第 4 章 流体シミュレーションに関する検討
4.5 補正結果
「ナビエ-ストークス方程式」の粘性項に係数を乗じた解析による到達時間の 計算結果一覧を表-4.4 に示す。また、係数と到達時間の関係を図-4.10 に示す。
図-4.10より、係数が大きくなればなるほど到達時間が長くなっていることが分
かる。これは前述の理論通り、係数を乗じたことにより粘性項の運動エネルギー を減衰させる効果が大きくなったからである。この効果を壁面の諸々の抵抗と 見なすことで、適切な係数を決定していく。
表-4.4 係数を乗じた解析結果一覧
1.00 2.85 1.13
1.10 3.80 0.18
1.20 4.90 -0.92
1.00 1.25 0.89
1.10 1.50 0.64
1.20 1.80 0.34
1.50 3.40 -1.26
1.00 0.70 2.07
1.10 0.75 2.02
1.20 0.90 1.87
1.50 1.25 1.52
2.00 1.95 0.82
2.20 2.40 0.37
3.00 4.80 -2.03
1.00 0.40 1.44
1.10 0.45 1.39
1.20 0.50 1.34
1.50 0.70 1.14
2.00 1.05 0.79
3.00 2.05 -0.21
1.00 1.05 2.94
1.10 0.20 3.79
1.20 1.40 2.59
1.50 2.00 1.99
2.00 3.45 0.54
2.20 4.40 -0.41
1.00 0.60 1.35
1.10 0.70 1.25
1.20 0.80 1.15
1.50 1.10 0.85
2.00 1.70 0.25
3.00 3.90 -1.95 2.77
NO.3 5mm
1.84
1.95 NO.2
3mm
NO.2 5mm
NO.3
3mm 3.99
NO.1
5mm 2.14
実測との 差(s) 実測到達
時間(s) 係数 到達時間
(s) NO.1
3mm 3.98
117
図-4.10 係数と到達時間の関係 間隙幅3mm
間隙幅5mm
118
図-4.10で示した係数と到達時間の関係より得た近似曲線に、実測の到達時間
の値を代入して実挙動の到達時間を解析によって精度良く計算できると補正し た係数を算出した。その係数(以下、補正係数)と補正係数を計算プログラムに反 映した解析による到達時間を表-4.5 に示す。実測の到達時間も比較のため、表 -4.5に盛り込んだ。また、実測の到達時間と係数を乗じていない到達時間、補正 係数による到達時間のそれぞれの関係を図-4.11に、補正係数を乗じた解析結果 と流動試験の実挙動の写真(写真-4.1~4.6を再掲)の比較を図-4.12~4.17にそれ ぞれ示す。
間隙幅が大きくなるほど補正係数も大きくなっている。普通、間隙幅が狭くな るほど壁面に掛かる抵抗力が大きくなるため、この係数の考え方は不適合であ るように見える。しかしながら、本解析では壁面に掛かる抵抗力そのものを考慮 していないため(代わりに粘性項に係数を乗じて、それを抵抗力と見なしている)、 間隙が大きくなるほど流動しやすくなり、実挙動と解析の乖離を助長してしま う。試料No.3に関しては、間隙幅3mmと5mmとで係数の大小が他試料と逆転 してしまったが、これは図-4.10のNo.3の近似曲線を比較すれば、間隙幅5mm の曲線の傾きが間隙幅3mmのそれより大きくなっていることから分かるように、
データ数が少ないための誤差であると考えた。
図-4.11を見ると、補正係数による到達時間は係数を乗じていない到達時間と
比較して、実測の到達時間との整合性がかなり向上している。係数を実測の到達 時間に照合して算出しているため必然ではあるが、粘性項は流体の速度を周り の流体の速度に近づけようとする力であり、この効果を補正係数により高め、実 挙動に近い結果を得るようにした。レオロジー定数が既知であり、且つ材料分離 しないと仮定できるビンガム流体であれば、MPS法によって本モデル型枠にお ける間隙流動挙動(間隙幅3、5mm)を再現することが出来ると言える。
本検討では間隙幅 3、5mm の 2 水準でのみ実験を行ったため、他の間隙条件 でも同様の係数算出方法で間隙流動挙動を再現できるかの論理的裏づけに乏し く、信憑性は低い。しかしながら、実施工の鋼板巻立てでは、最狭部の間隙幅を 5mm以上確保するために間隙幅を 20mm 以上にすることが望ましい6)とされて いることもあり、間隙幅5mmを流動することを再現できていれば、実施工でも 問題なく間隙流動できると判断して良いだろう。
119
3 1.11 3.90 3.98
5 1.23 1.95 2.14
3 2.17 2.30 2.77
5 2.81 1.85 1.84
3 2.09 3.80 3.99
5 1.92 1.65 1.95
間隙幅
(mm) 補正係数
補正係数 解析到達 時間(s)
実測到達 時間(s) No.1
No.2 No.3
塑性粘度 (Pa・s)
1.126 0.820 1.886
表-4.5 補正係数と補正係数による到達時間
図-4.11 実測到達時間と補正係数を乗じていない解析による到達時間、
補正係数による到達時間の関係
120
1s
2s
3s
4s
5s
図-4.12 試料No.1 解析と実挙動 間隙幅3mm
121
1s
2s
3s
4s
5s
図-4.13 試料No.1 解析と実挙動 間隙幅5mm
122
1s
2s
3s
4s
5s
図-4.14 試料No.2 解析と実挙動 間隙幅3mm
123
1s
2s
3s
4s
5s
図-4.15 試料No.2 解析と実挙動 間隙幅5mm
124
1s
2s
3s
4s
5s
図-4.16 試料No.3 解析と実挙動 間隙幅3mm
125
1s
2s
3s
4s
5s
図-4.17 試料No.3 解析と実挙動 間隙幅5mm
126