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第 3 章 対外開放政策推進下の中国における物価動向と貨幣の超過供給 47

3.4 結論

対外開放政策推進下の中国で、経済成長率が安定して高いにも関わらず物価上昇率の変 動が大きいことがどのような理由により説明されるのかを検証するために、I(2)モデルに よる分析を行ない、そこから2000年以降の物価上昇率が上昇に転じた理由を提示した。

2000年以降の物価上昇率が上昇に転じた点について、既存研究では対中FDIの増加によ り実体経済の変化と国内の所得増加がもたらされたことや、食料品価格上昇という要因を 通じて物価が上昇したためであるという説明がなされている。図24で示したFDIの金額 の推移は2000年以降の物価上昇率の上昇を説明する要因となっているが、物価上昇率の 変動が経済成長率の動きに比べて大きいことについては所得の増加を通じた経路の物価上 昇要因だけでは説明できない。

高く安定した経済成長の下で、物価上昇率が不安定になっている要因として本研究では 貨幣の超過供給という要因を提示した。貨幣の超過供給は実質の産出の加速度に対して有 意に影響を与えないが、物価の加速度に対しては上昇の圧力を与える(表16)。さらに複 合共和分の推定結果から、物価上昇率が高まると貨幣需要は減退し、貨幣の超過供給を通 じて物価の加速度に更なる上昇の圧力をもたらすという作用があることを示した(表14)。 この仕組みから物価上昇率は短期的に均衡から大きく乖離することになり、大きく変動す るという特徴を持つことになるが、既存の研究結果が示す産出の増加を伴う物価上昇率の 変動要因とは異なる特徴である。

図20に示したとおり、2000年以降貨幣需給は超過供給方向に推移しており、中国の NEERの減価、利子率、物価上昇率の上昇が中国の貨幣需要を減退させたことがその原因 であると考えられる。中国のNEERが減価した原因については、中国が固定相場制度を

Foreign Direct Investment (Billion Dollar)

1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007

20406080

24:対中FDIの金額推移(10億ドル)

出典:中国国家統計局Webページ

URL: http://www.stats.gov.cn/tjsj/ndsj/2011/indexch.htm

採っている相手国の米国の実効レートが、同時多発テロからイラク戦争までの情勢不安が もたらした財政悪化、景気後退不安により減価したためである。つまり、米国のNEERが 減価し、固定相場制度を通じて中国のNEERを連動して減価させたことが、国内の貨幣 需要の減退とそれによる物価の加速度への上昇圧力をもたらしたというのが推定結果から 得られた結論である。

さらに2000年代後半、為替が減価していないにも関わらず、物価上昇率が上昇してい る期間が存在するが、その時期の物価上昇率の推移にも貨幣需給による影響があると考え られる。2006年から2008年にかけて物価上昇率が上昇しており、そのときの為替制度は 固定相場制ではなく、また為替レートも減価していない。この期間の貨幣需給は、利子率 の上昇という金融政策が採られたことと、一次産品の輸入価格が上昇したことにより超過 供給に誘導されたと考えられる。物価上昇を抑制する目的で実施された2007年の6回の

利上げは、貨幣保有の機会費用を大きくすることから貨幣需要を減退させ、結果として物 価に対する上昇圧力をもたらしたと考えられる。また、輸入価格が上昇したことで材料費 や輸送費の上昇分を製品価格に上乗せする形で物価上昇率が上昇したことも貨幣需要を減 退させ、貨幣的要因による物価上昇圧力をもたらした要因であると考えられる。

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