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m. 4.言語活動の心内プロセスモデル(PML)の提案 n. 4. i.予備調査の祐巣と先行研究から見えること

この節では、先述した予備調査、及び、その調査も加わっていた大棉(1996)における、文章表現・

文学の調査椿巣の分析から見えてきたことに基づき、さらに、認知科学や言語学、および国語教育の先行 研究の諸成果を統合した、読む・書く・聞く・話すを包含する「言語活動の心内プロセスモデル (PSYCHOLOGICALPROCESS MODEL OFLANGUAGEACTIVITY 「PML」 ) 」を提案する(以下 の記述は、難波・牧戸1997に基づくものである) 0

予備調査では、説明文調査の結果を主成分分析した結果抽出された主成分は、累積寄与率6 0 %以上で 次の7つであった。それぞれの主成分の上位(プラスの場合もマイナスの場合もある)に含まれる設問を 勘案しそれぞれの主成分の特性を明らかにし、命名を行った。

主成分1 ・ ・思考意識形成力  主成分2 ‑ (十)結束性形成力・ (‑)推論解釈力 主成分3・ ・意欲 主成分4‑5‑7  コード解釈力 主成分6・ ・既有知識力

また、今回の調査の結果を主成分分析して析出した能力モデルは、モジュール構造を成していることが わかった。モジュール構造とは「それぞれが独自の構成や機能を持つ要素をいう。これらの要素は、互い に独自性を持ちながら、相互に密接な連携を行うことにより、様々な複雑な作用を行う(チョムスキー小 事負p.62) 」ものであり、チョムスキーが言語能力の構造モデルとして提案しているものである。

以上のことから、説明文を読む力は、思考意識形成力・コード解釈力・推論解釈力・結束性形成力・既 有知識力・意欲のモジュール構造を成す、つまり、関係しながらも独立した構造を成しているものからな ること、特に主成分1として析出された思考意識形成力は、説明文を読む力の中核にあることが明らかに

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大槻(1996)の文章表現の調査では「書き出し学習調査」として小学校二年生から中学二年生(小学 校六年生を除く)の学習者に次のような調査を行った0

1 「転校してくる友達と早くなかよくなるために、その友達といっしょにできる「遊び」を紹介する 文葺を書いてみましょう。題は「私の紹介したい遊び」です。 」と指示し、原稿用紙には「私の紹介

したu遊びは、 ‑」として、題をそのまま書き出しに用いる方法を禁じて(作文I)を書かせる。

2 (作文I)を回収し、 「友達の書き出し」一覧を作る。

3 (作文I)と「友達の書き出し」を配布し、良いと思うものに○をつけさせ、それをもう一度読み 直し、自分の文章に使いたL,1 「書き出し」に◎をつけさせる0

4 ◎の書き出しを参考にして、 (作文日 を書き直させる。 ( (作文Ⅱ) )

調査の直接の目的は「 『書き出し』を学ぶ様相を発達的に捉える。 」というものであったが、文章表現

を支える内面のはたらきを探るために、 (倖文I)から(作文Ⅱ)への文章表現の変容の大きかった小学 校三年生から小学校五年生に絞ってさらに分析を進めた。その分析結果を集約すると、 I課題意識の強化

‑目的意識の強化、 Ⅱ相手意識の強化、 Ⅲ 「遊びの焦点化」 、 Ⅳ修辞意識の強化 の四項目に整理できた (なお、ここでの「意識」は、 「意識は有用な過程であって認識と行動を束ねる情報処理の‑様式だ(苧 阪1996. p.13) 」という捉え方によっている) 0

この四項目に整理したものを構造的に捉え直すと、 「Ⅲ 『遊びの焦点化』 」という具体的な文章表現の あり方を他の「目的・相手・修辞」という意識が支えている関係にあると言えるだろう。また、三つの意 識はそれぞれが独立しているのではなく常にある意識は他の意識とともに関係性を持って存在している。

さらに、これらの意識は具体的には文章表現として顕在化するために、文章表現に内在しながら支えてい るという二重性を有しているのである。

文章表現を行うとき、わたしたちは「どのような表現で書き出そうか。 」 「この文章のこの場面で適切 な文字や語句はどんなものがあるだろうか。 」 「こんな内容を書いていいだろうか。 」など書きはじめか ら書き終えるまで常に現在進行している記述するという行動の適否を見きわめながら記述している。心の 中で「想」として刻々と生成されていく像と実際に具体化していく文章表現とが無らし合わされ、選択・

修正を繰り返しながら言副勺文脈として形成されていく過程は、複雑な調整的活動であるということがセ きる。このような「調整的活動」は「メタ認知」として位置づけることができるであろう。

以上の調査の結果に加え、大槻(1996)の文学の調査結果では、同化的な読み‑観察者的読み一読者 なりの論理構造を構築した観察者的読み一読者なりの論理構造とテクストの世界構造を対噂させた観察者 的読みという読みの発達モデルが見えてきていた。

m. 4. 2.言語活動の心内プロセスモデル(PML)の提案

以上の調査結果の分析から、統合モデルが持つべき特性を以下に示したい。

( 1)調査の結果をふまえた統合的でモジュール的な言語認知・産出モデルであること。

(2)言語活動過程の発達がモジュール的に把握できるプロセスであること0

(3)思考意識形成・コード解釈・推論解釈・結束性形成・既有知識・意欲・課題(目的)意識・相手 意識・修辞意識が、モジュールとして含まれたモデルであることO

(4)自己の内部に生成しつつあるテクスト(解釈、想)をモニターし制御する過程が、言語活動全体 にも、また発達にも大きな役割を果たすようなモデルであること。

(5)国語教育を含めた教育行為がどこに関与しているのか、またどこに関与するのが有効か考えられ るモデルであること。

以上の条件を持ち、また認知科学など周辺科学の成果を取り入れた、統合モデルを提案する(モデルの

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全貌は図1参照のこと) 0

皿 4. 2. 1. PM工畑言語認知空間

pMLは、大きく言語認知空間・言語産出空間・メタ認知空間の三つに分けられる。ここでは、言語認 知空間について述べる。言語認知空間は解釈の部門と記憶の部門に分けられる。両者をつなぐのが、コー

ド解釈と推論解釈である。

記憶部門は、説明文調査の結果に主成分分析を行った結果、析出されたモジュール構造の内、 「青臭的 既有知識」にあたる部分である。この慨有知識」について、認知私学の研究にしたがってもう少し詳し く記述し、全体を記憶部門と呼び変えたい。記憶については、記憶の2貯蔵庫(短期記憶・長期記憶)モ デルを採用する。また、この短期記憶は、 Baddeley&Hitchの作業記憶モデルにしたがって、作業記憶 と呼ぶことにするD

長期記憶は、意味記憶とエピソード記憶に分ける。両者の相違は、 「意味記憶とは単語の意味や概念な どに関する記憶であり、その情報は特定の場所や時間に縛られない一般的なものである。一方、エピソー ド記憶とは、特定の場所や時間などの文踊音報を含む、個人が過去に経験した出来事に関する記憶であるo

(市川p.2 0)」ということによる。これに、文法や音韻に関する知識を含む言語知識を加え、長期記憶 は三種類のものでできていると考える。

次に、解釈の部門であるが、言語の解釈は、表意の生成‑推意の生成‑結束性の生成‑マクロ構造付与 という過程を経るものとする。表意の生成は、言語の表面上の意味を生成するものであり、主に、言語知 識及び意味記憶が駆動して行われるコード解釈によって生成されるDただし、省略された主語の補充や指 示詞の指示対象の特定のためには推論解釈が必要なので、表意の生成においては推論解釈も一部関わる。

次に推意の生成については、生成された表意を基にエピソード記憶が駆動して行われる推論解釈によって 行われる。なお、推意は複数生成されるが、通常のコミュニケーションにおいては、単一の推意に決定さ れる。そのメカニズムについては関連性理論が関与している(in. 1. 2.参照) 0

次に、結束性形成については生成された推意の積み重ねとテクストの結束構造、及び意欲が関わること で生成されるoなお、推意の生成(主に推論解釈が扱う)は表意の生成(主にコード解釈が扱う).の結果 が、結束性の形成には推意の生成の結果が大きく関わるが、コード解釈を生み出す力・推論解釈を生み出 す力・結束性を形成する力のそれぞれは、かなり独立したものであることは、先に述べた説明文の主成分 分析から明らかになっている。

ここまででできた結束性に対して、トップダウン的に分節化を行うのが、マクロ構造付与である。これ は、顕在化した文章構成と読み手の持つ思考意識に関する知識(従来、文学では物語文法と呼ばれ、説明 文では本研究で思考意識と名づけられたもの)によって、筆者の思考意識が推定され、読者の頭の中に形

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