マッサージチェアは、もみ玉とそれが通る軌道によって構成される。椅子の背もたれ部分 にもみ玉の軌道があり、その軌道に沿ってもみ玉が稼働する構造である (図表13)。その動 きはソフトウェアで管理され多様化し、人の手の動きに近づいてきている。また各社のそれ ぞれの製品には、空気圧で部位を全体マッサージする機能や温感マッサージなど、「6 人の 指圧師が中にいる」17ような機能群が存在する。このように「もみ味」というアナログ的な 感覚を、デジタル的にプログラムによって統合した製品である。
16 2012年9月1日 某量販店マッサージ売り場担当者への覆面取材より。
17 フジ医療器 商品部本部長付マッサージ部長の取材時のコメントより。
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図表13:マッサージチェアのもみ玉の動きのイメージ図(左)と製品写真
※フジ医療器ホームページより (2012年8月アクセス)
マッサージチェアは、マッサージといったサービスを製品化したものと言える。Shostack
(1977) は、サービスは無体財だけでなく有体財と共に構成されるとし、連続体の概念つま
り市場取引される製品には、無体が優勢な製品から有体が優勢の製品まで連続的に存在する とした。これらは、必ずしも有体または無体の二者択一ではなく、有体財にも無体財の要素 が存在し、その逆のサービスも存在するとした。またLevitt (1981) は、製品の便益の本質 をとらえ、市場では例外なく製品の「無体財」が売買されているとした。つまり、サービス と製品には明確な境界は存在しないとしている。有体財としての製品であるマッサージチェ アと、無体財とも言えるサービスのクイックマッサージについて、その違いを以下に考察し、
製品としてのマッサージチェアについての理解を深めることにする。
Zeithaml, Parasuraman & Berry (1985) によれば、サービスには4つの特徴が存在する とされている。
(1)無形性:サービスは行為で有体財のように見たり感じたり、味わったりできない。
(2)異質性:顧客ごとに、サービス提供者ごとに、日によっても異なる。
つまりサービス回数ごとに異質性が存在する。
(3)同時性:生産と消費が同時に行われる。物の場合、先に生産と販売された後に
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消費されるが、サービスの場合は先に販売され、同時に生産および消費される。
(4)消滅性:サービスは行為であるため在庫できない。
このZeithaml et al. (1985) のサービスに関する特性を基に、図表14において、マッサー
ジチェアとマッサージサービスの特性を整理した。両者の顧客ニーズとして考えられるのが 肩こり解消や疲労回復である。それに対してマッサージから享受できる便益は「もみ味の気 持ちよさ」であり、共通事項となる。しかし、サービスとして提供されるマッサージは、施 術者ごとに手法が異なる場合がある。それに対しマッサージチェアは一度生産されると、も み味は固定化され、正確な再現性を維持できる。つまりサービスのマッサージの品質には異 質性があるが、マッサージチェアのマッサージについて異質性はない。つまりマッサージチ ェアの所有は、再現性のある異質性のないマッサージという便益を所有することである。す なわち無体財のサービスと同じ効用を持つ便益の源を、異質性がなく、消滅性もない、有体 財として所有することであると言える。
図表14:マッサージの製品とサービスの特性比較
サービスの特性 マッサージサービスの特性 マッサージチェアの特性
(1) 無形性
・特許などで法的に 保護できない。
・伝えにくい。
・価格設定が難しい。
・インテリアなど 心地よさを誘う 有形財・無形財の マッサージの組合せ。
・マッサージといった 主要便益は無形。
・有形の製品動作により 便益が生成。
・本体所有権が移動。
・有形だが便益創出の 動作は無形。
(2) 異質性
・共通化と品質管理が 困難である。
・安定品質が難しい。
・消費者の品質評価 が難しい。
・従業員ごとに品質が 異なり統一が困難。
・消費者の品質評価 が難しい。
・異質性はない。
ATMやアマゾン などのネット売買と 同様。
・消費者の品質評価 が難しい。
(3) 同時性
・消費は生産と一体化。
・消費されると 元に戻せない。
・消費と生産は、
同じタイミング。
・消費すると 元へ戻せない。
・事前に購入があり、
異質性のない サービスを継続的に 利用可能。
・有体財として所有。
(4) 消滅性 ・在庫が難しい。 ・在庫が難しい。 ・在庫は可能。
※Zeithaml et al. (1985)を基に筆者作成。
このように、マッサージチェアは、サービス開発との違いで考察するとき、顧客が期待す る「もみ味」をいつでも正確に再現可能にすることを前提に開発される。マッサージチェア
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開発は、マッサージを固定化した有体財を開発することに他ならない。この開発過程は、「心 地よいマッサージ」を中心的な便益としてつくりこみ、固定化し、つまりサービスに存在す る異質性をなくしたものである。次に実際の開発過程について述べる。