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第1節 アンケートの概要
本研究では、多様な高校生の学習実態を把握するためのアンケート調査を実施した。アン ケートの調査対象は三重県内の公立高等学校 2 校、1 年生から 3 年生の 240 名である。実施 した高等学校のうち 1 校は全生徒のうちの半数程度が就職し、進学とは別のカリキュラム で就職に必要な専門的知識を学ぶことのできる学科も併設されている。これを A 高校とす る。この学校の 1 年生から 3 年生の 122 名に調査の協力を依頼し、2018 年 9 月 26 日と 9 月 27 日に実施した。また、もう 1 校は全校生徒のほぼ全員が進学を希望している学校である。
この高等学校の 1 年生から 3 年生、118 名に調査への協力を依頼し 2018 年 11 月 5 日に実施 した。この高校を B 高校とする。
カリキュラムや就職・進学状況が大きく異なっている二校に調査を依頼したのは、アンケ ート調査や学力評価問題に汎用性を持たせるためである。本研究では特定の学力や進路を 目標としている高校生に対するアンケート調査や学力評価問題を作成することを目的とは しておらず、より多様な高校生の説明的文章の学習実態の把握を重視している。
なお本アンケート調査では、高校生が日々の授業で感じている説明的文章の学習につい ての意識を調査することを目的としている。調査において対象者全員に 10 分間の回答時間 を設けた。調査項目は以下の 5 つである。各質問での選択肢は資料を参照してほしい。
質問 1 高校国語科の教科書の説明的文章を読むとき、どのような点に注目して読んでい ますか。(複数回答可)
質問 1 では説明的文章を読む際に高校生が注目している点について問うた。「その他」を 含めて 13 の選択肢を設定した。この質問によって説明的文章を読む際に高校生がどのよう な目的を持っているのか、説明的文章の読解のための要素をどれくらい意識しているのか という点について明らかにする。第1章第2節に記したように岸(2004)は、説明的文章の理 解を規定する要因の文章材料要因について(1)文章のタイプ、(2)文章構造、(3)表現様式、
(4)記述順序の四つを示している。これを参考にして説明的文章の読解において高校生が注 目している点について設問した。
質問 2 高校国語科における説明的文章(評論文・論説文・説明文)のテストについて、難 しいと感じる問題はありますか。(複数回答可)
質問 2 では、説明的文章のテストについて高校生達が難易度の高いと感じる課題につい て問うた。ペーパーテストによって問われる問題の解答は大きく分けて選択回答式と自由 記述式の2つがある。今回のアンケートではこれらに加え、「漢字や語句の意味を問う問題」
を設定した。漢字や語句の意味レベルの問いと、読解力が求められる問いを区別して設定す
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ることで回答者たちの混乱を防ぐ狙いがある。新学習指導要領では語句の意味や漢字の習 得については主に「知識及び技能」にあたり、「読むこと(読解)」は「思考力・表現力・判 断力」に分類されるため今回は回答欄を区別した。この質問によって高校生がテストの回答 形式の点においてどのような苦手意識があるのかを解明し、それによって高等学校国語科 の育成すべき「資質・能力」や説明的文章指導の課題について明らかにする。
質問 3 高校国語科における説明的文章(評論文・論説文・説明文)のテストについて、テ ストの前に自分でどのような勉強をしていますか。(複数回答可)
質問 3 では、高校生たちの学力テストに向けた学習について問うた。主に定期テストの勉 強法について調査したが、高校国語科におけるテストの学習法を調査することで生徒たち 自らがどのような点で学力を伸ばすことを目的としてテストに備えているのかを理解する ことができる。そして、生徒たちはテストでどのような学力が測られると考えているのかと いうことも、この質問から明らかになる。全部で 7 の選択肢を設定した。
質問 4 高校国語科における説明的文章の授業ではどのような力を身につけられると思 いますか。(複数回答可)
質問 4 では、高校生が説明的文章指導によって得られると考えている力について、6 つの 選択肢の中から当てはまるものを回答させた。生徒たちが日ごろの説明的文章指導の中で 成長していると感じる部分を問うこの質問によって、高等学校国語科の実態について知る ことを目的としている。説明的文章指導によって得られる学力のうち、学力評価によって発 揮することができるものを中心に 6 つの選択肢を設定した。
質問 5 2020 年度から実施される「大学入学共通テスト」では説明的文章の一部の問題 で記述式の解答が取り入れられます。このことについて、不安や疑問点はありま すか。
質問 5 では、新テストの導入に伴って生徒たちの現状の疑問点や不安について調査した。
現高校 1 年生からはセンター試験ではなく新テストを受験することになる。2 年生や 3 年生 であっても一概に受けないとは言いきれないテストであるため、この質問によって、生徒た ちの新テストへの意識を表面的ではあるが調査した。この質問では、「疑問や不安はない」
「疑問や不安がある」の 2 つから当てはまる方を選び、その理由を記述式で解答する方法を とった。
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第2節 アンケート結果と分析
第1項 質問 1 の結果
質問 1 では、説明的文章を読む 際に高校生が注目している点につ いて問うた。調査結果を棒グラフ にして表したものが表Ⅲである。
結果としてはどの項目も半数を越 える回答を得られておらず、40.8%
で「結論や主張を述べる文章」が一 番高い数値が出た。続いて「筆者の 主張と理由づけの関係」、「問題提 起の文章」が全体の 3 割程度の回
答を得た。「その他」と回答した高校生からは「自分の普段の生活と照らし合わせる」や「興 味があるかないか」、「質問に関する部分」と回答されていた。以上の結果を分析すると、回 答の多かった 3 つの項目に関しては、文章の内容読解という点では大変重要な要素である。
高校生が説明的文章を読む際に筆者の問題提起とそれに対する答え(主張)を整理しながら 読解していることがわかる。しかし、内容読解だけにとどまらないような学習への発展的な 要素となりうる「具体と抽象の関係」や「段落の順序」といった点では回答率が低いため、
依然として内容読解のみの授業が批判されている高等学校国語科への問題点もこの結果か ら浮き彫りになる。高等学校国語科の説明的文章指導における「資質・能力」の育成という 観点では未だに課題の残る結果となった。「その他」以外の選択肢では「具体と抽象の関係」
が 9.2%と 1 割にも満たない結果になったことについて、文章の構造や、筆者の説得の論法 (レトリック)にまで注目できていないことが指摘できる。筆者のレトリックに対して分析 的に読むことの能力の育成もこれからの高等学校国語科の課題といえるだろう。