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価値形成プロセス

ドキュメント内 仮想便益を収束させる製品開発 (ページ 93-96)

92 8章:結論

先行研究において、価値の構成要素や価値自体がどのように形成されるかといった議論が 存在した。しかしながら、その主要な構成要素でもある便益の部分については、価値形成の 視点からは重要と考えられるが、いくつか議論の余地が存在した。そこで、価値形成を論じ るには、便益の形成過程を考察する必要性があるとし、それに焦点を当てることにした。

本稿では、リサーチ・クエスチョンを、価値形成プロセスとその持続性を明らかにするこ との2つに設定した。価値形成を掲げているが、便益をどのように形成するかについての議 論に焦点を当てた。つまり、顧客が求める便益と一致できれば、より価値が向上すると考え られるためである。7つの事例をもとにそれらを検証し、製品の便益が、仮想便益との収束 といった過程で実現されることが明らかになった。

この章では、今までの議論の結論として、これらリサーチ・クエスチョンに対して判明し たことを整理する。

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き市場ニーズがあると仮説的に解釈された感覚である。これら評価者と開発者の収束の過程 は、いくつかの先行研究で言及されている「技術と市場ニーズの融合」の具体的なプロセス とも言える。

製品が創りだす感覚を、市場が求める便益に合致させる過程をルーティン化できれば、そ れは市場での競争優位の源泉ともなり得る。その理由は、この感覚の形成は、開発者や評価 者の属人的な感覚に依存し、それゆえに模倣が困難となるためである。それ以外にも、検証 した製品開発の事例からもわかるように、便益形成は連続性を必要とするものであり、すぐ に創りだせるものではないからである。

またこの独自性ある融合の過程が、便益の特徴に希少性を生み出している。つまりこれら 企業は、既存の評価された便益の上に新しい便益を付加し、便益を拡張し続けてきた。その 独自に蓄積し形成された便益は、他の企業が模倣できない複雑性を持っていると言える。そ の結果、わが社の音や味、もみ味といった希少性が形成される。この希少性は、市場におい て価値を高める側面にもなっている。

8.1.2 冗長性の回避

本稿では、価値形成プロセスについて、顧客の便益の実現の過程を中心に検証した。これ ら便益の多くは感覚であり、一部数値で表現できてはいるが、それだけでは実現するには不 十分であった。事例では、人間の感覚による評価が必要となり、その評価の過程を開発プロ セスに組み込んでいた。この便益の実現には、指標や目標を具体化しにくいため、実験志向 とも言うべき、試行錯誤が必要となる。試験の評価も人間の感覚に依拠するものであり、そ のために評価者と開発者の対話が必要となる。このような便益形成では、意思決定が行いに くいため、試行錯誤と言った冗長性のある状態に陥りやすいと考えられる。これらを回避す るためにも、開発者と評価者のコミュニケーションにおける情報量が重要となってくる。

これらコミュニケーションのためには、共通言語や共通感覚が必要となる。炊飯器の開発 の場合、共通感覚を養う要素として開発経験を挙げた。また音響機器の場合には、同じ開発 者が共通言語で意思疎通を図ることが重要であると考えられていた。つまり、このような共 通言語と共通感覚により、詳細な内容を表現することができ、言葉で伝えることができない 内容も「あの時のあの製品の感覚」といったように理解できると考えられる。試作機評価の 場合は、実際に試作機に手を加え評価を伝達する場合もあることを、ヤマハの事例で述べた。

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この場合、便益を具現化するためには、専門性の高い設計などの技術的な知識などをベース にした表現が必要になるとも言える。

このように共通言語や技術的な表現力を高めることにより、コミュニケーションにおける 情報量を豊かにすることが、冗長性を回避する一つの手法でもある。

もう一つとしては、マッサージチェア開発のフジ医療器の事例で、管理者のトップダウン 的な指示によって、「もみ味」を決定していた点を挙げる。事例の考察では、トップダウン 型のプロセスの場合の特長や課題も説明した。この企業の場合、周辺の開発者が若いという 点もあり、市場の感覚つまり仮想便益が、社内全体に十分に形成されていない状態であった とも言える。

8.1.3 プロセスのモデル化

本稿では、価値形成プロセスを明らかにすることをリサーチ・クエスチョンとし、そのプ ロセスのモデル化を目的としていた。その価値形成プロセスにおける便益について着目し、

開発者と評価者との対話による形成について検証を試みた。それらは、収束のコミュニケー ション (図表8)、収束の過程(図表9) といった概念で説明することができ、これらについて 仮説的にモデル化した。

さらに事例と、仮説のモデルを照合のうえ分析し、精緻化することができた。収束の過程 については、マッサージチェアの開発過程を調べることで、共創プロセス (図表19) と収束 プロセス (図表 20) の 2 つのモデルを導出できた。仮想便益に合わせて、徐々に市場で求 められる便益に合致していく過程を描写した。またこの仮想便益がどのように維持されてい るのか、または乖離に関するリスクについても述べた。

さらに、音響機器の事例から、収束のコミュニケーションにおいては、開発側には対話と 技術的な翻訳の過程が存在し、評価側には、評価と表現の過程があることを明らかにできた。

これにより収束における評価と調整の構造だけでなく、収束で必要とされる能力についても 言及した。この能力の分類によって、評価者を内部化や外部化する条件について、論理的な 説明が可能となった。

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ドキュメント内 仮想便益を収束させる製品開発 (ページ 93-96)