第 2 章 構造変化の特徴からみる中国の物価変動の要因分析 25
補論 2: 複数の構造変化を想定した未知の構造変化点の分析
の`が有意な構造変化の数として判断される。これらの仮説検定は尤度比検定により行わ れ、検定統計量には帰無仮説を仮定したモデルと、対立仮説を仮定したモデルの尤度比が 用いられる。
尤度比検定に用いられる検定統計量が従う分布は、帰無仮説が正しいときに未知の構造 変化点πによって変化する非標準的な分布となり、χ2 分布には従わない。このπは対象 期間を連続時間で表記したときの、対立仮説モデルにのみ現れる構造変化点であり、対象 期間をt0からT までと定義すると構造変化点はπT と表現される。
検定統計量を FT とすると、FT は以下の式で表現される。
FT(`+1|`)= RS S−US S σˆ2
ここで、RS S は帰無仮説を仮定したときの残差二乗和、US S は対立仮説を仮定したとき の残差二乗和を表す。帰無仮説を仮定したモデルは、構造変化の回数を`回としたときに 最もBICが小さくなるときの点として推定され、残差二乗和が検定に用いられる。
一方で対立仮説を仮定したモデルは、帰無仮説と同様の方法ではモデルを推定すること ができない。求めたいのは帰無仮説で設定したモデルに追加的に1つ構造変化点を加えた ときの最適モデルであって、`+1回を仮定したときの最も当てはまりのよいモデルでは ないからである。仮に帰無仮説を仮定したモデルと同様の方法で推定を行うと、`+1回 の構造変化点が全て帰無仮説のモデルと異なる点になる可能性がある。
この場合のモデルは、帰無仮説の仮定の下で特定したモデルにおいて、既存の構造変化 点以外の全ての時点に構造変化点を仮定し、残差二乗和が最小になる場合を求めるという 方法で推定される。ST(ˆti)を構造変化点ˆtiを仮定したときの残差二乗和であるとし、帰無 仮説を仮定したときの構造変化点がh
ˆt1 · · · ˆt` i
であるとすると、対立仮説を仮定した
モデルの残差二乗和は
US S =minτ(ST( ˆT1,· · ·, τ,· · ·Tˆ`))
となり、残差二乗和を最小にするような`+1回目の構造変化点τが推定される。ここで 追加的な構造変化点τがτ <ˆt1である場合には、
US S =minτ(ST(τ,Tˆ1,· · ·,Tˆ`))
τ >Tˆ`の場合には、
US S =minτ(ST( ˆT1,· · ·,Tˆ`, τ))
となる。
さらに構造変化点間の距離についても考慮する必要がある。構造変化間の距離があまり に近すぎると標本数がパラメータ数を下回り推定を行えない場合も生じる。実際には帰無 仮説を仮定したモデルの前後数期間を除いた全ての時点に構造変化点を仮定し、そこで推 定されるモデルが残差二乗和を最小にする場合がUS S を与えるモデルとなる。
検定統計量は `+1回の構造変化を仮定した場合の尤度比検定統計量の最大値として求 められており、検定統計量が従う分布をGq(x)`+1とすると、分布が
Gq(x)`+1= (Bq(π)−πBq(1))0(Bq(π)−πBq(1)) π(1−π)
という形で与えられることがBai and Perron (1998)で示されている。ここで、Bq(π)はπ 時点におけるq次元のブラウン運動を表しており、xは分布 Gq(x)`+1 における対応する 確率を求めたい点を表している。この分布は0から1に調整した期間の構造変化点π に 依存する分布になっており、πを固定すると分布はχ2 分布に従う。Gq(x)`+1の棄却点は
Bai and Perron (1998)に表として掲載されており、本章の分析にもこの表を用いた。