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試料の測定・評価方法

ドキュメント内 修 士 学 位 論 文 (ページ 31-38)

第 2 章 実験方法及び原理

2.2 試料の測定・評価方法

2.2.1 粉末 X 線回折装置( XRD

XRD は原子が規則的に並んでいる結晶中に特定の角度からX線(本研究ではCuKα線)が 入射した場合に起きる回折現象を利用している。図25のように、原子または分子が規則正 しく周期的に配列した状態は結晶と呼ばれる。結晶はある面指数hklをもった平行な格子面 が無数にあり、それらは格子面間隔dで並んでいる。結晶中に波長λのX線を入射したと き、ある角度θにおいて光路差が波長の整数倍となり干渉して強め合う。この条件はブラッ グの回折条件と呼ばれる。式を以下に示す。

𝑛𝜆 = 2𝑑 sin 𝜃 (式13)

n : 整数

ブラッグの回折条件に満足しない波は互いに干渉し打ち消しあい観測されない。この角度θ から、格子面間隔dを求めることができる。ただし、検出器では入射方向から2θの位置で 検出される。この角度2θと、その角度で検出される強度の組み合わせは物質毎に異なるた め、この組み合わせをデータベースと照らし合わせることにより物質の特定が可能である。

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図25 X線回折パターンの概念図

2.2.2 放射光粉末 X 線回折実験(SPring-8)

放射光は高速で運動している電子または陽電子が磁場中で力を受け、方向を変えたとき にエネルギーの一部を失って発生する光のことである。放射光は単一の波長のX 線を取り 出して、粉末X 線回折実験を行うことができる。それ故に、より質の高いデータを収集す ることができる。また、強度と平行度が高いので角度分解能を上げることができる。他にも、

輝度が高いことや短いパルス光の繰り返しであるなどの特徴から、様々な利点がある測定 を行うことができる。

本研究では、より精密な結晶構造解析を行うため、SPring-8で放射光実験を行った。筆者

らは、BL02B2のビームラインを使用し、ビームの波長は0.495274 Åであった。キャピラリ

ーを回転させながら測定することにより、選択配向と粗大粒子の影響を軽減することがで きる。得られた X 線回折データから、キャピラリーのバックグラウンドを引いた値に対し てリートベルト解析を行った。

図26 キャピラリーに試料を詰めた図(キャピラリーの長さ10-40 mm)

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2.2.3 リートベルト解析

リートベルト解析は粉末 X 線・中性子回折パターンの結晶構造パラメーターと格子定数 を直接精密化する解析方法である。主な目的は、結晶構造パラメーターである占有率、分率 座標、原子変異パラメーターの精密な値を求めることである。

粉末X 線回折装置により、一定の 2θ間隔で一連の回折強度yiを測定する場合、リート ベルト解析では近似構造モデルに基づいて計算した回折パターンを実測パターンに当ては める。すなわち、i番目の回折点2θiに対する計算強度を𝑓 ≡ 𝑓𝑖(𝒙)、統計的重みをwiとした とき、重み付き残差二乗和S(x)を最小とする1組の可変パラメーターxを最小二乗法により 精密化する。

𝑆(𝒙) = ∑ 𝑤𝑖 𝑖[𝑦𝑖− 𝑓𝑖(𝒙)]2 (式14)

フィッティングのよさは観測強度と計算強度との一致の程度で見積もられる。そのため に最も重要な指標のR因子は、分子が残差二乗和S(x)に等しいRwpである。

𝑅wp= {∑ 𝑤𝑖 𝑖[𝑦𝑖−𝑓𝑖(𝒙)]2

∑ 𝑤𝑖 𝑖𝑦𝑖2 }

1

2 (式15)

結晶構造因子F(hK)は

𝐹(𝒉𝐾) = ∑ 𝑔𝑖 𝑗(𝑓0𝑗+ 𝑓𝑗+ i𝑓𝑗′′)𝑇𝑗𝑒𝑥𝑝[2𝜋i(ℎ𝑥𝑗+ 𝑘𝑦𝑗+ 𝑙𝑧𝑗)] (式16) j : 単位胞内の原子の番号、gj : 占有率、foj : 原子散乱因子

fj, ifj’’ : X線分散補正の実数部と虚数部、Tj : デバイ-ワラー因子、xj, yj, zj : 分率座標

実際には、非対称単位内の原子に対する結晶構造パラメーターだけを入力し、残りの同価位 置の分率座標は各空間群に固有の対称操作により発生させる。

Tjは原子の熱振動に起因する回折強度の減少を表す因子であり、等方性調和熱振動で近似 する場合、以下の式で与えられる。

𝑇𝑗 = exp [−𝐵𝑗(sin 𝜃𝜆𝐾)2] = exp [−8𝜋2𝑈𝑗(sin 𝜃𝜆𝐾)2] (式17) Bj, Uj : 等方性原子変位パラメーター

一方、熱振動の異方性を表現する場合は、以下のどちらかの式で与えられる。

𝑇𝑗 = exp[−(ℎ2𝛽11𝑗+ 𝑘2𝛽22𝑗+ 𝑙2𝛽33𝑗+ 2ℎ𝑘𝛽12𝑗+ 2ℎ𝑙𝛽13𝑗+ 2ℎ𝑙𝛽23𝑗)] (式18) 𝑇𝑗 = exp[−2𝜋2(ℎ2𝑎∗2𝑈11𝑗+ 𝑘2𝑏∗2𝑈22𝑗+ 𝑙2𝑐∗2𝑈33𝑗+ 2ℎ𝑘𝑎𝑏𝑈12𝑗+ 2ℎ𝑙𝑎𝑐𝑈13𝑗+

2ℎ𝑙𝑏𝑐𝑈23𝑗)] (式19)

𝛽11𝑗, 𝛽22𝑗, ⋯ : 異方性原子変位パラメーター(無次元)

𝑈11𝑗, 𝑈22𝑗, ⋯ : 異方性原子変位パラメーター(次元L2

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乱れた配置をとる原子の場合、時間変化と共に原子の移動を伴う動的不規則性と単位格子 ごとに原子が異なる位置を統計的に占める静的不規則性が存在する。不規則性を示す原子 の場合、正規の位置からのずれを吸収しやすい。占有率との相関も強く、正確に精密化する ことが難しい。そこで占有率を固定するなど慎重にBを精密化する必要がある。

得られたX線回折パターンにリートベルト解析を行う場合、RIETAN-FPを用いて以下の ような手順で進める[79]。

①:何らかの方法で格子定数を求める。それらの値をリートベルト解析の初期値とする。

②:化学組成や類似の構造をもつ化合物を検索することなどにより、大まかな原子配置を推 定する。

③:今までで構築した初期結晶構造モデルに基づき、粉末 X 線回折パターンのシミュレー ションを行う。

④:リートベルト解析を実行する。③や④で解析が順調に進まなければ、結晶構造モデルを 再度考える。

2.2.4 走査型電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分解 X 線分光(EDX)

電子線を試料に照射すると様々な電子線や特性 X 線が放出される。走査型電子顕微鏡

(SEM)は発生した二次電子と反射電子を検出することで試料の表面観察を行うことがで きる。

エネルギー分解X線分光(EDX)は試料の特性X線を検出し、エネルギーで分光するこ とにより組成分析や元素分析を行うことができる。特性 X 線は基底状態の原子に電子線を 照射すると内殻電子が放出され、内殻に空孔が生じる。生じた空孔に外殻電子が遷移してく る。このとき、遷移の前後のエネルギー差が特性X線として放出される。特性X線のエネ ルギーは各元素に固有なので、試料を構成している元素を分析することができる。また、特 性X線の強度から試料の組成に関する情報を得ることができる。

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図27 SEM-EDXの概念図

2.2.5 超伝導量子干渉計(SQUID)

SQUIDには、ジョセフソン接合が1個のrf-SQUIDと2個のdc-SQUIDが存在する。本研

究ではdc-SQUIDを用いた。

図28に示すようにdc-SQUIDは2つのジョセフソン接合をもつリング状の素子であり、

それぞれの接合の位相差に対応したジョセフソン電流が流れる。ジョセフソン電流は接合 の位相差によって決まるが、ループを貫く磁束が磁束量子の整数倍になるような制限を受 ける。臨界電流I0より少し大きい値のバイアス電流IBを流すと、SQUIDに流れるジョセフ ソン電流の最大値Imは以下の式で表せる。式20に示すようにImはSQUIDのループを貫く 外部磁場によって周期的に変化する。

𝐼m= 2𝐼B|cos𝜋𝛷

𝛷0| (式20)

試料の磁化の変化はピックアップコイルにより測定され、磁場の変化はインプットコイル

によりSQUID に送られる。この磁場の変化は電圧として SQUIDの外部に取り出される。

フィードバックコイルは得られた電圧の変化に対してSQUID内の磁場を一定に保持するよ うに変化した磁場と逆向きの磁場を発生させる。この変化を打ち消すために流した電流を 出力電力として取り出すことで、非常に微小な試料の磁化の変化を測定することができる。

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図28 dc-SQUIDの概念図

2.2.6 電気抵抗率測定

室温での電気抵抗測定は二端子法を用いたテスターなどを使用することが多い。しかし、

極低温までの電気抵抗を測定する場合、物質の電気抵抗は小さくなる傾向にあるため、リー ド線自身の抵抗や接触抵抗が無視できない値になる。四端子法ではそれらの測定誤差を除 くことができる。

オームの法則より電流計からの電流値をI、電圧計からの電圧値をVとすると、

𝑅 =𝑉𝐼 (式21) キルヒホッフの法則より

𝐼 = 𝑖s + 𝑖V , 𝑉 = 𝑖V × 𝑅V , 𝑅s × 𝑖s= (𝑅2+ 𝑅3+ 𝑅V)𝑖V (式22) is : 試料に流れる電流、iV : 電圧計に流れる電流

測定される電流と電圧の比から電気抵抗を求めると、

𝑅 =𝑉

𝐼 = 𝑅S− (𝑅2+ 𝑅3+ 𝑅S)𝑖V

𝐼 (式 23)

𝑖V

𝐼 = 𝑅S

(𝑅2+𝑅3+𝑅s+𝑅V) (式 24)

と表せる。式23, 24に示すように、試料の抵抗値Rsと比較して十分に大きい電圧計の内部 抵抗RVを用いれば、第二項を無視することができる。すなわち、電圧計の内部抵抗と接触 抵抗を無視することができる。また、試料の電気抵抗が比較的大きい場合は、可能な限り小

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さな試料に整形、配線することで、試料の形状に起因する電気抵抗を下げる。

電気抵抗Rと電気抵抗率ρは以下の式から求めることができる。

𝑅 = 𝜌 𝑙

𝑤𝑡, 𝜌 = 𝑅𝑤𝑡

𝑙 (式 25)

l : 試料の長さ、w : 試料の幅、t : 試料の厚さ

図29 4端子法における試料の端子付けと電気抵抗率測定の回路図

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第 3 章 HEA 型 の ブ ロ ッ ク 層 を 持 つ

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