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設備投資指向の生産性

ドキュメント内 日本の製造業における生産性実態の考察 (ページ 31-34)

4.2.1 設備投資の経済規模増大貢献  「近代経済における生産性の向上は、明らかに 肉体労働によって達成されたものではない。む しろ、今日の産業が示す高い生産性は、常に肉体 労働を無くそうとする努力、言いかえれば肉体 労働者を何か別のもので置き換えようとする努 力の結果としてもたらされたものである。肉体 労働者にとって代わった第一のものは、いうま でもなく、資本設備、つまり機械力である。」22と いうように、設備・機械が生産性向上に果たして きた貢献を否定するものではないが、日本の製 造業には特徴的なものがある。

 日本の製造業における設備投資指向の生産性 向上について、別の観点としてジニ係数23 があ る。資本金規模別の付加価値増加の程度につい てのジニ係数(1996年度法人統計)をみると、製 造業が最も高く 0.724、全産業平均は 0.6255 に比 較して高い位置にある。この数値は1に近いほ ど資本規模と付加価値の関連が強いことを意味 しており、日本企業では資本金の増加、規模が大 きくなればなるほど大きな付加価値を生み出す 結果となっている。一方、従業者数と付加価値の 関係は、これは労働生産性に関係するものであ

22[ドラッカー 昭 37] p.53

23[平凡社 98] 

ジニ係数とは以下のとおり。

 所得や資産の分布の不平等を計測するためにイタリア人ジニ( C. Gini )が 1936 年に考案した一指標。すなわちジニ係数とは,

所得の組合せ(yi,yj)をすべての構成員について考え,その差(絶対値)の平均額を平均所得 μ で除した値の半分である。半分にす るのは,所得のペア(yi,yj)と(yj,yi)の所得差が双方ともに考慮されているからにほかならない。したがって,たとえばジニ係数 が 0.4 に等しいとき,任意に選びとった 2 人の間の所得差は全体としてみれば平均所得の 40%に相当していることになる。ジニ係 数は完全平等のとき最小値 0 をとり,所得が 1 人に集中している完全不平等のとき最大値(1 − 1/n)をとる。

 ジニ係数はローレンツ曲線を用いて図示可能である。すなわち均等分布線(対角線)とローレンツ曲線で囲まれた月形の面積の2 倍にジニ係数は等しい。なおローレンツ曲線が交差する場合,ジニ係数とは異なる不平等の順序づけが他の指標(たとえば変動係 数,これは標準偏差を平均所得で除した値)を用いると可能である。他の指標と比較すると,ジニ係数は中間所得階層の所得の動 きに最も敏感であることが知られている。

 ジニ係数は産業の集中度や貧困の程度を計測する場合にも転用されている。なおジニ法則 Gini s law は分布の型を経験に基づ いて特定化したものであり,ジニ係数とは無関係である。

るが、資本金の大小による生産性格差は製造業 では 0.2133 と小さく、資本をかけてもなかなか 生産性は上がらないことになる。 [社会経済98]

 図表 12 は 1975 年から5年間隔での生産性・労 働時間および設備投資の推移を示している。

1975 年基準の伸び率によると、設備投資伸び率 に対する総生産性指数の上昇変化の追随性が見 られる。図表 13 においても経済成長率に対する TFP(生産性)上昇率・資本および労働増加寄与

をみると、生産性と資本増加寄与が大きく貢献 しているが、恒常的に資本増加寄与が経済成長 率に対して高い寄与をしていることがわかる。

つまり、日本の経済規模増大は基本的には設備 投資、増強によって達成されてきたのである。

図表 12 生産性・労働時間・設備投資

図表 13 生産性向上率: 労働・資本・TFP 2064 2108

134

1975 1980 1985 1990 1995

157

100

2110

157 2052

204 1913

218 総生産性指数 182

218 288

設備投資伸び率

0 1.0 2.0

3.7% 1.3% 3.6%

8.6%

3.8%

-0.3% 1.7% 0.7%

1.7%

1947〜1974 1980's 1991〜2000

0.7% 1.1%

3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 %

労働増加寄与 資本増加寄与 生産性:TFP上昇率 2.0%

4.2.2 設備投資金額圧縮ケース

 設備投資額の低減圧縮の事例を、HB 社の生産 性向上プロジェクト活動から紹介しよう。HB 社 では IE 技術の活用による生産性向上活動が推進 され、少ない費用(投資という言葉に匹敵しない 少額)で着実な成果を上げていた。そうした折に 増産にからまる設備投資計画が起案された。そ れまで、製造部門の依頼に基づいて、機械設備に 詳しい製造技術者が仕様決定、見積もり、設計を 行なっていた。それを仕様決定の段階でプロ ジェクトに移し、IE 技術の活用によって基本設 計を行なうこととなった。その事例を2件紹介 しよう。従来はハード中心の検討であったが、プ ロジェクトでは管理、運用面のソフト面の検討、

アイデア出しを強化することとなり、投資金額 の圧縮に貢献することができた。

事例1 噴霧増粒設備の増設

 この事例の起案理由は以下の通りである。

 P製品噴霧増粒製品の増産設備を、現行設備に 並列設置し新規導入設備と同時運転可能な体制 を整備する。現在年間5トンの製造量であるが、

新規受注は将来的に年間 50 トンと予測される。

そこで現行設備の 2 〜 2.5 倍の製造能力の新規設 備を導入することによって、受注増に対応する。

 現在製造能力不足分は加工を外部に委託して おり、そのための支払い費用はトン当たり250万 円である。また、社内加工費はトン当たり 40 万 円である。製造能力の向上により30トン/年を製 造すると見積もると、その分の自社取り込みに よる外部委託費用の節減は 6,300 万円となる。

 プロジェクトの検討内容は、現行自社設備の 稼働率向上、加工技術の見直しを含めて外注委 託費用の低減を図る。具体的には、

a 新規設備の機能分解を実施し、オーバー スペックを回避する

b 既存設備について使用経験より技術的評 価をする

c 既存設備の能力向上

d 操業体制の変更がポイントであった。

 検討の結果、起案 3,500 万円であったものが、

1,500 万円でよいこととなった。オーバースペッ クについては、現在の設備は転動流動層方式で

あるが、当社の製品仕様としては、コーテイング 精度の水準と顆粒化が容易で廉価な流動層の方 式で十分なことが解り 600 万円、市販機械のス ペックをそのまま認めない発注仕様の機能の絞 込みによって 1,200 万円、運転環境条件の改善で 200 万円のそれぞれ低減が可能となった。

事例2 T 製品の増産設備

 この事例の起案理由は以下の通りである。

2000 年以降の需要予測に基づき、海外需要を含 めた市場予測を行い、投資リスクの回避を含め、

現有設備の効率的運転方法の考察により、効果 的な投資案の時期、金額および規模を検討する。

 起案は年間生産量 22,200 トン、投資金額 15 億 円の投資案件である。

 プロジェクトでは、

a 現状の設備の時間当たり生産能力の平均 値とバラツキ低減によって能力 10%向上 b 現在収率重視(3.2 トン / バッチ)の運転 を、速度重視として 1.01 トン / 時間を 1.08 トン / 時間に上げる。その結果収率は 3.0 トン / バッチに低下するが、時間当たり 0.07トン増えることによって7%能力向上 c ロスの低減によって 3%能力向上  この結果、原案は現在ある 925 トン / 月の設備 2基分に相当する大型設備1基増設であったも のを、答申案ではまず現設備の能力を上記の改 善で 20%能力向上し 1110 トン / 月、2基として、

その上に小型の 1110 トン / 月の新規設備を導入。

原案の 3700トン /月に対して答申案は3330 トン/

月と 400 トン / 月下がるが、この原案能力が必要 になるのは、今後順時増量となり約 10 年後の予 測。これから 10 年については、今後技術革新や 予測の精度向上も考えられ、現在時点で問題に ならないということで、答申案の実施となった。

投資額は原案の15億円を10億円に圧縮すること ができた。

 ここに紹介したように、製造技術中心の設備 機械導入による能力向上の見方から、IEの管理・

運用面の検討によって、機械設備の外部からの 調達に頼らない生産能力向上部分が明らかにな り、投資総額の圧縮につながったものである。

 日本の製造業が設備投資指向で増大する需要 に対応してきたものを、管理面を考慮した IE の 活用によって、同じ需要増大に対して投資金額

を圧縮できる可能性があるということを紹介す る一例である。

4.3 高いULC( Unit Labor Cost, 単位

ドキュメント内 日本の製造業における生産性実態の考察 (ページ 31-34)

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