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本章では、次の7テーマを取り上げて分析を行った。
平成27年年報の分析テーマ
【1】名称類似に関する事例
【2】一般名処方に関する事例
【3】後発医薬品への変更に関する事例
【4】ハイリスク薬に関する事例 -免疫抑制剤に関する事例-
【5】疑義照会に関する事例
【6】「共有すべき事例」の再発・類似事例
-小児において年齢別に処方量や剤形が異なる医薬品に関する事例-
【7】腎機能が低下した患者に関する事例
各テーマは、事例の集計・分析に続き、「まとめ」「事例から学ぶ」「薬局ヒヤリ・ハット分析表」「参 考資料」で構成されている。
○ 「事例から学ぶ」は、各分析テーマの代表的な事例とこれまでに報告された類似事例、総合評価部 会委員によるポイントをまとめて掲載した。
○ 「薬局ヒヤリ・ハット分析表」は、各分析テーマに掲載した図表のうち代表的なものを選び掲載し た。
【1】… 名称類似に関する事例
はじめに
医薬品の販売名の中には、複数の医薬品の間で名称が類似しているものがあり、それらの間での薬剤 取違えの事例が報告されている。特に、薬効が異なる医薬品と取違えた場合や、ハイリスク薬を取違え た場合は医療事故につながる可能性がある。
医薬品の名称類似に関する医療事故防止については、以前より様々な取り組みが行われてきた。日本 病院薬剤師会は、会員に向けた通知「処方点検や調剤時、病棟への供給時に注意を要する医薬品につい て」1)(平成15年11月12日付)において注意喚起を行った。厚生労働省は、平成15年11月 27日付医政発第1127004号・薬食発第1127001号、厚生労働省医政局長・厚生労働省医 薬食品局長通知「医療機関における医療事故防止対策の強化について」2)、及び医薬品・医療用具等安 全性情報No.2023)(2004年6月厚生労働省医薬食品局)を発出し、情報提供している。また、
2008年3月には、名称類似性を客観的に評価するための「医薬品類似名称検索システム」4)が公 開された。これは、医薬品の名称類似に関し、医薬品の名称の視覚的、音韻的な類似性を数値化して表 示するシステムであり、一般財団法人日本医薬情報センター(JAPIC)が運営している。
本財団の医療事故情報収集等事業では、第7回報告書5)、医療安全情報No.4「薬剤の取り違え」6)
において、医薬品の名称類似に関する情報提供を行った。その後も、第21回報告書7)、第25回報告 書8)、第29回報告書9)の「再発・類似事例の発生状況」で「薬剤の取り違え」を取り上げ、医療安全 情報No.68「薬剤の取り違え(第2報)」10)を提供するなどの注意喚起を行っている。
本事業の平成21年年報では、「名称類似に関するヒヤリ・ハット」を分析テーマとして取り上げ、
販売名の頭文字の2文字または3文字以上が一致した販売名に関し分析を行った。その後も名称類似に 関するヒヤリ・ハット事例は多く報告されていることから、平成22年年報~平成26年年報において も継続して集計・分析を行っており、本年報においても名称類似に関するヒヤリ・ハット事例について 分析を行った。
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名称類似に関する事例
薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成27年年報… Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析
1.名称類似の考え方
名称類似に関する事例を抽出するために、2015年1月1日から12月31日までに報告されたヒ ヤリ・ハット事例のうち、事例収集項目の「調剤」に関する「事例の内容」の項目で「薬剤取違え」が 選択されていた事例776件について、取違えが生じた医薬品の組み合わせで、名称が類似しているも のについて分析を行った。
名称の類似性については、平成21年年報~24年年報においては、報告された事例の「処方された 医薬品」と「間違えた医薬品」の頭文字の一致に着目した。そして、異なる販売名の医薬品を識別して 入力するために、一般的に、販売名の頭文字の3文字が用いられていることから、頭文字の文字として の一致を、2文字のみ、3文字以上、の2つに分けて集計、分析した。なお、漢方製剤は販売名が製造 販売業者名から始まっているため、頭文字が一致していることは当然であるが、そのような組み合わせ も含めて集計した。
しかし、名称の類似性には、頭文字の複数の一致の他にも、音韻的な類似性、視覚的な類似性などい くつかの着眼点がある。そこで、平成25年年報、平成26年年報においては、頭文字が2文字以上一 致している名称類似医薬品に関する事例以外で、報告された事例の背景・要因などの記述部分に、販売 名が類似していることにより取違えた、またはそのことが推測される内容が記載されている事例につい ても「その他の販売名が類似している医薬品」として分析を行った。
本年報においても引き続き、頭文字が2文字以上一致している名称類似医薬品およびその他の名称類 似医薬品について分析を行った。なお、「薬剤取違え」の事例のうち、一般名処方に関する事例は平成 24年年報以降「一般名処方に関するヒヤリ・ハット」において取り扱っていることから、本分析では 取り扱わず、【2】一般名処方に関する事例(124頁)で分析を行い、取違えた医薬品の組み合わせ についても詳しく掲載しているので参照いただきたい。
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析… 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成27年年報
2.報告件数
1)発生状況2015年は、「薬剤取違え」の事例776件のうち、名称類似に関する事例は211件(27.2
%)であった。名称類似に関する事例のうち、頭文字が2文字のみ一致している医薬品の事例は 53件(25.1%)、頭文字が3文字以上一致している医薬品の事例は140件(66.4%)、そ の他の名称類似医薬品の事例は18件(8.5%)であり、頭文字が3文字以上一致している医薬 品の事例が多かった。
図表1-1 名称類似に関する事例の報告件数 (単位:件)
報告件数
2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
「薬剤取違え」の事例 171 1,372 871 1,005 893 817 776 名称類似に関する事例 41 402 264注1 259 227注2 246注2 211注2
頭文字が2文字以上一致してい
る医薬品の事例 41 402 264注1 259 208 215 193 頭文字2文字のみ一致 13 144 85 82 55 62 53 頭文字3文字以上一致 28 258 180 177 153 153 140 その他の名称類似医薬品の事例 - - - - 19 31 18
※ 2012年4月に開始された「一般名処方」に関する名称類似の事例は含まない。
注1 販売名の頭文字が2文字のみ一致している医薬品との取違えと、3文字以上一致している医薬品との取違え が両方報告されている事例が1事例あるため、「名称類似医薬品と取違えた事例」の件数(264件)は、「頭 文字2文字のみ一致」の件数(85件)と「頭文字3文字以上一致」の件数(180件)の合計と異なる。
注2 2013年以降、「名称類似に関する事例」には頭文字が2文字以上一致する医薬品以外の「その他の名称 類似医薬品の事例」を含む。
2)発生場面
2015年に報告された名称類似に関する事例について、発生場面別に集計を行ったところ、頭 文字が2文字のみ一致している医薬品の事例、頭文字が3文字以上一致している医薬品の事例、そ の他の名称類似医薬品の事例は、いずれも「内服薬調剤」が多かった。
図表1-2 発生場面… (単位:件)
発生場面
頭文字が2文字以上一致している
医薬品の事例 その他の名称類似
医薬品の事例 合計 2文字のみ 3文字以上
内服薬調剤 41 106 17 164
外用薬調剤 5 17 1 23
注射薬調剤 2 2 0 4
その他の調剤に関する場面 5 15 0 20
合計 53 140 18 211
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名称類似に関する事例
薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成27年年報… Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析
3.名称類似に関する事例の分析
1)頭文字が2文字のみ一致している医薬品の事例の分析
2015年に報告された「薬剤取違え」に関する事例の中で、頭文字が2文字のみ一致している 名称類似医薬品と取違えた事例53件について、「処方された医薬品」と「間違えた医薬品」の組 み合わせをブランド名別に集計した。本分析において、一般的名称に屋号が付されている後発医薬 品については一般的名称別に集計し、漢方製剤については販売名ごとに集計した。
(1)主な薬効の相違と実施の有無
頭文字が2文字のみ一致している医薬品の事例53件について、「処方された医薬品」と「間 違えた医薬品」の組み合わせで、主な薬効の相違、および患者への誤った医薬品の交付の有無を 表す「実施の有無」を集計し、図表1-3に示す。ただし、漢方製剤同士の組み合わせは、いず れも主な薬効が「漢方製剤」であるが、実際にはそれぞれ効能、効果が異なるため、本分析では
「その他」として分類した。
53件の事例のうち、「処方された医薬品」と「間違えた医薬品」の主な薬効が同じ事例は 43件(81.1%)、主な薬効が異なる事例は8件(15.1%)、その他の事例は2件(3.8%)
であり、主な薬効が同じ事例が大部分を占めた。また、その他の事例2件は、いずれも頭文字が 製造販売会社「本草」から始まる漢方製剤同士の組み合わせであった。
図表1-3 主な薬効の相違と実施の有無(頭文字2文字一致)(単位:件)
主な薬効の相違… 実施の有無
実施あり 実施なし 合計
主な薬効が同じ 21 22 43
主な薬効が異なる 3 5 8
その他(漢方製剤同士) 1 1 2
合計 25 28 53
※1 主な薬効は、その医薬品の個別医薬品コード先頭3桁の医薬品分類を示す。
※2 漢方製剤同士の組み合わせはいずれも主な薬効が「漢方製剤」であるが、実際にはそれぞれ効能、効果が 異なるため「その他」に分類した。
また、医薬品の取違えのうち、主な薬効が異なる医薬品を誤って調剤し、患者が服用した場合、
患者の健康に影響を及ぼす可能性があるため、特に注意を要する。主な薬効の異なる医薬品を調 剤した事例8件のうち、患者に対する誤った医薬品の交付の「実施あり」の事例は3件であった。
「実施あり」の事例で報告された医薬品の組み合わせをブランド名別に、図表1-4に示す。主 な薬効が異なる組み合わせについては、(3)注意を要する医薬品の組み合わせ(107頁)に おいて分析する。
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