第1章 国内観光地を取り巻く環境の変化
第1節 国内観光地を取り巻く社会動向
4 訪日外国人旅行者に対する国民意識
(1)向上が求められる訪日外国人旅行者への接遇
急増する訪日外国人旅行者に対する官民を挙げた取組が奏功し、世界経済フォーラム(WEF)が観光産 業の事業環境を評価している「旅行・観光競争力レポート(Travel and Tourism Competitiveness Report)」 において、わが国の順位は、2007年(平成19年)の25位(124カ国中)から2017年(平成29年)に は4位(136カ国中)に上昇している。
一方、この競争力の一端として評価項目にあげられている「外国人旅行者に対する国民の姿勢」は、2007 年(平成19年)に82位(124カ国中)、同じ評価項目の最新年である2013年(平成25年)で74位(140 カ国中。この2013年の総合順位は14位)となっている。平成28年版観光白書において掲載している「国
19.7 24.8
6.0 10.5
44.9
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
映像がきっかけで行きたくなり、その場所を実際に訪れた 映像を見たことがきっかけで行きたくなったが実際には訪れていない 映像を見たことで満足してその場所に行かなくてもいいかという気持ちになった そのような気持ちになったことはない そのような映像は見たことはない
男性
18~29歳(103) 30代(103) 40代(103)
50代(103) 60代(103) 全体(1030)
19.7 24.8
6.0 10.5
44.9
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
映像がきっかけで行きたくなり、その場所を実際に訪れた 映像を見たことがきっかけで行きたくなったが実際には訪れていない 映像を見たことで満足してその場所に行かなくてもいいかという気持ちになった そのような気持ちになったことはない そのような映像は見たことはない
女性
18~29歳(103) 30代(103) 40代(103)
50代(103) 60代(103) 全体(1030)
62
家ブランド指数」においても、多くの日本人は「おもてなし」を強みと考えがちであるが、「歓迎されてい ると感じられるか」「その国に住み、働きたいか」といった項目の評価は相対的に低くなっており、ハード 面を中心とした受け入れ環境整備だけでなく、外国人旅行者に対する対応というソフト面での取り組みの 充実が求められる(図表Ⅱ- 11)。
図表Ⅱ- 11 日本の「旅行・観光競争力と外国人旅行者に対する姿勢」の順位
2007年 2013年 2017年
総合順位 25位
(124か国中)
14位
(140カ国中)
4位
(136カ国中)
外国人旅行者への対応
(Attitude of population toward foreign visitors)
82位 74位 -
資料:「Travel & Tourism Competitiveness Index」(World Economic Forum)
注1:総合順位は政策、インフラ整備、ビジネス環境、国の開放程度。観光資源などを対象とした14の軸の評価点を総合化
したもの。各軸はさらに細かい指標からなり、統計、アンケート調査等の手法で整理されている。なお14の軸や指標 は2007年・2013年と2017年で異なっている。
注2:2017年の総合順位1位はスペイン、2位はフランス、3位はドイツ。
第2節 国内観光客のニーズ
(1)観光で求めるコンテンツは変わらない
1998年(平成10年)と2015年(平成27年)で希望する国内旅行の種類を比較すると、「温泉旅行」、
「自然観光」、「グルメ」、「歴史・文化観光」、「テーマパーク」に対するニーズが引き続き強い(図表Ⅱ- 12)。 しかしながら、第2章において具体的に事例をあげて分析するが、これらのコンテンツを有しているだけ で賑わいを持続することはできず、地域が有するコンテンツをいかに活用するかが重要である。
上位5位以外のコンテンツを見ると、2015年(平成27年)には30項目中22項目で関心が上昇又は横 ばいとなっており、観光客のニーズの多様化の表れの一つと考えられる。「都市観光」、「町並み散策」、「動 物園・水族館」、「世界遺産巡り」について特に関心が高まっているが、中でも「町並み散策」については、
観光地での滞在の仕方を工夫することで、観光客の満足度を向上させる可能性があることの表れと考えら れる。
63
図表Ⅱ- 12 希望する国内旅行の種類の比較(1998年・2015年)
資料:公益財団法人日本交通公社「旅行者動向」、「旅行年報」
注:希望する旅行の種類についてすべて選択
(2)観光の行動は、団体から個人へと変化
国内旅行の同行者は、「学校・職場・地域の人」等の団体旅行が著しく減少しており、1996年(平成8年)
に約2,000万人であったが、2011年(平成23年)には約850万人となっており(図表Ⅱ-13)、団体客に
依存していた観光地に大きな影響を与えたものと考えられる。「友人・知人・その他」についても、1996年
(平成8年)に約2,800万人であったが、2011年(平成23年)には約1,800万人と大きく減少した。な
お、旅行実施人数が最も多い家族旅行は横ばいで約3,500万人程度を維持している。
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 温泉旅行
自然観光 グルメ 歴史・文化観光 テーマパーク おしゃべり旅行 海浜リゾート 高原リゾート 和風旅館 ショッピング スキー 都市観光 町並み散策 リゾートホテル 登山・山歩き 海水浴 芸術鑑賞 動物園・水族館 自然現象鑑賞 花の名所めぐり 祭・イベント オートキャンプ マリンスポーツ 秘境ツアー 釣り スポーツ観戦 地域工芸体験 ゴルフ クルーズ エコツアー 世界遺産巡り ロングステイ ホテルステイ 武将観光 産業遺産観光 産業観光 アニメツーリズム 農業体験 ジオツーリズム
環境にやさしい 1998年 2015年 (%)
64 図表Ⅱ- 13 国内旅行の同行者タイプ別行動者数の推移
資料:総務省「社会生活基本調査」
注:総務省「社会生活基本調査」の国内観光旅行において、各同行者タイプでの旅行を実施した行動者数。2001年以降「友 人・知人・その他の人」という区分となるため、経年比較のため、その他の人も含めて集計を行った。いずれも、10歳 以上人口のものである。
(3)旅行行動者率は低下傾向であるものの、20~30 代女性が高いことは変わらず
性別・年代別の国内観光旅行行動者率は、1991年(平成3年)と比べて、2011年(平成23年)にはど の性別・年代でも低下傾向にある(図表Ⅱ- 14、図表Ⅱ- 15)。家計の消費支出に対する旅行費の割合はほぼ 横ばいであるが、通信費は大きく上昇しており(図表Ⅱ- 16)、消費行動を選択する際に相対的に旅行の優 先度が低下していること等が考えられる。ただし、20~30代の女性では、1991年(平成3年)と同様に 2011年(平成23年)においても、他の年代と比べて国内観光旅行行動者率が高くなっている。
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000
1996 2001 2006 2011
家族 学校・職場・地域の人
友人・知人・その他 一人
(千人)
65
図表Ⅱ- 14 性別・年代別の国内観光旅行行動者率(1991年)
資料:総務省「平成3年社会生活基本調査」
図表Ⅱ- 15 性別・年代別の国内観光旅行行動者率(2011年)
資料:総務省「平成23年社会生活基本調査」
0.0 20.0 40.0 60.0 80.0
男性 女性 (%)
0.0 20.0 40.0 60.0 80.0
15~19歳 20~24歳 25~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~64歳 65~69歳 70歳以上
男性 女性 (%)
66 図表Ⅱ- 16 通信費・旅行費の推移
資料:総務省「家計調査(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)」 注:旅行費は、宿泊料およびパック旅行費の合計
0%
1%
2%
3%
4%
5%
6%
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 通信費 旅行費
67
【コラム】性別・年代別の国内旅行のニーズ
性別・年代によって、国内旅行のニーズは異なる。2016年度(平成28年度)に、観光・旅行 に求めるものについてアンケート調査をしたところ、若年層(20~40代)の女性は、「温泉旅行」、
「自然観光」、「グルメ」、「歴史・文化観光」、「テーマパーク」に加え、「ショッピング」、「楽しめ ることがたくさん」、「ここでしかないこと」、「魅力的なお土産」等のコンテンツに対する志向が 他の年代よりも高い傾向が見られた(図表Ⅱ-17)。
前述のとおり、若年層の女性は、他の性・年代と比べて国内旅行実施率も高いことから(
図表Ⅱ- 14、図表Ⅱ- 15)、若年層の女性をターゲットとして意識して、観光地として魅力的な サブコンテンツを提供できているかどうかが、この層を取り込むためのポイントとなると考えら れる。
図表Ⅱ- 17 性別・年代別の国内旅行のニーズ
資料:観光庁「平成28年度観光地に関するアンケート調査」