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6.4.1. オンラインゲーム

韓国でオンラインゲームが急速に普及したのは,もちろん事後的に説明することはできるが,時宜と偶然 の産物であろう。日本でもゲームセンターに行けば通信回線を使った対戦型ゲームはあるし,家庭用ゲーム 機にも同様の機能が付いているのものがある。第4章でも触れたとおり, PC房の普及によるものであっ て,特に韓国に特徴的であるとは言えない。

6.4.2. 援助交際・売買春など

PC房に行き,チャットや掲示板で援助交際や売買春をしたり,いわゆる「ナンパ」をしたりする現象が 取り沙汰されることがあるが,これも偶然なことである。別に PC房や,チャット・掲示板などのシステム に問題があるわけではない。

7 . 結語

本論文ではインターネットを中心に,韓国の電子情報化過程について分析を試みてきた。資料不足や時間 不足などから,分析が不十分になっている点も多いが,韓国の一般市民がインターネットという電子情報化 時代の産物にどのように接し,消化しているのか,そしてどのような認識を持っているのかについて,整理 および考察ができたように思う。

すなわち,韓国の電子情報化(本論文ではインターネットの普及)は,経済危機を克服する手段の一環と して行われ,また偶然的な条件が重なったこともあり,1990年代後半を通じて世界に類を見ないほど急速に 進展した。収入が低くコンピュータを所有できなくとも,市民は PC房を利用してインターネットに接続す ることができた。その結果,市民はインターネットをコミュニケーションの道具として使うことはもちろ ん,社会運動の「場」として(アンチサイト),共同体を構成する「場」として(オンラインコミュニティ やサイバー共同体),自分とは異なったアイデンティティを持った「もうひとりの自分」の息づく「もうひ とつの空間」として(オンラインチャットやオンラインゲーム)利用するに至った。しかしその仮想世界 は,住民登録制度や貨幣による取引など,現実世界に担保され分離しきれない空間として存在しているのが 実情であり,このことを市民自身がほとんど意識していないのである([図7-1]を参照されたい)。

以上,これまでの韓国の電子情報化に対する議論からは抜け落ちていた視点を拾い上げてきたつもりだ が,見えずに拾い忘れてしまった点もあるし,見えていながら拾いきれなかった部分もある。そもそも,こ のような市民の視点から韓国の電子情報化を見ることによって,情報化における [図7-2]で示すような構 造を分析し,また,市民の内部ではどのように状況が動いているのかを観察・分析するのが目標であった。

また,冒頭でも述べた通り,電子情報化分野を手がかりにして韓国の姿を把握し,また,韓国に留まらない 情報と人間の関係を露にするのが最終目標・方向性であった。しかし,残念ながら本論文がその目標を十分 に達成できたとは言い難い。

しかしながら,韓国の電子情報化の現状を整理し,また,そこから若干の含意を引き出せた点で,本論文 はそれなりに価値のあるものになったと思う。今後,最終目標に向けて残された研究課題は多い。例えばあ るひとつのコミュニティに焦点を絞った分析や,韓国の伝統風習・風俗・文化と絡めた研究が必要である。

また,高度情報化を韓国の市民が需要することによって何が変わり,何が変わらなかったのか。そして,そ の変わらなかった面に目を向けることによって,韓国社会というものが見えてくるように思われる。そして さらには,高度情報化分野では世界の先を行く韓国のこれらの研究を基礎とし,この議論を凡世界的なもの に敷衍してゆく必要がある。インターネットや仮想空間に隣接した分野は,現在急激に進歩し,また変容し つつあるだけに,現状から常に目を離さずに観察・分析していくことが求められる。

産 業 政 府 市 民

資金導入 技術導入 輸出主導

海外進出

リアクション

助成金・育成

教育 法規制 商品

人的資源

コミュニケーション 連帯・社会運動・消費

[図7-2] 韓国における電子情報化の概念図

[図7-1] 韓国における現実空間と仮想空間の関係

韓国という枠組み マクロな部分

8 . 参考文献

ドキュメント内 一九九〇年代韓国における情報化過程分析 (ページ 43-46)

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