢を持ちながら講演や公開討論を行うことに主眼 を置くものであるのに対して,研究発表会は前記のような対象や目的を持ち,主として所内 プロジェクトによる研究課題について,より専門的な成果を世に問う場であるという点で,
両者の催事は性格を異にしている。
○開催の状況 担当
公開研究発表会企画部会:宇佐美洋(部会長) 柏野和佳子 小高京子 髙山和男 企画者:金田智子 小河原義朗
以下の内容の公開研究発表会を実施した。対象は主に日本語教育の関係者であり,76 名(う ち一般参加者70人,他はテーマの研究プロジェクト関係者,所員等)の参加があった。
【テーマ】これからの日本語学習支援を考える−学びを支えるモノ・ヒト・コト−
16 10 30 13:00 17:00
【日 時】平成 年 月 日(土) 〜
【場 所】国立国語研究所講堂
【プログラム】
〜 あいさつ 甲斐 睦朗(国立国語研究所長)
13:00 13:15
〜 講演 杉戸 清樹(国立国語研究所)
13:15 13:40 1
国立国語研究所における日本語教育に関する研究・事業の歴史
−なぜ言語学習リソースを探るのか?−
〜 講演 小河原 義朗(国立国語研究所)
13:40 14:15 2
日本語学習者はどのようなリソースを用いているのか?
〜 講演 柳澤 好昭 (国立国語研究所)
14:15 14:50 3
日本語学習者はどのようにリソースを用いているのか?
−電子化素材と電子媒体−
〜 休憩 14:50 15:10
〜 全体質疑 15:10 15:30
〜 コメント 李 徳奉(韓国同徳女子大学校)
15:30 15:45
海外の日本語教育に携わる者の立場から
〜 コメント 西原 鈴子(東京女子大学)
15:45 16:00
国内の日本語教育に携わる者の立場から
〜 ディスカッション「これからの言語学習支援に求められること」
16:00 16:55
全体質疑
〜 閉会 16:55 17:00
○開催に際しての広報手段の適切性 広報は次の3つの方法で行った。
(1)電子メール,ホームページ
(2)ポスター・葉書の送付
(3)雑誌,広報紙
今回の公開研究発表会でも前回同様 (1)の電子媒体を用いた広報に重点を置いた。今回は, 日本語教育にかかわる内容の研究会であったため,日本語教育関係者を中心に,主としてメール による広報を行ったが,一部葉書も活用した。案内のメール・葉書は,これまでの公開研究発表 会や日本語教育短期研修などの来聴者に対しても発信した。
研究会後のアンケートによると,広報メールは日本語教育関係の各種メーリングリストに転送 されたり,インターネット上の掲示板に掲載されたりしたようであり,そのような間接的手段に よってこの研究会の存在を知った,という回答も複数見受けられた。
大学・図書館等にはポスターを送付し,掲示を依頼した。また,研究会の3週間前に開催され た日本語教育学会でも広報葉書を配布し,広報に努めた。その他,雑誌( 日本語学『 』,『月刊日 本語』など)や広報紙『国語研の窓』にも案内を掲載した。
アンケートによると,この研究会の存在を知った媒体として最も回答が多かったのは「ホーム ぺージ (」 18 名)であり,ついで「電子メール (」 12 名),「葉書 (」 8 名 ,であった(複数回答) 可 。その他 「先生からの紹介」という回答も) , 6件あった。
○学術的有用性
国立国語研究所では現在,国内外でどのように日本語学習が行われているか,ということにつ いて 「リソース (教育及び学習に用いられる物,人,機会)という観点から実態調査を行っ, 」 ている。
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従来の日本語教育では 学習を支えるために意図的に準備されたリソース 教材・辞典など に着目しつつ,それらをどのように使って教えるか,良いリソースを作成するにはどうしたらい いか,という観点から調査や研究が行われていた。しかし昨今では,「意図的に準備されたもの ではないリソース(学習者の日常的な言語生活の中に環境として存在しているもの)」を用いた....
学習も,大きな広がりを見せていることが国内外での実態調査で分かってきている。このような 中で,「コンピュータ」という新しい「物」は,それにかかわる「人」,それを扱う「機会」との新 しいかかわり合いを作り出し,日本語教育を更に展開させていく可能性を持っている。
今回の発表会は,日本語学習を支えるリソースや,それを用いた学習の在り方には極めて多様 な姿があり得ることを示した。かつそのような状況の中で,今後国立国語研究所はどのような役 割を担っていくべきかについて,来聴者と共に議論を交わすことができた。このことは極めて高
い学術的有用性を持っていたと言える。
○社会的有用性
従来国立国語研究所が果たしてきた重要な役割として 「既成概念の問い直し」ということが, 挙げられる。つまり,言語そのものや言語教育について,社会一般に広く受け入れられている考 え方に対し,もっと違う角度から考え直してみることもできるのではないか,という問いかけを 行っていく,という役割である。
従来「学習」とは,主として教室の中で,教師のコントロールの下で行われていくもの,とし
。 , 「 」 ,
てとらえられていた しかし今回の研究会では 実際の 学習 の在り方は実に多様であること 従来着目されていなかった「学習」の在り方を見つめ直すことで,日本語教育は更に豊かな展開 を見せる可能性があることを述べた。これは,日本語教育だけでなく,言語教育一般に対しても 社会的影響を与え得る重要な提言であったと考える。
( )
○成果報告書等の内容の充実度 アンケート調査における満足度
アンケート(49人分回収 では 来聴者に対し 有意義だったか) , 「 」「分かりやすかったか」「新 しい情報が得られたか」という3つの観点について,最高4点,最低1点の4段階での評価をお 願いした。結果は以下のとおりであった。
点 点 点 点 無回答
4 3 2 1
有意義だったか 31人 14人 1人 0人 3人 分かりやすかったか 25人 18人 2人 0人 4人 新しい情報が得られたか 28人 16人 1人 1人 3人
3 点以上の評点を付けた人数は,各質問項目ごとにそれぞれ 45 人(92%),43 人(88%),44 人(90%)であり,全体的に高い評価が得られたと考える。
29 「日本語科学」の刊行.
国立国語研究所における調査研究,並びにそれらと関連を有する調査研究の成果を学術論 文の形で公表することを通じて,広範な日本語研究の発展に寄与することを目的とする。
研究所は日本語及び日本語教育に関する我が国のみならず世界唯一の研究機関であり,世 界の日本語研究センターとして国の内外の日本語研究の発展に寄与することは,その社会的 使命の 1 つである 『日本語科学』を,良質で高度な研究成果を厳密な査読制度に基づいて。 収録した専門学術誌として編集・公刊することは,そうした社会的使命を果たすための重要 な事業である。
○刊行の状況 担当
所内委員:井上優(委員長) 山崎誠 三井はるみ 小椋秀樹 小磯花絵 椙本総子 福永由佳 齋藤達哉
所外委員:青山文啓(桜美林大学) 安部清哉(学習院大学)
平成16年度は 『日本語科学』第, 15号(平成16年4月)と第16号(同10月)を編集・刊行 した。各号の内容は以下のとおりである。
第15号(144ページ :研究論文) 3編 調査報告2編 研究所報告1編 その他
[研究論文 「 もっと』の否定的用法について」]『 佐野 由紀子
「日韓断り談話に見られる理由表現マーカー
−ウチ・ソト・ヨソという観点から−」 任 炫樹
「小説における補文標識『の 『こと』の使い分け』
について−語り手の心的態度の観点から− 尾野 治彦
[調査報告 「在日コリアン一世の大阪方言アクセントの習得−]
済州島方言話者と慶尚道方言話者の場合−」 高 千恵
[研究所報告 「 日本語話し言葉コーパス』の概要」]『 前川 喜久雄
[世界の言語研究所15]「北京日本学研究センター(中国 」) 徐 一平
第16号(122ページ :研究論文) 4編 研究所報告1編 その他
[研究論文 「隠喩の意味することと行うこと」] 杉本 巧
「若年層関西方言の否定辞にみる言語変化のタイプ」 高木 千恵
「標準語形初出年と鉄道距離重心―鉄道距離・
使用率・初出年の3D散布図と東西クラスター―」 井上 史雄
「新造オノマトペの音韻構造と分節の無標性」 那須 昭夫
[研究所報告 『日本語話し言葉コーパス』における単位認定基準について]
小椋秀樹・山口昌也・西川賢哉・石塚京子・木村睦子
[世界の言語研究所16]「沖縄言語研究センター(日本 」) かりまた しげひさ
年間266ページという分量は,学会機関誌等の学術雑誌に比べても,遜色のない分量である。
また 『日本語科学』に掲載される論文は,所内外の研究者による厳正な審査を経て掲載され, る。平成16年度の編集協力者(査読者)は33人(うち外部21人)である。また,平成16年度 の投稿状況は「投稿21(うち海外3),採用 ,不採用 ,修正中・査読中4 5 12」である。
雑誌の内容については,15号から次の2点を変更した。
(1 「研究所報告」の新設)
(2 「巻頭言」の廃止)
(1)は「研究所で行われた研究の報告の場」としての『日本語科学』の機能を強化するため である (2)は学術雑誌には巻頭言は不要であるとの判断に基づくものである。。
○学術的有用性
研究所が行う現代日本語や国民の言語生活についての科学的な調査研究,日本語教育の内容や 方法に関する科学的・実践的な調査研究・事業は,他の大学や学会で組織的にこれらを専門に行 うところのない独自な領域を形成している。こうした領域に関する研究論文等を収録する専門学 術誌は,その領域を維持し拡大する上で大きな学術的有用性を持つ。
また,収録される論文が,研究所内外の専門研究者による厳正な査読を経たものであることに よって,本誌は当該の学術分野の質を高く維持する上で不可欠な役割を果たしている。